第17回

「フィールド・オブ・ドリームス」 Field of Dreams (1989)

− 父と息子が心を通じ合わせることはなかなか難しいものです。息子は父親を追い越したいと思って成長し、父親は越されまいとそれに立ちはだかるものですから、衝突するのは当然だと思うのですが、これは個人的な見解として、それが事実としてあるということに異存のある方は少ないと思います。にもかかわらず、いつか親父に理解され、認めてもらいたい、そして心から愛し合いたい思うのも息子として当然の心情でしょう。そういった思いに同感していただければ、この物語はきっと感動できることと思います。

− この作品は、主人公と死んだ父親との絆についての物語と、夢を追い求めながら道半ばにして諦めたり、死んだりしてしまった人々が、その夢を実現させるという物語を並行して描くファンタジーです。その夢を実現させるために集まってくる場所が、主人公が自分のとうもろこし畑に作った野球場、フィールド・オブ・ドリームスです。導入で主人公と父親との関係に触れながら、野球に関係する人々の夢の実現へと話が移り、その話がまた素敵なので、そちらに感情移入している間に、最後にさりげなく父子の物語に帰ってくる。それを、野球がアメリカスポーツの王様だった時代、60年代という学生が元気だった時代へのノスタルジーと、現代が失いかけた夢を取り戻したいという願いとともに描き出している脚本がすばらしい。きっとそういう時代を経験している方には自分の実体験と重ね合わせて、さらにこの作品は感慨深いものになっていることでしょう。

フィールド・オブ・ドリームス

− そのすばらしい脚本に、キャスティングがぴったりはまりました。主演はケビン・コスナー。この時期の彼は、「アンタッチャブル」、「ダンス・ウィズ・ウルブス」など立て続けにいい作品で善良な人間を演じており、評価が非常に高かった時期です。私は今でもいい役者さんだと思っていますが、やっぱり役者が力を持ちすぎると映画としては失敗しがちになりますね。有名俳優が一度は通る道かもしれませんが。そして競演にエイミー・マディガン。美人ではありませんが、威勢が良くて、理解のある元気な奥さん役にぴったりの演技をしていました。彼女は僕の大好きな作品「ストリート・オブ・ファイヤー」で格好いい女アウトローを演じていたので、久々に見ることができてすごくうれしかったことを覚えています。監督・脚本はフィル・アルデン・ロビンソン。ストーリーにあった穏やかで手堅い演出です。彼は「ダンス・ウィズ・ウルブス」でコスナーの監督の手伝いをしていたなんて噂もありましたね。

− 私は60年代も、アメリカの野球の黄金期もリアルタイムでは体験していませんが、その雰囲気は感じ取ることができる作品ですし、何より少年の夢の物語、父と子の物語としてよくできた作品なので、大好きな作品です。(2003.11.11)

(>DVDを買う)