第4回

「エイリアン4」ALIEN RESURRECTION(1997)

エイリアン4

− 最初に言っておきますが、本作でも襲ってくるエイリアンの恐怖は期待しない方がいいです。前述のとおり偉大な2作を前に真っ向から立ち向かうのは無理です。実際のところ私も観る前はそれを期待していきました。結果、その期待は見事に裏切られたことになってしまったのですが、それはいい意味での裏切りでした。そこには、全く新しい「エイリアン」が出来上がっていたのです。この映画は、エイリアンの恐怖を楽しむものではなく、SF的な怖さとジャン ピエール ジュネ監督の映像センスの世界を堪能する映画です。しかし、それは「エイリアン3」のように前作まで積み上げてきた世界を壊した上で成立させた世界ではなく、前作までの世界、しかも3作目の世界さえも尊重した上で、独自の世界を作り上げているのです。これは脚本家ジョス ウェドンの手腕によることが大きいでしょう。本当によく作られた話だと思います。

− ジュネ監督は「デリカテッセン」、「ロストチルドレン」で知られるフランスの映像監督で、今回もその重苦しい映像世界に浸ることが出来ると思います。個人的には「デリカテッセン」は内容的にそれほど好みの映画ではなかったのですが、今回はSFという設定とウェドンの脚本にうまく乗って、その世界を楽しむことが出来ました。

− ジュネ監督はエイリアンに殺される人々の描写を細かく、それぞれ違った形でこだわって描いています。そして、その一つ一つが実に芸術的に出来ていて、少なくとも私はいちいち感動して観ていました。エイリアンというクリーチャーとその表現方法が実にうまくマッチしてたのでしょう。ファーストクレジットバックの映像も思い返すと実に恐ろしい映像でした。

− 物語としても実に衝撃的です。前述したように、それは、シリーズの流れを遵守しつつ、全く新しい世界になっています。死体に残った遺伝子から生物兵器としてエイリアンを復活させるために、いわば副産物としてリプリーは復活してしまいます。しかも彼女はエイリアンと融合してしまっているのです。いままでエイリアンと戦い、逃れ続けてきたリプリーはついにどうあがいてもエイリアンから逃れられない体になってしまったのです。その逃れられない運命を背負って生きて行かざるを得ない彼女に、更に恐怖が襲いかかるのです。それは、遺伝子操作に失敗して人間になりきれなかった自分が他にも大勢いて、自分で自分を殺さなければならなくなったり、すべてのエイリアンが遺伝的につながっていたり、同じく遺伝的につながっているクイーンから生まれた子供が人間型でリプリーを母親だと思って慕ってくるといった、前作までとは異質の内的な恐怖なのです。

− またアンドロイドの描き方も一歩進んだものにしています。人間の僕としての1作目と、人間的な部分に目覚める2作目に対し、今回は人間として生きたくてもプログラムという逃れられない運命を背負ったロボットという設定です。もっとも人間的であるにもかかわらず、人間として認められない悲しいアンドロイド、コールを演じたのはSF初挑戦のウィノナ ライダー。彼女が、人間の命令により機会と交信するシーンで、交信すると液体になった気がするから嫌だという、ロボットにしか感じることのできないような、しかし非常に人間的な台詞はお気に入りの台詞の一つになりました。最近の彼女の中では一番よかったんじゃないでしょうか。

− ただ、本当の人間ではないこの二人の行動があまりに冷静なのは狙ってのことかとも思えますが、もう少し、この二人の運命を掘り下げてわかりやすく描いてもよかったのかなとも思います。もうひとつ不満な点はラストシーンです。リプリーがやっと青い空の下へ戻ってくるというラストシーンもよかったのですが、今回こそは自分の遺伝子を持った子供エイリアンと心中してほしかったのです。リプリーに助けを求める子供エイリアンに同情してしまったのは私だけでしょうか。せめて涙を流してくれるだけでもよかったんですけどね。

− ここまでやってしまうとこのシリーズを終わらせてもいいような気もしますが、続編へのネタもちゃんと残してあるのも事実です。エイリアン達は宇宙にそのままだし、リプリーは生き残ったし、大体彼女がエイリアンなんですからね。うーん、商魂たくましい。願わくばこの作品が売れないで、このまま終わってほしい気もするんですけど。でも地球での戦いも見てみたい気もしますね。(1998.3)

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