配送屋が家具の運び入れと設置。
シンジも少し手伝う。
レイの部屋が見違えるようになってシンジもホッとする。
レイは、なんの感慨もないのか、無表情だった。
第06話 『人の造りしもの』
NERV総司令公務室
ゲンドウ、電話の男
「・・・また君に借りができたな」
『返すつもりはないんでしょ』
『で、どうです。例のモノ・・・こっちで、手を打ちましょうか?』
ゲンドウは資料、設計図を見ていた。
「いや、手は打ってる・・・期待外れだな」
ゲンドウは、資料を廃棄する
『では、シナリオ通りに』
中学校
窓際のトウジが最初に気付いた。
真っ赤なルノーが、ドリフトしながら校内の駐車場に滑り込む。
「ケンスケ、下を見ろよ」
学校中の注目を浴びながら、スーツを着たミサトが颯爽と降り立つ。
ケンスケは、いつの間にか、カメラを向けている。
おおおおおぉぉぉっ!!!!
男子生徒の雄叫び。
女子生徒が無節操な男子の性に呆れ。
「ぅ・・・ミサトさん・・・」
シンジがガックリと呟く
「カッコ良い! 誰、あれ」
「碇の保護者?」
「何だと〜 碇。あんな美人に保護されているのか、おまえは!」
「やっぱ、凛々しいな。ミサトさん」
トウジがニヤニヤと見つめ、
ケンスケが、カメラを回す。
二人とも第4使徒の処理を陣頭指揮していたミサトとリツコを見ていた。
散々、怒られたはずなのに男の性は、たくましい。
「ふう〜ん」
シンジは、あくまで客観的。
「天は、二物を与えずというが、才色揃って完璧や、NERV作戦部長や」
ケンスケが、うんうんと頷く
「そうかな?」
シンジは、リツコさんの話しから、ミサトさんの生活能力を疑っている。
「えかったな。シンジが、お子ちゃまで」
「まぁ 敵じゃないのは確かだな」
「ははは」
「ああいう人が彼女やったらな・・・」
「苦労するかも」
「わかってないね。せんせ」 ケンスケ
「・・・?」 シンジ
「よっしゃあ。地球の平和は、おまえに任せた」
「だから。ミサトさんは、わしに任せい」
NERVのケイジ。
シンジ、ミサト、リツコ、伊吹、日向、レイが昇降機で移動する。
『地球の平和か。そのためのエヴァ。エヴァって何だろう』
『血の匂いのするエントリープラグ』
『なのに、どうして落ち着くんだろう』
『結局、僕は何もわかっていないんだ』
「・・・リツコさん」
「なに? シンジ君」
「使徒は、どこから来るんですか?」
「わからないわ」
「でも、40億年前のファーストインパクトか」
「セカンドインパクトの衝撃で、地球上に使徒の種子が蒔かれたと考えられている」
「活動を始めると急速に肉体を自己増殖して、向かってくる」
「なにを食べたら、あんなに大きくなるんですか?」
「たくさん食べないと、生きていけませんよね?」
「使徒のエネルギーは、スーパーソレノイド機関」
「通称、S2機関を使っていると考えられている」
「でも、どれほど効率良く融合分裂させても熱力学上の矛盾を克服してない」
「入力より、出力が大きく、別の次元でエネルギーを供給されている」
「意外と短命なのか、不明」
「単純にエントロピー、熱力学の法則を超えた存在と考えていいわね」
「・・・・・」
「仮定として、種子がコアをプラスにして形成」
「周囲の素粒子を直接、ATフィールドで連結」
「マイナスの肉体として組成させているのか・・・」
「そうなると素粒子を連結させるエネルギーは、なにか・・・・」
「コアを破壊したのにどうして肉体が残っているのか、袋小路に入っていくわけ」
「どうして、リリスを目指すんですか?」
「完全体なら何も必要なものは、無いんじゃないですか?」
「死海文書から推測すると使徒はリリスと融合し」
「人類を滅ぼすサードインパクトを起こすようにプログラムされている」
「完全体というのは、人間側の価値判断なの・・・」
「完全な個体に見えるけど神と付ける気にはなれない」
「それで神から使わされた使徒」
「悪魔のようにも見えますけど」
「デビル初号機だと乗りたくないでしょう」
「そ、それは、そうですよ」
「悪魔の業と思うか、神の試練かと思うか、人間側の考え方しだいね」
「神の試練でいいです」
「「「「・・・・・・」」」」 ミサト、リツコ、伊吹、日向
「委員会がごねているというのは、本当ですか?」 日向が尋ねる。
「予算のことならいつものことでしょう」
「第5使徒を片付ける予算すら、予備費から出していたもの」
「せ、せこ〜い・・・・予備費ってエヴァの年内維持費の上澄み分ですよね」 伊吹
「それだって、委員会がぶつぶつ言っていたらしいけど」
「人類の命運を賭けているといっても、予算は決まっているんですね」 伊吹
「しかたがないわよ。人はエヴァだけで生きているわけじゃないから」
「じゃ・・・司令は?」
「予算交渉」
「機上の人よ」
「予算を取ったら、何万人が殺し合うか、餓死することになるでしょうね」
成層圏、SSTO
「・・・失礼。ここ、よろしいですか」
中国系の男に、ゲンドウが頷く
「サンプル回収の予算。通りそうですか?」
「サンプル回収で得られる利益が大きくても無い袖は振れんさ」
「どこかの国で経済が停滞するでしょうな」
「何人死ぬか、最近は調べる気にもなれんよ」
「アメリカを除く全ての理事国がエヴァ6号機の予算を了承しました」
「アメリカも時間の問題だろうな」
「三号機、四号機のあと何もしなければ、最優秀技術者を失業させることになりますからね」
「君の国は?」
「8号機から参加させてもらいます」
「わが国は、セカンドインパクト以降、落ち目でした」
「しかし、これを機会に未知のテクノロジーと接触したいものですな」
「使徒を倒す以外に人類に生きる道は無い。可能なら人類の総力を挙げたい」
「利害が一致していれば好きなだけ、協力いたしますよ」
「サードインパクトの中心が第三東京市ともなれば、わが国の存亡と直結ですからね」
「それに比べ、南半球開発機構の合衆国は、分担区の南米パタゴニア」
「欧州連合は、南アフリカに避難地を建設予定です」
「わが国には逃げ道がない。ご存知ですよね」
「いまのところ、許容できる予算だが避難都市建設の信望者が集まる前に潰しておきたい」
「どちらにせよ。南半球開発機構の最後の足掻きでしょう」
「・・・バカな連中は、どこの国にもいる」
「正確に敗北主義者とか、臆病者とか、誤解されないように言うべきでは?」
「ふ 問題ない」
NERV自動通路
「えっ じゃあ、南極大陸が蒸発したセカンドインパクトって・・・・・」 シンジ
「学校の教科書は、巨大隕石の落下による大惨事になっているけど」
「事実は往々にして隠蔽されてしまうものなの・・・」
「15年前、人類は巨大な人型の物体を二つ発見」
「これが、リリスと第一使徒のアダム」
「そして、もうひとつ、あったわ」
「リリスの絶対位相圏と使徒の位相空間壁のATフィールドを破壊するロンギヌスの槍」
「・・・に書かれた文字を解読したのが死海文書」
「・・・・調査中に原因不明の爆発。これが、セカンドインパクトの正体」
「でも、死海文書の解読から使徒襲来とサードインパクトが予測されたの」
「じゃ 僕らのやっていることは・・・」
「予測されるサードインパクトを防ぐため」
「そのためのNERVとエヴァンゲリオン」
「シンジ君のお父さんがいなかったらNERVも、エヴァも、マギも、形になっていなかった」
「そうなったら最初の使徒の襲来でサードインパクト。人類は滅びていたの」
「・・・・・・」
「わたしも手伝っていたけど、なかなか、一人で、できることじゃないのよ」
「父親としては、失格だったかもしれないけど・・・」
「少しは、父親を尊敬できるようになったかしら」
「・・・はい」
「「「「・・・・」」」」 シンジ、レイ、リツコ、ミサト
「ところで、ミサト。あれ、予定通り明日やるそうよ」
「わかったわ」
「シンジ君、レイ。明日も休みだから、デートでもしたら」
ミサトの言葉でシンジが真っ赤。
レイは、無表情。
「ミ、ミサトさん・・・・」
シンジは慌てる。
「はい」
レイは、命令と受け止める。
「・・・・・」 シンジ、ミサト、リツコ
『・・碇君。どこ行くの?』
ミサトがシンジの耳元でニタニタと笑う。
『最近の二人の行動は、保安局から報告書を楽しく読ませてもらっているけど』
リツコも面白がる。
シンジは、わなわなと赤い顔してうつむく。
年頃の少年にとってプライバシーの欠如は、深刻だった。
『何なら、お姉さんが良いところ教えてあげようか。リードの仕方とかも』
「結構です!」
NERVからの帰り。
シンジは、ミサトに 『結構です!』 と言ったものの困っていた。
レイがデートで何か知っていると思えない。
かといって、レイが「はい」と返事していて、デートしないわけにもいかない。
追い詰められたシンジは、ミサトの軽はずみな一言にムッとしつつ、
なぜか嬉しく、貧相貧弱な頭脳を総動員してデート先を模索する。
『デートって、キ、キスとか、できるのかな』
『いや、綾波が許すわけ無いよ』
『でも、どこに行こう。やっぱり、ミサトさんに聞けばよかったかな』
『明日だから、家に着く前に考えないと』
『でも、リードって、どうやったらいいんだろう・・・』
『やっぱりミサトさんに・・・』
『でも面白がっているから、信用しないほうがいいよ』
『キス・・・できたら、嬉しいんだけどな・・・』
『駄目だろうな・・・というか保安部員が見張っているのにキスできないよ〜』
『あああ・・・どこに行こう』
『遊園地かな。動物園・・・』
『第三東京市から離れちゃ駄目なんだよな・・・そうだ・・』
「碇君・・・走りましょう」
レイが、不思議そうな顔をして覗き込んでいる。
いつの間にかNERVの外に出ていた。
「あ、ごめん・・・・走ろう」
翌朝。
シンジは、レイを誘って、芦ノ湖、湖岸の博物館へ行く。
レイは、黒と緑を基調にしたブラウスとスカート。
セカンドインパクト以前の日本の文化遺産や四季、歴史が二人の前に映し出される。
この時代、自分が動くよりも立体映像が迫ってくるタイプが多い。
それでも、こちらが速めに歩けば早く終わることもできる。
早めに回ったシンジとレイは、3Dではなく。
博物館近くの大迷路を1時間半かけて脱出。
公園で休む。
「・・・思ったより、迷っちゃったね」
「そうね」
レイがなんとなく嬉しそうに答えるとシンジも嬉しくなる。
「弁当作ってきたんだ」
シンジは、作ってきた弁当を渡した。
「あ、ありがとう。碇君」
レイが驚く。
「こっちに来る前、食事とか作っていたから、料理は慣れているんだ」
二人は、公園のテーブルに座って弁当を広げる。
「美味しい」
「材料にこだわらなくても、丁寧に時間と手間を惜しまなければ、美味しく作れるよ」
「美味しい」
「本当は、もっと勉強して、綾波と、もっと良い高校に行きたいんだけど。ごめんね」
「僕の学力合わせられるなんて」
「気にしなくていい。わたしには、どうでもいいことだから」
シンジは、真剣に勉強しようと思った。
遠くからVTOLの爆音が近付いてくる。
旧東京
海上にインテリジェントビルの廃墟が点々と建っていた。
重戦闘機に乗ったリツコとミサトが、見下ろす。
「ここが、かつての花の都か」
「ミサト。見えたわよ」
埋め立てられ再開発されつつある区画に巨大な箱状の建物が見えた。
「戦自も絡んでいるのよね」
「表には、出ていないわ」
「基本的にエヴァ関連から爪弾きにされた保守系の企業群よ」
「どうりで好きにやっているわけね。既存の技術なら人型にこだわる必要なんて無いもの」
「でも技術的な交流はあるかも」
「戦自のトライデント空中巡洋艦は、まだ詳細が伝わっていないから」
「既成技術の集大成か、人類の技術の上限がわかるのね」
「フン! 負け犬の遠吠えが聞こえるわ」
実験場
そびえ立つ巨大格納庫。
壁には、各国の旗。企業のマーク、ロゴ。
政府要人、各国代表、政財界の幹部が集まっていた。
『祝 JA完成披露記念会』
壇上に40代の時田会長が立ち見下ろしていた。
中央の何もないテーブルは、リツコとミサトしかおらず。
周りのテーブルには、たくさんの関係者が席について、多くの料理が並べてある。
NERVに対する非主流業界のやっかみと妬みの大きさ。
「本日は、お忙しいところ」
「我が時田重工業が誇る新製品の実演会にお越しいただき、誠にありがとうございました」
「後ほど、管制室に席を移し実機をご覧頂きますが、ご質問のある方は、この場でどうぞ」
「はい」
リツコが、間髪入れずに手を上げる。
「これは、NERVの赤木リツコ博士。お越しいただいて光栄の至りです」
「質問を、よろしいでしょうか」
「ええ、ご遠慮なくどうぞ」
「先ほどの説明ですと、内燃機関内臓とありますが」
「ええ、本機の大きな特徴です。連続150日間の作戦行動が保証されております」
「しかし、格闘戦を前提にした陸戦兵器にリアクター内蔵は、リスクが大きいと思いますが・・・」
「5分も動けない決戦兵器よりは、役に立つと思いますよ」
「遠隔操作では、緊急対処に問題を残します」
「パイロットに負荷をかけ、精神汚染を起こすよりは、より人道的と思います」
『よしなさいよ。大人気ない』
「人的制御の問題もあります」
時田は、極秘と書かれたNERVの文書を公開する。
ご丁寧に大モニターに暴走中の零号機、初号機が映し出される。
「制御不能に陥り、暴走を許す危険極まりない決戦兵器よりは、より安全だと思いますよ」
「制御できない兵器など、ヒステリーを起こした女性と同じですよ。手に負えません」
会場にわく冷笑。まったく気にしないリツコ
「そのための、パイロットとNERVです」
「まさか “科学” と “人の心” があの化け物を抑えるとでも・・・・本気ですか?」
「ええ、もちろんですわ」
「人の心などと曖昧なものに頼っているから、NERVは先のような暴走を許すのですよ」
「その結果、国連は莫大な追加予算を迫られ」
「某国で2万人の餓死者を出そうとしているのです」
「良かったですね。NERVが超法規にて保護されていて」
「あなた方は、その責任を取らずに済みますから」
「何とおっしゃられようと、NERVの主要兵器以外、あの敵性体を倒せません」
「ATフィールドですか。それも今では、時間の問題に過ぎません」
「いつまでも、NERVの時代ではありませんよ」
ホールに響く笑い声。
耐えるリツコの手に持っているパンフレットが震え。
すまし顔のミサトがストローを加えている。
控室
ミサト、リツコ
丸められてゴミ箱に突っ込まれるパンフレット。
ミサトがロッカーを蹴って破壊。
「けっ! ったく、俗物どもが!」
「どうせ、うちの利権にあぶれた連中の腹いせでしょ!」
「ハ・ラ・立つわね〜」
「およしなさいよ。大人気ない」
怖い眼をしたリツコがパンフレットに火をつける。
「自分を自慢して、褒めて貰いたがっている。たいした男じゃないわ」
「でもなんで、あいつらがATフィールドまで知ってんのよ!」
「極秘情報が、ダダ漏れね。諜報部は何やっているのかしら」
スライドしていく建物。
中から陽光に輝く巨大ロボットが現われる。
半地下状のトーチカの中でJAを見守る一同。
むっ!
としているミサトとリツコ
「これより、起動テストを始めます」
「なんら危険は伴いません。そちらの窓から安心してご覧ください」
みんな一斉に双眼鏡を覗き。口々に賛辞の声が上がるが、ミサトとリツコは憮然。
「テスト開始」
時田が宣言すると二足歩行を始めるJA。
おおおおぉぉ!!!
と感嘆の声が上がる。
自信に満ちた時田。
「へ〜ぇ ちゃんと歩いているじゃない」
「自慢するだけは、あるようね」
ラジオ体操を始めるJAに一同が感心する
突然。鳴り響く警報音。
「何だ!! どうした?」
「・・・変です。リアクターの内圧が上昇しています」
「一次冷却水の温度も上昇中」
「減速材は」時田
「駄目です。ポンプ出力低下!」
「そんなバカな・・・」
まっすぐ、トーチカに迫るJA
「いかん! リアクター閉鎖。緊急停止!」
「停止信号、発信しました」
「受信されません」
「無線回線も不通です。制御不能」
目前に迫るロボット
うあああああああぁぁぁぁ!!
踏み潰されるトーチカ。
暴走するJA。
半壊したトーチカ。
瓦礫の一部を押し退けて顔を出したリツコとミサトがしばらく咳き込む。
「作った人と同じくらい礼儀知らずね」
リツコが髪に付いた埃を払う。
「・・・・加熱器に異常発生」
「制御棒、作動しません」
「このままでは、炉心が融解します」
「そんなバカな!」
「JAは、あらゆるミスを想定し、全てに対処すべく、プログラムが組まれているのに」
「このような事態はありえないはずだ」
「でも、現に炉心融解の危機が迫っているのよ」
「こうなっては、自然停止するのを待つしか方法は・・・・・」
「自然停止の確立は」
「炉心融解前だと0.00002パーセント。奇跡です」
オペレーターが応える
『エヴァの起動確率より高いわね』
「・・・奇跡を待つより、捨て身の努力よ!」
「方法は、全て試した」
「いいえ、全てを白紙に戻す最後の手段が残っているはずよ。そのパスワードを教えなさい」
「全プログラムのデリートは最高機密。わたしの管轄外だ。口外の権限はない」
「だったら、命令を貰いなさい! 今すぐ!」
時田は電話をかける。
「・・・第二東京の万田さんを頼む。そう、内務省長官だ」
どこかの執務室
「・・・・ああ、その件は八杉君に任せてある。彼に聞いてくれ」
ゴルフ場
「・・・そういう重要な決定事項ではね。正式に書簡で回してもらえる?」
苛立つ時田。
「・・・たらい回し、か・・・・ふっ」
ミサトは、身に覚えがあるのか、何か思い出したのか、苦笑い。
事務屋と実務屋の確執と責任回避は、古今東西、共通なのだろう。
「いまから、命令書が届く。作業は正式なものだ」
時田は、何度も、電話をかけなおして、言った。
「そんな間に合わないわ! 爆発してからじゃ、何もかも遅いのよ!」
廃墟の街を進むJA
「JAは、厚木方面に進行中」
新たな警報音がなり、赤ランプが増える
「時間が無い。これより先は、わたしの独断で行動します」
控室
ミサトは、着替えながら電話中
「あ! 日向君。厚木に話しつけておいたから、シンジ君をF装備で、こっちによこして」
「そ! 緊急事態!!」
「無駄よ! やめなさい、葛城一尉。第一、どうやって止めるつもりなの?」
「人の手で、直接」
放射線防護服を着るミサト。
半壊したトーチカ。
呆然としている時田。
防護服を着て立っているミサト。
着陸してくる巨大な輸送機。
「本気ですか?」
「ええ」
「しかし、内部は放射能が充満して危険すぎる!」
「うまくいけば、みんな助かります」
沈黙する時田。コントロール室の電源が落ちる。
「ここの指揮信号が切れるとバックパックから内部に入れます」
「希望」 時田
「え?」
「原子炉の強制停止パスワードだ」
「ありがとう」
「・・・・・頼む」
離陸する輸送機。
防護服のミサト。
プラグスーツのシンジ。
コンソールを見ている日向
「目標はJA。炉心融解の可能性があります」
「ですから目標をこれ以上、人口密集地に近付けるわけに行きません。シンジ君」
「はい」
「目標と併走し、わたしをJAの背中のデッキに」
「以後は、目標の移動を可能な限り止めて」
「の、乗るんですか? ミサトさんが?」
「そうよ」
「そんな無茶な」
「無茶は承知よ。他にベターな方法がないの」
「でも危険すぎますよ」
「いいの、やれることやっておかないと、後味、悪いでしょう」
「・・・・・」
「ごめんね。シンジ君、デートを邪魔して」
「・・・そ、そんな。デートなんて」
「でっ どこまで行ったの?」 ニタニタ
日向も興味深そうにニヤリとする
「・・・な、何で、そういう話になるんですか」 赤くなる
「二人とも幸せになって欲しいからよ」
「そ、そういう風に思っているように見えません」
「目標まで、5分」 日向
「じゃ シンジ君。エントリープラグに」
「はい」
JAは、長い影を引きながら歩いていた。
「さあ、行くわよ」
「日向君・・・エヴァ切り離しの後は、すみやかに安全高度まで上昇して」
「了解」
後方からJAに接近する巨人機。
「15秒前から切り離し最適点まで秒読み始めます」
初号機が切り離され、JAと併走。
初号機の右手に乗るミサト。
「このまま乗り付けて」
ミサトがリアクターの非常口のベランダに降ろされ、
「ミサトさん、気をつけて」
Vサインのミサト
「凄い熱。急がないと不味いわね」
ミサトが呟く。
初号機が前方に回り込んでJAを止める
「止まれ」
ミサトは、ハッチを蹴り開け、手動制御室に入る
「ここね」
コンソールに取り付いてパスワードを入力、実行。
エラー表示
「何よ、これ」
ミサト。日本語、英語、ドイツ語で入力するが全てエラー。
「・・・プログラムが変えてある」
JAのパイプが破裂して冷却水と水蒸気が噴出す。
シンジは、慌てて塞ぐ。
「ミサトさん! 急いで。冷却水が噴出した」
ガンッ!!
JA内部で破砕音
外では、違う場所から冷却水が噴出し、初号機が手で塞ぐ
「駄目だ」
トーチカで映像を見ている時田が呟いた。
ミサトが、満身の力を込めて制御棒を押す。
「ミサトさん。逃げて!」
「エントリープラグの中なら助かる」
さらに冷却水と水蒸気が噴出す。
塞ぐ手はない
ミサトが、制御棒を押す。
「動けっ! このぉおおおおお!」
少しずつ制御棒が押し込まれる
次の瞬間。
制御棒がいきなり入って、原子炉が停止。
トーチカで歓声が上がる
「馬鹿」 リツコが呟く
「助かった」
時田の下に命令書が届くとコンソールに放り投げる。
「ミサトさん! 大丈夫ですか? ミサトさん」
「ええ、サイティ〜 だけどね」
「良かった。僕、見直しました。ミサトさん。やっぱり奇跡は起きたんですね!」
「ええ」
『奇跡は用意されていた。誰かにね・・・ったく』
ミサトの脳裏にゲンドウとリツコの顔が浮かぶ
NERV
総司令官公務室
ゲンドウ、リツコ、諜報員
「・・・葛城一尉の行動以外は、シナリオ通りです」
「ご苦労」
「結果的には、こちらの印象がよくなって、良いのかもしれません」
「仮にわかったとしても、JAの不信は大きすぎて、予算は出ないでしょう」
「そうだな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第05話 『誕生日?』 |
第06話 『人の造りしもの』 |
第07話 『アスカ襲来』 |
登場人物 | |||