第7回
「スターシップトゥルーパーズ」Starship Troopers(1998)
− 極端に言えば、この映画はCGによって描かれた大量の虫型エイリアンと人間との壮絶な戦いを楽しむためだけの映画と言ってしまっても良いでしょう。私自身、過去に類を見ないほどの大量の虫と人間との戦いを少しも隠すことなく見事に描ききったという凄さだけで、お気に入りの映画になってしまいました。それほど、その戦いは迫力があり、格好良いのです。「エイリアン2」ですら、大量のエイリアンを描きながらも襲ってくるそれはごくわずかでした。個人的には、そのエイリアンシリーズで地球上の太陽の光の下でのエイリアンとの戦いを期待していたのですが、シリーズの流れとしては、それとは全く別の方向に進んでしまっています。
− そういった意味では、私にとってこの作品は待ちに待っていた映画と言えるのかもしれません。ですが、その戦い以外の部分、つまり、アクションシーン以外の総天然色映画のような妙に平面的な映像や、古臭い学園青春モノのような内容、相変わらずの特にメッセージを持つわけでもないシニカルな笑い、等の内容的な点ではそれほど気に入ったかと言うとそうでもなく、数々の戦闘シーンの素晴らしさに、すべて許せてしまったというだけなのです。というわけで、私はこの映画にはヴィジュアル的な楽しさしか感じていません。広大な大地を空から地上から群れを成して襲ってくる虫達、地中から突如現れる巨大な虫、その虫達と人間との戦い、惑星から打ち上げられる艦隊を襲う青白い炎、等々、虫の圧倒的な数とそれぞれに対するCG描写の細かさ、デザインの良さ、戦闘シーンの演出の格好良さにただただ浸っていただけなのです。これは、SFXを担当したフィル ティペットの手腕によるところも大きいでしょう。彼は「ロボコップ」や「ジュラッシックパーク」等も担当したSFXマンで、「ロストワールド」を断ってまで、本作品に専念したそうです。気合が伝わってくるようなすばらしいSFXでした。ちなみに彼は「ロボコップ」同様、製作にも加わっています。
− 監督のポール バーホーベンの残酷描写は、いわゆるホラーやスプラッタのそれとは違い、きわめて冷静で、生々しく、時に嫌悪感を覚えます。「ロボコップ」や「トータルリコール」等では人間による人間への残虐行為であり、その行為に対して肯定も否定もしない描き方には思わず目を伏せたくなることもあります。ところが今回は相手は人類共通の敵であり、その敵の行為がいかに残虐、残忍であってもそれはアクション映画やホラー映画のものと変わりません。しかもそれは虫の大群であり、明確な主義を持たない、あくまでも虫として描き切ったことで、嫌悪感を持たずに思う存分楽しむことができたのかもしれません。
− そういう訳ですから、私にとってバーホーベンは冷徹な視点から見た皮肉的な内容と言うよりもロボットやクリーチャーの動きやそれらが登場するシーンの演出の格好良さを楽しむための映画を作ってくれる監督ということになるでしょう。今回もそういう意味では十分楽しませてもらいました。とはいえ、随所に見られる彼らしい皮肉には、笑うことはないまでも結構楽しんではいたんですけどね。
− まあ、この映画を一言でいえば、「スターウォーズ」と「エイリアン2」を足してひっくり返したような映画だと言ったところでしょうか。...え、分かりません?(1998.6.14)
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