本格的な商業・サービス業向け補助金を作る  

数値目標を達成した企業だけが、補助金を満額もらえる。これは補助金制度の理想像ですが、そんな補助金制度は実在しません。

私が考えた対応策〜(g)経営力向上コース(1)
商業・サービス業の生産性向上といえば、労働生産性の向上と短絡させる方が簡単明快です。
つまりは、より少ない人員でより効率的な企業経営を図ることが生産性向上の近道ということです。

しかしながら、その方向性を突き詰めると人員削減=ブラック企業化になってしまいます。
それを公費で支援するというのは、本末転倒もいいとこですね。
ですので、国は、従業員の賃金アップをしきりに促していて、補助金採択にあたっても、これを注視しています。
しかし、従業員の賃金アップした企業が新事業展開する、これを公費で補助する、つまりは従業員の賃金アップ分を税金で充当する、という循環に陥ってしまうと、それも何か筋違いかと思います。

やはり、経営改善を前面に出して、これを支援する。そのために費用がかかるようなら、これを補助する、という流れが正道ではないでしょうか。
商業・サービス業に新規性を求めるのは、無理がある→


最近の国の補助金は、従業員の給与をアップさせたかなどを質問するようになっています。
それが合否にどのくらい影響するかは、わかりませんが。

純粋に企業業績のみを評価する補助金は、ない。→

持続化補助金の補助対象経費→
経営力向上コースも、社会貢献同様、二段階抽出で行います。そうでないと、数が多すぎて整理しきれません。
例えば、「経営革新計画の承認を得ていること」を1番目のハードルにしてもいいのではないでしょうか。
ただし、経営革新計画だと、直近の決算期まで遡りが認められていますので、将来分しか認めない補助金制度との擦り合わせが必要になります。
とはいえ、先々まで見据えて事業管理をするとなると、面倒くさくなりますが・・・。
昔、国の育児休業の補助金は、休業明けから半年後に勤務継続していたら追加で出る、という方法を取っていました。止めたのは、やっぱり面倒くさいからなんでしょうか。


経営改善の度合いで補助金交付を判断するとなると、それはもう純粋に企業経営の評価になります。

私の知る限り、「儲けを増やした企業に、追い金のような補助金を出す」というような制度はありません。しかし、実のところ本当に求められているのは、経営力向上です。
それに現実化しようというのが、このコースです。

ですが、公費を投入するためにはやはり大義名分が必要でしょう。
とすれば、「ほんとうに経営力が上がったかどうか」は、厳密に確認しなければなりません。


ちなみに、経営革新計画では、以下の目標が掲げられています。
  「付加価値額」又は
「1人当たりの付加価値額の伸び率」
「経常利益」の
伸び率
3年計画  9%以上 3%以上
4年計画 12%以上 4%以上
5年計画 15%以上 5%以上
経営革新と補助金制度→

 経営革新計画の場合、申請時点では上記の(多くの場合はこれ以上の)伸び率の計画が示されます。
しかし、実際のところ、ほんとうにそれが実現されているかどうかは、後追いで把握するのが簡単ではありません。
たぶん、計画倒れになっているものも、たくさんあると思います。

補助金の世界では、「目標未達だけどお金だけもらいたい」というような甘えは許されません。
上の表に準拠するならば、
2年経過後の 「付加価値額」又は「1人当たりの付加価値額の伸び率」6%以上、「経常利益」の伸び率2%以上、
とかいう事実が確認できた場合にのみ出すような仕組みとなります。
専門家の方、いい方法を提案してください。



経営状況を見る場合は、便利なサイトもあります。
財務諸表の面倒くさい分析ができない私としては、商業・サービス業に限定するならば、単純に「営業利益の伸び」で目標を作ってもいいのではないかと、私は思っています。

大企業だと、「株主の手前、利益を大きく見せよう」とする傾向があり、粉飾問題に繋がりますが、規模の小さな企業だと逆に、「節税のために利益を小さく見せよう」という傾向が現れます。
私的には、きちんと利益を出して、税金も払ってくれる企業に、補助金も出してあげたいと思います。
経営自己判断システム→

どんな会社でも、自社の経営を向上させたいと考えているはずです。このため、たくさんの企業がこのコース参加を希望し、収拾がつかなくなります。
ほんとうなら希望者全部面倒見てあげたいところですが、残念ながら資格要件の段階で、かなり絞り込まなくてはなりません。

そこでまず、対象企業を絞り込みます。

都内に主要事業所を持つ企業で、
(1)創業(法人化)後、5年以上
(2)従業員100人以下(小売業・飲食業は50人以下)の規模で、少なくとも1人以上の「正規」従業員を有する
(3)申請書とあわせて、企業の経営状況についての自己診断書を提出する。

この対象項目を作るのに、こんなことを前提としました。

(1)創業したばかりの企業は対象外にした方がよいだろう。
あまりにも不安定な経営状況だと、腰を据えてこういう事業を行うことは難しいと思います。
なお、都公社の創業補助金の対象は、「創業後5年未満」です。こことの重複を避けました。

(2)個人企業は対象外にしない方がよいだろう。
人件費補助が無意味になりますので、少なくとも1人以上の正規従業員がいる企業とします。

(3)かといって、完成度の高い企業は対象にしたくありません。
支援側としては、“伸びしろ”の大きな会社を引き上げていきたいところです。まだ、固まりきっていない層を狙いたいです。

(4)経営者の意欲を見たい。
改善策は無理でも、問題点ぐらいは経営者が把握していることが前提条件になるでしょう。こういった部分が申請書に反映されるように設計します。




最近では、簡単に創業ができるようになったことから、1人の代表者が名目だけの企業を何社も所有している場合もあります。そういった会社であっても、「別法人ですから」と言われると、断りきれない。それでは、困ります。

次に自己診断書の内容は、こんな項目を考えました。

[自己診断書の内容]

企業の収益について (例)満足のゆく収益が上がっているか。顧客拡大を阻害している要因はあるか。
従業員について (例)従業員の勤務状況に満足しているか。社内のコミュニケーションに問題はないか。
コストについて (例)無駄なコストは発生していないか。コスト削減に向けた努力は十分か。
経営環境について (例)今後とも安定した経営が可能か。経営を脅かす変動、脅威はあるか。


会社経営の方向づけは、あくまで経営者の自己責任です。
それに公費を投入するのはいかがなのか、という議論は昔からあります。
現実には経営が傾きかけているので補助金を求めてくる企業も多いと想定できます。そんな企業を追いかけて鞭打つというのは忍びない。だから、採択企業の経営状況を追いかけて検証するという補助事業は、ありませんでした。
にもかかわらず、本コースには、数字に表れる業績を後追いで評価し、それに経済的利益を与える方法がないかということを考えました。

[追補]
平成28年11月に募集を開始した国の「革新的ものづくり・商業・サービス業開発支援補助金」には、経営力向上を意識したコースが設けられました。これは、経営革新向上計画の認定や経営革新計画の承認を前提として補助対象者を募集するものです。ただし、補助要件として、“結果としての”経営向上までは求められていません。

本来なら目標未達として補助金ゼロとすべきところとは思いますが、いくらなんでも酷すぎるので・・・。

補助事業期間は2年間とし、まずは申請直近の決算期の財務諸表を登録します。
補助事業が立ち上がった段階で努力賞的な意味合いとして、補助事業の人件費補助部分(100万円)のみを支給します。
残りは、保留です。
2年後の時点で経営状況の向上が認められた場合は、企業が約束を守ったとして、事業部分の補助金を追加で支給します。補助金でありながら、交付金でもあるという感じです。
そのくらいの厳しい前提条件を作っておかなければ、企業の普通の経済活動を評価して補助金を出すことは、納税者が納得してくれないでしょう。

最初から経営者に「当補助金のシステムは・・・」と、よく説明しておく必要があります。

達成したか未達かという二分法では、補助金も「ゼロか全額か」というきびしい判定になってしまい、いささか厳しすぎる感じもします。そこで、「人件費補助部分は認めるが、目標未達の場合は事業費補助部分は出さない」といった仕組みにしました。


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