月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

 「綾波・・・どこか行きたい所とかない」

 綾波は首を振る。

 『こ、困ったよ・・・』

 シンジとレイは、腕を組んで歩けるのが嬉しく。

 なんとなく、公園を巡って、夕食の材料を買って帰途についた。

  

 第19話 『第2使徒は、秘密よ』

 NERV

 総司令官公務室

 「・・・・・」 冬月

 「・・・・・」 ゲンドウ

 「・・・・・」 じーーー

 「なんだ?」

 「言わんこっちゃないな」

 「ふっ」

 「もう、どうなっても知らんぞ。碇」

 「ひとつの可能性として、浮上しただけだ・・・」

 「何がひとつの可能性だ・・・」

 「おまえのシナリオが成功した場合。息子との関係は修復不可能になるぞ」

 「レイは、自分の存在がどういうものかわかっている・・・宿命として受け入れている・・・」

 「せめて、人間らしい、ひと時か」

 「ああ」

 「わかっていると思うが・・・ゼーレと我々の力の差は、決定的だぞ」

 「人類世界、そのものだな」

 「感傷に浸っていたら。ゼーレの人類補完計画でまとまってしまう・・・」

 「気持ちのいいものではないな・・・」

 「連中は、永遠性と完全性を求めるあまり、人間性を失っている・・・・」

 「それでも・・・・たいした修正は出来ないがな」

 「使徒との出会いが、連中を完全に狂わせたのだ」

 「元々からだ。セカンドインパクトがなくても人口、食糧、エネルギー、飲料水の減少と砂漠化」

 「温暖化。大気汚染。民族問題、宗教問題、人種差別」

 「国家対立。言語対立。飢餓、貧困・・・・・」

 「人の業を避けようと思えば、宇宙に出るか。人ならざるものになってしまうだろう」

 「・・・宇宙に出るには、エネルギーが足りないか」

 「・・・ああ」

  

  

 学校

 シンジとレイ、アスカが教室に入ると、

 既に話題の半分は、シンジとレイのカップルに関することになる。

 「シンジ〜」

 「シンジ〜」

 『う・・・また・・・・』

 トウジとケンスケは、シンジの両脇を掴んで教室の隅に連行していく。

 「おまえ、綾波と腕を組んでいたそうやな」

 「ネタは、上がっているぞ」

 「それと、未確認だが商店街で惣流と綾波がおまえを取り合って修羅場になりかけたのもな」

 「い、いや、それは、誤解だよ」

 「誤解やと」

 「シンジと綾波が腕組んで一緒に歩いている写真に撮られて、ネットに載っているぞ」

 「うそ」

 シンジは、めまいがした。

  

 ケンスケの端末で、二人が公園を歩いている写真が映し出される。

 教室中の同級生が、いくつかのグループに分かれてザワザワとシンジとレイの噂をする。

 レイは、いつものように窓辺で難しそうな本を読んで唯我独尊状態。

 勇気のあるクラスメートの付け入る隙を与えず撃退し、

 アスカは、ヒカリ、チアキと三人で、渦中の外を決め込んでいた。

 「・・・・シンジ。どこまで行ったんだ」

 「そうや、公共の場で腕を組んで歩くぐらいだ。もはや、言い逃れはできん」

 「・・・・・」

 「キスはしたのか?」

 シンジは、首を振った。

 「「・・・・・」」 トウジ、ケンスケ

 トウジとケンスケは、シンジとレイ。

 そして、写真を何度も見比べる。

 「ようやった。なんにしても、ようやった。シンジ。これで、惣流はフリーだ」

 トウジは、シンジの肩を叩く。

 「ああ、男達は、動くな」

 「チャートの様子からすると」

 「少なくと好感度の高い5人が近いうちに惣流にアタックするはずだ」

 ケンスケは、端末を操作して5人を見せた。

 容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、性格良し、三拍子も、四拍子も、揃っている。

 「かっこいいな」

 「シンジ。なに、褒めてんだよ」

 「こ、こいつらか・・・」

 「うぅ・・・一難さってまた一難か」

 「あ、あのな。トウジ。俺らの好感度、下から数えたほうが速いだろう」

 「だいたい、三人の中で一番、好感度の高いシンジでさえ、学内21位、学年13位」

 「クラスでも5位だろう」

 「クラス第1位の久坂タダシが学年2位。学内4位」

 「学内トップの惣流に相手にされるわけ無いじゃないか」

 「うぅ・・・くぅっ・・・何で、俺の順番が、論外なんや・・・納得いかへん」

 「しょうがないさ・・・人気番付なんて、よっぽど好かれる性質がなければね」

 「人間の大半、どころか9割以上が石ころと同じ」

 「世のスターが何人のファンに支えられているか考えれば、トップは、希少な存在だよ」

 「んん・・おい、シンジの番付が、何で下がらずに上がってるんや・・・」

 「綾波と腕を組んで歩いていたのは知られているやろう」

 「人気番付が更新されるのは、タイムラグが出るからな・・・」

 「もっとも人気番付に票を入れている人間の数自体、生徒の半分」

 「一定の趣向を持った人間の評価による番付」

 「絶対的な人間の評価とは言えないさ」

 「それでも、番外は、むかつくわい」

 「上位組みと比べると、納得するが、確かにむかつくな」

 「シンジ。なに挙動不審になっとるんや」

 「いや、視線が・・・・」

 「おまえな」

 「ああいう、何もせんでも目立つ女と一緒に腕組んで歩いて、いまさら、なに言ってんだよ」

 「俺たちが助けなければ、おまえ、集中攻撃受けているぞ」

 シンジは、トウジとケンスケに感謝してしまう。

 綾波と違って比較的、普通人のシンジに事の顛末を聞こうとソワソワしている同級生が何人もいる。

 「そや、そや、帰りは、お好み焼きでも奢ってもらうか」

 「わかったよ」

 「それで、じっくり、聞かせで貰うで、シンジ」

 トウジが腕をシンジの肩にまわす

 「そうそう、あのオレンジ色の火の柱も守秘義務に反しない程度に教えてもらおうか」

 反対側からケンスケ腕が回されて、プライベートと守秘義務の危機。

 「うぅ」

 「ところで、惣流と綾波が商店街で、おまえを取り合ったという噂は?」

 「そ、それはないよ・・・惣流は、僕を虐めるのが好きなんだよ」

 「・・・・俺は、惣流に虐められてぇ〜」

 「なるほど、綾波が本妻で、惣流が愛人か」

 「やめてくれ〜 それだけは、やめてくれ〜」

 ケンスケ。ムンク。

  

  

 アスカ、ヒカリ、チアキ

 「ほほぅ。これは・・・・・・」

 アスカが端末を覗き込む

 「ヤケルでしょう」チアキ

 「別に。でも、あの二人がね」

 「公園で腕を組んで歩くなんて進歩したものね」

 「でもさ〜」

 「商店街でアスカと綾波さんが碇君を取り合ったという情報もあるんだけどね」 チアキ

 「まさか、あたしが、本気になったらシンジなんて、いちころよ、いちころ。ファー・・・・」

 「綾波なんて、目じゃないわよ」

 「本気になったら、シンジなんて、一瞬で、私に転がり込んでくるわ」

 「強気ね」 ヒカリ

 「うぅ 話しを聞きたい」

 「親同士が知り合いでも。あの二人がくっつくようになった顛末は興味があるわね」 チアキ

 「そう・・・」 アスカ

 「碇君はともかく、綾波さんは、普通の会話すら成り立たないもの・・・」

 「社交性や簡単な挨拶すらないから。ある意味、神秘的なのよ」 ヒカリ

 「そうそう。二人が腕を組んで公園を歩いているの見たとき、気が遠くなったわよ」 チアキ

 「でも、しっかり撮っているじゃない」

 「それは、もう。しばらく話題に困らないわね」 チアキ

 「隠れ綾波ファンは、泣いているみたいだけど」

 「でも、碇君と綾波さん、何を話しているのかしら、共通の話題なんてあるの?」

 「NERV。エヴァ関係じゃないの・・・」

 「噂だと、碇君と綾波さんがエヴァのパイロットというのも濃厚だし」 チアキ

 「どうかな・・・鈴原と相田は、碇君は、パイロットじゃないと思うって」 ヒカリ

 「あの3人は、共犯みたいなものだし、どうも怪しいのよね・・・」

 「鈴原はともかく。相田は、碇君と綾波さんのパイロットを確信していたはずなのに・・・」

 「掌を返すというよりも、興味自体を失っているのよね」

 「被害があまりにも大きいから、パイロットになりたいなんて思わなくなったのよ」

 「見たでしょう。台風だって、あんなにならないわよ」

 「点々と5mぐらいの大穴があいて、周りのビルが吹き飛んで」

 「今回の被害は、全部、エヴァが出したものみたいよ」

 「中心地は直径1kmがくぼんで。地面が石みたいに固まっているし」

 「でも、成功しなかったら第三東京市全域が第3芦ノ湖になってたって」

 「不幸中の幸いだって聞いたけど」

 「情報がほとんど無いもの」

 「あのオレンジ色の火の柱が宇宙にまで上って行ったの見たけど・・・」 チアキ

 「あれは、なんだったのかしら、アスカは見た?」

 「・・・モニターで見ただけ」

 「そう。わたし、たまたま。第三東京が気になって見ていたから」

 「突然。何か巨大な物が落ちてきたと思うと」

 「オレンジ色の柱が下から立ち昇って押し上げたみたいな・・・」

 「爆発したような音がしたけど地響きみたいだったし」

 「光の柱から音は、してなかったけど。なんだったのかしら」

 「怖いわね」 ヒカリ

 「疎開する人間も増えるわね」  チアキ

 「そうね。生徒もだいぶ、減ったみたいだし」

 「いくら実入りが良くても命あってのことだから、家族持ちは、いなくなるわね」

 「学級の統合もあるって聞いているけど」

 「ここも潮時かな・・・・・」 チアキ

 「でもね、お父さんも、おねえちゃんも、NERV関連で働いているし」

 「私と妹だけ疎開って、いってもね」

 「わたしも、そう言う話しにはなるけど」

 「親がNERV関連だから職を辞めるのは、難しいみたい・・・・」

 「むかしは、ゲヒルンというところで働いていたんだけど、歳を取ると環境の変化に弱いから」

 ヒカリとチアキがため息をつく。

 「まあ、命がけで戦っている人間には悪いけど、一般の民間人にはね」 ヒカリ

 「死にたくないものね」 アスカ

 「アスカは、疎開の話しとか出ないの?」 ヒカリ

 「弱小企業だから・・・しがらみがあるみたい」 アスカ

 「しがらみって、アスカ。随分、難しい日本語も使うのね」 チアキ

 「シンジを言い負かしてやろうと思ってね」

 「ドイツに住んでいたけど母親が日本語を話していたから土台だけはあるの」

 「そういう場合は、シンジがらみというのよね〜」 チアキ

 「て、手頃で、からかいやすいだけよ」

 「か、からかいやすいって、碇君って強いんじゃないの」

 「上級生に囲まれても負けなかったって聞いたけど」 ヒカリ

 「あれも怪しいわよね。尻切れトンボになっているし・・・・」

 「ていうか、綾波さんを付けた男子達も、アスカを付けた男子達も路上で気を失っていたそうだし」 チアキ

 「3人とも怪しさ爆発よ」

 「この、わたしが、とんまな男子どもに後を付けさせたりさせるもんですか」

 「でも、好みの子はいないの・・・アスカだったら誰でも・・・・」 チアキ

 「ガキには興味ないわ」

 「アスカって、おじさんが好きなのね」 チアキ

 「ちゃんとした恋愛よ」

 「わかった。良いお父さんに恵まれていないと理想の父性を求めるあまり」

 「年上志向になってしまうのよね」 ヒカリ

 「・・・・・・・」 アスカ

  

  

 シンジとレイの関係は、ほぼ公認。

 昼食でシンジとレイが並んで食べ。

 トウジ、ケンスケと向かい合って食べるスタイルも定着。

 最初。ぎこちなかったシンジ、トウジ、ケンスケも慣れていた。

 レイは、ほとんど喋らず。シンジ、トウジ、ケンスケのバカ話しを聞くだけ。

 レイのシンジへの接近は、恋人といっても良く。

 トウジもケンスケも時折、レイの顔を見ては ボゥ〜 としていた。

  

  

 NERV

 内部広報用パンフ

 時に2015年、第3使徒サキエル襲来。

 使徒に対する通常兵器の効果は認められず。

 国連軍は作戦遂行を断念。

 全指揮権を国連特務機関NERVへ移譲

 同深夜、使徒サキエル、NERV本部直上へ到達

 当日接収された。

 3人目の適格者サードチルドレン。

 碇シンジ。

 搭乗を承諾

 エヴァンゲリオン初号機、初出撃

 NERV

 初の実戦を経験

 第一次直上会戦

 エヴァ初号機、頭部破損、制御不能。

 完全に沈黙、

 後、暴走

 第三使徒サキエル及び初号機でATフィールド発生を確認

 初号機がサキエルのATフィールドを中和

 使徒サキエル殲滅

 迎撃施設一部破損、エヴァ初号機、中破

 同事件における被害者の有無は公表されず

  

 「その結果、我々の損害が極めて大なりとはいえ」

 「未知の目標に対し、経験ゼロの少年が初陣に挑み、これを完遂せしめた事実」

 「碇シンジ君の功績は、特筆に値するものである」

 「ただ作戦課としては、更なる問題点を浮き彫りにし」

 「多々の反省点を残こす苦渋の戦闘であった」

  

  

 「わしの妹はまだ小学6年生です」

 「この間の騒ぎで怪我しました。敵やなく味方が暴れて怪我をしたんです」

 「ワシは、そないなあほな話し、とても許せません」

 「あのロボットを作った大人に妹の苦しみを、ワシの怒りを教えたろ、思います」

  

  

 第4使徒シャムシェル襲来

 当時、地対空迎撃システム稼働率48.3パーセント

 第3東京市、戦闘形態移行率96.8パーセント

  

 「いつも友達と避難訓練ばかりやっていたから、いまさらって感じで実感無かったです」

 「男の子は遠足気分で騒いでいたし、わたし達も怖いって感じはしませんでした」 ヒカリ

  

 第4使徒シャムシェル、第三東京市に到達

 第二次直上戦

 エヴァ初号機、第二回出撃

 外部電源の切断に見舞われるも

 第4使徒シャムシェル殲滅

 NERV。原型を留めた第4使徒シャムシェルを入手。

 だが、分析結果の最終報告は、いまだ提出されず。

  

  

 第5使徒ラミエル襲来

 狙撃される初号機。

 胸部中破。パイロット負傷

 難攻不落の目標に対し、葛城一尉、ヤシマ作戦を提唱。

 承認される

 エヴァ零号機専属操縦者、綾波レイ。零号機にて初出撃

 初号機再出撃

 同深夜

 使徒の一部、ジオフロントへ侵入

 NERV

 ヤシマ作戦を断行

 第5使徒ラミエル殲滅

 エヴァ零号機大破、パイロット生還

 「碇は、何も言わないけれど」

 「あの時、目標の荷粒子砲から零号機が身を挺して初号機を守ったんだと思う」

 「いや、そう確信する」

 「その理由はひとつ。綾波だ」

 「綾波は自分の存在を気薄に感じているように見えるからだ」

 「ペシミズムとも違う何かを彼女が持っていると思う」

 「同じ14歳の子供と思えないほどに」  ケンスケ

  

  

 第6使徒ガギエル襲来

 襲われる太平洋艦隊

 「シナリオから少しはなれた事件だ」

 「結果だけなら、許容できる範囲です」

 セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレー。

 エヴァ二号機にて、初号機パイロット、碇シンジとダブルエントリーにて初出撃

 海上での初の近接戦闘及び水中戦闘にて第6使徒ガギエル殲滅

 「ただし、国連、太平洋艦隊は3分の1を失った」 02

 「失ったのは君の国の船だろう。本来なら取るに足らん出来事だ」 06

 「その程度で済んだのは、幸運だったよ」 09

 「艦隊に対する神話が終わって、手間が省けたのではないか」

 「予算で、あれこれ気を回すことも無くなる」 05

 「左様。最新鋭艦ではないという言い訳はできるがな」 04

 「言い訳だな」

 「エヴァ技術を一部流用にした最新鋭艦でも使徒と戦えない」 07

 

 

 第7使徒イスラフェル

 初の分離・合体機能を有す。

 初号機、二号機の敗退。

 N2バズーカによる時間稼ぎに成功

 初号機、二号機の再出撃。

 二点同時加重攻撃にて第7使徒イスラフェル殲滅

 

 

 第8使徒サンダルフォン。

 浅間山火口、地下1400mにて発見

 NERV

 A-17発令

 全ての社会的条件を整えての捕獲作戦を展開

 第8使徒サンダルフォンの孵化により失敗

 即座に作戦目的が殲滅に変更

 エヴァ二号機により、第8使徒サンダルフォン殲滅

  

  

 零号機の修復、改装の完了

 

  

 NERV本部

 第三東京市全域が停電

 第9使徒マトリエル襲来

 エヴァ3機による、初の連携作戦によって第9使徒マトリエル殲滅

  

  

 第10使徒サハクィエル襲来

 成層圏より飛来する目標に対し、エヴァ3機による、直接要撃

 初号機、初のシンクロ率120パーセント、

 初号機のATフィールドが第10使徒サハクィエルを殲滅。

 初号機大破

  

  

 第11使徒

 イロウル

 襲来事実は、現在未確認。

 NERV本部への直接侵入の流説有り

 「いかんな。これはいかんよ」 10

 「使徒がNERV本部内に侵入するなど、論外だ」 03

 「まして、セントラル・ドグマに侵入を許すとは」 12

 「もし接触が起これば、全ての計画遂行が不可能になる」 06

 「サードインパクトで人類は滅びるよ」 02

 「委員会に何か誤解があるようですが。使徒侵入の事実はありません」 ゲンドウ

 「では、碇、第11使徒侵入の事実は無い。というのだな?」 キール

 「はい」 ゲンドウ

 「気をつけて喋りたまえ。碇君。この席での偽証は死に値するぞ」 キール

 「マギのレコーダーを調べてくださっても結構です」

 「そのような記録は存在しません」 ゲンドウ

 「笑わせるな。事実の隠蔽。君の得意技だろう」 08

 「まあいい。今回の君の罪と責任は言及しない」

 「たとえ、シナリオから使徒一体が抜け落ちていたとしてもな」 キール

 「・・・・・・・・」 ゲンドウ

 「だが、君自身がシナリオを作る必要はない」 キール

 「わかっております。全ては、ゼーレのシナリオ通りに・・・・」 ゲンドウ

  

  

 初号機

 LCL液にレイが浮かぶ

 「山。重い山。時間をかけて変わるもの」

 「空。青い空。目に見えないもの。目に見えるもの」

 「太陽。ひとつしかないもの」

 「水。気持ちの良いもの」

 「花。同じものがいっぱい。いらないものもいっぱい」

 「赤い色。赤い色は嫌い。流れる水。血。血の匂い」

 「血を流さない女。赤い土から作られた人間」

 「街。人の作り出したモノ。エヴァ。人の作り出したモノ」

 「人は何? 神様が作り出したもの? 人は人が作り出したもの?」

 「私にあるものは、命。心。心の入れ物」

 「エントリープラグ。魂の座」

 「これは誰? これは私? 私は何? 私は何? 私は何? 私は何?」

 「私は、わたし。この物体が自分。自分を作っている形。目に見える私」

 「でも自分が自分で無い感じ」

 「とても変。身体が溶けていく感じがする。自分がわから無くなる」

 「私の形が消えていく、他の人を感じる」

 「碇君?」

 「葛城三佐? 赤木博士? クラスメート? 二号機のパイロット? 碇司令?」

 「あなたはだれ?」

 「あなたはだれ?」

 「あなたはだれ?」

  

  

 制御室

 リツコ、マヤ

 「どう、レイ? 一人で初号機に乗った気持ちは・・・」

 『・・・・・・碇君のにおいがする』

 「シンクロ率は、零号機より、4パーセント低いだけね」

 「零号機と初号機は、パーソナルパターンが酷似していますからね」

 「だからこそ。シンクロできるのよ」

 ミサトは、リツコとマヤの会話を疑わしげに聞く

 「レイと初号機の互換性に問題は検出されず」

 「では、テスト終了。レイ、上がっていいわよ」

  

      

  

 零号機、碇シンジ

 リツコ、マヤ

 「零号機のパーソナルデータは?」

 「書き換えは既に完了しています。現在再確認中」

 「シンジ君は?」

 「若干の緊張がありますが、神経パターンに問題なし」

 「一人で乗るのは、初めて、ですもんね」 ミサト

 「怖いのかしら」 アスカ

 「怖がりだから、やさしくしてあげてね」 ミサト

 「ふん・・・・・わたしは互換テスト。しなくていいの」 アスカ

 「アスカは、二号機以外に乗る気ないでしょう」

 「無いわね」

 『同じ第1使徒をコピーしたはず』

 『なのに零号機、初号機と二号機がパーソナルパターンで違いすぎるのはなぜ?』

 『本質的な何かが、秘密にされている』 ミサト

 「LCL満水」

 「第一次接続開始」

 「どう、一人で乗る零号機は?」 リツコ

 『寂しいです』

 「ケッ! 男の癖に何が寂しいよ。バカ」

 「他には?」 マヤ

 『・・・・・・綾波のにおいがする』

 「何が匂いよ。変態じゃないの」

 「主電源、接続完了。各装置正常です」

 「了解。互換テスト。開始」

 「零号機、第二次コンタクトに入ります」

 「A10神経接続開始」

 『何だこれ?』

 『あ、頭に入ってくる。直接。何か・・・』

 『綾波? 綾波レイだよな』

 『綾波?』

 『違うのか?・・・・綾波と乗ったときと違う』

 

 

 発令所

 ミサト、リツコ

 「どう?」

 「初号機とのシンクロ率よりは、落ちるわね」

 「全て、正常値です」

 「良い数値だわ、相互互換テストが成功すれば・・・・上手く行くわね」

 「ダミーシステムですか?」

 「他に選択の余地はないのですか?」

 「子供達にいつまでも死線を歩ませるというの」

 「あの子達は十分に犠牲を強いたのよ」

 「使徒戦の多くが一歩間違えれば死んでいるの」

 「で、ですが・・・・・・」

 「人類に潔癖さを優先できるだけの能力も余裕も無いの」

 突然、ガクガクと動き始める零号機

 「何どうしたの?」 ミサト

 緊急事態の表示

 「パイロットの精神パルスに異常発生・・・精神汚染始まっています」

 「全回路遮断。電源カット」 リツコ

 「エヴァ、内部電源に切り替わりました」

 「精神汚染? 暴走? まさか、このプラグの深度ではありえないわ」

 「プラグではありません! エヴァからの侵食です」

 「何ですって・・・複座では起きなかったのに」

 壁を壊し、自由になる零号機

 「全てのパルスが逆流しています!」 男性オペレーション

 「汚染区域、さらに拡大」女性オペレーション

 「零号機、制御不能」

 「神経回路、3番から57番、77番、103番から109番までが遮断できません」

 「パイロットが危険です」

 零号機が制御室に近付く

 「零号機がシンジ君を取り込もうとしたの・・・・それとも拒絶?」

 零号機がさらに接近。ガラスの向こう側にいるレイに殴りかかる零号機。

 「・・・・・碇君」

 レイ、微動だにせず不安げに呟く。ガラスにひびが入る

 「レイ、逃げて!」ミサト

 ひたすら壁に頭を打ち続ける零号機

 「シンジ君は?」

 「神経回路遮断に成功しました。モニターできません」

 「零号機の活動停止まで10秒」女性オペレーション

 壁に頭を打ち続ける零号機が停止。それを見つめたままのレイ

 「パイロットの救出。急いで」  ミサト

 「まさか、レイを殺そうとしたの・・・零号機が?」  ミサト

 「この事件、先の暴走事故と関係があるの?」  ミサト

 「わからないわ」

 「コアのデータをレイに戻して、早急に零号機の追試。シンクロテストが必要ね」  リツコ

 「作戦課としては、仕事に支障が出ないうちにお願いするわ」

 「わかっているわ。葛城三佐」

 去っていくミサト

 「零号機が、殴りたいのは、わたしね。間違いなく」  リツコが呟く

  

  

 病室303号室

 ハッと眼を覚ますシンジ。

 「また、この部屋か」

  

  

 発令所

 「シンジ君の意識が戻ったそうです」

 「汚染の後遺症は無し」

 「彼自身は気分が悪くなってからの記憶は無く、何も覚えていないそうです」 日向

 「そう」 ミサト

  

 404号室

 「ミサトさんも加持さんも教えてくれない」

 「シンジは疑問さえも思わない」

 「ファーストってどういう娘なの?」

  

  

 NERV

 総司令公務室

 「人類補完委員の突き上げ。文句を言うばかりのくだらない連中だ」 冬月

 「切り札は、全てこちらにある。彼らには何も出来んよ」

 「だからといって、怒らせることはあるまい・・・」

 「いま、ゼーレが乗り出してくると面倒だぞ」

 「彼らが財源を止めるだけで、NERVは3ヶ月で解体だ」

 「まだ、シナリオから外れてはいない」

 「零号機の事故は?」

 「シナリオに無いぞ」

 「あれは、現在のレイとダミープログラムとの間に差異が広がっているということだ」

 「その後のレイと零号機の再シンクロは成功している。ダミープログラムに支障は無い」

 『碇、レイにこだわりすぎだ』

 「リリスの再生も計画通り、2パーセントも遅れていない」

 「ロンギヌスの槍は?」

 「レイが作業している」

    

  

 発令所

 コーヒーの香りが充満している発令所。

 空のドリンク剤とコーヒーが散在して、徹夜明けのリツコ、マヤと数人のオペレーター。

 「・・・堪えたわね」

 「初号機のブラックボックスから第10使徒の能力の割り出し。半端じゃないですね」

 「エヴァ光質が質量を。ATフィールドが、慣性重力を自在に変えられるとして・・・」

 「第10使徒の欠片でもあれば、質量の計測も楽なんですけどね」

 「初号機は一時的にハーモニックス率75パーセント」

 「シンクロ率で120パーセントをはじき出したのは驚愕に値するわね」

 「慣性された質量を全てN2爆弾と仮定した場合」

 「それを大砲のように包み込んで、宇宙に飛ばしたとすると・・・」

 「弾き出される数値に矛盾が起こる」

 「シンジ君のATフィールドの筒の直径から推測すると・・・」

 「反動で天井都市が抜け落ちてジオフロントは潰され」

 「地球の軌道が変わってしまいますね」

 「形跡はないけど、本当にワイングラスのように底が広がっていたと見るべきかしら」

 「矛盾といえば、あれだけの推定質量と速度を受け止め」

 「瞬時に使徒と初号機を押し上げて500m以上も上空に浮かばせた」

 「あの、でたらめなATフィールドも見逃せない」

 「ATフィールドの性質、そのものが理解に苦しみますね」

 「空中を飛ぶ使徒がATフィールドを使っているのはわかるけど」

 「慣性質量を制御しているのに過ぎない・・・・」

 「今回の初号機のそれとは違うように思えるし・・・・・」

 「初号機の体内電力から判断しても、あのエネルギーは説明の付けようありませんね」

 マヤがため息をつく

 「使徒というのは、巨大な蟻のような力があるわ」

 「供給した電力から判断すると矛盾してくるけど、質量に比例すればね」

 「一応、使徒の質量は、エヴァと同率で算出してほぼ正解している」

 「第9使徒もまだ終わっていないのに・・・」

 「それどころか、第1使徒から第10使徒まで終わっていないわよ」 リツコ

 「あのう・・・センパイ・・・第2使徒は・・・」

 「・・・10年前に・・・・第2使徒は東京と一緒に吹き飛んだわ」

 「エヴァも第3東京市も準備が出来ていなかったから、碇司令が一計を案じた」

 「使徒が求めるものはリリスだから、そのリリスの一部にN2爆弾を組み込んだの」

 「使徒がリリスを取り込んだ瞬間にN2爆弾を内部から破砕させた」

 「タイミングを誤っていたら、そのときにサードインパクトが起きていた」

 「完全ではないけれど」

 「碇司令は、そのときから力があったんですか?」

 「あるわけないでしょう」

 「NERVの前身のゲヒルン時代だもの」

 「民間研究所の雇われ所長でしかなかったし、委員会の末端組織で国連の援助すらなかった」

 「大枚をはたいてN2爆弾を仕入れたらしいけど」

 「その時は、誰も信じていなかった」

 「だから、東京の市民1000万を道連れよ」

 「・・・な、何とかならなかったんですか?」

 「使徒が来なければ爆発は起こらなかった」

 「誰かに知られたら必ず妨害されて、碇司令は、抹殺されていた」

 「N2爆弾によるテロとして・・・」

 「本当は、南半球でやろうとしていたけど間に合わなかったらしいの」

 「特製のN2爆弾が、ようやく完成したとき、使徒が襲ってきたみたいね」

 「セカンドインパクトから5年後、防衛システムは大穴があってお手上げ」

 「当時の記録は残されていないけど」

 「ゲヒルンのメンバーだけは、東京から命からがら逃げ出したそうよ」

 「リリスの下半身がないのは、それだったんですか?」

 「絶対位相圏を形成しているリリスが解体された経緯で、ロンギヌスの槍を使ったのは確かだけど。良くわからないの」

 「すべてを知っているのは、ゼーレだけ」

 「ゲヒルン当時の碇司令も蚊帳の外だった。冬月副司令も全容は知らない」

 「1000万人が・・・」

 「セカンドインパクトの総被害に比べたら微々たる物よ」

 「東京の爆発を除けば日本の被害自体、津波と地震。火災だけで少なめよ」

 「他の国では、内戦、疾病、餓死、鎮圧で、その10倍が、死んでいるもの」

 「仕方がないことだったんですね」

 「このことは、秘密にね。外部に漏れても良い事ないから」

 「日本政府も、国連も、ゼーレも、直接関わっていないから」

 「結果はともかく、いえ、結果すら、第2使徒を認めたくないの」

 「NERVも含めてね」

 「・・・わかりました」

 「取り敢えず。一息付けてメルキオールが終わったから」

 「5分後にバルタザールの自己診断プログラムをスタートさせて」

 「休憩にしましょう・・・」

 「先輩。第二使徒の名前って・・・」

 「・・・ザフキエル」

 「人間が必要な知識を的確に扱えるか、監視する天使よ」

  

  

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 『一人暮らし』は、新世紀エヴァンゲリオンの本編再構成ものです。

 というわけで、少しばかり基本の構成を変更しています。

 最大のものは、リリスを母性格にして、使徒から切り離していること。

 人類を含む使徒を男性格ということにしていることです。

 バッサリ。スッキリです。

 ということで、リリスを第2使徒にしていません。

 というより、リリスを使徒にしてしまうと、何で使徒が、使徒に向かっていくの?

 ということになってしまうので、少しばかり、不自然になるからです。

   

 逆にアダムを父性格にして、人類を含む使徒と女性格にする方法もあって。

 女性格の使徒が父性格のアダムに向かってくる。

 萌えな、感じも、ありですが、

 それだとリリスを張り付けにしている理由が思いつかないので、前者にしてしまいました。

   

 ということで、新世紀エヴァンゲリオンの謎解き小説が・・・・・

  

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第18話 『奇跡の後は』
第19話 『第2使徒は、秘密よ』
第20話 『使徒、侵入』
登場人物