LOVELY、LOVELY、HAPPY ! - part time job - |
そよそよと風にゆれる葉にあわせて、木陰もゆれる。
その下で竜くんも すやすやと気持ち良さそうに穏やかな寝息を立てていた。
いつもなら微笑ましく見守るところだけど……
「竜くん!!!」
「 もぉーーー……」
「 起きて ! 」
LOVELY、 LOVELY、 HAPPY ! 〜 part - time job 〜
「ふあ?」
伊集院?と寝ぼけマナコで見上げてくる。
「んもう!! 大変だったんですからね!!」
それなのに呑気にお昼寝なんかして!
私が地団駄を踏むと竜くんはニヤリと笑った。
「そりゃ〜ご苦労さん」
むくり、と身体を起こして伸びをする。
「で、あいつらは?」
「ちゃんと家の中です」
「そうかそうか」
はいはい、お疲れ様、と頭を撫でる。
う…そんなんじゃ だまされないんだから!!! ← だまされてる
「も〜〜…」
くしゃくしゃにされた髪を直していると、竜くんがヒョイと手を取った。
「いま何時?」
私の腕時計を見る。
「うぇ、まだまだじゃん」
あーあ、と溜息をついてまた眠りの体勢に入りそうになった。
「え、え、ちょっと竜くん!」
「なんだよ?」
「一人じゃ無理です〜〜!!!」
ぎゅうぅと抱きつく。
だって、だって……犬5匹 の世話なんて〜 !
「もう限界〜〜」
餌やりを終えた私は早々に根を上げてしまった。
「はぁー?もう? もちっと頑張れよー」
こういうことには ちっとも甘くない竜くんは、しっかりやれと全く容赦がない。
先日、竜くんと私は勝負をして、負けた代償として『 一つ言うことを聞く 』ことに なった。
竜くんの申し出は 『 バイトの手伝い 』で、それが、この動物達の世話。
ことの発端は、竜くんのバイト先のマスターだった(らしい)。
『 竜、いいバイトがあるんだけど 』
と お客さんから仕入れた話を持ち掛けた。 『 一日、犬や猫の世話をしてほしい 』という内容の、短期で割りのいいバイトに、 竜くんは飛びつ……くのを躊躇った。
『 俺、動物キライなんだよなー 』
単純な理由。
『え、そうなんですか?』
『お前、俺が動物好きに見えるわけ? マジ? 』
目ぇ悪いんじゃない?と散々な言われよう。
『どーーー見てもキライそうだろ?』
うーーん…確かに…。
でも結構 竜くん優しいから…
『 はぁ〜? 優しくないだろーが 』
俺のどこが優しいんだよ、と憤慨したように鼻にシワを寄せる。
『 だいたい「動物好き = 優しい」って図式も どーなんだよ、おかしいぜ 』
と動物好きな人まで否定しそうな勢いだ。
『 伊集院は好きだろ? 』
『 ええ、まぁ… 』
『 っつーわけでヨロシク 』
にっこりと肩を叩かれてしまった。
「俺は今 昼寝して、夜 勉強する予定なの」
手伝う気ゼロの竜くんが言う。
「うー…」
「おう、頑張れ頑張れ」
「…賭けの代償だから、世話するのはいいんです…いいんですけど!」
「けど?」
「だって竜くん庭にいるし! 私は家の中だし!」
「だし?」
「今日一日 竜くんと一緒にいられると思ったのに〜〜〜!!!」
「まあ諦めろ。人生とは厳しいものサ」
ひらひらと手を振って寝転んだまま竜くんは私を追い払った。
ひどいーー。
「おにー! 竜くんの鬼〜〜!」
「あー、おりゃオニさぁ〜」
ぬほほほほ、と高笑いをする。
もーー!
竜くんは本人に出来ることには手を貸さない。
限界、というより、私が竜くんと一緒にいたいのはバレバレだったみたい。
まあ、大変は大変なんだけどね。
家に戻ると、ゴールデン・レトリーバー二匹が駆け寄ってきた。
「ダイズ、アズキ」
この子達もゴールデン・レトリーバーの例に漏れず、すごくイイコ。
人懐こくて大人しい。
「こんなに可愛いのにねぇ?」
ふかふかと抱き締める。
う〜ん、気持ちいい。
他にはパピヨンの『ソラマメ』と ラサ・アプソの『ひよこ』と『うずら』。
竜くんなんて名前を覚える気もなくて、ほとんど聞いていなかった。
居間からは広い庭が見える。
(あーあ、気持ち良さそう…)
じとーーっと視線を送るものの、当然 竜くんは気がつかない。
今日は竜くんと一日デートだ!って楽しみにしてたんだけどなぁ…。
「だって、家に二人きり。期待して当然だよね?」
ソラマメと顔を合わせて訊く。
つるりと大きな目をしたソラマメは『何?何?遊ぶの?』と首を傾げている。
「そーだよね、遊びたいよね〜〜」
私だって遊んでほしい〜〜〜…。
「はっ!」
もしかして、私って……動物系!?
だから竜くんに嫌われるの!?
「がーーん…」
……って一人でショックを受けてる場合じゃないわ!
呑気に寝てる竜くん!
そうは問屋が卸さないんだからね!
この子達をけしかけてやる〜〜 !