月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

   

 『や、やっぱり、綾波が一番好きだ〜』

 シンジ、心の叫び

 「そう・・・・わたしは、あまり役に立っていないから・・・・・・」

 「そんなことないよ・・・・・・綾波がいると嬉しい」

 「ありがとう」

   

第17話 『奇跡の価値は』 

 南極大陸は、蒸発し、

 赤紫の南極環礁海に巨大な塩の柱が何万本もそそり立っていた。

 上空の電離層に不気味な形のオーロラが揺れ、時折、プラズマが走っていく。

 赤紫の環礁海を空母1隻と巡洋艦9隻が進む。

 空母の飛行甲板にカバーに覆われた巨大な槍状のものが見え

 ゲンドウと冬月は、大型巡洋艦の特殊ガラスに覆われた特別観測室に立っていた。

 「いかなる生命の存在も許さない死の世界。南極。いや、地獄というべきか」

 「だが、我々人類は、こうして、ここに立っている。生物として、生きたままだ」

 「科学に力で守られているからな」

 「科学は、人の力だよ」

 「その傲慢が15年前の悲劇、セカンドインパクトを引き起こしたのだ」

 「与えられた罰にしては大きすぎる」

 「だが、セカンドインパクト以外の災厄を避けることが出来た」

 「60億から90億に達しそうだった総人口は20億に減少」

 「10年後も、疾病による死亡率の増加と出生率の低下から総人口は、そのまま、20億」

 「自然環境も回復傾向。南半球の虫食いオゾン層も収まり南極もいずれ氷に覆われる」

 「碇、人類が自らの手を汚さなくて済んだから、良かったというのかね?」

 「ゼーレは、10の解決案と12の妥協案を検討していた」

 「セカンドインパクトが人類にとって最悪のものと、いえない案もあったよ」

 「だから、予測しえるセカンドインパクトを見逃した・・・・」

 「命がけでなかったのは認めるがね」

 「わたしも含め大多数は反対した。死海文書は解読に成功していたからな」

 「・・・・・・」

 「せめて独力でATフィールドを解明、突破できるまで待つべきだとね」

 「・・・・・・」

 「だが、ゼーレは差し迫っていた人類の危機を打開するため強行案を選択した」

 「・・・・・」

 「槍を使ってのATフィールド突破」

 「未知の生命体の研究による科学技術の急速な発展と独占・・・・」

 「・・・・・・」

 「無駄死にする最悪の事態を免れるため、ゼーレの強行姿勢に屈し」

 「・・・・」

 「比較的、ゼーレの影響を受け難い。それでいて力のある国。日本にサンプルを集めた」

 「・・・・・・」

 「葛城博士の最後の便が間に合っていたら槍も失ったりしなかった」

 「・・・・・」

 「真実は、闇の中だがゼーレが実験を早めてしまったか」

 「アメリカ軍が余計なことをしたか。おそらく両方だろう」

 「老人達には、時間が無かった?」

 「老人達は、永遠の生命と、完成した個体を究極の目標にしていたからな」

 「・・・・・」

 「老人達が日本の主権と日本文化に手を出さないのも」

 「日本のナノテクノロジー技術と勤労意欲を利用しているからだ」

 「カーボン・ナノ・チューブ、特殊樹脂、シリコンで人体を形成できそうなのは日本だけだ」

 「・・・・・」

 「他の勢力では、気が狂いそうな仕事をやってしまう」

 「いまは、エヴァ技術で、やってしまおうとしている」

 「問題は、使徒だけだ。それがなければ自らサードインパクトを起こすだろうな」

 「・・・・」

 「セカンドインパクトのような出来損ないでなく。本物のサードインパクトを・・・」

 「報告します。NERV本部より入電。インド洋上空、衛星軌道上に使徒発見」 海軍士官

 「第10使徒。サハクィエルか」

 「・・・・・・・」

 「毎度、思うがロシアンルーレットをしているような気になるな」

 「・・・ああ」

  

 

  

 NERV

 警報の中、ミサト、リツコが事態を把握しようとしていた。

 「・・・・2分前に突然現れました。同時に22の衛星が消失」

 「第6サーチ衛星、軌道に乗りました。接触まであと3分」

 「目標を映像で捕捉」

 それは、奇天烈な形の巨大な物体だった。

 「こりゃあ、凄い」  日向

 「常識を疑うわね」

 「第6サーチ衛星。目標と接触します」  青葉

 「サーチ開始、データ送信開始」

 途端に押し潰され破壊される衛星

 「ATフィールド」  ミサト

 「宇宙にも種子が飛んでいたということね」

 「パイロットを集合させて」

 「了解しました」

 使徒の一部が離れて洋上に落下。爆発。

 「10番目か・・・・たいした破壊力ね。さすがATフィールド」

 「光質の波動と粒子の特性から質量兵器としてのイメージからかけ離れていますが・・・」

 「落下のエネルギーを利用しています。使徒そのものが爆弾ですね」

 「重力質量が限りなくゼロで慣性質量を制御出来るのは矛盾しているけど」

 「取り敢えず、初弾は太平洋に大はずれ」

 「津波が太平洋岸から押し寄せてくるのは4時間後。被害は軽微ね」

 「練習中か・・・・」

 「で、2時間後の2射が、そこ。確実に誤射修正している」

 「学習中か・・・・・・・」

  

  

 アメリカ軍のリークで、状況が流れてくる。

 「・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・0」

 青葉のカウントが終わると。

 使徒が下方で起きた閃光と爆発に包み込まれた。

 次第に沈静化していくと、何事も無かったように使徒が浮かんでいる。

 「・・・駄目か」

 「軌道修正。ありません」

 「今の余波で追跡衛星の3つが破壊されました」

 「これで合計44個が破壊されたことになります」  青葉

 「アメリカ空軍のアイデアも駄目か」

 「50発のN2爆弾の爆圧で使徒を衛星軌道の外に追いやる。失敗ね・・・・」

 「あれだけの爆圧を受けて衛星軌道を維持できる法則が理解に苦しむわね」

 「アメリカも主導権をとりたかったのかしら」

 「衛星軌道でも、使徒にアメリカ領空を飛んで欲しくないんでしょう」  リツコ

 「N2弾頭装備の電磁弾道砲でも駄目となると・・・・来るわね。たぶん」

 「次は、本体ごと、ここにね」

 「第3東京市が、第3芦ノ湖になるわけね」

 「富士五湖がひとつになって、太平洋とつながるわ本部ごとね」

 「それも一瞬のことで、そのまま、サードインパクトが起こるわね」

 「碇司令は?」

 「使徒のジャミングのために連絡できません」

 「電波長距離無線は駄目です。通信は有線のみです」  青葉

 「マギの判断は?」

 「マギは、全会一致で撤退を推奨しています」  マヤ

 「撤退? タスマニア? パタゴニアに?」

 「まさか・・・どうするの? いまの責任者は、あなたよ」

 「日本政府、各省に通達。NERV権限で特別宣言D-17」

 「半径50km以内の全市民は、直ちに避難」

 「松代にはマギのバックアップを頼んで」

 「サードインパクトが起これば無意味だけどね」

 「放棄ですか?」  日向

 「いいえ、みんなで危ない橋を渡ることも無いでしょう」

  

  

 空港、港湾、道路に人の波が押し寄せる。

 人々は、ジェット機、大型ヘリ、船舶、自動車、バス、鉄道で避難して、

 第3東京市から人の気配が消えていく。

  

  

 NERV本部

 “市内における避難完了。非戦闘員、及びD級勤務者は避難してください”

 アナウンスが入る。

 リツコ、ミサト

 「やるの・・・・本気で?」

 「ええ、そうよ」

 「勝算は、0.00001パーセント。万に一つも無いのよ」

 「ゼロでは、ないわ・・・それに起動確率より高い。どうしてかしら?」

 「・・・・・」

 「少なくともサードインパクトを防ぐことが出来る可能性だけは、5パーセントあるわね」

 「それも使徒のジオフロント直撃に期待しなければ得られない」

  

  

 NERV天井都市

 最地下層の床全面がガラス張りで足元のジオフロントを一望できた。

 ミサト、シンジ、レイ、アスカ

 「えっ! 手で受け止める?」

 「そう。落下地点にエヴァを配置」

 「ATフィールド最大であなた達が直接、使徒を受け止めるのよ」

 「使徒を受け止め損なったら」

 「その時は、サードインパクト」

 「機体が衝撃に耐えられなかったら?」

 「その時は、サードインパクトかもしれない」

 「勝算は?」

 「神のみぞ知る。というところね」

 「これで上手くいったら、まさに奇跡ね」

 「奇跡というのは、起こしてこそ、初めて価値が出るものよ」

 「つまり何とかして見せろ。って事?」

 「すまないけど、他に方法がないの・・・今回の作戦はね」

 「作戦といえるの?」

 「ホント、言えないよね。だからイヤなら辞退できるわ。サードインパクトになるけど」

 「「「・・・・・・・」」」 シンジ、レイ、アスカ

 「みんな、いいのね」

 「「「・・・・・・・」」」 シンジ、レイ、アスカ

 「一応、規則だと遺書を書くことになっているんだけど、どうする?」

 「別にいいわ。そんなつもりないもの」

 「わたしもいい。必要ないもの」

 「・・・僕もいいです」

 シンジは、父親に何か書く気になれない。

 「・・・すまないわね。成功したら、みんなにステーキを奢るから」

 「えっ! ホント?」

 「約束する」

 「うわぁあ〜い!」

 「忘れないでよ」

 「期待してて」

 ミサトは、そう言って去っていく

 「ご馳走といえば、ステーキで決まりか」

 「いまどきの子供がステーキで喜ぶとでも思っているのかしら」

 「これだからセカンドインパクト世代って貧乏くさいのよ」

 「食べ物がなかったんだから、仕方がないよ」

 「ふん。何が 『うわぁあ〜い!』よ。大げさに喜んじゃってサ」

 「それで、ミサトさんが気持ち良く指揮できるんだから良いじゃないか」

 「さてと、どこにしようかな・・・・アンタも来るのよ」

 アスカがカバンからグルメ雑誌を出す。

 「わたし、いかない」

 「どうして?」

 「肉嫌いだもの」

 「そ、そうだった」

  

  

 発令所

 「やぁっ」

 加持が、大きなトランクを抱えて、ミサトに挨拶。

 「まだいたの?」

 「そりゃまたご挨拶だな。最後の便で撤退するよ」

 「あぁら、そう。早い方が良いわ」

 「しかし、相変わらず無茶な作戦を立てているな。葛城」

 「反対意見なら聞かないわよ」

 「俺の仕事は監察。作戦に権限はない」

 「なら、結構」

 「ただ、今回はやばいんじゃないか」

 「わたしは、使徒から逃げるわけには行かないのよ。絶対に」

 「そうだったな。ただ私怨で仕事をするのは他人が迷惑する」

 「シンジ君、アスカ、綾波ちゃんをどうするつもりだ」

 「サードインパクトが起きたら人類は滅ぶわ」

 「仮に私怨でなくても選択肢が変わるわけじゃないわ」

 「・・・死ぬなよ。三佐殿」

  

  

 発令所

 巨大なモニターに地図が映し出され、大きな円とそれよりも小さな円が3つ。

 ミサト、リツコ、シンジ、レイ、アスカ

 「使徒は3重構造になっていて、全てにATフィールドで覆われている」

 「表皮の部分が爆弾。体の部分が甲殻質。そして、核の部分にコアがあると計算されるの」

 「使徒が爆弾で天井都市を破壊し」

 「軌道修正しながらジオフロントを突き破り、セントラルドグマのリリスに到達する場合」

 「逆円錐状に推測し得る誤差範囲が、これよ」

 「こんなに広いの・・・」

 「天井都市の外側にまで張り出して、カバーしきれていないじゃない」

 「端まで随分ありますよ」

 「目標のATフィールドを持ってすれば、範囲内のどこに落ちても側壁を削り」

 「本部を根こそぎ持っていかれるわ」

 「ですから、3体をこの3ヵ所に配置します。一人当たりのカバーが大変だけど、頼むわ」

 「配置の根拠は、なに?」

 「勘よ」

 「「カン?」」 シンジ、アスカ

 「そう、女の勘」

 「何たるアバウト! ますます、奇跡が遠のくわね」

  

  

 エレベータ

 シンジ、レイ、アスカ

 「ねえ」

 シンジは、アスカに言った

 「何よ」

 「アスカは、なぜエヴァに乗っているの?」

 「決まってんじゃない。自分の才能を世の中に示すためよ」

 「自分の存在を?」

 「似たようなものね・・・あっちの娘には聞かないの?」

 「綾波には、前に聞いたんだ」

 沈黙したままのレイ

 「ふ〜ん。仲のよろしいことで」

 「・・・・・」 シンジ

 「シンジはどうなの」

 「・・・わからない」

 「わからないって・・・あんたバカ?」

 「そうかもしれない」

 「・・・ホント。バカね」

  

  

 発令所

 ミサト、青葉、日向

 「・・・目標落下予測時間まで、120分」

 「みんなも退避して、ここは、わたし一人でいいわ」

 「これも仕事ですから」

 「子供達だけ、危ない目にあわせられないすから」

 「あの子達は、大丈夫。ATフィールドが守ってくれる」

 各地に配置された3体のエヴァがスターティングポーズを取る。

 「目標を最大望遠で確認」

 「距離およそ25000m、直上」

 「おいでなすったわね」

 「エヴァ全機、スタート位置について」

 起動するエヴァ3体。

 「ジャミングが強いから、目標は、光学観測による弾道計算しか出来ないわ」

 「よって、マギが10000mまでは誘導します。その後は、各自の判断で行動して」

 「あなた達に全て任せるわ」

 使徒の落下が始まる

 「使徒、降下、始まります」

 赤熱化した使徒が大地に向かって落ちていく。

 「作戦。開始!!」

 初号機、零号機、二号機から電源コードが外れ。

 マギの誘導にしたがって初号機、二号機、零号機が飛び出した。

 

 

 山を、川を、街を、池を高圧鉄線を飛び越えて走る。

 音速を超え、衝撃波が周囲を破壊。

 雲を蒸発させて地表に迫る使徒。

 急ブレーキをかける初号機

 ズザザーッ!!!!。

 コンクリートと地盤をめくり吹き上げながら滑り、落下地点に到着する初号機。

 目前に迫る使徒

 「ATフィールド全開!!」

 周囲の建物がエネルギーの流れとともに吹き飛んでいく。

 と同時に巨大な使徒を両手で受け止める初号機。

 二つのATフィールドがぶつかって、干渉波が当たりに撒き散らされる。

 初号機の足場そのものが崩れ。

 巨大な重力衝撃によって、初号機の筋肉が破砕し、体液が噴出す。

 激痛とシンジを襲い、死の恐怖で何かが弾けた。

 ぐぅぁあああああああああああ〜!!!

 途端、初号機を中心にATフィールドが爆発的に広がっていく。

 「なっ! ちょっと、なに」

 「クッ!」

 初号機のATフィールドと使徒のATフィールドが激しくぶつかり干渉し合う。

 初号機のATフィールドが全周囲に広がって、零号機と二号機を弾き

 使徒を押し上げ、ATフィールドに包まれたまま宙に浮かび。

 ATフィールドを上昇させながら使徒を押し返していく。

 初号機のATフィールドは、次第に使徒のATフィールドを包み込んでワイングラスのようになり、

 使徒ごと押し潰して・・・

 閃光!!

 爆発のエネルギーがワイングラスの口に向かって発射され、

 成層圏を突き抜け宇宙空間に噴出していく。

 ATフィールドに覆われ、上空500mに浮いていた初号機が静かに降下して着地。

 そのまま倒れ込んだ。

 「・・・・・・」 絶句して、言葉のない発令所。

 「「・・・・・」」 レイ、アスカも呆然とする。

 

 

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第16話 『綾波レイと昼食を』
第17話 『奇跡の価値は』
第18話 『奇跡の後』
登場人物