第4回

「ターミネーター」THE TERMINATOR(1984)

アーノルド・シュワルツェネガー

− 今回はジェームス キャメロン監督の出世作「ターミネーター」を紹介します。キャメロンはこの映画と次の「エイリアン2」の成功で好きな映画を撮れるようになったといってよいでしょう。日本ではともに当たったとはいえませんが、それぞれの続編がヒットしたのをみると、ビデオなりテレビなりで見られて多くの人が面白いと思ったのでしょう。日本はそういう面白い国です。「ダイハード」などにも同じことがいえます。話はそれましたが、それだけこの作品はよくできた映画だったのです。続編とは比べものにならないほど少ない予算で作られたためSFXや舞台設定等ではやりたいことがすべて出来たということはないでしょう。それは続編をみればよく分かります。しかし、映画の内容という点からみれば2作目は1作目に遠く及ばないでしょう。

− 舞台は現代。ウェイトレスとして働く平凡な女性が突然未来からやってきた殺人マシーンに追われる、というのが大まかなストーリーです。主人公サラ コナーを演じたのはリンダ ハミルトン。殺人マシーン、ターミネーターを演じたのがご存じA.シュワルツェネガー。この映画は彼にとっての出世作にもなりました。それまでも肉体を利用した映画には出たものの演技がうまくなくて、どうしてもスターになることができなかった彼ですが、演技がうまくないことを逆手にとった、このロボット役で観客を魅了してしまいました。その後の彼の活躍は皆さん後存じのとおりです。この二人の戦いにサラの援軍として登場するのがマイケル ビーン演じるカイル リース。彼の存在がこの映画にSFとして恋愛映画として深みを与えています。彼とサラ、そして彼女の息子の関係があるからこそ、この映画が単なるSFアクションだけで終わらなかったといえるでしょう。紹介してしまいますと、未来の指導者であるサラの息子に命を受け、サラの保護に来たカイルは、実は指導者を育てたサラに魅力を感じていて、2度と未来へ戻れないと分かっていながら、現代にやってきて、いつしか恋に落ちるという展開です。純愛という設定さえうまくいけばもっともうける題材を取りいれることができたことでこの映画は成功したのです。実際いろいろな映画が苦労して、失敗しています。ただし、この映画は純愛がテーマの映画ではありません。アクション映画というメインがあってこそこのような設定が生きてきます。

ターミネーター

− 一方、ただのか弱い女性でしかなかったサラもカイルと出会い、最初は彼に守られているだけだったのですが、戦いを繰り広げるうち、強さを身につけ一人でターミネーターに立ち向かえるようになります。彼女の成長の物語としても面白くできているのです。嵐の方へと向かっていく「ゲッタウェイ」にも似たラストは、その後に待ち受ける、彼女と世界の暗い未来を予感させるすばらしいラストシーンでした。

− その他、M.ビーンとともにキャメロン組ともいうべきにも登場するランス ヘンリクセン、ビル パクストン(「エイリアン2」等)も出ています。SFXはスタン ウィンストンで、B級映画のにおいはするもののさすが立派にターミネーターを作りあげています(一部はシュワルツェネガーの顔のおかげともいえますが)。あと、映画をいいものにする要素の一つの音楽も素晴らしいものでした。メインテーマを聞くといまだに興奮します。やっぱり映画は総合芸術なんですね。(1998.4?)

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