第14回
「フェイス/オフ」 FACE/OFF(1997)
− もう、むちゃくちゃ格好いいです。むちゃくちゃ興奮します。しびれます。ジョン トラボルタとニコラス ケイジが格好良すぎます。泣けます。遂にハリウッドにもジョン ウー旋風が吹き荒れる日が来ました!!
− ..さて、興奮するのはこのくらいにしまして、この映画を作ったジョン ウー監督の紹介からしましょう。彼は「男達の挽歌」で日本でも一躍有名になった、香港映画界の代表的な監督です。近年は、ハリウッドに進出し、何本か作品を発表しています。「男達の挽歌」はいわゆる「香港ノワール」の先駈けとなった作品で、内容はともかく格好だけを追求したガンアクションシーンは実にスタイリッシュで、格好良く、日本でも熱狂的なファンを数多く作りました。私は、アクション的には面白いと思ったものの内容的にはそれほどのめり込めた方ではありませんでしたが、ハリウッド映画として発表した「ブロークンアロー」(1996)を初めて見たときは、ハリウッドでは力が出せないまま終わってしまうのかとも思いました。というのも、内容的にもB級だったし、アクション自体も、ワイヤーアクションなど、一部香港映画らしさは見えたものの飛行機アクションが中心で、とても彼らしさは見えなかったからです。
− しかし、この「フェイス/オフ」で見事に彼らしさが復活しました。この映画はジョン ウーのガンアクション炸裂という感じです。銃を構える、撃つ、拾う、走る、跳ぶ、すべてが計算され尽くされた、京劇でも観ているかのように美しい「男達の挽歌」を彷彿とさせるスタイリッシュなガンアクションを、ハリウッドを代表する二人の俳優ジョン トラボルタとニコラス ケイジが演じているのを見ていると、それだけで興奮してしまいます。彼らが本当に格好いいのです。
− ジョン トラボルタは「サタデーナイトフィーバー」(77)で一世を風靡し、その後も何本か映画に出演していましたが、あまりぱっとせず長い間低迷していました。その後、タランティーノの「パルプフィクション」(94)で見事に復活し、ご存知の通り大活躍を続けています。ジョン ウーとは前作「ブロークンアロー」でも組んでおり、ウー監督のお気に入りになりつつあるのかもしれません。
− ニコラス ケイジは、フランシス F.コッポラ監督の甥で、コッポラ監督の作品ほか、数多くの映画に出演していますが、癖のある顔立ちからか、日本ではメジャーになりきれませんでした。最近では、「ザ・ロック」や「コン・エアー」等のアクション映画に出演しています。この「フェイス/オフ」でファンを増やすのは間違いないところでしょう。
− 内容はというと、二人の人間が入れ替わるというアイデア自体、一歩間違えればひどいB級映画になってしまいそうなものですが、普通の世界に入り込んだ悪人と、悪人の世界に入り込んだ善人の対比の描写が実に良く出来ているため、とても面白い映画に仕上がっています。そのため、アクション的な面白さだけでなく、家族もの、夫婦ものとして感動できる映画になっており、まったく退屈することなく最後まで観ることができると思います。しかし、これらの感動は脚本の良さというよりも、主演の二人の名演技と監督の名演出による所が大きいといえるでしょう。脚本自体は、いい台詞が随所に見られるものの全体としては結構大雑把なものなのですが、二人の主演俳優の演技のうまさと、ジョン ウーの、度が過ぎると臭くなってしまいそうな演出の効果によって、そんなことは少しも感じさせないのです。
− お気に入りのシーンは、ショーン(ニコラス ケイジ)が奥さんの職場に行って、二人の思い出を語る場面。このシーンの彼の表情は本当にすばらしかったと思います。それから、娘が最後にトロイに捕らえられ、バタフライナイフでそこから逃げる場面。まさか、ここでトロイからもらったナイフでトロイを刺すなんて思ってもなかったので、変に感動してしまいました。この場面の演出も良かったですしね。
− そして最後に忘れてはならないのが、この映画では、CGが使われていないことです。最近はほとんどの映画にあからさまなCG画面が氾濫しており、もういい加減CGには飽きていたところでした。そんな時にタイミングよく、人間の手による人間臭いアクション映画を観ることができて、「やっぱり、映画はこうじゃなきゃ!」と心から喜ぶことができたのです。ジョン ウーはCGに偏りすぎたハリウッド映画界に映画本来の姿をきっと思い出させてくれることでしょう。
− 久々に心からアクションを楽しんで、ドラマに感動できる楽しい映画を見ることが出来ました。未見の方は見ないと損しますよ。(1998.4)
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