茶色ちゃんの話
2012年3月13日
ポチの5匹の子どものうちの、茶色ちゃん。ある朝、おっぱいが吸えない。前日までは、他の子犬たち同様おっぱいをちゅうちゅう吸っていたように思うのに・・・・
「おかしいなぁ」
と、茶色ちゃんを抱き、母犬ポチのおっぱいのそばに寄せて、乳首を口にふくませてみても、吸えない。どうしたんだろう・・・・・・そういえば、この子もいつのまにか痩せている・・・・どうして、もっと前に、私は気が付かなかったんだろう・・・・今度はお皿に牛乳を入れてなめさせようとするが、飲まない。
ノイに言うと、ノイは、「豆乳の方がいいだろ」と言い、豆乳を飲ませようとするが、やはり飲まない。するとノイは、子犬の口を無理やりあけ、豆乳をどんどんと注ぎ込んだ。
おいおい、そりゃあ苦しいよぉ・・・と思うけど、まぁ、栄養が取れないよりはいいか・・・・と思っていると、茶色ちゃんは、すぐに飲んだ豆乳を吐いた。
「ほら、やっぱり・・・」と思っていると、ノイは、「あ、メートーン(寄生虫)が出た」と。
吐いた白い液の中に、白い長細いものがくねくねしている。お腹に寄生虫がいたのである。それで、元気がなかったのかぁ・・・・こんな子犬でおっぱいしか飲んでいなくても、お腹に寄生虫がもういるのだ。
私は、いつかモンの村で見た光景を思い出した。
「うわぁ・・・パヌン(私のモンの名)早く見においで」と言われて、台所に行ってみると、その家の2歳の女の子ナリーが、ウエェ〜と口から寄生虫を吐きだしていた。ずっと元気がなかった女の子がそれから元気になった。まったく、人間の子も犬の子も同じか・・・・となんだかおかしくなった。
その後、茶色ちゃんは、牛乳をお皿からピチャピチャと2回ほど飲み、少し力が出て来たか、おかあさんのおっぱいに吸い付けるようになって安心した。
しかし、安心したのもつかのお間、次の日は、立ち上がれない。脚がふにゃ〜として、立ち上がれないのである。でも、抱いて、母犬のおっぱいを吸わせると、チュチュー力強く飲み、ご飯のお皿を置くと、立てないのであるが、横に寝たまま顔を一生懸命ご飯に近づけて、必死に食べている。
子犬の生きようとする力強さ。
でも、なんで立てなくなっちゃったんだろう・・・・他の4匹は、よちよちと、あちこち歩き回るようになっているのに・・・・・・
私は、その日、日本に向けて出発することになっていたので、茶色ちゃんを手の中に抱き、
「元気でいるんだよ。ちゃんと、ご飯いっぱい食べて、元気になるんだよ」
と言うと、茶色ちゃんは、ウンウンと目をパチッパチッと閉じてはうなづくではないか。
私は、ダンナのノイに
「だからさ、この子はおっぱいも飲みたいし、ご飯も食べたいんだけど、お母さんのところやご飯のお皿まで這って行けないんだから、ちゃんと見てあげてよ。私の話にさ、うんうんって、ちゃんとうなづいていたんだから・・・」
と言い、飛行機に乗ったのだった。
昨晩、電話して聞いてみると
「走り回っているよ」と言う。
「えっ、茶色ちゃんも走れるの?」
「5匹とも、コロコロ走ってるよ」と言う。
あぁ、よかった・・・・・それにしても、子犬に限らず、小さい命は、本当にちょっとのことで、死んでしまうこともあるし・・・周りからほんの少しの手を差し伸べるだけで、命がつながることもある。
そして、小さな命自身が、生きよう、生きようとする力強さ・・・・。
茶色ちゃん
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