月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

     

 「・・・葛城一尉の行動以外は、シナリオ通りです」

 「ご苦労」

 「結果的には、こちらの印象がよくなって、良いのかもしれません」

 「仮にわかっても、JAの不信は大きすぎて、予算は出ないでしょう」

 「そうだな」

  

第07話 『アスカ来襲』

  

 学校の昼休み

 トウジとケンスケが、ミサトの写真を販売中。

 シンジが、ぼんやりと写真を見るとプールの写真もある。

 肖像権とか、盗撮とか、いくつか、法律を犯している気がする、

 とはいえ、シンジは、詳しくないので黙っている。

 「いつ撮ったの? このプールの写真」

 「セットしていたのさ」

 「赤外線スコープの反応で目標が入ると自動シャッターで写る。アリバイは確かだ」

 自信満々に言われて “現行犯で捕まれば、同じだよ” と言えないシンジ。

 「ただ、美女だけとは行かないから。それが難点だけどな」

 「欲しいのがあるのか、綾波のもあるぞ」

 「えっ でも」

 「お子様やな」

 「しかし、深い仲になっているのは確かだな。これを見ろ」

 ケンスケが学校の端末で生徒のプロフィールを引っ張り出した。

 綾波レイの生年月日が、2000年06月06日になっている。

 「綾波の生年月日。シンジと同じ生年月日で申請されている」

 「以前は不明だったのに・・・良かったな、シンジ」

 動揺するシンジ

 「ほう・・・シンジ。おまえ、綾波と何かあったんやないか」

 シンジは首を振る

 「まあ、ええ、こっちは、ミサトさんが本命や」

 ケンスケも頷く

 「売れ行きは、最高だな」

 次々に印刷され、男子生徒が購入していく。

 「確かにミサトさんは、カッコいいと思うけど・・・」

 シンジは、写真を見て認める。

  

  

 NERV最高司令官公務室

 ゲンドウ、冬月

 「そうだ、その問題に関しては、すでに委員会と政府で話しが付いている」

 ゲンドウが受話器を置く

 「悪巧みは終わったのか」

 「ああ」

 にやりと微笑むゲンドウ

 「息子とレイ。さらに親密になっているようだが」

 「・・・・」

 「赤木君が、知っていて、制限しないのは、どういうことだ」

 「問題ない、不確定要素には、不確定要素だ」

 「ライバルが女心に火をつけることもある。戦場心理も絡んでくるぞ」

 「不利な要素ではない・・・まだな」

  

  

 大型ヘリが海上を飛ぶ。

 眼下に空母5隻、戦艦4隻、巡洋艦7隻、駆逐艦18隻、輸送船6隻の40隻の大艦隊。

 ミサトの隣でシンジが珍しそうに機動部隊を見下ろしていた。

 「・・・シンジ君。再建された寄せ集めの太平洋艦隊よ」

 「使徒と戦うために艦隊が来たんですか」

 「おもちゃの艦隊よ」

 「戦いに来たのは、アスカと二号機」

 「プロフィールは読んだ? 第一印象で、コケないでね」

 「第一印象で、全て決めてしまうような人は、好きになれませんね」

 シンジが冷めたように呟く

 「誰でも過信すると自分の見る眼に盲信してしまうの」

 「シンジ君もアスカの本来の姿を見誤らないでね」

 「間違っても許される年齢ですから」

 「今日は、やけに突っかかるわね・・・シンジ君」

 ミサト、年齢のことを言われてムッとする。

 「人付き合いは苦手ですから」

 「緊張することないわ・・・彼女。シンジ君と正反対の性格だから」

 「フォローになっていません」

 「どうして僕なんです?」

 「女の子同士のほうが上手く行くんじゃないですか?」

 「わたしの直感だと、レイとアスカは犬猿の仲になるわね」

 「シンジ君とアスカは、ベクトルが違うだけで出発点が似ているけど」

 「レイとアスカは、出発点そのものが違うから」

 「そうですか?」

 「レイが新しく来た人と愛想良くふるまえると思う?」

 「・・・・・」

 シンジは首を振る。

  

  

 空母オーバー・ザ・レインボウ

 大型ヘリが着艦し、ミサトとシンジが降りてくる。

 艦載機が並び。

 空母のあまりの大きさに呆然。

 さらに空母の周りを進む戦艦、空母、巡洋艦、駆逐艦・・・

 上空を2機の戦闘機が爆音を立てて、旋回。

 「こんな風に鉄を使って、いいんですか?」

 「木を使ったら、世界中が砂漠になっちゃうでしょう」

 「なるほど」

 「それだけの価値があれば、だけどね」 ため息

  

  

 

 シンジは、ケンスケに見せてやれば喜ぶだろうな、と密かに思った。

 キョロキョロと、珍しそうに辺りを見ていると、

 この場所に似つかわしくない、黄色いワンピースの女の子。

 「ヘロウ。ミサト。元気してた?」

 「ま、ね。あなたも、背、伸びたじゃない」

 「そ。他のところも、ちゃんと女らしくなっているわよ」

 「紹介するわ。惣流・アスカ・ラングレー」

 「エヴァンゲリオン二号機の専属パイロット。セカンドチルドレンよ」

 アスカが勝気そうに微笑む。

 途端に強い風が吹いてスカートがめくれ上がる。

 バシッ〜ン!!

 出会い頭にシンジは、平手打ち。

 「見物料よ。安いものでしょう・・・」

 「初号機専属パイロット。サードチルドレン。碇シンジね」

 頬を押さえるシンジは、呆然としてアスカを見つめる。

 「うん」

 「・・・冴えないやつ」

 「うん」

 シンジは自覚している。

 アスカは、ムッとする。

  

  

 艦橋

 ミサトとシンジは、提督と副官に挨拶すると、

 「・・・おやおや、ボーイスカウトが紛れ込んでいたのかと思ったが、どうやら違うようだ」

 「ご理解していただいて幸いですわ。提督」

 「いやいや、わたしの方こそ。久しぶりに孫のことを思い出せて幸せだよ」

 ミサトが引渡しの書簡を出す。

 「この度は、エヴァ二号機の輸送援助、ありがとうございます」

 「副長。いつから我々国連軍は、宅配屋に転業したのかな?」

 「某組織が結成された後、だと記憶しておりますが」

 「おもちゃをひとつ運ぶのに、たいそうな護衛だよ。太平洋艦隊総揃えだ」

 「エヴァの重要性を考えれば、足りないぐらいです」

 「では、この書類にサインを・・」

 「まだだ」

 「エヴァ二号機及び操縦者は、ドイツのNERV第三支部より、本艦隊が預かっている」

 「君らの勝手は許さん」

 「では、いつ引渡しを?」

 「新横須賀に陸揚げしてからになります」

 「海の上は我々の管轄だ。黙って従ってもらう」

 「わかりました」

 「ただし、有事の際は、我々NERVの指揮権が最優先であることをお忘れなく」

 シンジは、敬礼したミサトのカッコ良さにボーとなる。

 「・・・よ。相変わらず。凛々しいな」

 よれよれのジャケットを着た男が後ろに立っていた。

 「加持センパイ」 アスカ

 「・・・・・」

 軽く手を振っている加持にミサトは、ギョッとすた。

 「加持君。君を艦橋に招待した覚えはないぞ」

 「それは、失礼」

 「では、新横須賀までの輸送をよろしく」

 ミサトは動揺しながら敬礼。

  

  

 艦橋

 「SHIT! 子供が世界を救うというのか。あんな子供に。何かの標語じゃないんだぞ」

 「時代が変わったのでしょう」

 「議会も、あのロボットに予算を出すつもりですから」

 「あんなおもちゃにか?」

 「馬鹿どもめ。そんな金があるなら、こっちに回せばいいんだ」

 提督が苦々しげに並んで進むタンカーを睨みつけた。

  

  

 士官食堂

 ミサト、加持、シンジ、アスカのコーヒータイム

 「・・・なんで、あんたがここにいるのよ!」

 「彼女の随伴でね。ドイツから出張さ」

 「うかつだったわ」

 「十分に考えられる事態だったのに」

 「いま、付き合っているやつ、いるの?」

 「それが、あんたに関係あるわけ?」

 テーブルの下。

 加持の足がミサトの足にチョッカイ。

 ミサトが拒む。

 「あれ? つれないな」

 アスカは、不審そうな視線をミサトと加持に向け、

 シンジは、何も考えず、コーヒーを飲み、サンドイッチを摘まむ。

 「むかしは、嬉しそうに恥らっていたのに・・・・」

 「な・・な、な、な、なに言ってんのよ!」

 『こんなに取り乱したミサトさんは、初めてだな』

 とシンジがぼんやりと考え、

 「碇シンジ君だね」

 「え、ええ・・・・どうして僕の名前を?」

 「そりゃ、知っているさ」

 「エヴァンゲリオン初号機パイロット。碇シンジ君は有名なんだ」

 「・・・・」

 アスカが、むっとする

 「何の訓練もなしにエヴァを動かしたサードチルドレン。世界を救った」

 「!!」 アスカの表情は険悪。

 「いえ。ぐ、偶然です。運が良かっただけです」

 「偶然も才能。運も実力だ。君の自身の価値だよ」

 「・・・・」

 アスカがシンジを睨みつける

 「じゃ また後でな」

 ミサトは、加持の視線と眼を合わせない。

  

  

 通路 アスカと加持

 「どうだ? 碇シンジ君は」

 「つまんない子。あんなのが選ばれたサードチルドレンなんて、チビだし、幻滅」

 「しかし、最初に乗ってシンクロ率41パーセントを超えていた」

 「三人の中では一番高い」

 「ATフィールドも彼しか展開していない。意味はわかるだろう」

 「・・・・」

 アスカの欄干を握り締める手が震える。

 彼女は、シンクロ率を0.1パーセント高めるのに何日も必要としており、

 数字で証明された才能の差を実感できた。

  

  

 士官食堂

  シンジとミサト

 「面白い人ですね。加持さん」

 「むかし、からなのよ。あのぶぁあくわぁ」

 「・・・・・」

 「アスカは、どう?」

 「なんか、元気で振り回されそうです」

 「結果的には、そうなるわね」

 「シンジ君が彼女の本質に気付かない限り」

 「ミサトさんも加持さんと仲よさそうですね」

 シンジが仕返しにニヤリ

 「じょ、冗談じゃないわよ・・・・あんなやつ」

 ミサトは、しまった、と思いながらも言い返す

  

 通路。

 「ちょっと、付き合って」

 アスカに待ち伏せされ。

 引っ張られていくシンジ。

 飛行甲板。

 アスカが流暢な英語でヘリのパイロットと話し、

 アスカとシンジはヘリに乗り込む。

 

 ヘリがタンカーに着艦。

 ドアが開くと照明が付く。

 薄暗い中に赤いエヴァンゲリオン二号機が横たわっている。

 「赤いんだ。二号機」

 「違うのは、カラーリングだけじゃないわ」

 アスカは、何故か、高い場所に立って、見えそうで見えない

 「所詮。零号機と初号機は、開発途上のプロトタイプとテストタイプ」

 「訓練なしのあんたなんかにシンクロするのがいい証拠よ」

 「・・・・・・」

 「けれど、この二号機は違うわ」

 「これこそ、実戦用に造られた世界初の本物のエヴァンゲリオンなのよ。正式タイプのね」

 「・・・・・・」

 突然、衝撃が伝わり、輸送船が揺れる。

 「爆発!」

 「あれは・・・・」

 海上から黒煙が上がり、波紋が広がっていく。

 「まさか、使徒」

 「あれが本物?」

 「どうしよう、ミサトさんのところにもどらなくちゃ」

 「チャ〜ンス!」

   

   

 

 CICのモニターが高速で動く巨大な影を捕らえていた。

 艦隊は、影を包囲しようと回頭し、

 空母から艦載機が発艦していく。

 駆逐艦がソナーで使徒を追跡し対潜魚雷を立て続けに発射していく、

 海面が盛り上がると水柱が吹き上がる。

 数十発の対潜ミサイルが海中に突入して水柱をあげ、

 魚雷が使徒に命中して爆発を起こし。

 海水を含んだ霧が辺り一帯を包み込んだ。

 使徒は、まったく効果がないのか、

 海面に姿を現して軍艦に噛み付いて引き裂き。体当たりでも沈めていく。

 爆発。

 撃沈。

 1隻の駆逐艦が海中から突き破られ、二つに折れて、使徒が出現する。

 待ち構えていた戦艦が主砲を発射。

 戦艦の砲弾が使徒のATフィールドに命中して、閃光。

 音速を超える衝撃が大気を震わせ、

 一瞬遅れて、大音響が響きわたる。

 駆逐艦の爆発と合わさり、衝撃波が海上と艦隊を震わせた。

 使徒は、何事もなく、大瀑布をあげて海中に潜っていく。

 艦載機が発射したミサイルが使徒を追い掛けて、海中に突入。

 さらに別の艦載機が艦隊上空を飛びまわり。

 ソナーや対潜魚雷を投下。

 十数本の水柱が立ち上がっていく。

  

 

 空母 艦橋

 「・・・一体どういうことだ。爆雷も魚雷も命中してるはずだ」

 「戦艦の主砲弾も二発命中した」

 「動きが速いですね、予備の艦載機も発進させたほうが・・・」

 閃光と大音響の爆発。

 金属が、きしみ、捻られ。

 耳障りで不快な断末魔をあげた巡洋艦が沈んでいく。

 「提督。イリノイ。沈没します」

 別の場所で、巨大戦艦の側舷が削られ。

 キールを圧し折られ、艦体が、ねじれ曲がり。

 軋み音を響かせながら自らの重みと水圧で自壊していく。

 戦艦は、海中に潜り込むと爆発し、

 辺り一面に雨を降らし、潮風を含んだ濃霧が覆っていく。

 「随時、対潜魚雷を装備させて艦載機を発艦。輪形陣を崩すなと、各艦に伝えろ・・・・」

 「海中の潜水艦は、敵を捕捉しているのか・・・」

 「CICに弱点を探らせろ・・・」

 「効いてないように見えても金属疲労を起こせば必ず破壊できる」

 艦長の声が少しずつ、しぼんでいく。

 「提督。例のN2バズーカ使いますか?」

 「駆逐艦マルクードに一発だけ装備していたはずです」

 「国連軍が対使徒戦用に開発したという、例のパイプか」

 「一歩間違えれば、反対側のこっちもやられるな」

 「パイプそのものは不安ですが識別反応装置は、確かです」

 「コンマ1秒耐えられれば、破壊力の9割は、前と後ろに向けられるのは、本当かね」

 「・・・実験はしていませんが」

 「付け焼刃に造った物に頼るのか」

 「低予算の即席だそうです」

 「速すぎないか、追尾できるのか?」

 爆発が起きて駆逐艦が沈み、振動が伝わる。

 「・・・提督〜 的確な助言はいかがですか〜」

 ミサトが艦橋に入っていた。

 「誰が入室を許可した。出て行け!」

 「・・・・無駄なことを」

  

  

 艦載機が、次々に魚雷を投下。

 駆逐艦からも魚雷を発射される。

 時折、艦隊は、海中から飛び出す使徒に主砲を命中させた。

 しかし、ATフィールドに阻まれ、使徒に損傷を与えられない。

 「例のパイプを使うぞ。有線で発射しろ」

    

 「この程度じゃ ATフィールドを破れないか」

 加持が格納庫へ降りていく

  

 ミサトが訝しげに海上を見つめる。

 「何で、こんなところに使徒が出てくるのよ・・・」

 「まさか、二号機。バカな、所詮は使徒の亜流コピー」

 「使徒が惹かれるものは、リリスしかないはず・・」

 「それとも、進攻ルートが重なっただけ・・・・・」

 ミサトが爪を噛む。沈む巡洋艦

 「何か・・・探している・・・」

  

  

 タンカー

 シンジは、アスカに無理やり引っ張られていく

 「ど、どこに行くんだよ」

 「ちょっとここで待っていなさい」

 「何だよ」

 どこかの部屋で着替えるアスカと顔を出すシンジ

 「きゃあああああ! 覗かないでよ! エッチ!」

 「ご、ごめん」

 「何で、男の子って、馬鹿でスケベなのかしら」

 手首のスイッチを入れるとスーツがフィットする

 「アスカ、いくわよ」

 「あの、さっきは、その・・・・」

 「行くわよ」

 「え?」

 「あんたも来るのよ」

 「え?」

 「ねえ、プラグスーツに着替えてどうするんだよ」

 「あんたバカ! 決まってるじゃない。二号機であれをやっつけんのよ」

 「そんな、ミサトさんの許可は?」

 「勝った後で貰えばいいのよ」

 「さ、私の見事な操縦。目の前で見せてあげるわ」

 「?」

 「ただし邪魔は、しないでね」

  

  

 加持は、電話していた。

 「こんなところで使徒襲来とは、ちょっと話しが違いませんか?」

 『そのための二号機だ』

 『最悪の場合、君だけでも脱出したまえ』

 「わかっています」

 加持はトランクを見下ろした

  

 太平洋艦隊の艦艇が次々と沈んでいく

 艦隊から対潜ロケット弾が撃ち出され、海面に突っ込んで水柱をあげた。

 艦隊上空の艦載機が時折、対潜爆雷を投下。

 ヘリが海上を漂う水兵を救助していた。

 海上のあちらこちらで魚雷や爆雷が爆発。

 海面が盛り上がり。

 海水が四散して辺りに降り注ぐ

 「・・・なぜ、沈まん」

 「空母1隻、戦艦1隻、巡洋艦1隻、駆逐艦4隻が撃沈。潜水艦1隻が不明です」

 「今度、海上に姿を出したときに火力を集中する。CICで調整しろ!」

 「各艦の距離を空けて、退避行動自由。上空の艦載機も連携させろ!」

 「潜水艦部隊は、各個の判断で迎撃。グアムからも対潜哨戒機を出撃させろ!」

 「パイプが失敗した場合に備えてN2爆弾使用を国連本部に通達」

 「艦載機第二波にN2爆弾を装備」

 「了解」

 「提督、S通信です」

 「なんだ。忙しいときに」

 「・・・・好きにしろ!!」

 提督が電話を思いっきり叩きつける。

 「副長。パイプは?」

 「使徒が巨大すぎて水流でパイプの射線が狂わされています」

 「駆逐艦マルクードをフリー」

 「全所属艦隊をマルクードの機動に合わせろ」

 「次にとびあがった時。水流が一時的に収まるはずだ」

 「了解です」副長

    

    

 二号機 エントリープラグ

 アスカと、横にシンジ

 「・・・LCL Fullung. Anfang der Bewegung. Anfang des Nerven Anschlusses」

 「Schliesen Sie Absage. Synchro Schwimmen.Ein Anfang・・・」

 システムバグで起動不良

 「バグだ」

 「思考ノイズ! 邪魔しないでって言ったでしょう」

 「なんで?」

 「あんた日本語で考えているでしょう。ちゃんとドイツ語で考えてよ」

 「そんな無茶な」

 睨むアスカにシンジは気圧される。

 「わ、わかった・・・バームクーヘン?」

 「バカ! もういいわよ。思考言語切り替え、日本語を基本に」

 切り替わる表示

 「エヴァンゲリオン二号機、起動」

  

  

 空母オーヴァー・ザ・レインボー

 ハリアVが、艦橋の前に浮かぶ。

 『葛城。じゃ 先に行くから、達者でな』

 加持から無線が入る。

 「加持?」

 「あんの、ヴぁかぁあわ〜!」

 ミサトの顔色が変わる

 去っていくハリアV

 その後を追いかけるように使徒が海中からジャンプ。

 危うく食われそうになったとき。

 艦載機のミサイルと艦隊から撃ち出された砲弾やミサイルが次々に命中。

 戦艦の主砲弾が命中すると。

 軌道が狂わされた使徒が海上に落ち。

 ハリアVが離脱していく。

 「よし! いまだ! 発射」 提督

 何事もなかったように使徒が海中に飛び込む。

 待ち構えていた魚雷型のN2バズーカが使徒を捕らえたのか爆発。

 前後に向かって爆圧が瞬時にして伸びて、一方が使徒に命中した。

 そして、艦隊の直下の海中が大きく上下し、残存艦隊が浪間に隠れる。

 次の瞬間に線上に水柱が前後に伸び、

 一方が100mほどで、止まって、巨大な水柱と大爆発を起こし、

 大粒の大瀑布が艦隊を叩いて、あたり一面を最大級の濃霧で覆った。

  

 「やったか!」

 「全艦。ソナーフューズが飛びました。予備回路切り替えます」

 「海中が掻き回され、ソナーが働いていません。もうしばらく、お待ちください」

 「海面に浮遊物を探せ。今ので破壊されているはずだ」

 「輸送船オセローより入電。エヴァ二号機、起動中」

 「何だと!」

 「ナイス! アスカ」

 ミサト。ガッツポーズ

 「いかん! 起動中止だ。もとに戻せ」

 「かまわないわ。アスカ、発進して」

 「何だと! エヴァ及びそのパイロットは我々の管理下だ。勝手は許さん」

 「有事の際はNERVの指揮権が優先されるはずです」

 「んぐっ」

 「しかし、エヴァの管制は、ここでコントロールできませんが。基本のB装備のままですし」 

 

  

 

 二号機は、覆っていたシートをマントの様に羽織る。

 「・・・・海に落ちたら、それまでだよ」

 「落ちなきゃいいのよ」

 『シンジ君、そこにいるわね』

 「はい」

 『試せるか・・・・・・アスカ、出して』

 「ここじゃあ、狭いか」

 「あそこ!」

 アスカが外部電源用ケーブルを切り離す

 「なにをするの?」

 「跳ぶわよ」

 「とぶ?」

 輸送船に向かってくる使徒。

 ジャンプする二号機。

 そして、体当たりされてズブズブと沈み始める輸送船。

 二号機は、イージス艦や他の護衛艦を足場に八艘跳びで空母にたどり着く。

 着陸と同時に衝撃で空母が一時、沈み。

 反動で持ち上がる。

  

 ゴンッ! ドタッ!

 足場にされた艦船多くがシェイクされて、大混乱。

 空母が大きく傾き、揺れ戻る。

 ミサトと提督は、艦橋の天井に頭をぶつけ、割れるような痛みで涙ぐみ、

 「っ・・・なんて事を!」

 エヴァ二号機は、器用にバランスを取り。

 艦載機がバラバラと落ちていく。

 「いっ、つつつ。アスカ〜」

 ミサトも頭を抑えながら再起動。

 「・・来る」

 シンジの言葉にアスカと二号機が身構える。

 「弱点は、コアだよ」

 「戦闘記録を見ているから知っているわよ」

 突然、使徒が海上から現れ、空母に近付いてくる。

 そして、巨大な白エイのような使徒が飛びかかり、

 二号機は、体当たりをかわしながらプログレッシブナイフで腹を掻っ捌くと、

 激しい金属音と火花が飛び散る。

 そして、使徒の尻尾に2号機の体が巻かれ、一緒に海に落とされてしまう。

 「・・・口の中にコアがあったよ」

 「わかっているってば、なんで動かないのよ」

 「B装備だから」

 シンジは、なぜか、他人事で冷静だった。

 「もう、何とかしなさいよ」

 「な、なんとかって言われても」

 「あんた。サードチルドレンでしょう」

 アスカ任せにしていたシンジは少し焦る

 「あ、来た」 緊張感無し

 使徒が、口を開けて二号機を飲み込む。

 「ぐっ・・うっつつ・・・・・」 激痛にアスカの顔が歪む。

 シンジは、アスカの上から操縦桿を掴む。

 「ちょ、ちょっと、あんた。なにすんのよ」

 「せ、殲滅しないと」

 シンジが精神を集中すると、

 痛みが伝わるのかシンジの表情がゆがむ。

 アスカの痛みが徐々に退いて行く。

 そして、二号機のATフィールドが発生し、使徒の口がこじ開けられていく。

 「いまだ。コアを」

 「わかっているわよ」

 アスカがナイフでコアを貫いた。

 瞬間。使徒が爆発。

 二号機は、海上に吹き飛ばされて、落下。

 もう一度、オーバー・ザ・レインボウの飛行甲板に大の字になって落ちた。

  

 空母 艦橋

 「・・・アスカ・・・」

 「ぐっ ふっ」

 再び天井と床で、たんこぶを作ったミサトと提督が一緒に転がっていた。

  

  

 新横須賀港

 入港している空母。

 歯形でボロボロの2号機が陸揚げされ

 シンジとアスカは、足元にいた。

 「・・・いい。シンジ。使徒に止めを刺したのは私よ」

 「このアスカ。惣流・アスカ・ラングレーなのよ」

 「それ、わかってる。アスカよ」

 「うん、わかっているよ」

 シンジは、使徒を倒せて、生き残れば、どうでもよかった。

 というより、アスカとペアルックの赤いスーツが思いっきり恥ずかしい。

 「本当にわかっているの?」

 「わかっているよ」

 「どういう風にわかってんのよ。説明しなさいよ。シンジ」

 「んん・・・止めを刺したのはアスカ」

 「その。んん・・・の、間は何よ。キィ〜!」

 「なんか、むかつくわね」

 「いい、私が来たからには、エースはわたしよ。わたしがエースパイロット」

 「うん。よろしく。アスカ」

 しばらく、アスカの言いがかりが続く。

 しかし、シンジは、野心無し、無関心、無気力で競争する気がなく、

 そのほとんどが空回りしている、

  

    

 埠頭

 ミサトがリツコに受渡し書類を渡す。

 「・・・届け物は貰ってきたわよ。無傷じゃないけどね」

 ボロボロの二号機が回収されていく。

 「大変だったわね」

 「いろいろとね」

 「あれ、加持君は?」

 「先にトンズラよ。もう本部に行っているわよ。あのぶわぁか」

 「あの二人、面白くなりそうね」

 「戦闘記録を見るのが楽しみだわ」

 リツコがシンジとアスカの様子を見ながら含み笑い。

 「第6使徒の回収、しないとね」

 「海上にNERV艦隊は無いから国連艦隊頼りね」

 「委員会が押さえに回っているわ」

 「戦自やアメリカの新型潜水艦を出し抜ければいいけど」

 「無理ね。サンプルを抜き取られるのは確実」

  

   

 NERV総司令官公務室、ゲンドウ、加持

 「・・・いやはや、波乱に満ちた船旅でしたよ。これのせいですか?」

 「国連は、エヴァが既存の兵器を完全に凌駕していると認めるだろう」

 「無駄な予算を使われるよりはいい」

 トランクを差し出す加持。

 暗証番号を入力して、トランクを開けると、人間の胎児のようなモノが入っていた。

 「すでにここまで復元されています」

 「硬化ベークライトで固めていますが生きていますよ。間違いなく」

 「人類補完計画の要ですか?」

 「第一使徒アダムの種子」

 ゲンドウポーズのまま呟く。

 

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第06話 『人の造りしもの』
第07話 『アスカ襲来』
第08話 『ダブルエントリー』
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