8月25日(月)ジャララバード・再び子どもたちと会う
カビールとコミュニティライブラリーへ行く。子どもたちはもう扉の前で待っている。車の助手席に私がいるのを見ると、みんな、「サラーム、サラーム」「グッドモーニング」と手を車の窓に出してくる。なんだかこそばゆく、うれしい。
カビールが図書館の扉を開け、そして、子どもたちがなだれ込む。
今日ははじめに、カビールのダリ語教室。ここはパシュトゥ語の地域であるが、アフガニスタンの2つの公用語、ダリ語とパシュトゥ語を代わる代わるに教えているという。小さい子、また、後ろの子どもたちは関心が離れてしまっているが、前にいる女の子たちは真剣そのものだ。「ウースター(先生)、「イチス?(これ何?ダリ語)」と、わからない文字は我先に聞く。また、先生が言うことに、ハイハイハイと手を挙げ、いち早く先に出て、答えを言おう、ホワイトボードに書こうとする。こんなに一生懸命に女の子たちが勉強する姿はやはり、いいものだなぁ・・・と思う。こんな女の子たちのエネルギーをどこに閉じこめろというのだろう・・・と思う。(もちろん、男の子も後ろの方で、一生懸命勉強しているのだが、前に陣取っている女の子たちの迫力に負けている)
女の子たちは、絵に描いた鶏なんかを持ってきた。「どこへ行くの?ともだちに会いに」のお話を元に作ったペープサートがおもしろかったらしい。家で描いた絵をもってきている。鶏、ひよこ、男の子・・・なんかを描いて切り抜いてきている。ほんとうに積極的な子どもたちだ。この積極性があれば、いろいろ活動が出来そうだと思う。実際には大変だけど・・・・
カビールは、子どもたちが言うことを聞かない時は、手をあげてたたいていた。あちこちで、本をしまわない子がいたり、こっちで、私が出した鶏の絵がもとで、引っ張り合いになって破けてしまった時に・・・、カビールは女の子をたたいた。そうでもしないと、言うことを聞かないのだろう。たたかれてた方もへっちゃらである。日常茶飯事なのだろう。カビールに、「シュトレイ シュイ?(疲れる)」と聞くと、彼は「困ったもんさ」という顔をした。「これだからね、アフガンの子どもたちは・・・」という感じである。ほんとうに、実は一人では手に負えないだろう。でも、彼は、「ウースター(先生)、これ何?あれ何?」と聞かれた時に、うるさいな!後にしろ・・・などという対応はしない。
カビールが絵本を話をした後(もう、彼は長々と前置きしたり、最初に絵本の内容を話したりはしない)、私がお話を話す。「おおきなかぶ」・・・そして、「さんびきのやぎ」を手に取ると、肩までの巻き毛の女の子が、「それじゃないそれじゃない、チェリタゼ(どこへ行くの?)の話」と言う。「ガンピーさんのふなあそび」が聞きたいのだ。彼女は答えたくてたまらないのだ。「チェリタゼ?(どこへ行くの?)ゼハムターセサラ・トレレイシュム(私も一緒に行ってもいい?)」というと、「オウオウ(いいよいいよ)」と言う。そう、問いかけに答えるのが楽しくてたまらないらしい。
パンパンパン(手を叩きましょう)も再びやると、みんな泣くところ(泣きましょ、エンエンエン)を待っている。泣くところになると、待ってました・・・とばかりに、みんなおいおい大声で泣く。これがやりたくて、この歌をやりたいみたいである。私が子どもたちと、歌を歌いながら、泣き真似をしていると、図書室の窓が叩かれる。窓を振り返ると、大家の家との塀の隙間がわずかにあるのだが、そこから裏の大家の娘・・・鼻が大きくて長い一家の美しい娘の顔が、その隙間からこっちを見ていて「ラゼ、ラゼ(来て、来て)」と呼ぶ。子どもたちも、「行こう行こう」というので、裏の大家の家へ行くことになった。カビールは男の子たちに囲まれて、「おおきなかぶ」を話してやっていた。ここでは男の子は押され気味だから、女の子たちと私がいなくなって、少し静かになった時に、男の子の相手をじっくりしてやっている。
大家のおうちは、明るく日い光があふれる中、木陰がやさしい、気持ちのいい家である。ここにカビールや男性のスタッフは入ってこられない。他人の家だからである。私と女の子たち、そして小さな男の子たちは入ってこられる。ここの娘さんたちは、美しい。鼻がみな大きく高いのだが、本当に美しい。一番長女が、「私の隣に座って」と言う。座ると、なんと彼女は自分の指で、私の鼻を押すではないか。ななな・・・なんだいきなり?でも、彼女は美しくほほえんだまま私の鼻の頭を押す。ほんとうに鼻の高さが違う。きっと「なんで、そんなにお鼻が低いの?」と、彼女も思わずそうしたんだろうなぁ・・・と可笑しくなった。彼女もほほえんだまま、今度は私のピアスをはずし、自分のピアスを私の耳につけた。それはコインがついているもので、重い。「ドゥルント(重い)?」と聞くので、「ドゥルント」と答えると、同じように美しく鼻の大きい妹が、小さなピアスを持ってきた。そして、私の耳につけてくれる。これは交換したいのかな?と思い、私が自分のピアスをあげようとすると、「ナ、ナ(違うわ)、私のをあげるだけよ」ということで、私は彼女の美しいピアスをもらってしまった。それから、彼女は口紅を持ってくると、私の口びるに塗ってくれる。一緒に写真を撮るのかと思いきや、手をふった。やはりダメらしい。でも一枚だけ、妹の一人が私のカメラのシャッターを押したので、鼻の高い美しい姉と、鼻の低い私が一緒に写った。
5人姉妹に5人兄弟。そのうち、男の子2人は空に・・・いるらしい。女の子は、3番目の子がかろうじて図書室の方にも出てくるが、上の2人はもう美しい花も恥じらう娘さんなので、他人の男の前に顔を出すことはできないので、来ない。下の女の子は、今日もとっても一生懸命お話を聞いていた子だ。ゴ(喉につまる音)ーティ、そして下は歯抜けの女の子。男の子兄弟も、みんな鼻が大きい。
目が大きくてまつげの長い、英語の教科書を持っては、Itisabookと読んでいる女の子、シャバナが、「家に来てよ、家に来てよ」という。本当なら行きたいところだが、やっぱりきっと行っては怒られるんだろうなぁ・・と行かなかったが、もし、ここにもう少し長くいるのならば、行ってしまうところだ。「明日は来るの?サバ・ビアラズム?」と子どもたちに聞かれ、答えに窮した。「明日来るの?明日来るの?明日も来て・・・」と。明日来ないとは言えなかった。
金髪のマディナ。小さくて、いつも途中まで一緒に歩いて帰るシャキラ。シャキラは二人いる。マディナより少し年上の感じの金髪の子がハーレタ、他に少し色黒の女の子がマラレイ。シャーズィアン、サビダ、ニルファン、ミウファ、エガス、ナルケース、ファイサル、ミールウェイズ・・・・
午後、また図書館に行く。子どもたちは少ないが来ている。シャバナ、マディナ、そして、シャキラ、ゴーティなどなど、女の子が12,3人ほど、男の子が6人くらいか?結構背の高い男の子もいたが、人数が少ない時は一緒に絵本を見ている。
明日からはもうあなたにあげるんだからね・・・と、さんびきのくま、りんごをたべたいねずみくん、てぶくろ、ガンピーさんのふなあそび、Where'sSpot? を、カビールを隣において、子どもたちに読んで聞かせた。私が少しのパシュトゥ語と英語ごちゃまぜで説明して、カビールがパシュトゥーで子どもたちに話した。彼に「Doyouunderstand?」と尋ねると、彼はOK,OK,Iknowといったから、まぁ、ナントカ大丈夫だろうと思う。まだ、彼も説明調子で、全部に力が入ってる感じだけれど、でも、子どもたちにその後、話していた様子を見ると、だいじょうぶだと思う。
子どもたちが「明日来るのか?」というので、「明日、ペシャワールに行くの」と答えた。
「いつ来るの?」「また来るけど、いつかはわからないなぁ・・・」と答える。
本当に来るのかな?でも、こういう子どもたちに会ってしまうと、来たくなってしまう。それがこの私の繰り返し・・・と思う。
子どもたちと挨拶をする。「ホダイパァーマン(さようなら)」と、子どもたちは言って帰って行った。私は、カビールと同じ道筋の子どもたち数人とで、歩いてオフィスへ向かった。
帰り道、ブルカをかぶった女の人に話しかけられる。ブルカの人と話すというのは、いったいどこの誰と話しているか、わからないから、とても変な感じだ。「チェリタゼ?(どこへ行くの?)」と私に聞く。私はどう答えていいかわからず、また知ってる言葉も少ないので、「コルタ・ズム(家に行くの)」と答えた。すると「コル・チェリタデ?(家はどこなの)」というので、「ハルタ(あっち)」と指さした。そのあと何か言われたが私が困った顔をしているので、きっとその人もブルカの中で困ったのだろう。それで別れてしまった。なぜ話しかけてきたのだろう。子どもたちに囲まれて歩いていたからかもしれない。
鼻にあせをかいて一生懸命歌を歌う、あの女の子が、井戸で水を汲んでいた。私を見てやってきた。家はこのすぐ近くだそうだ。もしこのままいたら、こんな閉鎖された世界でも、こうして少しずつ、知り合いが増えてくるのだろう。残念だけど仕方ない。
カビールにとっては、刺激になったみたいだ。つたない英語で、「本当にあなたが来てくれて自分にはよかった・・・」と言ってくれた。彼のやる気をどこかで支えられていけたらいいと思うし、子どもたちにも、また会えたらいいなぁ・・・と思う。