月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

 402号室

 レイは、自分の部屋が暗く汚れ、何も無いことに気付く。

 『碇君の部屋と逆。碇君の部屋、明るく綺麗で暖かい・・・』

 『私には、なにもない』

 

第04話 『笑えばいいと思うよ』

 翌朝。

 学校を休んだシンジは、レイと走ってNERVに向かっていた。

 なぜ、休みなのに制服なのだろうと素朴に思う。

 昨夜。

 シャワー上がりのレイも制服だった。

 そして、綾波の部屋に制服以外の服がなかったことを思い出す。

 シンジは、ヘトヘトになってNERVに到着し、

 レイは、涼しい顔のまま、

 

 シンジは、基礎体力の差を思い知らされる。

 

 エスカレーター

 シンジは、レイの後ろで、なんとか話題を見つけようとしていた。

 「き、今日は、これから再起動実験だね」

 「・・・・・・」

 「あ、綾波は怖くないの?」

 「もう一度、あの零号機に乗るのが」

 「どうして?」

 「どうしてって・・・」

 「あなた。碇司令の子供でしょう?」

 「うん・・・」

 「自分のお父さんの仕事が信じられないの?」

 「うん」

 「・・・」

 「当たり前だよ。あんな父親なんて」

 レイはキッとした表情で振り返り。

 バチンッン!!

 平手打ちの音が響いた。

 レイに睨まれ、シンジは、茫然と頬を押さえる。

 「わたしが信じているのは、碇司令だけ」

 というと、さっさと歩いていく

 『嫌われた・・・』 呆然

  

  

 人気の無いロッカールーム

 レイは、プラグスーツに着替えていた。

 手首のスイッチを押すとプラグスーツが体に密着する。

 

 発令所

 リツコとミサトがモニターを見ていた。

 「綾波レイ。14歳」

 「マルドゥックの報告書によって選ばれた最初の被験者。ファースト・チルドレン」

 「プロトエヴァンゲリオン零号機。専属操縦者。両親はともに不在」

 「過去の経歴は白紙。抹消済み」

 「リツコ。先の実験の事故原因は?」

 「未だ不明。推定だと操縦者の精神の不安定が第一原因」

 「精神的に不安定。あのレイがね?」

 「ええ、彼女にしては、信じられないくらい、乱れた」

 「何があったの?」

 「わからないわ・・・まさか」

 「心当たりがあるの?」

 「そんな、はずはないわ」

  

  

 零号機 エントリープラグ

 目を閉じたレイがいた。

 管制室のガラス越し、ゲンドウ、冬月、リツコ、ミサト、数名のスタッフがいた。

 「聞こえるか」

 『はい』

 「これより、再起動実験を行う」

 「準備はいい?」

 『問題ありません』

 「第一次接続開始」

 リツコが言うと伊吹が復唱して再起動実験が始まる。

 「A10神経接続、異常なし」

 「初期コンタクト異常なし」

 「双方向回線、開きます」

 管制会話が流れ、零号機とレイのシンクロが開始される。

 「シンクロ率、1 2 3・・・7 9 10 起動レベル突破」

 「・・15、19、23、31・・・・・・・・34・・・・・34パーセント・・・差異±2で安定」

 「起動実験成功です」

 安堵の空気が漂い・・・

 警報が鳴り響く。

 使徒襲来は、戦略自衛隊からリンクされ、情報はNERVに伝わる。

 「総員、第一種戦闘配置」

 「零号機。使うのか」

 「いや、零号機の体内電池は、ゼロに近い。初号機を使う」

 「初号機のパイロットは?」

 「控え室です」

 「出撃させろ」

 

 

 

 零号機

 『レイ。再起動は成功した』

 『だが聞いての通りだ。地上勤務に戻れ』

 「はい」

  

 NERV管制室

 二つのピラミッドの底を合わせた青く無機質な正八面体が浮かんでいた。

 数十条の巡航ミサイルが白煙を棚引かせて使徒に命中していく。

 使徒は、無傷のまま第三東京市に向かって進んでいた。

 「使徒は、第一次防衛ラインを突破」

 「まもなく、Cエリアに入ります」

 「戦自の攻撃が止みました」

 「重戦闘機群。後退して行きます」

 「戦自の自己満足が終わったわけね」

 「発進準備完了しました」

 「初号機発進」

 初号機の載った昇降機が火花を散らし地表に射出されていく。

 「使徒内部に高エネルギー反応を確認。N32方向に向けて収束中」

 「何ですって!」

 「まさか・・・・」 

  

 

 「シンジ君。避けて!」

 『!?』

 高層ビルが金色に輝くと一瞬で大穴が空き、

 ビルを貫通したエネルギーが初号機に直撃した。

 あっ、あっ!

 ・・・・うぁあああああああああああああああ!!!

 神経接続フューズが次々と切断され、同時に警報が鳴り響き、

 初号機の胸の装甲板が白熱し、溶けて行く、

 「シンジ君!」

 シンジの絶叫が管制室に響く

 「昇降機を下げて、シンジ君」

 「戻して、早く!」

 エレベーターが急降下すると、

 荷粒子砲がビルを融解させて貫通し、大地を削っていく、

 「・・・目標、沈黙」 日向

 「シンジ君は?」 ミサト

 「生きています」 マヤ

 「初号機回収を急いで、医療班を急行させて」

 「ケイジへ行く、後、よろしく」

 「パイロットの心臓乱れています。心音微弱」

 「生命維持システム最大」

 「LCL液の冷却速度を急いで体温に」

 「心臓マッサージ」

 二度の電気ショックで、心臓が持ち直すシンジ

 「・・・・パルス確認」

 「プラグ強制排除。急いで」

 「LCL、緊急排水」

 噴出すLCL液。

 医療班とミサト 駆け寄ると、

 「シンジ君!」

 ぐったりしたシンジがエントリープラグから引き出された。

 

 

 第4使徒は、第三東京市の中心で停止していた。

 下部からドリルのようなものが降り、地上を掘削していく。

 

 医師と看護婦に囲まれたシンジは、体中にチューブとセンサーがつけられ、

 ベットのままICUに直行。

 心電図、脳波計のグラフが弱々しく波打っていた。

   

   

 管制室

 第4使徒は第三東京市ゼロエリア、NERV本部の直上に滞空していた。

 ダミーのエヴァンゲリオンは無視され、

 トンネルから砲塔列車が現れ、使徒に向かって砲撃。

 砲弾は、ATフィールドで弾かれ、

 使徒の荷粒子砲は、山ごと砲塔列車を消し飛ばした。

 「12式列車砲、消滅」

 「なるほど・・・」

 「これまでのデータによりますと」

 「目標は、一定のレベル以上のエネルギーに対し、積極的に攻撃すると推測されます」

 「一定レベル以上の攻撃力を持った初号機は、射程内に入ると荷粒子砲で狙い撃ちです」

 「初号機のエネルギーを探知されないように遮蔽できないかしら」

 「ATフィールド以外は、無理だそうです」

 日向が資料を確認する。

 「そして、全てを遮断するATフィールドは、逆に察知されるか・・・」

 「エヴァによる接近は危険すぎますね」

 「使徒のATフィールドは?」

 「目標の相転移空間肉眼で確認できるほどです」

 「通常兵力、N2爆弾とも損傷を与えるだけのエネルギーに足りません」

 「攻守とも完璧の空中要塞」

 「大技に特化されているけど・・・ドリルは、どうして?」

 「生命体に、なぜドリルが付いているの?」

 「あれは、ATフィールドを変質させたものと思われます」

 「器用ね」

 「ドリルの直径は17.5m」

 「天井を突き破るのは明日12時06分54秒」

 「あと、10時間足らず」

 

 

 発令所

 「ドリルが第一装甲板を突破」

 「初号機は?」

 「胸部第三装甲板まで溶かされている」

 「あと三秒で装甲板が全て突破されていたわね」

 「三時間後に換装終了です」

 「零号機は?」

 「最終微調整に時間がかかりますが再起動は、問題ありません」

 「動かせても実戦は、無理か」

 「初号機のパイロットは?」

 「身体は、異常ありません」

 「神経パルスが0.8上昇していますが許容範囲以内です」

 「状況は芳しくないわね」

 「白旗でも上げますか」

 「その前にできること、やらないとね」

  

  

 NERV総司令官公務室

 巨大フロアは、四面のうち三面が一枚の巨大ガラスで囲われ、

 ジオフロントが見渡せた。

 ミサトの正面に巨大なテーブルが置かれ、

 ゲンドウの側に冬月が立っている。

 「・・・目標の射程外、超長距離からの直接射撃かね」

 「そうです。目標のATフィールドを高エネルギー集束による一点突破です」

 「マギの判断は」

 「賛成2、条件付賛成1です。勝算は7.8パーセント」

 「低いな」

 「もっとも高い数値です」

 「反対する理由は無い」

 「やりたまえ。葛城一尉。根回しはしておく」

  

 

 化粧室

 「しかし、随分な作戦を立てたものね。葛城作戦部長さん」

 「残り9時間で、実現可能で、もっとも有効な作戦よ」

 「でもね。そんな大出力に耐えられるポジトロンライフル無いけど」

 「NERVに無いから、借りるわ」

 「・・・まさか」

 「戦自研の試作品」

  

  

 戦自某研究施設

 ミサト は、日本政府の判子が押された徴用証を突きつけ、

 「・・・以上の理由で、この自走陽子砲は、本日15時を持って、NERVの管理下」

 「徴用いたします」

 ミサトの敬礼。

 軍人と白衣の技術者たちは、しどろもどろで

 「し、しかし、かといって。そ、そんな・・・・」

 「可能な限り原形を留めて返却するよう努めますので」

 「ご協力感謝します」

 「いいわよ、レイ、持って行って」

 零号機がサイロの天井を剥がし、中のモノを取り出す。

 軍人たちは青ざめ、返却に関する文節を探す。

 「レイ。精密機械だから、そっとね♪」

  

 NERV工場

 けたたましい騒音が続く工場の中、

 ミサトと日向

 「しかし、ATフィールドを貫くエネルギーの算出量は6千億kw」

 「それだけの電力はどこから集めるんです」

 「日本中。難しくないはずよ。日本の総発電量は1兆kwを越えているから」

 「常温伝導システムが出来上がっていて、良かったです」

  

 テレビ画面

 “番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝え致します”

 “今夜午後11時30分より、明日未明にかけて、全国で大規模な停電があります”

 “皆様のご協力をよろしくお願い致します・・・・・”

 

  

 管制室

 「・・・第7装甲板を突破されました」

 「進捗状況は?」

 「予定より3.3パーセント遅れています」

 「本日23時30分までに準備できます」

 居並ぶ送電鉄塔、

 森や街中を走る電源コードの束、

 巨大なドラム型コンセント。

 工事の音が続く。

 「ポジトロンライフルは?」

 「技術開発部第3課の意地にかけても、あと3時間で形にして見せます」

 「防御は?」

 「盾。SSTO(スペースシャトル)の底部。17秒もつわ」

 「狙撃地点は?」

 「目標との距離、地形、手ごろな変電設備を考えると双子山ですね」

 「作戦開始時刻は明朝午前零時」

 「以後、本作戦をヤシマと呼称します」

 『あとは、パイロットの問題か』

 カプセルの中のシンジがボーと眼を覚ます。

 「初号機パイロットが気付きました」

 「検査数値に異常ありません」

 「では作戦通りに」

 『でも、彼。もう一度乗るかしら・・・・・・』

 「ヤシマ作戦の準備、急いで」

  

  

 ベットで眠っていたシンジは、ドアの開く音で眼を開けると、

 食事をワゴンに載せたレイが入ってくる。

 「・・・綾波」

 「明日午前零時より発令ヤシマ作戦のスケジュールを伝えます」

 しら〜

 「碇、綾波の両パイロットは、17時30分、ケイジに集合」

 「18時00分、エヴァンゲリオン初号機、及び零号機、起動」

 「18時05分、出動。同30分、双子山仮設基地に到着」

 「以降別命あるまで待機。明日0時00分、作戦開始」

 「・・・・」

 シンジは冷めた表情で聞く、

 「これ新しいの」

 レイは、プラグスーツが入った袋を放る。

 「寝ぼけて、その格好で来ないでね」

 シンジは、全裸であることに気付く。

 「ごめん」

 慌ててシーツで隠した。

 「昨日から謝ってばかりだ」

 「これ食べて」

 「なにも食べたくない」

 「60分後に出撃よ」

 「また、あれに乗らなければならないのか?」

 「ええ、そうよ」

 「僕は・・・いやだ」

 「乗らないの?」

 「綾波は、まだあれに乗って怖い目にあってないから」

 「そんなこと言えるんだ・・・・」

 「・・・・」

 「もう、あんな思いしたくない」

 「じゃ 寝ていたら」

 「寝ていたら。って・・・」

 「初号機には、私が乗るわ」

 「・・・・・」

 「赤城博士が初号機のパーソナルデータ書き換えの用意もしているから」

 「リツコさんが?」

 「じゃ 葛城一尉と赤木博士がケイジで待っているから」

 「あ、ちょっと」

 「さようなら」

 「・・・・」

  

  

 『本日休校』

 と書かれた看板。

 トウジとケンスケ、ほか三十数名が学校の屋上にいた。

 「えらい遅いな」

 「もう避難せんとあかん」

 「また同じ目にあったらシンジに合わせる顔が無い」

 「親父のデータを見たんだ」

 「この時間に間違いないよ」

 「せやけどな」

 山から一斉に鳥が飛び立ち、

 山の斜面がスライドして発進口が現れる。

 「山が動きよる」

 「エヴァンゲリオンだ」

 「ふっ 昔のロボット物みたいな出撃だな」

 夕陽をバックに初号機が現れ、零号機が続き、

 屋上から声援が上がる。

  

  

 双子山。

 電源関係の車両。

 電源コードの束。

 冷却装置、変圧器が山腹から山頂まで埋まっていた。

 「ドリルが第17装甲板を突破」

 「本部到達まで3時間55分」

 「第6変圧器四国エリアの通電完了」

 「各冷却システム正常」

 最終放電装置の側に初号機、零号機、陽電子砲、盾が置いてある

 「では、本作戦における各担当を伝達します」

 「シンジ君」

 「はい」

 「初号機で砲手を担当」

 「はい」

 「レイ」

 「はい」

 「零号機で防御を担当」

 「はい」

 「シンジ君と初号機のシンクロ率が高いのが理由よ」

 「今回の作戦は、精度の高いオペレーションが必要なの」

 「陽電子は、地球の自転、磁場、重力の影響で直進できないわ」

 「その誤差を修正して、このコア一点のみ正確に貫く」

 「そんな、練習したことありません」

 「大丈夫」

 「あなたは、マギの誘導に従ってターゲットスコープのマークが揃ったとき」

 「スイッチを押せばいいの」

 「後は、機械で、やってくれる」

 「それから、一度発射すると」

 「冷却、再充填、プラグ交換で次に撃つまで時間がかかるから」

 「じゃ もし、外れて、相手が撃ち返してきたら?」

 「余計なことは、考えないで一撃で撃破することを考えなさい」

 『大ピンチじゃないか』

 「私は・・・」

 「私は、あの盾で初号機を守ればいいのね」

 「そうよ」

 「わかりました」

 「時間よ。二人とも着替えて」

 「はい」

  

  

 仮設更衣室、

 カーテンだけで更衣室が仕切られていた。

 シンジとレイのシルエットがカーテンに映って重なる。

 キチンと畳まれた制服と、

 無造作に脱ぎ捨てられた制服は、二人の性格を現わしていた。

 スイッチを押すとプラグスーツが体にフィットし、

 シンジは、気持ちの悪さに顔をしかめる。 

 「・・・これで、死ぬかもしれないね」

 「どうして、そんなこというの?」

 「・・・・・」

 「あなたは死なないわ」

 「・・・・・」

 レイがスイッチを押すとプラグスーツが体にフィットする

 「私が守るもの」

  

  

 衛星軌道上からの見ると日本列島から明かりが消えていく。

 暗闇に包まれた第三東京市の上に第5使徒が浮かび、

 避難所の非常灯が人混みを灯していた。

 

 最上段にシンジとレイがいた。

 風が流れ。

 綺麗な満月と、天の川が輝く。

 二人の横に初号機と零号機

 「綾波は、何故これに乗るの?」

 「絆だから」

 「絆?」

 「そう・・・絆」

 「お父さんとの?」

 「みんなとの」

 「強いんだな・・・綾波は」

 「わたしには、他に何もないもの・・・」

 「他に何もないって」

 「時間よ。行きましょう」

 

 レイが満月をバックに立ち上がる

 「じゃ、さよなら」

 「・・・・・」

  

  

 指揮車両で時間を見る日向

 「作戦、スタートです」

 「シンジ君。日本中のエネルギー、あなたに預けるわ・・・」

 「がんばってね」

 「・・・はい」

 「第一次接続開始」

 「第1から第803区まで送電開始」

 うなりを上げる変電設備。

 跳ね上がっていくメータ類

 「電圧上昇。圧力限界へ」

 「冷却システム、出力最大」

 「陽電子流入。順調です」

 「第二次接続」

 「加速器、運転開始」

 「第三次接続、完了」

 「全電力、陽電子砲へ」

 「最終安全装置解除」 ミサト

 「撃鉄起こせ」 日向

 「地球自転誤差修正。プラス0.00009」

 「電圧、発射点へ上昇中。あと15秒」

 カウントダウン始まる

 「目標に高エネルギー反応!」 日向

 「何ですって」 リツコ

 「発射!」 ミサト

 シンジがスイッチを押すと陽電子砲が発射され、

 同時に使徒の荷粒子砲が発射される。

 双方のエネルギーは、すれ違いざまに干渉し合い。

 互いに螺旋を描きながら、

 反発するように弾道が左右に分かれて山を削りとって爆発し、

 閃光と爆風は、木々を引き倒し、土砂を戦場に降らせていく。

 「ミスった?」

 「再装填、急いで!」

 「シンジ君、移動して」

 初号機は山腹を移動し、

 陽電子砲につなげられているコードを引き摺られていく。

 初号機がレバーを引くとプラグが排出され、

 カートリッジプラグが自動装填される。

 「再充填まで、19秒」

 「目標にエネルギー反応!」

 「まずい! 向こうの方が早い」

 シンジの眼に激しい閃光が入り、光の中央から影が現れる。

 盾を構えた零号機が荷粒子砲を防いでいた。

 「綾波!」

 零号機の持つ盾がゆっくり融解し、

 再充填のカウントダウンが始まる

 「綾波!!」

 「零号機の正面にATフィールド発生!」

 「レイ?」

 「いえ、発生源は、初号機です」

 「シンジ君が・・・」

 2秒足らずでATフィールドが破壊され。

 手を広げて初号機を庇う零号機に盾を融解させた荷粒子ビームが直撃した。

 と同時にカウントダウンが、ゼロ。

 「シンジ君。第2射! 早く」

 シンジがスイッチを押す。

 陽電子砲の光の束がATフィールドごと第5使徒を貫き、

 第5使徒は、傾き、大地に崩れ落ちる。

  

  

 「綾波! 綾波!」

 シンジは、倒れ込んだ零号機のエントリープラグを引き抜き、

 下に降ろすと、初号機を飛び出した。

 零号機のエントリープラグから湯気が立ち昇り、

 湯気の熱気が辺りに立ち籠もっていた。

 シンジが高温のハッチを掴むと

 プラグスーツが焦げ、掌が焼けるように痛む。

 それでも、そのまま、ハッチを抉じ開け、

 プラグ内を覗き込んだ。

 「綾波! 綾波!」

 ぐったりしていた綾波は目を覚まし、

 ゲンドウと思った姿はシンジへと変わっていく。

 「・・・自分には、他に何もないなんていうなよ」

 「別れ際に、さよならなんていうなよ」

 「・・・なに、泣いているの・・・?」

 「・・・・・」

 「・・・ごめんなさい」

 「こういうとき、どういう顔すればいいのか、わからないの」

 「笑えばいいと思うよ」

 涙で濡れたシンジが、碇司令の顔とダブり。

 レイの表情は、ゆっくりと微笑みに変わっていく。

  

 

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第03話 『綾波レイと・・・・』
第04話 『笑えばいいと思うよ』
第05話 『誕生日?』
登場人物