8月18日(月)カブールにて
カブール。アフガンの人々はオフィスに泊まっていた。朝8時、時間通りに迎えに来てくれるが、あの恋の悩み多き宿の主人に、レシートがないとか、おつりがないとかで待たされ、30分くらいしてようやっと宿を出ることができた。宿は50ドルである。私は50アフガニーかと思って、おお、安いと思っていたが、とんでもない勘違いであった。おお高い!・・・でも、後で聞くと、カブールではそれでも安い方なのだそうだ。ちなみに、二食付き。タオルなどはつかない。
朝、窓の下をのぞくと、男たちがたむろしていて、銃を持っている人もいた。窓際に女の姿が出るのはよくないんだろうなぁ・・・と思いながら、こっそり見ていた。ここカブールでも常駐するとなると、結構たいへんだと思う。
さて、朝、チキンストリートへ。絨毯やアクセサリー屋などが並ぶおみやげストリートのようだ。別に何を買うつもりもなかったのだけど、ついつい、ラピスラズリの響きに惹かれて、買ってしまった。アフガンにはラピスラズリの鉱山があるそうだ。青の石は魅力的である。ただ、ここには、物乞いの子どもたちが多い。ある男の子がずっとずっとついてくる。店に入っている時は外で待っていて、そして、またついてくる。ライラに聞いたら、金はあげなくていい・・・と言うので、地元の人がそういうのだから・・・と思って、あげなかった。それでも、あんまりずっとついてきて、なんだか可哀想になってしまったので、最後には少しあげようかな・・・と思った時、ライラもそう思ったのか、自分の財布をあけて、お札を出した。すると、その瞬間、他の少年がさっと彼女の目の前に手を出した。素早い。彼女も戸惑ったようであったが、その途端、他のこどもたちも急に押し寄せた。あぁ、これではたいへんだ。でも、本当にこの子どもたちは、物乞いをしないと食べていけないのだろうけれど・・・。急に外国人が増え、落ちるところには金が落ち・・急激な経済差。そして、物乞いも増える。
革の店があった。ライラに連れられて店の中に入ると、アメリカ兵が2人いた。男性兵はマシンガンを下げ、女性兵はマシンガンを背にして、刺繍のついたかばんを見ている。嫌な光景であった。あんなごっつい銃を手にして、ショッピング?勤務中なんだろ?私は蹴飛ばしたくなったが、もし蹴飛ばしたら、撃たれてしまうんだろうな。
教育省の建物の外で待っている時に、雑草のように生えたトマトを見て、私が、「おおきなかぶ」の台詞を言うと、アジマルが笑った。この人は、笑うと本当に優しいすてきな顔になるが、薄い色の目がなんだかどこを見てるかわからないような時は、違う世界の人なのだなぁ・・・と見える。彼も屋根の上のバイオリン弾きの登場人物みたいだ。
アジマル氏は、パシャイだというので、パシャイ語で、アローコシェ(これは何?)などと言うと、パシャイ語を教えてくれた。
お昼を食べる。ピザ屋。ここでは、私におごらせてもらったが・・・・640アフガニーなり。ここでも、店の前を歩いていると、ちょんちょんと袖を引く人がいる。見ると、小さな女の子。まるで、写真のグラビアになりそうな、かわいい、そしてぼろをまとった子だ。その子が、手を引いてはお金ちょうだい・・・と手を出す。そして、自分の素足を指す。靴を買うお金もないの・・・と。その手のひっぱり方があんまりかわいらしくいじらしく、目の奥にその子の顔が残る。そのお金をちょうだいと差し出す手をとって、つないで歩いたけれど、なんだかやっぱりお金はあげられなかった。
カブールの町は、1992年?市街戦で破壊されたそうだ。それが、また、生々しい破壊跡が残されている。そのつぶれたような家に、人々がまた住んでいる。タリバン時代のことを聞くと、ライラは、タリバンの時には、戦いはなかったけど、歌を聞いたり歌ったり、そんなことも許されず、女性は顔を出して歩けなかったと。ライラみたいに教育を受けてきた人には辛かったろう。彼女たち家族は、イランのテヘランに移り2年、それから、パキスタンのペシャワールに移った。テヘランでは、もちろん、働くことはできず、女性は家にいなくてはいけなかった。イランの人とダリ語を話す彼らは見かけも言葉もあまり変わらない・・・・と彼女はいう。でも、全然自由がなかったから、ペシャワールに移った。そこの方がまだ彼らに理解があったという。彼女がブルカをかぶったのは、ペシャワールに移る時など2回ほどだという。パシュトゥの文化では、ブルかは今も当たり前のようであるが、タジク人の彼女には耐えられないものだったのだろう。
同じアフガンの中でも、かなり違いがあるようである。
午後3時、再び、帰路につく。
アジマルが、お腹の調子が悪いとかで、途中、車を止めた。岩岩の山々が壮大な景色の中で、車を止めると、ちょっと待ってて・・・と駆けて行った。すると、他の男たちも車をそそくさと降りて、岩陰に駆けていくと、しゃがんでいる。(ここでは、男は立ちションではなく、座りションらしいのだが・・・)。こんなことを言うのは変だけど、なぜか親しみのもてる光景(もちろん、見てはおりませんが)である。