月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

第22話 『魂の座』

 翌日。

 結婚式会場

 新婦の友人達がてんとう虫のサンバを歌い。

 ミサトとリツコは隣同士で座っている。

 「加持君。来ないわね」 リツコ

 「あのバカ。時間通りに来たことなんて一度もないわよ」

 「ホントいいかげんなやつ」

 「デートの時は、でしょう。仕事は、きちんとしていたわよ」

 「・・・・・・」 むすぅ〜

 しばらくすると加持が案内されて来る。

 「お二人とも、今日は、一段とお美しい」

 「遅い!」

 「時間までに仕事抜けられなくてね」

 「いつも暇そうにプラプラしているくせに」

 「その無精髭、何とかならないの・・・ネクタイが曲がってる」

 ミサトが加持のネクタイを直す

 「こりゃどうも」

 「あんたたち、夫婦みたいね」

 「そう? いいこというね」

 「誰が、こんなやつと」

 

 

 墓地

 荒涼とした大地に白い棒をさしただけの墓標が延々と広がる。

 セカンドインパクトの津波と地震で亡くなった者たちの墓。

 シンジとゲンドウは、誰一人いない墓地の高台に立っていた。

 『IKARI・YUI 1977〜2004』

 と刻まれた墓に花が添えられる。

 「・・・・久しぶりだな、二人でここに立つのは」

 「僕は、あの時逃げ出して・・・その後は来ていない」

 「ここにお母さんが眠っているって・・・ピンと来ないんだ」

 「顔も覚えていないのに」

 「人は、思い出を忘れる事で生きている」

 「だが、決して忘れてはならない事もあるのだ」

 「ユイは、そのかけがいのないものを教えてくれた」

 「わたしは、その確認をするためにここに来ている」

 「僕は、お母さんの顔とか覚えていない、写真とかないの?」

 「残ってはいない。これも遺体のない墓。ただの飾りだ」

 「先生の言っていた通り、全部捨てちゃったんだね」

 「全ては、心の中だ。いまは、それでいい」

 「い、いいもんか!」

 「僕は、お母さんの顔すら覚えていない。心にも残っていない」

 それまで、相手を見ようともしていなかった。

 シンジとゲンドウが初めて顔を向け合う。

 「「・・・・・・」」

 ゲンドウの携帯が鳴る。

 「私だ。そうか、わかった。時間だ。先に帰るぞ」

 「お父さん!」

 「なんだ」

 「お父さんは、サングラス越しに隠れて、ちゃんと見ていない」

 「見てもらおうともしていない。僕も、お母さんも」

 上空からVTOLが降りてくる。

 熱風が吹き荒れる。

 重戦闘機の窓にレイが乗っている。

 ゲンドウは、サングラスを外し。

 「「・・・・」」

 少しの間、息子と見詰めた後、去っていく。

  

  

 綾波ビル

 アスカが部屋に戻ろうとすると。

 403号室から音楽が流れてくる。

 興味を持って、ドアを回すと開く。

 こっそり、中に入るとシンジは、チェロを手にして、バッハの無伴奏チェロ組曲を演奏。

 シンジは、演奏に没頭して気が付かない。

 いつになくシンジの真剣な表情に感心し、

 演奏が終わると。

 拍手

 シンジは、突然の侵入者に驚く。

 「珍しい音楽が聞こえると思ったら・・・チェロなんて持ってたんだ」

 「ずっと、しまったままで、今日は、なんだか弾いてみたくて」

 「追悼曲・・・結構、いけるじゃない」

 「褒められるほどの才能じゃないよ。5つのころからやって、この程度だから」

 「9年か。天才じゃないのは確かだけど、並以上ね」

 「本当は、すぐにやめても良かったんだ」

 「先生に言われて始めたことだし、あまり好きじゃなかったし」

 「じゃあ、何で続けたのよ?」

 「誰にも止めろと言われなかったから」

 「はあ・・・」 脱力する

 「デートは、行かなかったの?」

 「まだ、昼過ぎたばかりだよ」

 「ジェットコースター待っている間に帰ってきちゃった」

 「そんなに待たされたの?」

 「ほんの15分」

 「だって退屈なんだもん」

 「シンジより、さわやかで、美形で足が長くて、体格が良くて、積極的で面白いんだけどね・・・」

 「そ、それは、可哀想だよ」

 「まともな男は、加持さんだけね」

 「・・・せっかくきたんだから、コーヒーでも入れるよ」

 シンジは、台所に向かった。

 「悪いわね。勝手に入り込んだのに」

 アスカは、チェロを持つと少し弾いた。

 「いいよ。保安部員が見張っているらしいから、カギかけてなかったし・・・」

 「ファーストは、一緒じゃないんだ」

 アスカは、チェロのコツを掴んだのか、ビバルディの「喜び」らしきリズムを奏でる。

 「うん、なんか、仕事みたいなんだ。夕食には来るって言ったけど」

 「ファーストって、たまに別行動よね」

 「綾波は赤木研究所の技術課所属で作戦課じゃないから」

 「エヴァに乗って戦うのだって出向扱いなんだって」

 「ミサトさんがブツブツ言ってたけど、変更されないみたい」

 「そうだったわね」

 「アスカ。チェロ・・・弾けるんだ」

 「弾けるのはバイオリン。チェロは、初めてだけど、まあ、似ているわね」

 「低音域をカバーしてくれるけど、大きいから持ち運びが大変じゃない?」

 「うん」

 「わたしは、バイオリン歴2年」

 「一応、たしなみで習わせられたけど、息抜きみたいなものだったから・・・」

 「シンジの方が上手いわね。我ながら酷い音」

 「へえ、バイオリン2年でチェロが初めてなのに上手いよ・・・センスあるんだ」

 「私のバイオリンは、第6使徒に壊されたけど」

 「まぁ 惜しいものじゃなかったし、本気じゃなかったから」

 「へぇ〜 高音域のバイオリンと、低音域のチェロの協奏も悪くないのに」

 「シンジのチェロには負けるわよ」

 「いまさら練習する気にもなれないしね」

 「はい、コーヒー」

 「ありがとう。っで、親父をやり込めた?」

 「そ、そんなんじゃないけど、少しは言えたと思う」

 「アスカのおかげだね」

 「ふうん・・・」

 アスカは、シンジの胸倉を掴んで引き寄せると頬にキス。

 茫然自失するシンジ。

 「褒美よ」

 アスカは、そう言うとコーヒーを一口飲んだ。

 「ア、アスカって、どういう性格しているんだよ」

 「ほんとう。あんたより格好いい。二枚目の男だったんだけどね・・・」

 「一般生活を送っている男に魅力を感じなくなったのかな・・・」

 「シンジは、冴えないけど。ファーストを出し抜くのが楽しいのね」

 「うぅ なんか性格悪い」

 「キスしてもらって嬉しいくせに」

 「・・・・・」

 真っ赤になるシンジ

 「ふふふ。私に惚れるなよ」

 「おもちゃにしている」

 「ふっ・・・」

 「・・・・・」 シンジ

 「・・・・・」 アスカ

 「・・・・・」 シンジ

 「シンジ。二号機でも初号機と同じことが出来ると思う?」

 「わ、わからないけど。戦闘スペックでは、二号機が5パーセント上回っているって」

 「・・・そう・・・デート中も、そればっかり考えてた・・・・」

 「エヴァに関係なく、アスカは、最高の女の子だと思うよ・・・」

 「僕なんかエヴァに乗れなければお父さんにさえ捨てられる。たいした人間じゃない」

 「でもアスカは違う。誰もがアスカを振り向く・・・」

 「エヴァで勝てなければ価値はないわ」

 「それに見かけだけで判断されてもね・・・」

 「今日の相手もそう。私の見かけだけ」

 「エヴァに関係なく、アスカは、最高の女の子だよ」

 「僕よりも一生懸命に生きてるもの」

 「ほう〜 それで・・・」

 「ぼ、僕は・・・」

 シンジは、口ごもる。

 アスカは、魅力的だ。

 しかし、シンジは、レイの方が気になっている。

 「やっぱり、むかつ奴ね。あんたって・・・」

 「わたしは、負けない・・・二号機も」

 「強いんだね。アスカって」

 「でもアスカの価値は、エヴァじゃなくて、アスカ自身だと思うよ」

 「二号機を・・誰も、二号機や初号機を好きになったりはしないよ」

 「・・・・・・・・」

 アスカ、少し赤くなる

 「・・・・・・・・」

 「あ、あんたって」

 「内罰的で、軟弱で、カッコ悪いくせに。突然、カッコ良いこというのね」

 「そうかな。誰かに鍛えられたからかもしれない」

 「じゃ これからも、鍛えてあげるわ・・・たっぷりとね」

 「しゃ、洒落にならないよ。アスカの鍛え方って」

 「ストレス発散に丁度いいのよね。シンジって」

 「ぼ、僕のストレスは、どうなるのさ」

 「わたしに可愛がられているんだから、喜びなさいよ」

 「マゾじゃないんだから」

 「でも退屈よね・・・」

 「訓練中は、スケジュールびっちりで窮屈だったけど。実戦待機って、たるむわ」

 「そう、僕なんか、いまの方が充実している」

 「第2東京市にいたときは、ただ惰性で生きていたから・・・」

 「死んでもいいかなとか思っていたのに」

 「いまは、生き残ったあと嬉しいんだ」

 「それって、半分死んでたんじゃないの?」

 「そうだね。本当にそう思うよ」

 「あーあ。こんな奴が命の恩人か。私も落ちぶれたものね」

 「そんなこと・・・」

 「あの時、シンジがいなかったら・・・」

 「わたしは、この世に存在していなくて」

 「こうして、のんびりコーヒーを飲んでいられなかったと思うとね」

 「悔しいやら、頭にくるやら」

 「僕が助けなければ、二号機が暴走して自分で助かったかも・・・」

 「そうなるかもしれない。そうならないかもしれない」

 「でも暴走で助かっても、それは、わたしの力じゃない・・・」

 「でも、熱膨張のヒントを出したのは、シンジね」

 「大卒のわたしが気付いて当たり前なのに・・・」

 「素直に喜べないんだね」

 「相手が加持さんだったら、素直に喜べるのにな・・・」

 「どうせ、役不足だよ」

 「シンジも、最初に会ったときより、覇気が出てきたけどね」

 「そうだね」

 「・・・ダブルエントリーでさ・・・シンジを身近に感じるときがあるんだけど・・・シンジは?」

 「うん・・・ある」

 「シンジの座っている場所から私のうしろ姿を意識したときは、心臓が飛び上がったわよ」

 「・・・なんか変な気分だよね。自分が二人いるような」

 「まぁ 慣れたけどね。余り慣れたくないけど」

 「おかげでシンクロ率も、微妙に上がっているし・・・」

 「んっ ひょっとして、アスカ、自信喪失中」

 「泣かされたいか?」

 アスカがげんこつを作る。

 「ああ。ごめん」

 シンジが怯える

 「まぁ いいか。帰るわ・・・ご馳走様」

 「うん」

  

  

 ホテルのバー

 加持、リツコが並んで飲んでいた。

 「こうして、3人で飲むのも何年ぶりかな」

 「ミサト、なんだかはしゃいでいるわね。飲みすぎじゃない?」

 「浮かれる自分を抑えようとして、また飲んでいる」

 「でも今日は逆かもな」

 「やはり、一緒に暮らしていた人の言うことは違うわね」

 「暮らしというよりも生活だよ。いま思えばママゴト。現実は甘くないさ・・・」

 「それにあのころはハイヒールなんて履いていなかった」

 「そうね。ミサトがハイヒールなんて、学生時代は考えられなかったわね」

 「ガキだったよ。一番楽しかったがな」

 「そうだ。お土産」

 加持が袋を出す

 「あら、ありがとう」

 リツコは袋から猫のペンダントを取り出す。

 「マメね」

 「女性にわね。仕事はズボラだけど」

 「ミサトには?」

 「負ける戦いはしないよ。一度、フラレていると臆病になるよ」

 「勝算はありそうだけど」

 「リッチャンは?」

 「わたしの話しは、面白くないわ」

 「・・・・」

 「ところで、京都には、何しに行っていたの?」

 「あれ? 松代のお土産だよ」

 「あまり深入りするとヤケドするわよ」

 「いくらNERVがゼーレの傘下にあったとしてもね」

 「ヤケドするなら君との火遊びの方がいいな」

 「加持〜 無節操なところは相変わらずだわ」  ミサト

 「・・・・・・・」 加持

 「クスッ! そろそろ。お暇するわ。仕事もあるし」 

   

  

 403号室

 夕食

 シンジ、レイ

 食卓には、お好み焼きと焼きそば。

 シンジは、アスカとキスしてしまったことで後ろめたく。

 それでいてレイが父といたことが、なんとなく、ショックだった。

 「墓参りのあと、お父さん、何か言ってた?」

 「なにも」

 「そう」

 シンジ、ため息。

 「碇司令と何か話したの?」

 「たいした話しは、なかったよ」

 「そう」

 「綾波は、どうして、お父さんを信じられるの?」

 「わたしの存在を認めてくれるから」

 「で、でも、それは、みんな、綾波の存在を認めているよ。僕も」

 「碇司令がいなかったら、わたしは、この世界にいなかったもの」

 「・・・・・・・」

 「碇君も・・・・ 碇司令がいなかったら、この世界に存在しなかった」

 「そ、そうだね」

 シンジは引きつる。

 『信頼出来るとか、出来ないとかいう以前の問題だね』

 『本当にそう思えるのなら、この世から不良はいなくなるよ』

 「ま、まさか、綾波って、僕の異母兄弟じゃ」

 「違うわ」

 シンジは、ホッとした。

 「そ、そうだよね。変なこと言っちゃった」

 「でも同じエヴァをシンクロ出来るから、似ているのかなって」

 「ええ、よく似ているわ」

 「だ、だからだね。綾波とエントリープラグに入ると身近に感じるのは」

 「・・・あの人とは?」

 「あの? あ、アスカとは、そういう感じは、ほとんどないんだ。綾波とは、全然違う」

 「そう」

 レイは、どことなく嬉しそうな表情になった。

 『か、可愛い。それでも、僕より、はるかに強いんだよな』

 『でも、キ、キス・・・を・・』

 シンジは、切っ掛けを探そうと思うが踏み切れない。

 家庭授業に入っても同じだった。

 すぐそばにいるのに手が出ない。

 シンジは、アスカの性格が羨ましいほどだった。

 力の差もあるが、性格の差でもある。

 「どうしたの?」

 「えっ! あ、ごめん少し、ボーとしちゃった。コーヒー入れるよ」

 シンジは、立った。

 『駄目だ。いくら、イメージトレーニングしても相手の反応が読めない』

 結局、手を出せないまま、夜が更けていく。

  

 

 深夜

 ゲロゲロしているミサト。

 そのミサトを介抱している加持。

 その後、田舎道、ミサトを背負って加持は歩く、

 ミサトはハイヒールを手にぶら下げている。

 「いい年をしてもどすなよ」

 「悪かったわね・・・いい年で」

 「そうだな。ヒールはいているんだから、時の流れを感じるよ」

 「無精髭剃んなさいよ〜」

 「加持君。私変わったかな」

 「・・・綺麗になったな」

 「あの時、一方的に別れ話しした時、他に好きな人が出来たと言うのはウソだったの」

 「知ってた?」

 「いや」

 「ありがとう・・・あとは歩く」

 加持が、よろけるミサトを支える

 「ごめんね・・・加持君が父親に似ていたから・・・」

 「わたしが憎んでいるはずの父親に加持君が似ていたから・・・」

 「父親に似た加持君を好きになるなんて・・・・滑稽ね」

 「母親や私に見向きもしなかった父親」

 「憎んでいたはずの父親に似た加持君を好きになって」

 「憎んでいた父親の組織に入って、父親を殺した使徒に復讐しているのよ、わたしは」

 「・・・・」

 「そして、加持君を捨てて、NERVを選んだ」

 「葛城が自分で選んだことだ。謝ることはないよ」

 よろけるミサト。抱きしめる加持

 「違うわ。それも違う。選んだんじゃないわ。逃げ出したのよ・・・」

 「父親から、父親の影から・・・シンジ君に偉そうに説教なんて出来ない人間よ・・・・」

 感情的になっていたミサトは、加持に唇を塞がれる。

  

  

 学校

 レイは、朝からNERVへ。

 シンジは、アスカと一緒に登校。

 ざわつく教室。

 「シンジ〜」 トウジ

 「シンジ〜」 ケンスケ

 シンジは、近付いてきたトウジとケンスケに連行される

 『まただ』

 「・・・今度は、なんだよ」

 「決まっているじゃないか、シンジ君・・・・」

 「おまえ、五体満足で学校から出られんかもしれんぞ」

 「トウジ。何かわからないけど誤解だよ」

 「ほっ ほう〜 シンジ君。俺らの友情を裏切って誤解だと」

 「そうや、シンジ。おまえは、おれらの友情を裏切ったんや」

 「チクショウ。信じていたのに俺たちの気持ちを裏切ったんだ。シンジは」

 ケンスケの泣きが入る。

 「そうや、シンジは俺たちの気持ちを裏切ったんや」

 トウジも泣き

 「だから裏切っていないって」

 「シンジ。その目で教室をぐるーぅと見回してみぃ」

 シンジは、トウジに言われるままにぐるーぅと見回した。

 教室中の7割以上の視線が自分に集まっている。

 残りもヒソヒソとなにやら話し、雰囲気が違う。

 「わかったか。全部おまえや・・・」

 「シンジ。これを見てみろ。これを」

 ケンスケが端末を見せると

 アスカにネックレスを付けているシンジの姿が映されていた。

 シンジはムンク状態

 「どうや」

 脱力したシンジが近くの椅子に座り込む

 「おまえ、これ、綾波の端末にも送られてるぞ」

 「う、うそ」

 シンジは真っ青になる

 「おまえ、全男子を敵に回したぞ。女の敵。男の敵や」

 「綾波の端末に・・・」

 シンジ、トリップ中。

  

  

 アスカ、ヒカル、チアキ

 アスカは、端末の画像を面白げに見つめる。

 「アスカ。駄目よ・・・綾波さんが、かわいそうじゃない」

 「なによ。ヒカリの手引きしたデートに備えて、シンジを連れて小物を買いに行っただけよ」

 「うぅ・・・でも・・・そうだけど・・・これは・・・」

 「ふうん、ヒカリ。そういう事するんだ」 チアキ

 「うぅ 人の世の、しがらみが・・・」

 「あらら、ヒカリのせいで碇君と綾波さんは、破局の危機にさらされるのね」

 「だって、碇君にネックレスをつけさせることないじゃない」

 「なによ。近くに男がいるのに。わたしに自分でネックレスを付けろというの?」

 「そんなの間抜けよ」

 「わたしが、綾波さんと碇君をとりなし、しないといけないじゃない」

 「でも誰、こんなの盗み取りして・・・・あいつか・・・」

 アスカは、相田を睨んだ。

 「違うわね・・・相田なら、芸術性と背景とタイミングを合わせて撮るもの」

 「匿名だけど、調べようと思えば簡単だけどね」

 「・・・あの不感症女が、どう出るか見ものね」

 アスカ。にや〜

 「だ、だから、面白半分なら止めなさいよ」

 「碇君も、かわいそうだし、綾波さんも、かわいそうよ」

 「その程度で駄目になる関係なら、遠からず自滅するわよ」

 「だけど、アスカ・・・・他人事じゃないみたいよ」 チアキ

 教室中の生徒がシンジとアスカの関係でざわつき、双方を見ていた。

 また、教室の外も野次馬が覗いている。

 「ふん・・・ただの見物人じゃない。害があるわけじゃないし。女は注目されてなんぼよ」

 「アスカ、心臓強い。碇君は、呆けているみたいだけど」 チアキ

 「うぅ わたしに原因の一端があるなんて・・・綾波さんの端末にも送られているはず・・・」

 「今日は休んでいるみたいだからいいけど・・・」

 「そうよね・・・綾波さんが、唯一心を許している碇君がアスカと、こんなことしていたら・・・」

 「ショックで自殺するかも・・」

 『殺したって、死なないわよ。あの女』

 「ちょ、ちょっと、脅かさないでよ・・・」

 「わたしが、何とかするわ・・・」

 「だから・・・アスカも面白がって二人の関係をこわそうなんしないでね」

 「そうね・・・」

  

  

 昼休み

 シンジ、トウジ、ケンスケ

 「・・・・・」 シンジ、どよ〜ん

 「おい、シンジ。しっかりしろよ」

 「・・・・・」

 「駄目やな。向こうの世界にいってもうた」

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 「少なくともシンジの本命は、綾波だな」

 「シンジは、綾波派やな」

 「ん・・・綾波派は意外と少なくないぞ。あのミステリアスさがたまらないそうだ」

 「惣流派の動きが派手なだけで、綾波派も隠然たる勢力なんだな、これが・・・」

 「しかし、おまえ、綾波どころか惣流にまで手を出すとは、さすがエヴァのパイロットやな」

 「あれは、アスカが明日、デートだからって小物買いで付き合わされたんだよ」

 「ネックレスだって、ただ、渡そうとしただけなのにアスカが付けろっていうから」

 「な、なんやそれ・・・おまえ、下僕扱いやないか」

 「そうだよ・・・だいたい背丈から釣り合わないじゃないか」

 「恋愛関係なんてあるもんか・・・向こうは、暇潰しで遊んでいるんだよ」

 「そういう関係か。なるほど、それでも惣流と街中歩けるなんて羨ましいな」

 「なんや、そうかい。それやったら恋愛関係はないな・・・」

 「好きやったら、違う男とデートするデートの小物を買いに付き合わせたりしないわな」

 「ある意味。男として見てないというか。不憫なやつ・・・」

 「おまえが綾波に走ったのも頷けるな」

 ケンスケが同情気味に頷く

 「綾波がどう思うか、はあ」

 「まあ、誠実に話すのが良いと思うが疑惑は消えないよな」

 「・・・・・」

 「よくよく聞けば災難やな」

 「まぁ 良い思いもしたんやから、リスクも伴うわな」

  

 

  

 NERV本部

 大深度地下施設中央部

 セントラルドグマ

 数十の配線やパイプがLCLの入った水槽に集中していた。

 その中にレイが裸で浮いている。

 眼を開いたレイが正面のゲンドウを見て微笑む

  

 

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第21話 『主婦とか似合っていたりして』
第22話 『魂の座』
第23話 『すき焼きの味は?』
登場人物