月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

    

 「科学者としての母親は尊敬していた」

 「でも、女としての母は憎んでさえいたわ」

 「お喋りね。今日は」

 「たまにはね」

 「カスパーは、母親の機能もある。お母さんらしいことは、しなかったのにね」

 

第21話 『主婦とか似合っていたりして』

 箱根上空を飛ぶヘリ

 ゲンドウ、冬月

 「・・・第2芦ノ湖、第3芦ノ湖か、これ以上、増えないことを祈るよ」

 双子の使徒を倒したときに出来た第2芦ノ湖。

 巨大な爆弾使徒と支え押し返したときに出来た第3芦ノ湖

 「碇。昨日、キール議長から計画遅延で文句が来ていたぞ」

 「・・・・・」

 「おまえの解任についても、仄めかしていた」

 「エヴァも、アダムも、順調だよ」

 「肝心の人類補完計画だよ」

 「人類の、人類による。人類のための進化かは、わからんがな」

 「一部の妄想家による進化だ」

 「彼らが余りある権力と資本で、この世の春を謳歌していれば、こんなことにならなかったのだがな・・・」

 「老人達の最後の博愛。迷惑な話しだ」

 「功罪はある」

 「しかし、彼らがいなければ、核戦争で、もっと早く滅んでいただろう」

 「核。いや、産業革命も怪しいな」

 「老人達は、個々にコアを持っている」

 「サードインパクトを起こせば、自分達が融合体の中核として永遠に生きることが出来る・・・」

 「それが幸福か、誰も理解していないというのにな」

 「人類全てが一つの融合体として生きる理論上の幸福か・・・」

 「人類を宇宙へ放り上げるエネルギーが足りなければ、賛成できるものではないよ」

 「エネルギーが足りなければ、篭もり志向になりやすい」

 「そちらの計画は、セカンドインパクトより酷かったよ」

 「老人たちの究極の目的は、他者からの解放か、永遠の命か、どちらかな」

 「究極の目的は幸福の追求だよ」

 「このままだと人類は、この地表で野垂れ死にだ」

 「選んだ手段が迷惑な話しだが、何もしないよりましだ」

 「その野垂れ死にを加速させたのは、連中だがね」

 「少しは恩恵もあった」

 「しかし、しわ寄せが全人類ではやり切れんよ」

 「片棒を担いでいる身とすればな」

 「老人たちが消費したエネルギーなら、全エネルギー100分の1も無いよ」

 「未来の人類を地表で野垂れ死にさせる原因は・・・」

 「より豊かに生活したいという人間のエゴ。欲望だよ・・・」

 「弁護したくない人間もいるが、弁護したい人間もいるな」

 「我々が少しばかり進んでいるに過ぎない」

 「ゼーレはNERV抜きでもやってしまうだろう・・・」

 「失敗すれば、それこそ人類滅亡だ。ギリギリまで従うさ」

 「だが、レイは情緒的な不確定要素を抱えてしまった」

 「問題ない」

 「まあいい・・・ところで・・・あの男は・・・少々、目障りになってきているぞ」

 「ゼーレの目と耳だ。簡単に手を出せない」

 「彼の性格に頼るしかないのか」

 「簡単に仕組みがわかるわけでもない」

 「碇・・・明日だったな」

 「明日?・・・そうだな」

 「息子と和解したらどうだ。人並みの父親らしいことをしてみろ」

 「・・・・・・」

  

  

 京都

 とある寂れた町工場の事務所。

 ガランとした何もない室内。

 コードが切られ埃を被った旧式の黒電話。

 加持は、くつろいでいた。

 「外資系のケミカル会社。シャノン・バイオ株式会社か・・・」

 加持が工場の外に出ると、物売りをしているおばさんがいる。

 「この会社は、16年前からあるが、最初からこのまま」

 「マルドゥック機関につながる108の企業の内、106がダミー」 おばさん

 「ここが、107個目か」

 「加持。NERVの内偵が仕事でしょう。マルドゥック機関に顔を出すべきじゃない」

 「何事もね。自分で確認したいのさ」

 「そうなると、エヴァの選出は、実行機関が存在しないということになるぞ」

 「108個目に期待するか。それとも種明かしが別にあるのか」

 「16年前。この京都でなにが始まったんだろうな・・・」

 「セカンドインパクト。日本人の生存率は各国に比べて高くても、決して少ないとはいえない」

 「・・・・」

 「当人しか知らぬことは多い」

 「僅か数年の狂気の時代を知られたくないことも多い」

 「そうだったな・・・」

 加持は、遠くを見つめ、タバコの煙を出す。

   

  

 学校

 終業後の掃除

 アスカが携帯に向かって、ため息。

 「どうしたの?」  ヒカリ

 「明日の日曜日」

 「加持さんにどこかつれて行ってもらおうとして、何度も連絡しているのにつかまらなくて」

 「ふうん。じゃ 明日は暇ってわけね?」

 「うん」

 「ラブレーター貰っている男子達は?」

 「無視!」

 「じゃ 帰りに付き合って、アイス奢るから」

 「でも、本部に・・・・・」

 アスカは、何気なくシンジを見る。

 シンジは、ホウキを持ってボンヤリと雑巾を絞っているレイを見ていた。

 何故かムッとするアスカ

 レイは黙々と拭き掃除。

 でぃっ!!

 突然、シンジにホウキで面が決まる。

 「おらっ シンジ。まじめにやらんかい!」

 シンジは慌てて、ホウキ構えて剣道を始める

 「まじめにやるのは掃除でしょう!」

 「鈴原。掃除をしなさい、掃除を!!」

 「いいわ、アイスは、3段重ねよ」

  

  

 公園

 ヒカリ、アスカ

 「ええぇぇぇ!! ディトォオ〜!?」

 3段重ねの一番上が下に落ちる

 「コダマおねえちゃんの後輩で、どうしてもっても紹介して。って頼まれちゃって・・・ね」

 ため息のアスカ

 『日本人って、おせっかい』

 「ねっ! 断れなくなっちゃって、悪い人じゃないわよ」

 「容姿端麗、性格良し、頭良し。非の打ち所なし」

 「じゃ 鈴原を誘ってダブルデートは?」

 「だだだ、駄目、駄目よ。す、鈴原なんて、ぶ、ぶち壊しになっちゃうから」

 「ふうん。やっぱり、好きなんだ」

 真っ赤になるヒカリ。

 「・・・と、とにかく、お願いね」

 「そうね・・・たまには・・・良いか」

 「じゃ 明日、朝、9時の待ち合わせね」

 『戦わずに諦めるか。日本人らしいわね』

  

  

 NERV

 シミュレーションプラグの実験場

 二号機

 アスカとシンジのダブルエントリー

 「ミサト。明日の結婚式、何を着ていく?」

 「ピンクのスーツは、キヨミの時に着たから。紺のスーツは、コトコの時に着たし・・・」

 「オレンジは・・・あれ、似合っていたわよ」

 「あ、あれは・・・チョッチ、わけありで・・・・」

 「・・・太ったわね」

 「出費がかさむわ」

 「結婚祝いも立て続けだと、洒落にならないわね」

 「チッ! 三十路前だからって、どいつもこいつも焦りやがって・・・・」

 「お互い最後の一人にはなりたくないわね」

 「アスカ、シンジ君。あがっていいわよ」

 「レイちゃんのケアをしないとね」  ミサト

 「表面的には、出ないけどね」

 「でも、このあと、シンジ君に、べったりよ。本人は、気付いてないみたいだけど」

 「一応、適当な理由を付けて、レイを外しているけど」

 「アスカは、文句を言わなくなって良いんだけどね」 ミサト

 「かなりショックみたいね。前々回の使徒戦。ボディブローのように効いている」

 シンクログラフの落ち込みが出ていた。

 「あんなもの見せられたら勝てないと思うわよ。アスカも自信喪失しているんじゃない」

 「アスカのフォローが必要じゃないの」

 「レイには、シンジ君がいるんだから」

 「アスカか。シンジ君が凡庸すぎるのよね。しかもレイとくっついているし」

 「難しいわね」

 「で・・・結果は?」ミサト

 「やはり、シンジ君に押されるような形でアスカのハーモニックス率が微妙に伸びている」

 「どうして、直接、二号機とシンクロ出来ないシンジ君の影響でアスカのハーモニックス率が向上するの?」 ミサト

 「第4使徒戦を踏まえ。第6使徒戦の結果として、わかったことなのよ」

 「・・・・」

 「理論付けるのは早々だけど、シンジ君のエヴァに対する姿勢にあるのかもしれない」

 「姿勢ね〜」

 「エヴァを拒絶していないというか、精神的に無防備なことね」

 「アスカは、技巧に走ってエヴァを精神的に拒絶している」 ミサト

 「シンジ君とのダブルエントリーでアスカの不調が軽減されている節もあるのよ」

 「うそ、アスカの調子悪いの?」 ミサト

 「ええ、低迷中」

 「シンジ君も、レイも、シンクロ率を上がっているのに」

 「アスカは、シンクロ率の伸びが第10使徒以降、低迷中」

 「・・・・・」

 「シンジ君とのダブルエントリーのあとだけ、微妙に伸びを見せている」

 「アスカ自身、それがわかっているから焦っている」

 「ええ、シンジ君とレイのダブルエントリーの相乗効果は高いから」

 「シンジ君も、レイも単独で、アスカのレベルに近付いている」

 「でも、人間側の限界というレベルじゃないの?」

 「理論上。人間側のレベルの限界が100パーセントなのよ」

 「だから、まだ、余裕があるわけ」

 「・・・・」

 「第10使徒のときシンクロ率120パーセントを出したシンジ君が異常なのよ」

 「じゃ 机上の計算を超えてシンジ君が使徒に近付いたの」

 「そういうこと」

 「危険なの?」

 「注意しなければならないレベルではあるわね」

 「歯止めが利かなくなって下手をすると初号機に取り込まれる」

 「危な過ぎるじゃないの。人権をなんだと思っているの」

 「人権で使徒を倒せるなら、お任せするけど」

 「・・・まあ、綺麗ごとじゃないんだけどさ。子供達に情がいっちゃってね」

 「ふうん、明日。碇司令とシンジ君が会うの知っている?」

 「親子対決か。吉と出るか、凶と出るか」

 「親子なのにね」

 「親子だからよ」

 「シンジ君。ここに来て初めてお父さんと二人っきりになるんじゃないの?」 ミサト

 「なに甘いこと言っているのよ。3年ぶりのはずよ」

 「誰か実況中継してくれないかしら」

 「趣味悪いわね」

 「そういえば、追跡衛星の追加打ち上げが予算不足で遅れているでしょう」

 「子供たちの監視。どうするの?」

 「初号機が第10使徒を吹き飛ばしたとき、巻き込まれた追跡衛星で止めを刺されたわね」

 「子供たちの安全保障に穴が出来るのは不味いか・・」

  

  

 シンジとアスカがエントリープラグから出る

 「アンタ。今日は暗いわね」

 「・・・そ、そうかな」

 「あのね・・・こんな美人と一緒にエントリプラグに入れて何か不満なわけ?」

 シンジは、危険な波長を感じる。

 「そ、そんなことないよ。とても嬉しいよ・・・光栄」

 「まったく。むかつくやつ。明日はデートなのに・・・」

 「へぇ〜 加持さんとどこかに行くんだ。良かったね」

 「加持さんが捕まらなかったから代用よ」

 「まったく。ヒカリも余計なお世話して」

 「・・・・・」  シンジ

 「なによ」

 「なんでもないです」

 「あとは体術訓練ね・・・」

 シンジは、アスカの不敵な表情に怖気まくる。

 アスカにコテンパンに打ちのめされるイメージが条件反射的に自動展開される。

 「お、お手柔らかに」

 「いっぱい。可愛がってあげるわ」

 「・・・・」 青

  

  

 休憩所

 シンジは、綾波に近付く

 「どうしたの?」

 「・・・ちょっと聞きたいことがあって」

 「なに?」

 「お父さんのことなんだけど・・・・」

 「碇司令のこと・・・?」

 「明日会うんだ」

 「それで?」

 「それで、なにを話していいか、わからなくて」

 「どうして、私にそんなこと聞くの?」

 「まえ・・・綾波とお父さんが楽しそうに話しているのを見たことがあるから」

 「・・・・・・」

 「お父さんってどんな人? あの、教えてよ」

 「・・・わからない」

 「そう・・・」

 「それが聞きたくて、昼間から私のほうを見ていたの?」

 「うん」

 「そうそう。掃除のとき、綾波が雑巾絞っているの見てたらさ」

 「なにか、お母さんって感じがした」

 「お母さん・・・・?」

 「ほら、こうやって絞っていただろう。これって、お母さんの絞り方って気がする」

 「・・・・」

 「案外、綾波って主婦とか似合っていたりして」

 「なにを言うのよ」

 「・・・・」

  

  

 NERVの帰り

 シンジ、アスカ

 「シンジ。ファーストは?」

 「赤木博士に呼ばれて遅くなるって」

 「ふうん・・・ちょうどいいわ。付き合って」

 「えっ なに?」

 「明日のデートの小物よ」

 「へえ、意外に楽しみにしてたんだ」

 「そんなわけないでしょう。身だしなみよ。儀礼的なもの」

 「そう・・・・」

 「アンタね。暗すぎよ。明日、お父さんと会うんでしょう。しっかりしなさいよ」

 「どうして知っているのさ」

 「ふん、アンタと碇司令の親子関係は、注目されているのよ」

 「NERV中が関心持っているわよ・・・・」

 「面白がっているんだね」

 「もちろん、シンジが碇司令をやり込めたら褒美を上げるわ」

 「な、なんだよ。やり込めるって、そんなんじゃないよ」

 「あら、父子なんて、そういうものよ」

 「で、ど、どこに行くの?」

 「こっちよ。そうだ。シンジにプレゼントしてもうらうんだっけ」

 「そういえば・・・そんな約束をさせられていたような」

 「何ですって、無理強いはしてないわよ」

 「喜んで、プレゼントさせていただきます」

  

 シンジは、アスカに付き合って、連れまわされる。

 いつの間にか、アスカの買物を持たされるシンジは、下僕だった。

 周りの注目も俄然集まる。

 近くでアスカに見とれた男の子が連れの女の子に引っ叩かれる。

 アスカは、腰の高さ、スタイルの良さも含めて、総合すれば、対抗しうる女の子は近くにいない、

 美しさで圧倒的だった。

 周りでアスカに見とれ、

 シンジに嫉妬の炎を投げ付ける男たち。

 ため息をつく。

 『はぁ〜」

 「最高峰を登って征服する喜びか。よっぽど物好きじゃないとね。アスカは高すぎるよ』

 で・・・不意に思いつく。

 『さてと・・・・』

 シンジは、適当に貴金属のケースを見てルビーのついたプラチナのネックレスを選ぶ。

 レイに贈ったサファイアのネックレスと対になるようなネックレスだった。

 都会だけあって、デザイン的に洗練されている。

 シンジは何気なく選び、

 カードで支払いを済ますと試着が終わったアスカにネックレスを渡した。

 「・・・あんたバカぁ?」

 「・・・・・」

 「こういうのは、渡すんじゃなくて付けて、あげるものなの」

 「・・・・・」

 「ほら、付けて付けて」

 アスカの言葉に引きつるシンジ

 シンジは、針のムシロにさらされながら、

 自分より身長の高いアスカの首に手を回してネックレスを付ける。

 「なに真っ赤になってんのよ」

 「どう? 似合う」

 「うん、良いと思うよ」

 「ふうん、ファーストがサファイアで、わたしがルビーね」

 「まあ、いいか、シンジ。ありがとう」

 『来るんじゃなかったよ。アスカと付き合うなんて、心臓が強くなくっちゃ』

 シンジは、背筋を嫉妬の矢にさらされながら思う。

 

  

 不意に自分に向けている視線の方向を把握できて驚く。

 闇打ちの訓練の結果だろうか。

 シンジの表情の変化にアスカが気付く。

 「ふ〜ん。まだまだね。初歩ね、初歩」

 「アスカのお陰です」 社交辞令

 シンジは、アスカの試着ショーを眺めて過ごした。

 トウジなら最初は、喜んで10分で飽きるだろう。

 ケンスケならよだれを流さんばかりで写真を取り続けるだろう。

 シンジといえば、アスカが怖いから付き合っているだけで、

 明日、父と何を話そうか思いふけることが多い。

 「ほら、行くわよ。持って」

 アスカは、ネックレスを付けたまま、外へ向かう。

 「えっ うん」

 シンジが、大袋3つ分を持たされて、外に出ると既に暗くなっていた。

 「シンジ。食事はどうするの?」

 「えっ 今日は、外で食べようかな」

 「じゃ 一緒に食べよう」

 アスカは、グルメ本を取り出す。

 「うん、近いところがいいな」

 「シンジ。走らなくなって、たるんだんじゃないの・・・・」

 「そ、それもあるけど、今日は、気分的に疲れたくなくて」

 「鬼教官って、いるんだけどね。そいつに当たってしまうと、いまの一言で殴られるよ」

 「・・・・・」 シンジ

 「一年くらい、彼に鍛えられたけどね」

 「シンジは、良かったわね・・・いきなり実戦で」

 「ど、どうして?」

 「戦場で鬼教官やってたら後ろから撃たれるの」

 「どさくさにまぎれてね。でも必ず強くなる」

 「だからアスカって強いんだ」

 「そうなんだけどね・・・」

 「・・・・・・・・・・」

 「正直言って・・・・あれを見せられたらね・・・・・」

 アスカが珍しく陰りを見せる。

 「・・・・・・・・・・・」

 シンジは、なんと言っていいか、わからない。

 「ここに行くわよ」

 アスカは、グルメ本を見せた。

 「うん」

 アスカが歩き出し、シンジが続く。

 「アスカのお父さんってどんな人なの」

 「NERVの優秀な科学者よ。まあ、まじめで、気弱で大人しいかな・・・」

 「・・・・・」

 「シンジのお父さんよりは、わかりやすいけど。再婚してから、ほとんど話してない」

 「・・・・・」

 「ママは良くしてくれたけど、馴染めなくて」

 「ふうん、お父さんは優しいの?」

 「やさしければ、良いというものじゃないけど・・・」

 「再婚したのがイヤだったんだ」

 「お母さんは、実験の失敗で、おかしくなっていたけど生きていた」

 「・・・・」

 「でも、パパは他の女と付き合い始めた。それがいまのママよ」

 「悪いこと聞いたね・・・ごめん」

 「なんでアンタなんかに、こんな話しをしてしまうのかしら」

 「ごめん」

 「シンジ。いちいち、謝るなって言ったでしょう」

 「冴えない男ね。もうちょっと、マシなセリフを覚えなさいよ」

 「うん」

 「まぁ 変にすれていないのは、それは、それでいいのかもしれないけどね」

 「謝れば済むなんて思ってたら駄目よ」

 「・・・・・」

  

   

 ステーキハウス

 シンジ、アスカ

 「・・・やっぱり肉よね」

 「久しぶりの肉だな」

 「あんた。ファーストに付き合って、肉食べてないの?」

 「うん」

 「はぁ〜 だから男の癖に軟弱なのよ」

 「肉、食って、明日は、一発、父親に言いたいこと言いなさいよ」

 「言いたいこと?」

 「あんたバカぁ〜! 何も考えずに行くつもり?」

 「・・・・・」

 「いいように言い包められて、あとで悔しい思いするだけよ」

 「・・・・・」

 「碇司令が言いそうなことを前もってイメージトレーニングして」

 「逆に言い負かしてやりなさいって言っているのよ」

 「・・・・」

 「あの双子使徒の時みたいにね」

 「あの時・・・・・」

 「あれは、まあ、私も巻き込まれ損だけど」

 「でもあの後、NERVで、あんたの評価は変わったはずよ」

 「そうなのかな?」

 「人を巻き込まないで、一対一でやりなさいって言ってるの」

 「むかしは・・・もっとやさしそうな父親だった気がする・・・・」

 「・・・・・」

 「お母さんが死んで変わってしまったんだ」

 「今は、どういう人なのかわからない」

 「・・・あの色つきのメガネよ」

 「サングラス?」

 「疑わしいけど意外とむかしのままかもしれないわね」

 「その優しそうな眼を隠すためにサングラスで隠している・・・」

 「・・・・」

 「そういう可能性も、あるわね」

 「サングラスは、正直者が相手に自分の真意を伝えさせないための手段でもあるの・・・」

 「きっと嫌われている・・・・僕はいらないんだ・・・」

 「・・・・」

 「エヴァに乗れるから呼んだだけで、そうじゃなければ・・・」

 「ずっと会う事もなかったと思うよ・・・・」

 「基本的に父親っていうのは排他的で一定の距離を維持するのよ・・・」

 「そういう点では、あまり希望を持たない方が良いわね」

 「あなたのお父さんにとって、いまの距離が一番居心地の良い距離よ」

 「そうかもしれない」

 「学校や近所でもお父さんがお母さんを殺したって、よく虐められたから」

 「・・・・・」

 「預けられた所も親戚もお金が目当てだったし」

 「お父さんは、僕を助けてもくれなかった」

 「ふ 虐められて、いじけて、ふさぎ込んで、泣き寝入り・・・軟弱なやつ」

 「・・・・・・」

 「あの司令が、そんなイジケ息子を助けたりしないわよ」

 「だ、だけど・・・」

 「こんなやつが命の恩人というのが情けない」

 「もっとしっかりしなさいよね。訓練受けているんでしょう」

 「・・・・・」

 「並以上のはずなんだけど、そう見えないところが不思議よね」

 「・・・・・・・・・・」

 「ファーストとキスした?」

 「し、してないよ」

 「はぁ あんた。自分からキスできないタイプなの・・・・」

 「まさか、ファーストにキスしてもらうの待っているんじゃないでしょうね」

 「そ、そんなことないよ」

 「そ、そういう機会がないだけだよ」

 「・・・・・・」

 「き、機会がなかっただけだよ」

 「あの人形みたいな女のどこがいいわけ〜」

 「そ、そんなのわかんないよ」

 「あんたって男は、よくよく、私のプライドを傷付けてくれるわね」

 「ぼ、僕は、アスカのこと大切に思っているけど、傷付けようなんて思っていないよ」

 アスカ、呆然

 「あ、あんた。突然。口説き文句を言うわけ・・・・」

 アスカ、少し赤くなる。

 「え、いや・・・そういうわけじゃないけど・・・一緒に戦っているから・・・・」

 「つまんないやつ・・・」

 「ごめん」

 「まあ・・・二股かけるようなタイプじゃないと思ってたけどね・・・」

 「そこで押しがあれば、刺激があって面白いけど」

 「面白いって?」

 「張っ倒す!」

 「そ、それ乱暴だよ」

 「とにかく、しっかりしなさいって事よ・・・」

 「同じエヴァのパイロットとしてね。こっちのほうが情けなくなる」

 「うん」

  

 

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第20話 『使徒、侵入』
第21話 『主婦とか似合っていたりして』
第22話 『魂の座』
登場人物