8月14日(木)パキスタンの独立記念日。足止めをくらう

 パキスタンの独立記念日。早朝に出発、早々とアフガンへと国境を越えるはずであった。しかし、手続き不備・・・といっても、役所側の書類の間違えだったらしいが、そのために、トライバルエリアの通過に必要な警備の役所で足止めをくらう。

 パキスタンとアフガニスタンの国境地帯は、トライバルエリアと呼ばれ、地図上ではパキスタンに含まれているものの、実行支配はされていない無法地帯だという。外国人がそこを通過するためには許可がいる。車には、銃を持った警備員を同乗させないといけない。その銃を持った警備員を統括する役所に書類がまわっていなかったということなのだ。役所の前でさんざん待つ。ネジャットセンターの人々も交渉に来てくれ、そして、手続きミスのあったホームセクレタリーまで戻ったものの、14日は、独立記念日で役所が休みなので、結局どうにもならなかった。そんなことも起こるだろうなぁ・・・・と思うわけであるが、パキスタン人、アフガン人に対するエリさんの対応が、なかなか強くていい。腕を組み毅然として立ち続け、一歩も後に引かないわ・・・という石のような意志の強さが伝わってくる。

「本当は、もう仕方ないなぁとか思っていても、相手の失敗を追求しないで、いいよいいよ、仕方ないよって言ってしまうと駄目なんです。そうすると甘く見られて、次の時も手抜きされちゃうんです。だから、ここが問題だ、これだから困るってことをはっきりさせないといけないんです」という。ラオスやタイでは、あまり追求しすぎて、白黒をはっきりさせすぎてしまうと、関係がうまくいかなくなることもあり、結局は、何事も「ボペンニャン(いいよいいよ)」で終わるのが一番ということがあるが、こちらではそれはいけないらしい。一回ボペンニャンで通すと、それ以後、なめられっぱなしになるという。日本人は、つい「相手の失敗を責め過ぎちゃ悪いし・・もう、わかっているだろうから・・・失敗をして一番つらいのは本人だし・・」などと思ってしまうが、ここでそうすると、今後甘く見られるのだという。こちらに「失敗を許したおまえが悪い」ということになって、付けが回ってくるとか?

 エリさんがこう悟る?までに、きっとあれこれいろいろな、苦い経験があるのだろう。大変だなぁ・・・・と、ことにつけ思う。

 私は、エリさんが毅然と交渉している、その傍で、車のそばに集まってきた子どもたち相手に、遊ぶ。写真を撮れ・・・というので、これ幸いと撮らせてもらい・・・・すると、じきに「ペンをくれ」だの、「時計をくれ」だのと言い出す。子どもたちは物怖じせず、陽気だ。カラテーなどとポーズをとる。道ばたで、ゴミ拾いをしている小さな女の子たちの一団もいた。彼女らケラケラ笑っていて、悲惨な感じはなかったが、なんとなく写真は撮れなかった。

 道路を、飾り立てた派手なバスが、人々を満載にしてビュンビュン通る。バスボーイが後ろの乗車口のところから身を乗り出し、「ナントカ行き、ナントカ行き(??)」と、手をふりふり客寄せしている様子は、ラオスのそれと変わらない。少年が端正な美しい顔をして、必死に働いているシーンが急に映画の一幕のように見え、私はほれぼれしてしまった。乗っている大人たちの方は、例のだぼシャツだぼズボンで、濃い顔をそろえて乗っている。西洋人みたいな顔もいるし、アラブ系みたいな顔もいる。大人になると、だいたい髭面で美しさも隠れてしまうのだろう。ちょっと尻込みするような面構えの集まりだ。女性客はほんの少数である。女はさぞかし、移動もしにくいのだろうと思う。

 男たちは、独立記念日で浮かれている連中もいて、バイクの後ろに旗を立て、暴走族のごとく走り回っている人も多い。道の途中に見えた観覧車がある遊園地も、ほとんどが男ばかり。同じような格好をした男と男と男と男と・・・・が、手かなんかつないじゃったりして、たくさん戯れている。あぁ、どこも男、男、男・・・こんなに男を見ても嬉しくないのは久しぶりである。

 女が、普通に公の社会に、何のプレッシャーもなく出られるのは、本当に子どもの時だけなのかもしれない。

 結局、国境越えができなかったので、ゲストハウスに戻り、その後、イブラヒムと運転手のマンガルに市場につれていってもらう。市場も、売り手も客も、ほとんどが男である。化粧品も女の下着も男が売っている。ここでは、女一人では出歩けないから、買い物も、アフガン人男性と一緒なのだろう。男に言いにくい買い物もあるだろうに、あれこれ、これはお互い大変だなぁ・・・と思う。

 ホテルの部屋で、ズボンのすそのあげをして、絵本の言葉の練習をして、それからおしゃべりして、ルームサービスでサンドイッチを食べ、そして寝た。本当にゲストハウスから一歩も出ない。それでも奇妙に疲れて、夜は寝てしまった。でも、これが続いたら、私はきっと変になってしまうな・・・と思う。
   



  


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