第17回

「少林サッカー」 少林足球(2001)

− まさに、荒唐無稽の超娯楽映画。こんなむちゃくちゃなのに、すんなり受け入れられる楽しい映画が今の世の中でできるとは思いませんでした。CG技術を手に入れた香港映画界が、今映画でできることをてんこ盛りにして観客を楽しませようというまるで映画の創成期や普及期のようなノリで放つ娯楽作で、すごく観ていて楽しいし、好感が持てます。CGをこんな風に使って楽しませるとはびっくりです。が、まさにやったもん勝ちのアイデアで二番煎じは全く受け付けられそうもありません。少林サッカーの前に少林サッカーなし、少林サッカーの後に少林サッカーなし、唯一無二の痛快娯楽アクションコメディです。

少林サッカー

− しかし、いくらむちゃくちゃとは言っても、ベースとなる物語、作家のメッセージがあるからこそ、ばかばかしいギャグやアクションも冴えてくるのです。すっかり廃れた少林寺拳法を普及させたいと願う一途な青年が、社会に飲み込まれ、または追いやられた兄弟たちに、もう一度夢に向かって立ち向かう勇気を与え、更には周囲の共感を呼び、成功していくと言う物語には、現代社会の息苦しさ、その中で失いがちな心、夢という、社会に対する作者の思いが詰め込まれ、バカバカしい笑いやアクションに大爆笑しながらもしっかり見終わった後に爽やかな充実感を得られるのだと思うのです。アクションでもコメディでも脚本があってこそ映画として面白くなる。少なくとも、カンフー映画やうだつのあがらない人間達のサクセスストーリー、スポ根モノが大好きな私にとってはばっちりはまった作品となりました。

− 主演はチャウ・シンチー。彼は監督、脚本もこなし、特に脚本については他の作品に比べ相当時間をかけたそうで、それも頷けるほど本作を見事な娯楽映画に仕上げました。まさに渾身の一作でしょう。すこし意地の悪い言い方ですが、次回作もこの勢いが続くか、袋小路にはまってしまうかが見ものです。ただ実績はあり、香港ではジャッキー・チェンに並ぶほどの人気者のようです。彼の作品は初体験でしたが、もともとナンセンスコメディとカンフーアクションが作風のようですね。話が上手くできていれば結構面白いかもしれません。癖のある兄弟達を演じた脇役陣もいい味を出しています。ヒロインを演じたヴィッキー・チャオは香港では知らない人がいないほどの有名アイドルだそうです。まさに体当たりの演技で、笑わせてくれます。有名アイドルだけに香港の人が見たら余計笑えるのでしょうね。

− まさに漫画としか言いようがないけど、漫画でしかできなかったアイデアを見事に漫画以上の面白さに仕上げた楽しい作品で、必見の娯楽映画です。本国でのあまりのヒットについに世界公開までされるようですよ。世界中をこのはちゃめちゃ世界で席巻して欲しいものですね。(2002.6.18)

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