本格的な商業・サービス業向け補助金を作る  

まずは専門家を派遣して、申請企業に助言してもらいます。

私が考えた対応策~(f)社会貢献コースと二段階抽出
先に説明したように、商業・サービス業を対象とした補助金の場合、ひじょうに対象者数が多くなります。このため、応募が殺到し、処理しきれなくなる可能性があります。
そこで、二段階抽出とハンズオンという関所を設けることで、これにブレーキをかけようとしています。
「先は長いよ」ということです。


実のところ、「補助金で企業を支援する」という方法は、あまり良手ではありません。
お金だけもらって「あとは知らないよ」という結果になりやすいし、不正にも繋がります。
しかし、単なる経営指導だけでは、あれこれ口出しされるばかりで面倒くさい、と経営者は感じます。
ですから、補助金と経営指導のベストミックスが求められるのです。
ですが、こういうことを目指すと、支援する側はたいへんになります。

さて、専門家に企業に出向いてもらってハンズオンしてもらう以上、報告書というものが必要になります。
私は、以下のような様式を考えました。なお、本報告書の様式作成にあたっては、都公社の専門家の先生からお知恵を頂戴しております。心より感謝しております。
なお、この報告書は、申請書の採否の際の評点には加算しませんが、当然、審査する側では参考にします。役割はひじょうに重要です。

【東京都商業・サービス業育成補助金 社会貢献ビジネスコース現地確認報告書】     整理№

確認者氏名 印 
実施日 2017年 月 日
申請企業の概要 
事業所名  
代表者名  
住所  
当日の対応者 部署・役職           氏名
訪問場所 上記事業所
その他( ※「上記事業所」以外の場合             )
事業実施にあたっての確認状況 (該当する項目をチェック)
Ⅰ.事業資金の調達面で無理はないか
☐(5) まったく問題なし
☐(4) 大きな問題なし
☐(3) 問題あるが解決は容易
☐(2) 問題が解決できれば可
☐(1) 問題の解決はかなり難しい
☐(0) 問題が解決できず実施困難
*チェックのための視点
・現在の「資産状況」と比較したとき、調達予定の自己資金は過大であるか。
・現在の「資産状況」から見て自己資金の充当は可能であるが、既存事業に影響が大きすぎるか。
・現在の「借入金」と比較したとき、調達予定の借入金は過大であるか。
Ⅱ.実施体制に無理はないか
☐(5) まったく問題なし
☐(4) 大きな問題なし
☐(3) 問題あるが解決は容易
☐(2) 問題が解決できれば可
☐(1) 問題の解決はかなり難しい
☐(0) 問題が解決できず実施困難
*チェックのための視点
・現在の従業員1人当たりの売上高と比較したとき、新事業による売上高が高すぎないか。
・実施を計画している事業に対して配置する人員が過小。スキルを持つ人材の確保が困難か。
・他企業・他機関との連携が事業実施に不可欠であるが、連携先機関との関係構築が白紙状態。
Ⅲ.販路開拓、マーケティングの検討が不足していないか
☐(5) まったく問題なし
☐(4) 大きな問題なし
☐(3) 問題あるが解決は容易
☐(2) 問題が解決できれば可
☐(1) 問題の解決はかなり難しい
☐(0) 問題が解決できず実施困難
*チェックのための視点
・まったく未経験である市場進出を狙っているにも係わらず、事前調査できていない。
・申請事業における新製品あるいは新サービスが、既存市場に通用する商品であるか懸念がある。
・申請事業分野ですでに事業展開している競合他社の存在が把握されていない。競合製品に対する優位性が認められない。
・顧客層の絞り込みが考えられていない。
・従来事業の市場・販路の活用が考慮されていない。
・新商品の販売計画(価格設定、流通経路、PR方法など)に具体性を欠く。
Ⅳ.補助終了後の事業継続面で収支計画(原価計算)に無理はないか
☐(5) まったく問題なし
☐(4) 大きな問題なし
☐(3) 問題あるが解決は容易
☐(2) 問題が解決できれば可
☐(1) 問題の解決はかなり難しい
☐(0) 問題が解決できず実施困難
*チェックのための視点
・販売開始後の売上予測が楽観的すぎる。
・製造原価等、必要経費について検証が不足している。
・流通コストなどの検討が不足している。
・黒字化を前提とした事業プランになっていない。
Ⅴ.外部環境への変化へ対応できているか
☐(5) まったく問題なし
☐(4) 大きな問題なし
☐(3) 問題あるが解決は容易
☐(2) 問題が解決できれば可
☐(1) 問題の解決はかなり難しい
☐(0) 問題が解決できず実施困難
*チェックのための視点
・新成長戦略や都の戦略等政策方針との整合が不十分。申請された事業目標に照らすと、個別に行おうとしている内容に食い違いがある。
・現在の経済状況との整合がない。流行、進出する業界の将来性などが検討不足である。
・現在及び予測される技術の進化等との整合がない。
Ⅵ.自社の経営資源への状況対応ができているか
☐(5) まったく問題なし
☐(4) 大きな問題なし
☐(3) 問題あるが解決は容易
☐(2) 問題が解決できれば可
☐(1) 問題の解決はかなり難しい
☐(0) 問題が解決できず実施困難
*チェックのための視点
・コンプライアンス上の問題が懸念される。(循環取引に繋がる恐れがある。既存事業への資金充当にすぎない)
・申請事業実施に必要な許認可や法令等の手続きの検討が不足している。
・事業実施上の基礎知識が不足しており、事業実施の遅れが懸念される。
・セキュリティ面の対策が不足している。
・知財を保護する視点がなく、他社が侵害する恐れがある。
・生産する仕組みが不十分であり、供給不足が懸念される。
【所見】 (支援団体提出用)
※前記判断に至った根拠などを記載してください。



備考 (次回予定など)



申請企業には、予め過去3回分の決算報告書を用意してもらいます。
通常、申請の際にその写しをもらったりするのですが、これを省く意味でもあります(直近のものだけにする)。
なお、この報告書の様式は、公開します。
通常、審査会の審査表の様式は公開しませんが、「こういう基準で判定が行われるのですよ」というのは、やはり知っておいてほしいところですので。
なお、( )内の数字は評点として集計され、今後の審査の参考となります。30点満点です。
書面審査は、アイデアベースで行われますので、実際のところ「とてもビジネスにはならない」という内容でも、候補作として残る可能性はあります。しかし、あまりにも企業として非力だと、採択された方が気の毒ですので、ボーダーラインの取捨選択には、報告書の評点が大きく影響することになります。

なお、もう一つ、とても重要なことですが、この報告書とは別に、評点項目を除いた、【所見】(企業提出用)だけの報告書を作ってもらいます。
その内容は、支援団体提出用よりは、いくぶんマイルドになると思いますが、やはり、企業には「自社のどのような点がウイークポイントなのか」ということを、知ってもらいたいからです。

ご覧になってわかるように、この現地確認と報告書の作成は、かなり大変です。
できれば、高めの謝金を専門家の方に支払ってあげられるように、したいです。
専門家派遣の交通費の取扱い→

個人的意見ですが、専門家に対する謝金は、安すぎます。


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