1月4日(金) 桂林の川下り
「離江へ」(りこう:本当は、さんずいに離)
朝、まだ暗い。ホテルを出て、裏道に行ってみる。7時前だが、中国の朝は遅い。薄暗い道の向こうに、明かりがついている。お饅頭屋さんが、すでにお饅頭を蒸しているのだ。せいろの蓋をあけると、何種類もの中華マンがおいしそうに湯気の中に見える。おへそがあるのとないのを、一つずつ買ってみた。1つ5角なり。肉まんかと思ったら、胡麻とざらめ砂糖とピーナッツを混ぜた餡だ。素朴でおいしい。もう一つはいったい何だかわからないが、ナタデココみたいなのが入っている。さっそく暗闇の通りでかじりつき、「おいしいね」とまた戻って、今度は、半月型のお饅頭を買う。これは肉まんだった。
街角のお饅頭やさんはおいしい。その他には、あんこの入った焼き饅頭みたいのとか、いろいろ庶民のつまみ食いは面白い。
今日は、天下の観光地、桂林の離江の川下りツアーに参加するのである。昨日、すでにホテルを通して、費用は払っていた。一人400元。最初、450と言われ払ったが、後でわざわざ部屋に電話があり、今はオフシーズンなので割引だと、返金してきたのであった。
約束の時間より遅れて、ツアーバスが迎えに来る。私たちのホテルから外国人で川下りに行くのは私たちだけだった。中国人の団体さんは大勢いる。中国人にとっても、桂林というのは、大観光地なのだ。中国人の川下りツアーはもっと安いそうだ。ツアーのガイドのおねえちゃんはまだ20代前半だろう張り切りねえちゃん。バスに乗っていたのは、西洋人家族4人。アメリカ人の夫と中国人の妻の夫婦、中国人妻の母と兄。世界中を旅行しているシドニーのおじさん。西洋人男性もう一人。それに、中国人のおしゃべりなあんちゃん、そして私たちである。
「グランドケーブ」
すぐに船に乗るのか?と思っていたが、バスはどんどん走り続ける。ずいぶん遠くまで走るだなぁ・・・と思っていたが、実は、乾季には川の水量が減っていて、船が下れる水域はほんのわずかだったのだ。そうとは言わずに、ガイド嬢は巧みに話す。
「今日のツアーは特別で、みなさんは、グランドケーブ(冠岩幽洞)を見ることができるのです。それはとっても大きな鍾乳洞の洞窟で、ベリーナイス、ベリーナイス!普通ならそれだけで一日のコースです。交通費も入場料もかかる。それを、今日あなたたちは、ちょっとの入場料だけで見られるのだから、ベリーラッキー、ベリーラッキー」と強調し、その後、一人ずつ回って、「あなたがグランドケーブに行くならば、費用は一人60元。あなた参加します?」と尋ねる。
「もし行かないとどうするの?バスで待っているの?」「そう」
ここまで来て行かないという手もないだろう・・・ということで、二人分120元払う。なんのことはない、オフシーズンだからサービス割引料金・・・なんて言っても、結局はちゃんと払わされるしくみになっているのだ。さすが!
バスは川岸に着くと、そこに小船が待っていた。その小船に乗ってグランドケーブとやらに行く。この辺りは、離江の中でも一番景色がよいところ・・・とあるけれど、きっと山はむかしから変わらないのだろうけれど、護岸工事がしてあり、船が行き交う光景からは、風光明媚な幽玄さ・・・は空気を通して伝わってこない。
グランドケーブというのは最近開かれたばかりのかなり大きな鍾乳洞である。鍾乳洞の自然の造形が赤、ピンク、緑、青・・・・さまざまな妖しげな色にライトアップされている。自然を楽しむという姿勢はまったく感じられない。民族衣装を着たお姉ちゃんたちが、一緒に写真撮りましょう・・・というコーナーもある。ガイドさんは「あれは、象の鼻に見えますね。ハイこれはワシが飛ぶ姿・・・」などと言いつつ、マイペースでどんどん歩いて行くので、はぐれたらどうするんだろう?とついていく。ライトアップされた中を通り、ずっと下へ下っていく。すると、洞窟の底を川が流れている。その川をボートで行くのである。ここはライトがなくて、ちょっとスリリングな探検部みたいな気分を味わえる。さて、ボートの終点からは、なんと遊園地のトロッコ電車みたいのが走る。鍾乳洞を見ながら走り、最後は未来都市へのエレベーターみたいので、出口へ上がる。鍾乳洞をここまでバラエティに富んだアトラクションにしてしまっているのに脱帽。面白かったが、まさか情緒たっぷりのはずの離江下りのしょっぱながこれか!というのは予想もしていなかった。
「船にとりつく男たち」
結局またバスに戻り、もう少し行ったところで、食堂のついた大型船に乗り込む。やっと、いよいよ離江下りのはじまりだ・・・実は、食事をしながら少し行ったり来たりして終わってしまったのだが。水量の少ない乾季には、どうもその程度のものらしく、ほとんどがバスの旅であった。桂林の景色は確かにすばらしい・・・かもしれないけれど、護岸工事の向こうの山は、遠くに見える。そして、何よりもあまりにも観光化されてしまったのではないか・・・・
川岸から船に向かって、魚取りだか虫取りの網を上下に、必死に振っている男たちがいる。最初、何か魚をとっているのかと思った。でも、網は空中を切っている。物乞いなのであった。必死の顔をした男たちは、網を上下に振る。船の甲板に出ている人に、網に向かって投げろ!とアピールしているのであった。「誰かここに投げろ!」と男は必死の形相をして船を追ってくる。水の抵抗を受けながら走るのであるから、うまく走れない。その走りと顔があまりにも必死で、悲しい。誰かがコインを投げる。かなり手前に落ちてしまった。男は「こっちだよ、ここに投げてくれよ」と、ジェスチャーをする。また、誰か投げた。水に落ちた。男は必死に腕を水に入れて探る。一人ではないのだ。何人もの若い男が必死に網を船に向けて網を振っている。
食事をしていると、船の窓に、外から顔がはりついている。偽?の翡翠の彫り物や、奇妙な模様の入った石を見せながら、窓にへばりついているのだ。見ると、筏をうまく船にくっつけて、一緒に走っているのだ。「何やってんのぉ」と、うっかりすると笑ってしまうくらい滑稽な姿だ。でも、悲しいくらい必死の彼らの姿。桂林の風情ある悠然とした景色の元には、その観光で落ちる金とはあまりにも格差のある人々の生活があるのだろう。この行き交う船の観光で、普通の田舎ののどかな生活のバランスが崩れてしまったのだろうか。
船からは、この観光ボートを生活の場とする人々の生活が見える。この遊覧船にだって、洗濯機があり、食後すぐ、このツアーで使われたテーブルクロスはすぐさま洗濯機で回っていた。洗剤もきっとトイレもこの川にタレ流しか・・・・こんなに透き通って見える川だけど・・・いったい大丈夫なのだろうか?
船を下りると、1メートルもあるでっかい扇子を抱えた男が、「シェンエン(千円)、シェンエン(千円)」と言う。私は「プーヨウ(不要)いらないよ」と言うのに、私にだけしつこくくっついてくる。「シェンエン」「プーヨウ(いらないって)」。すると「イクラ?」と言う。いくらまけてもらったところで、こんな大きな扇子を買っても困る。でも、きっとシェンエン(千円)で買う人がいるのだろうなぁ。
「陽朔へ」
バスで、陽朔(ヤオション)へ向かう。ガイドさんお薦め?(マージンが入るのだろう)の快楽酒店(Happy Hotel)というところに泊まる。この町に着いた途端、みんな英語を話すのでびっくり。ここはガイドブックにも西洋人がたむろしている町と書いてあった。他の場所ではあんなに英語が通じなかったのに、ここでは、普通の客引きおばさんが英語を話してくるのに驚く。他の町ではほとんど見かけなかったカフェーや英語メニューがあり、西洋人があちこちに座っている。私たちは全然中国語ができないけれど、それでも漢字がわかるので、かなり助かっているが、西洋人が中国を旅行するのは、とても大変だろう。みんなが、この西洋かぶれした町にたむろってしまう気持もわからないでもない。
(1元=16円)
朝ご飯(肉まん、ごままんなど)0.5x4 =2 /あんこ焼き餅 0.5
離江川下り・洞窟ツアー 460x2=920 / 緑豆モチ 1 /甘栗 7/ ホテル代 150
コーヒー 7+6 =13 / アップルパイ 6 /中華菓子 1.5 /緑餅菓子 1
干し柿 7/金柑 2/ ラーメン+餃子(夕食)10 /河北Great wall ワイン 33.6
1154.6元(18473 円)二人で