月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

 「あれ、ファーストは、食べないの?」

 「肉は嫌い」

 レイは、ごはんといくつかの惣菜と漬物だけを食べている。

 「・・・そ、そうだった・・・・」

 「へえ、こんなに美味しいものが食べられないなんて、かわいそう♪」 愉快

  

第09話 『瞬間、こころ、重ねて』

   

 LCL液に浸るエヴァ二号機。

 制御室

 数字が流れ。

 グラフが変化していく。

 わかる者は、その変化と関連性から、法則らしきものを推測する。

 しかし、穴のある基礎理論では、複雑に絡む動きを追うだけ。

 なぜ、そう動くのか、理解できない。

 それでも、修復の優先順位が決められていく。

 不意に背後から、腕が回される。

 ビクッ!

 「・・・少し、痩せたかな」

 加持が、耳元で囁く。

 「そう・・・?」

 「悲しい恋をしているからだ」

 「どうして、そんなことが、わかるの・・・」

 「それはね、涙の通り道にホクロがある人は、一生、泣き続ける運命にあるからだよ」

 「お久しぶりね。加持君・・・」

 「や、しばらく」

 「こんな美人を放っておくなんて、本部の男どもは、甲斐性なし揃いだな」

 相変わらずで、少し腕を上げたかもしれない。

 「俺が口説いちゃおうかな」

 「そんなこと言って、本気で口説く気なんか、ないくせに」

 「・・・でも、いいかげんに。この腕を離した方が良いわよ」

 「さっきから、怖〜い、お姉さんが見ているから」

 ミサトがファイルを握り締め、睨みつけ。

 加持は、リツコから腕を離して薄ら笑う。

 「加持君も、意外と迂闊ね」

 「こいつのバカは、相変わらずよ」

 「あんた、二号機の引渡しが終わったなら、さっさと帰ったら」

 「出向の辞令が出てね。ここに居続けだよ」

 「また三人で、つるめるな。昔みたいに」

 「誰が、あんたなんかと」

 「そんなに怒ることないだろう。もう俺とは、なんでもないんじゃないのか?」

 「・・・・」

 「それとも、まだ俺に未練があるとか?」

 「ふざけんな」

 「いくら若気のいたりとはいえ、こんなのと付き合っていたなんて、我が人生最大の汚点だわ」

 「なにイライラしてんだよ。顔にしわよるぞ」

 「やかましい!」

 その時、警報音が鳴り響く

 「て、敵襲?」

   

 

 発令所

 「警戒中の “ハルナ” より入電」

 「“我、紀伊半島沖にて、巨大潜航物体を発見、データを送る”」

 「受信データを照合。パターン青。使徒です」

 「総員、第一種戦闘配置」

  

 作戦会議

 「先の戦闘で第三東京市の迎撃システムの損害が大きく。現在までの復旧率26パーセント」

 「実戦における稼働率はゼロ」

 「そのため、上陸直後の目標を水際で叩きます」

 「初号機、二号機は交互に目標に対し、波状攻撃」

 「「了解」」 シンジ、アスカ

  

  

 大型輸送機から初号機、二号機が降下して、海岸に着地。

 電源ケーブルが接続される。

 「あーあ、日本でのデビュー戦だって言うのに」

 「どうして、わたし一人に戦わせてくれないのかしら」

 「作戦だから」

 「シンジ。言っとくけど、くれぐれも、足手まといになるようなことはしないでね」

 「うん」

 アスカは、シンジの情けなさに呆れる。

 『・・・何でこんなのがエヴァのパイロットなのよ』

 「二人かかりなんて、卑怯で嫌だな。趣味じゃない」

 『アスカ。わたしたちには、生き残るための手段を選ぶ余裕なんてないのよ』

 「・・来た」 シンジ

 水平線に巨大な水柱が吹き上がり、海上から使徒が出現。

 吹き上がった海水が蒸気となって、雨のように降り注ぐ。

 『シンジ君。アスカ。攻撃開始』

 「私が先に行くわ。ちゃんと援護すんのよ!」

 二号機が颯爽と走ると。

 初号機は、慌ててパレットガンを撃ち始める。

 二号機がジャンプ。

 シンジは、光球が二つあることに気付く。

 だぁああああああああああ!!!

 そして、そのまま、ソニックグレイヴ(矛)を打ち下ろして使徒を真っ二つ。

 「お見事、ナイス! アスカ」

 「どうってことない敵でしたわ・・・ほほほほ」

 『凄い・・・あんな風にエヴァを動かせるなんて』

 その時、光球が輝いた。

 わずかに震えると動き出す使徒

 「アスカ、動いてる!」

 「えっ?」

 「なに!?」

 突然、二体の使徒に分離する使徒

 「うそ〜 なによこれ〜」

 「なんて、インチキ」 ミサトが驚愕する

 

 

 初号機と二号機は、使徒二体のコアを何度も砕く。

 しかし、使徒は、自己修復して、向かってくる。

   

       

 

 動揺した二号機が投げ飛ばされて、海上に逆立ちしたまま、活動停止

 「あちゃ〜」

 初号機は、ケーブルをつけたまま善戦。

 しかし、二体の連係プレーに圧倒され

 ケーブルが切られ。

 投げ飛ばされ・・・

 山に突き刺さったまま活動停止。

  

  

 発令所

 「ぶざまね」

 「エヴァ直轄部隊を前線から後退。国連軍に出撃を要請しろ」

 「まったく、恥をかかせおって」

  

  

 使徒上空。成層圏。

 高高度から重戦闘機8機が降下。

 「聞こえるか。エンジンをカットして。そのまま、突入する」

 「自由落下のまま、編隊を維持しろ。高度1000で引き起こして離脱する」

 「了解!」

 重戦闘機8機は大きなパイプを抱えたまま、一糸乱れず、

 2体の使徒に向かって突入していく。

 使徒二体が第三東京市に向かおうとしたとたん。

 重戦闘機8機がN2バズーカを次々と投下していく。

 真上から落ちてきた8本のN2バズーカは使徒に直撃して爆発。

 爆圧が上下に向かって伸びて使徒に直撃。

 筒が四散して閃光と大爆発。

 きのこ雲。

 爆圧の直撃を受けた使徒二体が溶け、

 固まったまま停止する。

  

  

 発令所  リツコと冬月

 「UNも派手にやりましたね」

 「地図を描き直さなければならんな」

 「しかし、指向性のあるN2バズーカは悪くない」

 「後ろ側に味方がいなければという。条件付ですね」

 「低予算でも、少しはやるものだ」

 「ですが、さすがに筒そのものが持ちませんね」

 「あれでは、エヴァも無事では済まないので、エヴァ光質で作れば・・・・」

 「それだと、上手くいくのかね」

 「ATフィールドで覆うことができれば、あるいは」

 「光質は、巨大な加速器で増殖している。予算が下りるかどうか・・・」

 「目標は?」

 「生きていますが構成物質の28パーセントを焼却。沈黙しています」  青葉

 「取り敢えず。足止めか・・・」

 「副司令。国連軍の攻撃は中止させてください、構成物資の強度が強くなるだけです」

 「再度の侵攻は時間の問題ですね」  青葉

 「立て直す時間が得られただけでも十分だ」

  

  

 クレーンが初号機を地上に引っ張り上げ、

 海上にサルベージされた二号機は、浮力タンクに縛り付けられた。

  

 ずぶ濡れのアスカは、ドラム缶の焚き火に当たっていた。

 兵員輸送車が止まると毛布で体を包み込んだアスカが乗り込む。

 「よ、大変だったな」

 「加持さん・・・」

 アスカは、喜んでいるのか、悲しんでいるのか、複雑な表情を見せ

 先客のシンジを見たアスカがプィッと眼を逸らし、

 シンジと離れた長椅子の端に座った。

 「・・・あのう、ミサトさんは?」

 「先に本部に行ったよ」

 「責任者は、責任を取るためにいるからな」

  

  

 NERV本部

 ミサトの目の前に書類の山が積まれ、

 リツコが他人事の様に眺めていた。

 「・・・これが、関係各省からの抗議文と被害報告書」

 「それと、UNからの請求書」

 「それと、あとで広報部の部長が話しをしたいって」

 ミサトは、ウンザリとしている

 「ちゃんと、目を通してね」

 「言われなくても、わかっているわよ。ケンカをするなら他所でやれって言うんでしょう」

 「そうね」

 「言われなくても、上が、片付ければそこでやるわよ」

 第5使徒が、市街地の外れで、解体処理されていた。

 「予算が足りなくて放置しているのよね。でも結果的に助かったけどね」

 「ぅ・・・」

 「第三東京市の真上にN2爆弾なんて、落とされたくないから」

 「委員会が、ケチだからよ。迎撃システムだって・・・・」

 「副司令は、カンカンよ。今度恥をかかせたら、左遷ね。間違いなく」

 「司令が留守だったのが不幸中の幸いだったけどさ」

 「いたら、即刻クビよ。これを見ることもなくね」

 抗議文の束が、さらに積み上げられていく。

 「私の首が、つながるアイデア。もって来てくれたんでしょう」

 「・・・ひとつね」

 「さすが、赤木リツコ博士。持つべきは、心優しき親友ね」

 「残念ながら親友のピンチを救うのは私じゃなくて、元彼の加持君よ」

 「加持が?・・・・・・」

 ミサトは、憮然とした後、なんとなく和らぐ。

  

  

 ミーティング室

 流される戦闘記録。

 ゲンドウ、冬月、ミサト、リツコ、シンジ、アスカ、レイ、加持が映像を見ている

 初号機と二号機は、まったく連携が取れず、負けていく、

 「午前4時3分を持ってNERVは、作戦指揮を断念。国連第二方面軍に移行」

 「同5分、新型N2爆弾により目標爆撃」

 きのこ雲

 溶けた二体の使徒

 海上と山に頭から突き刺さって、足を出した二号機と初号機が映される。

 『・・・いやだな、あんなカッコ悪いとこ、お父さんに見られるなんて』

 「みっともない戦いをしおって」

 「申し訳ありません」

 ミサトが平謝り

 「パイロット両名」

 ゲンドウが声をかける

 「君たちの仕事は、何かわかるか?」

 「エヴァの操縦です」

 「・・使徒殲滅だよ」

 シンジが応える。

 「そうだ。使徒を倒すことだ」

 「こんな醜態をさらすために我々NERVが存在しているわけではない」

 「醜態。子供に戦わせて、背中に隠れている大人がいう言葉じゃないよ」

 ゲンドウとシンジが睨み合う。

 ミサト、アスカが絶句。

 加持、リツコは興味深げにシンジとゲンドウを見詰める。

 レイは困惑。

 冬月は、面白そうに見ていた。

 不思議とシンジは、気後れしていない。

 ミーティングルームの緊張が、一気に増していく。

 重苦しい沈黙。

 「・・・・・・・」 ゲンドウ

 「・・・・・・・」 シンジ

 ゲンドウが去ると、冬月が後を追う。

   

 ほ〜 とした空気が流れていく。

 「・・・あんた、バカ〜 親子喧嘩に巻き込むな」

 「ご、ごめん」

 「ったく・・・突然、司令に噛み付くなんて、どういうつもりよ」

 「ごめん」

 「謝るくらいなら、噛み付くな」

 「ごめん」

 「だから、謝るくらいなら、噛み付くな」

 「うん」

 ミサト、リツコ、加持が面白そうに二人を見つめ。

 レイが困惑しながら出て行く。

  

  

 通路

 ゲンドウ、冬月、レイ

 「・・・嬉しそうだな。碇」

 「・・・・・・」

 「受けている報告と違うようだ。少し、牙が生えたかな」

 「ふっ」

 「逃げないで、父親らしく、シンジ君と話しをしたらどうだ」

 「・・・・・・」

 「似ていたな・・・母親に・・・」

 「ああ」

  

  

 NERV

 とある一室、ミサト、シンジ、アスカ。

 ミサトがツインベッドの間に立っていた。

 「さてと、二人とも」

 「マギの計算だと二つに分離した第7使徒は、お互いを補って復元していることが、わかったの」

 「つまり二身一体」

 「次の作戦で第7使徒を倒すには、二つのコアを二点同時荷重攻撃しかない」

 「エヴァ二体がタイミングを完璧に合わせて攻撃」

 「そのためには、あなた達の協調。完璧なユニゾンが必要だわ」

 「で、この部屋はなに?」

 「あなた達には、これから5日間、ここで一緒に暮らしてもらいます」

 アスカとシンジが、呻く。

 「時間がないから、命令拒否は、認めませんからね」

 「いやよ、昔から男女7歳にして同衾せずよ」

 「なに考えているんですか。ミサトさん」

 「これは、次の作戦に必要不可欠なことなの」

 「二人の息をぴったり合わせるには、お互い良く知ること」

 「もちろん、体内時計も合わせた方がいいの」

 「一緒に寝て、一緒に起きて、一緒に食べて、一緒にトレーニングして。そういうこと」

 「シンジが、私にムラムラきて夜中に襲ってきたら、どうするんですか?」

 「その時は、アスカに任せるわ」

 「いやなら落とせば良いでしょう。実力で・・・」

 『殺されるよ』

 「シンちゃんが襲われそうになったらベット付いているスイッチを押してね」

 「保安部員が急行するから」

 「誰が! なにが悲しくて、こんな中坊、襲うか!」

 「・・・・・・」 憮然

 「じゃ 必要なものは全部揃っているけど、足りないものがあったら内線で連絡してね」

 「明日の起床は6時よ」

    

 ミサトが出て行くとツインベットの部屋に残されるシンジとアスカ

 「悪夢のような現実。加持さんなら天国なのに・・・」

 「取り敢えず。遅いからシャワー入って寝るよ」

 「駄目よ。レディーファーストに決まっているじゃない。私が先よ」

 「・・・・」

 「言っておくけど、覗かないでよ」

 「命がけで見たいものじゃないよ」

 「何ですって、どういう意味よ」

 「ごめん」

 「ふん」

 アスカがむっとする。

 バタンッ!

 扉が閉まる。

 『前途多難だな』

 『でも、綾波とだったら・・・間が持たないかな』

 『あ、しまった』

 『お父さんに反発したとき、綾波も居たんだ』

 『また、引っ叩かれるかな』

 『でもなんで、あんなこと言っちゃったんだろう』

 『お父さん、怒ったかな、黙って行っちゃったけど』

 『綾波とアスカ、やっぱり綾波の方が好きかな』

 「シンジ」

 振り向くとアスカがバスタオルだけで立っている。

 

 「お・ま・た・せ。あがったわ」

 「・・・ん、んなんだよ。そのカッコウは!」

 シンジ。慌てる。

 「どう? 私きれいでしょう」

 アスカが体をくねらせる

 「さっきは、覗くなとか言ってたくせに」

 「興味ないようなこと言われるとプライド傷付くのよね」

 「ほら、胸見る」

 アスカがバスタオルを取ろうとする

 「で、でも」

 シンジが真っ赤になって退く

 バスタオルがバッと開かれる

 「わっ!!」

 水着を着ているアスカがシンジの慌てぶりを見て笑う。

 「・・・それでも、十分にいい眺めだよ」

 シンジが冷めたように言う

 慌ててバスタオルを掛けなおすアスカ。

 「見たわね」

 「見せたんじないか」

 「何ですって!」

 アスカの眼が怖くなる

 「・・・ごめん」

 「そのすぐ謝る癖。止めなさいよ。張っ倒すわよ」

 「・・・うん」

 「ったく。素直なんだか。臆病なんだか」

 「あんた。内罰的なくせに司令に反発するし、良くわからない性格ね」

 「うん・・・」

 シンジは、眼のやり場に困っていた。

 シャワー上がりのアスカが色っぽく、綺麗過ぎる。

 それを知ってるアスカが、面白がる。

 『アスカ・・・襲われたいのかな』

 『いや、襲ったら、半殺しにしようと思ってんだ。そうに違いない』

 シンジは、訓練中、アスカに殴り倒されたことを思い出す。

 「・・・・・」

 アスカは、わずかにうつむきながら、胸の谷間を見せようとする。

 「じゃ 僕、シャワーに行くから」

 シンジは、逃げた。

  

  

 赤木研究所

 リツコ、ミサト

 「・・・シンちゃんには、びっくりしたわね」

 「司令を侮辱したから?」

 「ええ・・・それに、シンジ君が、ああいう風に思っていたこともね」

 「あれは、司令だけに当てはまらないもの」

 「司令に言った、ということは、NERV職員全員に向かって言った。ということでしょう」

 「“子供を戦わせて背中に隠れている” その通りよ」

 「シンジ君と、眼を合わせられなかったわよ」

 「・・・シンジ君は、お父さんと話したかったのよ」

 「第三東京市に呼ばれて、父親の言うことを聞いて命がけで戦っている」

 「なのに話しかけられたことは、一度もないでしょう」

 「ああいう風に言えば、父親が自分を振り向いて、何か言ってくれる。そう思ってね」

 「・・・それだけ?」

 「・・・私の見たところ、9割は、それ」

 「何か、父親に振り向いてもらおうと思っていたところで、絶妙のタイミング」

 「チャンスが来たから言い返した」

 「言いたくて、言ったんじゃないわね」

 「じゃ アスカの言うとおり。親子喧嘩に巻き込まれたということ」

 「・・・たぶんね」

 「ったく。迷惑な親子ね」

 「ふっ そうね」

 リツコが含み笑い

  

  

 学校

 レイは、一人で学校に来て。一人で帰っていく。

 生徒の多くは、綾波が昔に戻ったと感じ、

 一部は寂しがっていると感じる。

  

  

 402号室

 レイは、寝付けず、テーブルの紅茶を飲む。

 誕生日にプレゼントしてもらった、少し大きめな室内着。

 白地に青ユリの柄がある服で着心地良く。

 やさしく包まれているような気もする。

 家具と電化製品。

 あると便利だった。

 それでも、碇シンジの部屋が暖かく感じる。

 赤木博士に呼ばれ。

 シンジの部屋でカレーを食べたことを思い出す。

 シンジと二号機のパイロットが、特別訓練をしている。

 このマンションで、ひとり。

 なぜか、寂しかった。

 シンジが、碇司令に反発。

 碇司令を侮辱したことが思い出される。

 「どうして・・・碇君」

 レイにとってゲンドウは、絶対的な存在。

 その絶対的な存在を侮辱したシンジの味方をしたいと思っているレイは困惑する。

 シンジを好ましく思っていることに驚愕する。

 「どうして、碇君」

  

  

 翌朝

 トレーニングルーム

 「いま眼を通したのがトレーニングするダンスの振り付け」

 「これを徹底的に体で覚えること」

 「それとエヴァが修理中だからハーモニックス・シミュレーションの連携訓練を行います」

 「シンクロ率の違いがあるので、アスカは必ずシンジ君に合わせてね」

 「「・・・・・・・・・・」」 シンジ、アスカ

 「ダンス〜」

 アスカ、不機嫌

 「こんなカッコウまでして」

 シンジ、不満

 「いちいち文句を言うんじゃない」

 「こういうものは形から入るのよ」

 「曲にあわせて、ユニゾンした攻撃パターンを体で覚えること」

 「じゃ 振り付け通り、最初から通しでやるわよ」

 音楽が流れ、動き出すシンジとアスカ。

 腕を組んだミサトの眉間に皺が、よっていく。

  

  

 エレベータの前

 シンジとアスカ

 「・・・ショッパナから5時間連続。疲れた」

 シンジは、フラフラ。

 「・・・・・・・・・・・・・」

 「お昼食べたら、またやるのか・・・・・」

 「あんたがドンくさいから、トレーニングが、ハードになるんでしょう」

 「わたし、一人なら完璧なのに」

 「そう、君ひとりなら完璧だね。でも、ぼくに合わせる気、全然ないね」

 「合わせるのは、あんたでしょう。足引っ張ってるくせに」

 アスカが掴みかかる

 「あっ! 来た」

 エレベーターの扉が開くとゲンドウが一人立っている。

 シンジが入る。一瞬、躊躇したアスカが続く。

 扉が閉まるとシンジとゲンドウの間に異様な緊張感が漂う。

 『そうだ。使徒を倒すことだ』

 『こんな醜態をさらすために我々NERVが存在しているわけではない』

 『醜態?』

 『子供に戦わせて背中に隠れている大人が言う言葉じゃないよ』

 シンジは、待つ側に立っていると思っていた。

 ゲンドウが何か言ってくると。

 ゲンドウが投げ付けたボールを痛烈に打ち返した。

 きっと何か言ってくる。

 「調子はどうだね」

 「・・・・・・」

 シンジは無視

 「はい! 順調です。次は勝ちます」  アスカ

 「そうか・・・期待している」

 「・・・・・・・・」 シンジ

 「・・・・・・・・」 ゲンドウ

 緊張しながらシンジは、待っていたが扉が開く。

 ほっとしたようにアスカが出ると、シンジも仕方なく続き。

 扉が閉まる。

 「あああ、もう〜 あんたのせいで冷や汗かいたわよ」

 「あの髭に・・・」 むっとする。

 「だ、だ・か・ら、私を親子喧嘩に、巻・き・込・む・な」

 アスカがシンジの髪を掴んで振る。

 「い、いたいよ、アスカのお父さんとは、どうなのさ」

 アスカが髪を掴んでいた手を離して、思いつめる。

 「・・・・」

 「・・・・」

 「お父さんは嫌い。お母さんを裏切ったもの・・・・」

  

  

 シンジとアスカの訓練は続く。

 ドンくさいシンジ。

 アスカは、自分なりにダンスの完璧さを追及する。

 ・・・・・・・・・・・ まったく合わない ・・・・・・・

 ミサトが切れ、

 見学に来た日向、レイ、加持も、冷めた視線を向ける。

 「何度言ったらわかるの」

 「シンちゃんは、照れないで踊りなさい」

 「アスカは、シンちゃんに合わせて!」

 「はい」

 「どうして自分のレベルを落とさないといけないんですか?」

 「合わせるのは、シンジの方です」

 「だから、二点同時過重のよるコアの破壊しかないの」

 「合わせないと、勝てないでしょう」

 「使徒は動いているのよ。ドンくさいと、同時にかわされるだけよ」

 「アスカ! まず合わせなさい」

 「・・・・」

 むっ とするアスカとミサト。

 「レイ。アスカと替わってみて」

 「はい」

 「・・・・・・」 アスカ、シンジ

  

 レイが位置に付くと音楽が始まる。

 シンジに合わせるレイ。

 呼吸がピッタリと合って、一心同体のようなダンス。

 そして、終わる。

 感動する一同。

 視線がアスカに集まる。

 アスカの顔が青ざめ。

 そして、赤くなる。

 「二号機をレイに書き換えようかしら」

 「もういや! やってられないわよ」

 アスカが泣きながら部屋を飛び出した。

 アチャ〜 のミサト

 「シンジ君」 加持

 「えっ」

 「こういう時は、追いかける」

 「それが男の務めというもんだ」

 シンジは、アスカの後を追った。

 本部は入り組んでいたが100m置きにある端末でアスカを見つける。

  

 ジオフロントの森

 入り口が、わかっても、その後は、勘で探すしかない。

 アスカは、庭園の木陰のベンチに後ろを向いて座っていた。

 シンジは、迷う。

 『・・・うう・・・なんて言ったら良いんだ』

 「アスカ」

 「なによ。笑いに来たの?」

 「・・・・・・・・・」

 「私は、完璧にやっているわ」

 「あんたがグズでのろまなのに、何で、私が怒られないといけないわけ」

 「ごめん」

 「もう遅いわよ。ファーストとやったら良いでしょう・・・私は、もうお払い箱よ」

 アスカは震えていた。

 「綾波は、シンクロ率が僕たちより低いから、たぶん、そうならないと思うよ」

 アスカの顔が上がる

 「あの・・・」

 「何も言わないで、わかっている」

 「私はエヴァに乗るしかないのよ」

 「やるわ、わたし・・・何としても、ミサトとファーストを見返してやるのよ」

 「見返す、だなんて、そんな」

 「なに甘いこと言ってんのよ、男のくせに」

 「傷付けられたプライドは、10倍にして返すのよ」

 その後、シンジとアスカの訓練は、激しく続けられ、

 アスカは、キレまくり、蹴りや突きながらシンジに合わせていく。

  

  

 NERV本部

 エレベータ内。

 加持、ミサト

 「・・・っ、やっだ。見てる」

 「誰が?」

 「誰って」

 加持とミサトの唇が重なり。

 ミサトは、エレベータの階層ランプを見ていた。

 不意に加持を押し退け。

 同時に扉が開くと、ミサトは、エレベーターから飛び出した。

 「もう、加持君とはなんでもないんだから、こういうの止めてくれる」

 「唇は、止めてくれと言ってなかったな」

 「!」

 「君の唇と言葉。どっちを信じたらいいのかな」

 閉まる扉にファイルが投げ付けられた。

  

  

 ミサトは、ラウンジでぼんやりしている。

 不意にコーヒーが入った紙コップが置かれる

 「・・・ミサト。今日は、珍しくシラフなの?」

 「チョッチね」

 「仕事? 男?」

 「いろいろよ」

 「ふ〜ん。まだ好きなのかしら?」

 噴出すミサト

 「へ、へ、変なこと言わないでよ!」

 「誰があんなやつ!」

 「若気の至りよ。若気の至り。汚点だわ」

 「私が言ったのは加持君が、よ。動揺させたかしら?」

 「あんたね〜」

 「怒るのは図星を指されたからよ」

 ムッとするミサト

 「今度はもう少し、素直になったら?」

 「8年前とは違うんだから」

 「変わってないわよ。あの頃と・・・」

  

  

 深夜

 アスカは、訓練でフラフラになってトイレに行く。

 そして、フラフラになりながらベットに入って寝る。

  

 深夜

 ふとシンジが気付くと目の前にアスカの寝顔。

 シンジは、驚きのあまり声も出ない。

 柔らかそうな唇が・・・

 ゴクンッ。

 シンジは、アスカの心地酔い香りに誘われ、

 アスカの唇に吸い寄せられ・・・

 「ママ・・・」

 アスカが切なげに呟き。

 気が削がれたシンジは、そのまま寝てしまう。

  

  

 突然

 目覚まし時計が鳴り、アスカが眼を覚ます。

 きゃー!!

 という叫び声とともにシンジは、ベットから蹴り飛ばされる。

 「シンジ。あんた。私のベットに忍び込んでなにしたのよ」

 「もう、信じられない。痴漢。殺してやる」

 ベットに立ち上がったアスカは臨戦体制。

 本気になったら、間違いなく殺される。

 「ち、違うよ。し、忍び込んだのは、アスカの方じゃないか」

 シンジが痛みに堪えながら答えた。

 はっ!

 とするアスカが息を呑む。

 ベットの位置関係からシンジの言っていることは正しい。

 絶句する。

 「あ、あんた・・・な、何もしていないでしょうね」

 「し、してないよ・・・」

 シンジが腹を押さえ、痺れる腕をさすった。

 「ひ、ひょっとして、わたし、あんたに腕枕されてたの」

 アスカの顔が引き攣る。

 「・・・・・」

 アスカ、絶望的な表情で座り込む。

 「そんな・・・疲れていたのは確かだけど・・・・」

 「この私が人の気配に気付かないで寝てしまうなんて」

 「んん・・・こいつが無防備過ぎて、鈍ってんじゃ」

 「・・・・」

 突然、アスカがシンジの胸倉を掴んで捻り上げる。

 「あんた、わかってんでしょうね」

 「このことは、絶対に話しちゃ駄目よ。誰にも言わないで!」

 「うん」

 シンジは、綾波の耳に入って欲しくないので素直に応じた。

  

  

 管制室

 警報が鳴る。

 「目標・・・起動しました」

 「目標は強羅絶対防衛線を突破」

 「現在、山間部を第三東京市に向かって進行中」

 「目標! ゼロ地点に侵入」

 「マギの予想より3時間も早いわね」

 「エヴァは?」

 「発進準備中です」

 「シンジ。アスカ。準備はいい」

 『はい』  シンジ、アスカ

 「準備出来次第。発進よ」

 初号機、二号機が出撃したとき、使徒二体は第三東京市外縁を超えていた。

 『いいわねシンジ。最初からATフィールド全開フル稼働最大戦速で行くわよ』

 『わかっている。内部電源が切れる62秒でケリをつける』

 「何なの・・・あの子達の自信は・・・・・・」

 「ミュージック、スタート」

 初号機と二号機が曲に合わせて二体の使徒を追い詰めていく。

 連係プレーの動きで使徒と同レベル。

 あとは実力差だった。

 「・・・凄い息がピッタリ」

 「いける」

 「・・・・」 レイ

 迎撃システムの弾幕が使徒を襲い、一瞬だけ使徒が止まる。

 「いまだ!」

 「行くわよ」

 初号機と二号機が完璧なユニゾンで使徒二体のコアをケリ砕く。

 そのまま郊外の山にまで押し付けて、爆発。

 内部電力がゼロになる。

  

 クレータの煙が消えると初号機と二号機は不自然な格好で重なり合っていた。

 「あちゃ〜」

 「ぶざまね」

 初号機のエントリープラグがせり上がり、シンジが出てきて初号機の上に乗る。

 シンジは、使徒戦が終わって生き残った喜びに溢れていた。

 突然、蹴りが飛んできて倒されるシンジ。

 「ちょっと! 私の二号機に何てことするのよ」

 「そんな、そっちが突っかかってきたんじゃないか」

 「最後にタイミング外したのはそっちでしょう!」

 「普段からボケボケしているからよ」

 「今朝だって、あんた。先に起きて、私に何しようとしていたのよ」

 「先に起きたのは、アスカじゃないか」

 「嘘ばっかり! 私が寝ているすきにキスしようとしていたくせに」

 「・・・ず、ずるいよ! 起きていたなんて」

 「ひっど〜い! 冗談で言ったのにホントだったの! キスしたのね」

 アスカの蹴りでシンジが倒れる。

 「し、してないよ!」

 「エッチ! 痴漢! 変態! 信じられない!」

 「そ、そっちこそ、寝言と寝相が悪いじゃないか!」

 ムキィ〜 アスカが怒る。

 アスカの突っ込みとシンジのボケがエヴァの集音マイクで拾われ管制室に流れる。

 「・・・・」 ゲンドウ、冬月、ミサト、リツコ、レイ。

 主要なメンバーが聞いているなか、

 シンジとアスカの痴話げんかは、回収ヘリが来るまで続く

  

 

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 月夜裏 野々香です

 ※エヴァ光質の説明です。

 エヴァンゲリオンの材質です。

 電磁波の一種で、スペクトルの違いがあると思いますが使徒も光質です。

 これは、作者が決めたというより。

 原作の赤木リツコの分析をそのまま流用しています。

 アニメで言うところの、「解析不能のコードナンバー。601」のところです。

 光に近い性質ということなので、量子量ゼロでしょうか、

 浮いている使徒がいるので、なるほどという気もします。

 しょうがないので、ATフィールドで、

 擬似質量を自由に変える事ができると仮定しています。

 ATフィールドで光を固形化させているのでしょうか。

 原作のエヴァや使徒が、生体という感じ。

 そして、建造にとんでもない予算が必要なので。

 加速器を使っての増殖ということにして、辻褄を合わせています。

 光そのものが、よく、わかっていないので、

 深く追求しないで、この辺は、流してください。

 基本的に、既存の材質より軽く強靭ということにしています。

 作者的には、チタンの10倍の強靭さで、

 カーボンナノチューブ並みの柔軟性のイメージでしょうか。

 それでもATフィールドの方が上ということにしています。

  

     

 

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第08話 『ダブルエントリー』
第09話 『瞬間、こころ、重ねて』
第10話 『鈴原の妹は・・・・』
登場人物