12月30日(日)  広西チワン自治区・南寧

「南寧到着」

 寝台列車の上段ベッド。何度も「6時だ」と思って起きると、2時だの、4時だの・・だった。本当の6時には、放送が流れ電気がついた。列車は6時39分に終点、南寧に着く予定なのだ。外はまだまっくら。ガタンと列車が速度をゆるめると、北海(フーペイ)の男が、「南寧(ナンニン)到」と一言言った。

 真っ暗の中、人々の行列について駅の構内を歩く。荷物運びの赤帽さん(もちろん、赤帽などかぶってはいないが・・)は、昨日昆明では、鉄の手押し車だったが、ここでは竹の棒一本。棒の両側に荷物をつけ、天秤棒のように運んでいる。

 駅の外に出ると、「チケットあるよ、あるよ」とでも言うように、行き先を書いた紙をもったダフ屋?が盛んに声をかけてくる。それをすり抜けると、まずバイクがたくさん止まっている。そして自転車サムロー。

「あれ?タクシーはないのかな?所変われば・・・そうかタクシーはないのか・・・」などと、バカな早合点をしてしまった。タクシー乗り場はすぐその先にあったのだが・・・ がっちりした男のサムローに乗る。20元。高いと思ったが、暗いとどうも気持があせって、まぁいいか・・・と決めてしまった。サムローは暗い道を走り出す。あぁ、人々がこんな暗い中歩いている。自転車で走っている。夜明けの町はすでに人々があふれ出ているのだ。自転車サムローは一本道を走り、高架線の下で止まった。「あれがホテルだ」と、暗い建物を指し、「まだ、不開(プーカイ)開いてないよ」と言う。うっそだろぉ。ホテルは24時間チェックインOKとのことだった。でも、ここで下りてしまおう。もうそろそろ明るくなるし、これだけ人も動いているのだから、大丈夫・・・と、20元払う。と、運ちゃんは形相を急に変えて「40だ!」と言う。「違うでしょ。20って言ったでしょ」と私も反論したが、向こうは言葉も猛々しく「40だぁ、ガァァァァ」、とがなりたてる。私は中国語で言えないので、英語で言ったが、向こうは食ってかかる。「ちぇっ!でもこんな暗いところで、言い争うのはいやだな」と、払った。5元や1元コインを混ぜて細かい金で払ったら、向こうはまだ足りないと、食ってかかろうとするので、私もめげずにラオス語で「ミーラガァ!(あるだろぉ!)」と言い放った。タンカを着るには、どうも、日本語で言うよりも、響きが近いように思われるラオス語やモン語で言った方がいいようだ。

 まぁ、結局ぼられたことには変わりはないのだが・・・・

 カバンを引き引き表通りに回ると、なんだ、立派なホテルが、もう過ぎたのにクリスマスのイルミネーションを朝っぱらからピカピカ放って開いているではないか。わざと暗い裏につけたのだ。タクシーに乗れば規定料金で来られたものを・・・まぁ、あれだけのことで無事到着したから、いいことにしよう。

 ホテルは、昆明の茶花よりも一段上。三つ星。冷暖房付きで寒くない。昆明のホテルは隙間風が入ってきた。電気の湯沸かしポットもついている。ポットは便利だが、昆明のホテルのあの魔法瓶も雰囲気があってよかった。中国ではとにかくお湯は大切で、魔法瓶はかかせない。毎朝毎晩、ホテルの女の子が、魔法瓶を届けてくれたのはうれしかった。

「ふたたび南寧駅へ」

 ホテルで一息いれ、とにかく駅に行って、明日の列車のチケットをとることにする。中国の旅では、とにかく列車のチケットをとるのが大変と・・・言われているからだ。

 南寧は広西チワン族自治区の中心都市で、やはり大きい町である。古くからの繁華街に、新しいショッピングセンターもできている。大通りは至る所で道路工事をしている。

 駅に向かう表通り沿いには食べ物屋がない。腹が減ってきた。昨日の夜、ピーナッツとビールを飲んだだけで食べていない。あぁ、やっと中華菓子というか、パンやさんがあった。ほっとして買う。6角(リウ・マオ)なり。やっと、値段の単位がわかってくるようになった。元は(ユェン)だが、普通みんなそう言わない。クワイと言う。そのもう一つ下の単位の角(チアオ)は、マオと言うのが普通。少し聞き取れるようになった。

 さて、駅はでかく、駅前広場には大勢の人々がたむろしている。チケット売り場は大きい。たくさんの窓口があり、どこにも人が並んでいた。よくわからなかったけど、ガイドブックにある18番の外国人窓口というところに行く。英語も何も書いていない。外国人窓口というのは最近はなくなっているらしいのだが、役人高官とか、そんな特別窓口なのだろうか。紙に、「柳州(行き先)、12月31日、11:00、二人」と書いて出す。女の人はベラベラと中国語をまくしたて、30元x2=60元だというので、金を出したはいいのだが、その後もベラベラとまくしたて、16という数字を言う。わけがわからないので首をかしげていると、「まったく・・ガァァァァ」とまくしたてながらチケットをくれた。わけがわからないで、チケットを眺める。全と半という文字。これは何だろう?ホント言葉がわからないというのも困ったものだ。

 ちなみに全と半というのは、大人・子どもではなく、130センチ以下の人は、半のキップでよいのだ。それ以上は全。駅のチケット売り場の横に、柱の傷があり、その線よりも小さい人は、半のチケット(半額か?)ということ。私も、あと18センチ小さかったら、半で済むのだが・・・・また、人混みとほこりと排気ガスの大通りを通って帰った。大したことしてないのに、なんだかえらいこっちゃ。

「小平がくる」

 友人・小平は昨晩、日本から香港に到着している。昼過ぎの香港からの飛行機で飛び、南寧に2時過ぎに着くはず。(ちなみに、小平は大学からの友人で、かの大政治家・とう小平に似ている・・もしかしたら孫娘ではないか?ということからそう呼ばれている。顔が似ている?が、ご本人は見かけによらず、中国語は話せない。実は!日本人女性である。)その頃から、ホテルのロビーに下り、コーヒーを頼んで待っている。4時頃、小平が山のザックを背負い、紙袋を持って現れた。席を立ちコーヒーのお勘定を頼む。なんと!22元。聞き違いだろうと思い、2元払うと、22だという。ラーメンの4倍の値。お饅頭の40倍の値。そりゃないだろう・・と思ったけど、ホテル値段はそうらしい。ボーイさんに「高いね」と言うと、確かにそう思うのだろう。苦笑いする。 

 南寧のホテルの裏は、古い町並みが残っている。古い中国映画に出てきそうな町並み。修理屋、車のパーツを扱っているような店・・・黒いオイルにまみれたような小さな店が続き、その奥はずっと食べ物屋さんだ。甘い物屋さんもある。おしるこ、あんみつ・・・といった漢字の札がならぶ。緑豆沙(リュートゥアシャ)、紅豆沙(ホントゥアシャ)、花生糊(フアシャンブー。花生とは落花生のこと)、清 涼(チンクーリャン)・・・・なんだかおいしそうなものばかり。どれもこれも器いっぱいに盛られていて、結構栄養もボリュームもありそうだ。文字から想像できるものとさっぱりわからないものとあるが、あれはなんだこれはなんだと、店の女の子に聞く。一生懸命答えてくれるが、わからない。まっ、結局食べてみるにこしたことはない。緑豆沙は、緑豆のおしるこ。花生糊は葛湯みたいだったが、きっと落花生からできているのだろう。やはり、二人になるといい。写真もあまり気にせず撮れるし、きっと中国の人も、変な外国人が一人より、二人でガヤガヤやっていた方が気が楽に違いない。

 市場には野菜や食糧があふれている。白菜、セロリ・・・どういうわけか、みんな長い。長くて大きい。そして、鶏がコッココッコとかごいっぱいにうごめいていて、そのかごの真上の台でお肉の塊が売られている。タイやラオスでもこのような光景を見ないわけではないが、あまりに直結していてリアル。この肉屋の横のかごにも、百羽近くの鶏が、コッコと多量に待機?している。明日は、いや一時間後は我が身か・・とうごめいている。

 ?江(ユウジャン)という川の橋を渡る。向こうから自転車と車が、雲霞の大群のごとく、排気ガスとともに押し寄せてくる押し寄せてくる。人人人・・・・そして排気ガス。

  川幅は大きく、船が浮かび、船上で生活している人々もいるらしい。川で水浴び?泳いでいる。川の水は決してきれいではない。そして、何とも今は冬。太鼓腹のおじさんが、川の向こう岸から背泳ぎをして渡っている。川岸では、男たちが準備体操をして、おぉ、いきなり鉄棒に飛びついて、懸垂を何回もやっている。しかし、そんな連中を尻目に、50がらみのおじさんが一人、岸の草原の上で脚を180度に開き柔軟体操をしているかと思ったら、体操の床の両脚旋回?のようなことをはじめた。オリンピックみたい。そして、おぉ、片手で逆立ちをし、脚を伸ばしてバランスを取っている。す、すごい。また、立ち上がると、カンフーのような空中蹴りもしている。さすが、中国。いろんな人がいるなぁ・・・と感心。と見ると、あの車だらけの排気ガスの大通りから、荷車を引いた馬車を走らせてくる人もいる。あぁ、あれもありこれもあり・・・・いろんな人がいるなぁ。

 夜、昔ながらの通りには、店前に、ありとあらゆる食材。肉魚、野菜が並ぶ。魚の頭や、ゆでられた犬?まで並んでいる。おいしそう(犬じゃなくて)だが、注文の仕方がわからない。結局、店の前のコンロに鍋を並べて火にかけている鍋焼きご飯やさんに行き、指さし注文。鍋にご飯をいれ、肉とキクラゲなんかを入れ、そして醤油のタレをかけて焼いた鍋焼きお焦げご飯。一鍋4元、野菜炒めも注文したが、それだけで食べきれないくらいだった。他のテーブルを見ると、山ほど注文している。中国では、山ほど注文して残す・・のが当たり前らしい。私たちのように、きれいに平らげてしまう程度にしか注文しないのは、みみっちいのだろう。

 夜深まるにつれ、活気と食欲がますますみなぎる町。

                              (1元=16円)

ぼられたサムロー 40 / おかし2つ 1.4  / 列車チケット(南寧ー柳州)30

鳥肉麺(昼) 4/ ホテルのコーヒー 22 /緑豆沙 1/ミカン1斤(イーチン)500g 1

夕ご飯(2人) 鍋焼きご飯 4x2 +野菜炒め 4 + ビール 4 = 16 (一人 8)

ホテル(カード)330(165)

                           272.4 元(4358円)