10月の公開研究会に向けて,7月中に各自の実践記録をA4用紙2枚分にまとめることになりました。 4月から研究を始めて,まだ4ヶ月しか経っていませんが,その中の取り組みをまとめてみました。 研究教科は算数で,主題は 「筋道を立てて考え,意欲的に学ぶ授業の創造」 −−−「学ぶ楽しさ」を味わえる活動を通して−−− というものです。 |
(教務として提案した研究推進計画の一部) まず,論理的な思考を行うためには ・覚える力 ・イメージする力 ・先を見通す力 ・類推する力 ・整理する力 ・まとめる力 ・広げる力 等の力が必要とされる。この様な力を様々な場を通して育てていくことが必要である。 次に,算数の授業の中では ・「考えようとする意欲づくり」 意欲的に思考活動を行おうとするための課題提示,展開,支援の工夫 ・「考えやすい流れづくり」 順序立てた思考を行うための,実態に即した発問構成 ・「解法パターンの修得」 課題解決プロセスの細分化と定着化 ・「思考の土台となる基礎学習」 効果的な思考活動のための情報,経験の蓄積 ・「思考時間の保障」 子どもの思考力への信頼 の5点について取り組んでいくことで,「筋道を立てて考え,意欲的に学ぶ授業」に近づいていけるのではないかという仮説を立てている。 |
5・6年学級実践記録
1.はじめに 児童の実態として,1000−(300+400)という計算は順序正しくできても,「300円の絵の具と400円の筆を買って,1000円出したらおつりはいくらになりますか。」という問題になると,(300+400)−1000というような式を立ててしまうことがある。 また,みかん20個の重さを求める問題等で,思わぬ所で苦労することがある。その問題ではまず(ア)で1個平均をgで求め,(イ)では20個の合計は約何Kgになるか,と問うているのだが,1個約260gという答えが出ると,20個では5200gという答えにずっと執着してしまい,kgで求めるということになかなか気づけないのである。 児童の思考力を伸ばすために私たちにできることは,その子自身の中にある「本気になったらすごい力を出す」部分に,いかにして働きかけるかということだと考える。「その気」になっていない子どもに筋道を立てた思考をさせるようなことはできない。また,思考力等の向上には,何より自分自身による悪戦苦闘の経験も必要となる。そこで,そのための支援として考えられるのは,その経験のための場づくり,意欲づくり,知的体力づくり等である。 2.考えようとする意欲づくり 子どもが思考活動を自ら行おうとする内的動機付けのために様々な「物」(教具)を用意する。
3.解法パターンの修得 文章問題の解法パターンを細かく分け,繰り返すことにより定着化を図る。 【文章問題解法パターン】 (1)問題を視写する。 (2)問題を自分の言葉で説明する。 (3)問題を線分図で表す。 (4)チェックポイントを見つける。 (5)立式し解く。 (例) 「小数のかけ算とわり算」(5年生) この単元のねらいは小数と整数の計算に対する意味理解等であるが,この中で扱う文章題についても解法パターンの指導を丁寧に行っていく。 (1)視写(読みと共に「書く」ことで数値,言葉をはっきり意識させるため。)
(2)説明 問題文を見ずに問題の説明をする。その時,そのままの文章を覚えて言うのでなく,必ず本文と違う構文で分かりやすく説明させる。(内容の把握を確実にするため。)
(3)線分図 (この時は指導初期のため,1mで3.8kgを表す部分の図だけを板書し,それを使って後をノートにつけ加えて書くよう指示する。) 指示「この図に書き加えて線分図を完成させなさい。」 ↓ ※同じ単位同士を図の同じ側に記入すること。求める数値を□として記入すること。 児童はこの形になるまで何回も書き直しをしている。 (4)チェックポイント 問題文の中でいわゆる「ひっかけ」的な場所はないかチェックする。主に g と kg 等の単位の変化がないかをみる。 (5)立式,解答 ノートに記入する式,補助計算,解答の場所を指定し,整理した書き方をさせる。 (整理して考え,順序立てて思考させるため。) 4.思考の土台となる基礎学習 効果的な思考活動のためには,その目的に沿った情報,経験の蓄積が必要である。 (例) 「速さ」(6年生) 「あるものの速さを測りたい。どうすればいいか?」 という問いに対して,必要なデータと求め方が答えられるようになれば,速さの概念をある程度身につけてきていると考えられる。そこでこの問いを出すことを前提に,そのための思考の土台になると思われる学習を次のように行っていった。 (1)速さを求める 児童の100m走のタイムとモーリス・グリーンのタイムから速さを求め比べてみる。その後,速さを求める文章題にあたる。この学習の後上記の問いをしても,その正答率は直前の記憶によるもので,確実な理解を示してはいないように思われる。 (児童解答例) (2)道のりを求める 道のりを求める文章題を全て公式は使わず,線分図に表してから立式し答えを求める。 (児童解答例) (3)時間を求める 時間を求める文章題を全て公式は使わず,線分図に表してから立式し答えを求める。 (児童解答例) ※文章題の「速さ」を必ず線分図で表すことで,自然に,速さが単位時間に進む道のりであることが定着していくはずである。 (4)ミニカーの速さを求める 発問「このミニカーの速さはどうやって調べられますか?」 この発問に対して児童は今までの経験から必要なデータは何であるかを考え,実際に測定することができた。 ※公式化のまとめはこの学習の後に行う。 5.おわりに ○問題を必ず線分図で表してから解くことにより文章題の正答率が高くなっている。 ○問題を自分の言葉で言い換えることにより問題の理解が深まる。 ○計画的でシナリオのある思考の土台づくりを行っていけば,児童の思考活動が停滞しにくい。 ○文章題の解法パターン等を教え込むことにより,基礎の定着を図ると共に,一方では応用力や多様な考え方を育てていくための手立ての開発が必要である。 ○児童が笑顔で授業を終わり,しかも力がつくような実態に即した教材,展開の工夫が必要である。 |