改訂版あとがき

改訂版あとがき


 ども。Thorです。

 シルバーレイク物語「賞金稼ぎは楽じゃない」の改訂版をお送りします。


 改定する理由についてはこれまでもあちこちで言及しているとおり、13巻の未発表エピソードに関してを参照して頂くとして、以下、改訂版でどのような変更があったかをお知らせしておきます。


 改訂の最大の理由は、2巻「ハビタルの48時間」及び4・5巻「女王候補の見習い秘書官」が後から挿入されたことによるものです。

 これは後に大活躍することになってしまったメイやリモンなどの前日譚といった位置づけの作品なので、基本的には後の作品に影響を与えないように書かれています。

 とは言ってもあれだけの大作になってしまったため、その後の作品にどうしても細かい修正が必要になる場合もあります。

 例えば話の流れで昔の回想が入らないと不自然なところがあります。そういう所には適宜2,4,5巻の内容の回想が付け加えられています。


 また、せっかく手を入れるついでに、特にこういった初期作品で読みづらかった文体の修正も行いました(1~3巻に関しては既に処理済み)

 例えば「賞金稼ぎは楽じゃない」第1章冒頭あたりにあるこの部分は、旧版では以下のような調子でした。


 最初の大誤算は、エルミーラ王女が凱旋式が終わった途端にベラに行ってしまったことだ。もちろん王女が行くのならアウラも付いていく。あの事件はある意味アウラが王女の側を離れてしまったから起こったのだ。アウラはそのことに心底責任を感じていた。だから当然彼女に行くなと言っても聞き入れてくれるわけがない。フィンは大事件の終わった後、少なくとも冬の間はアウラとじっくりと親交を暖められると思っていたのに、まずはいきなりの肩すかしを食らってしまったのだった。

 そんな調子で悶々と冬越しした後、王女達がフォレスに戻ってきたのは五月にもなってからだった。そしてこれからはやっと落ち着けると思いきや、今度はフィンの方がやたら忙しくなってしまったのだ。

 彼は今やアイザック王の相談役として重要な会議には大抵出席を求められるようになっていた。もちろんまだ若輩者ではあるから基本的には会議に出て聞いているだけで良かったのだが、それでもフォレスの機密事項を聞いてしまう立場にある。それだけでも緊張して疲れてしまうのだが、アイザック王は会議の途中に良くふっとフィンに意見を求めることがある。もちろん王が“答え”を求めているのではないということは明らかだ。しかしフィンが何も意見を言えなければ王の期待を裏切ってしまうことになる。そういった質問に準備するためには、会議の議題についてよく分かっていなければならないし、必要ならば調査して行かなければならない。そのため重要な会議があるとなれば、前の晩は夜遅くまで調べ物をしなければならないことも多かった。すなわちそれはアウラの相手をしてやれないということを意味していた。

 またアウラはアウラで同様に多忙な生活を送っていた。エルミーラ王女はフォレスに戻ってからも王の補佐という役割でいろいろ精力的に動き回っていた。そうなれば当然アウラも側に控えていなければならない。また王女の例の“息抜き”の時はなおさらだ。そういう場所で王女を守れるのはほぼアウラしかいない。そんな日は当然一晩中戻って来られない。


 こんな風にべたっと長い段落は、昔の小説ならわりと当たり前でしたが、最近は流行ではないというか、実際読みにくいのでリンク先のように修正をしています(また回想の挿入の例にもなっています)

 このように文体は変更しても原則として内容は変わっていませんので、既に読まれた方が再度読み直さなければならないということはないでしょう(読み直して頂いても構いませんが


 しかし、長丁場で書いている関係でどうしても旧版と意味合いを変えざるを得なかった場所もままあります。そういった所は改訂版あとがきでフォローしていく予定ですが、本書では以下のような変更点があります。


 「ヴィニエーラのアウラお姉様」第1章のこの部分ですが、旧版では女将は単に顔をしかめたという表現でした。

 それを書いたときには娼婦に対するイメージが現在とそれほど変わらないという設定だったためその一言で良かったわけですが「女王候補の見習い秘書官」(下)のあとがきの最後の方にもあるように、この世界の性倫理が当初のイメージよりはずっと開放的な方向に変わってしまったため、リンク先のような変更が入っています。

 ちなみにそうするとフィンが少々堅すぎの部類になってしまうのは先ほどのあとがきにもあるとおりですが、その他エルミーラ様や後に出てくる西の方の連中(およびそのボスw)などは、この世界基準でも多分ちょっと例外なのでしょう


お暇ならちょいとアンケートなどに答えてもらえると更新が速くなるかもしれません


2019-7-17