第23話 『すき焼きの味は?』
セントラルドグマ
加持がセキュリティカードを入れようとしていた。
ガチャッ。
沈黙の中、撃鉄の音がすると加持の動きが止まる。
・・・手を挙げる加持。
背後から銃を構えた人影が近付く。
「ふっ 背後を取られるとは、落ちたものだ」
「・・・・・・」 ミサト
「二日酔いは?」
後ろを向いたまま、加持が聞く。
「お陰で、完全に醒めたわ」
「そりゃ良かった」
「これは、仕事?」
「それとも、アルバイト?」
「趣味」
「特務機関NERV・特殊監察部所属、加持リョウジ」
「同時に日本政府内務省、調査部所属、加持リョウジでもあるわけね」
「どっちの給与が高いか知りたいのか?」
「NERVを甘く見ないで」
「碇司令の命令か?」
「独断よ・・・これ以上、続けると死ぬわ」
「碇司令は、俺を泳がせている」
「君が思っているほど危険じゃないさ」
「君に隠し事をしていたのは謝るけどね」
「昨日のお礼でチャラにしてあげるわ・・・」
「これ以上のことをしなければね・・・」
「スパイは、国際法で保護されていない。すぐに射殺できるのよ」
「碇司令もりっちゃんも君に隠し事をしている」
「・・・・」
「これは、ほんの一部だ」
加持が何気なくカードを通す。
ミサトは撃とうとして、ためらう。
ゴォオン。
という音がするとエヴァが通れそうなほど巨大で重厚な扉が開かれる。
七つの眼が描かれた面をかぶり。
下半身のないエヴァクラスの巨人がロンギヌスノ槍で胸を貫かれ、
十字架に張り付けされていた。
「エヴァ?・・・違う」
「リリスだよ。全ての使徒は、このリリスを目指してサードインパクトを起こそうとする」
「これが、リリス」
「こいつが、セカンドインパクトを起こして人類を滅ぼしかけた」
「人類補完計画、E計画の要でもある」
「・・・・・・」
「気を付けろ葛城」
「NERVの目的がおまえの理想に反している可能性もある」
「・・・・・・」
商店街のゲーセン。
シンジは、トウジとケンスケに慰められながら放浪していた。
「はあ・・・・」 シンジ
「シンジ。落ち込むなよ。これで終わりじゃないさ」
ケンスケは、エヴァのゲームで遊ぶ。
零号機、初号機、二号機の選択が可能。
ケンスケは、器用に動かしながら使徒を倒していく。
シンジが見る限り、かなり正確なデータに思えた。
「シンジもやれよ。面白いぞ」
「い、いいよ。でも、現実にかなり近いけど。どこから仕入れたんだろう」
「自由主義経済は、需要さえあれば、供給は自然に起きるのさ・・・」
「この、暴走モードに入ると強くなるというのは、良し悪しだな」
「操作が手から離れて勝手に使徒をやっつけてしまうんだ」
「普通、我を忘れると弱くなるのに。本当なのか?」
「・・・反則だね」
もはや、機密を守れる段階ではなくなっている。
フリーの記者が命がけで撮影した映像。
それが高額で売買されているのは、NERV内部でも知られている。
それどころか、おもちゃ屋が命懸けで戦場に入り込んでいる、と耳にしていた。
「ウルトラマンの3分よりも長いけど」
「ケーブルが切られると5分しか持たないのが情けないよね・・・」
「よく、いままで、勝ち残れたね」
「うん、少し間違っていたら死んでいたのが多いね」
「シンジ。おまえ、実戦経験者なのに何か足りないような」
「いや、何かを失っていないような。上手く言えないな〜」
「えっ! なに?」
「いや、なんかさ。シンジって、普通。過ぎてさ」
「そう、似たようなこと言われたことがあるよ」
「ケンスケ。何か、インチキしてんやないか?」
対戦相手のトウジがブツブツ呟く。
「ゲームのルールに違反してないよ」
「この暴走ちゅうのは、なんや。普通、暴走したら弱くなるんとちゃうか?」
「エヴァは特別なんだよ」
「なんで、こっちは暴走しないでギタギタにされて、負けてしまうんや。なっとくいかへん」
「タイミングと当たり所だよ」
「なっとくいかへん!」
NERV
総司令官公務室
ゲンドウ、冬月
「・・・・」 ゲンドウ
「・・・悪くない展開だな」
「・・・ふっ」
「パイロットを同じマンションに集めて牽制させた甲斐があったな」
「・・・・ああ」
「しかし、ライバルの存在が火をつけるという可能性もある。闘争心というやつでな」
「火が付きやすいのはどっちかな」
「計算済みか、意外とモテルものだな。おまえの息子は」
「おまえは、そうじゃなかった」
「あいつ。小さい牙を生やし始めた」
「牙が大きい方がモテるかもしれないがね」
「気を付けたほうがいい。エヴァに乗ってダダをこねられたら目も当てられんぞ」
「爪も、牙も、まだかわいいものだ」
「ゼーレとNERVの関係もそうだろう」
「そうだな。だがシナリオを作る能力はある」
「我々は、衝動で行動しているわけではない」
夜の商店街
アスカ、ヒカリ、チアキ
「大丈夫。ヒカリ・・・妹がいるんでしょう?」 アスカ
「今日は、大丈夫。出張で一緒に行っているから」
「へぇ〜 子連れで出張」 チアキ
「んん。本当はね。出張先で疎開先の目星を付けようと思っているみたい」
「ヒカリ、疎開するの?」 チアキ
「わからないけど。いざという時は、お姉ちゃんと私と妹だけでもって」
「ほら、緊急避難といっても居場所があるわけじゃないし」
「シェルター生活って、大変でしょう」
「じゃ ヒカリ、今日は、ひとりなの?」 アスカ
「うん」
「泊まってあげようか」 アスカ
「うん、お願い・・・ちょっと寂しかったんだ」 ヒカリ
「なんだ。わたしも、泊まらせてよ」
「うん、いいよ」
「でも、いいのアスカ。苦学生が他所に泊まっても」 チアキ
「いいわよ。子供を働かせて儲けている会社なんだから結構、実入り良く入ってくるし」
「へぇ そうなんだ。そういえば、労働孤児を使っている会社って多いよね」 ヒカリ
「セカンドインパクトで孤児になった子供を集めて労働者にしてしまったんでしょう」 チアキ
「良し悪しあるものね」
「でも、日本は国家保障がしっかりしているし」
「マスコミもうるさいから、意外と待遇良いって聞いたけど」
「飢えて死ぬよりは、労働力として集められて良かったわよ・・・」
「国が早めに手を打たなかったら先進国からずり落ちていたそうよ・・・」
「一歩間違えれば、わたしも労働孤児になっていたかもしれないから」
「お父さん、東京が爆発する直前に外に出たと言ってたもの」
「あ、うちのお父さんもだ・・・ドイツは、どうなの?」
「日本と同じ方法を取っているわ。悪く言えば国家的奴隷」
「ドイツは、多少問題があるみたいだけど・・・周りの国が酷いの・・・」
「それで周りの国から孤児が大量に流入してきて、保障の質が落ちている」
「それでも周りより良いの・・・今では、次期世代構成だけで、欧州の中核。大ドイツ誕生」
「ゲルマン民族の夢が叶ったというわけね」 チアキ
「そうでもないわよ。欧州の孤児の3分の1が、ドイツに集まっているという事だけだから」
「良く、国が崩壊しないわね」 チアキ
「機能主義を執らせたら、ドイツ人の右に出るものはないわ・・・」
「人間性に欠けて、融通利かない。でも、衣食住だけなら確保ね」
3人は、商店街で食事をして買物を済ませて、ヒカリの家に向かう。
しかし、アスカは、繁華街で腕を組んで歩く加持とミサトにばったりと出会い、
機嫌を最悪にしてしまう。
アスカは、仁王立ちで抗議し。
加持は、たじろぎ、
ミサトは、あちゃ〜
ヒカリの家
アスカ、ヒカリ、チアキ
「・・・・・・」
アスカ。涙の跡を残し落ち込んでいる
「「・・・・・」」 ヒカリ、チアキ
「おやすみ」
アスカがフテ寝した為。ヒカリとチアキも諦めて寝る
NERV
訓練場
シンジも、レイも、ヘッドギアと衝撃吸収服を付けている。
シンジの構えは経験で、それなり。これだと思う姿勢と間合いを取っていた。
レイが無造作に向かい、
シンジは、左右に振りながらレイに捕まらないように後退する。
シンジの突きや蹴りの組み合わせは合理的で、レイを梃子摺らせる。
シンジは、技が少しこぢんまりとしてきたと思った瞬間。
レイのハイキックを受ける。
何とか受けきったものの、体勢を崩して、レイの肘打ちと体当たりを受け、
シンジは、その勢いに倒され、
そのまま、関節を極められ、捻じ伏せられる。
攻守のバランスが悪く、大技を食らってしまったと反省。
訓練場
休憩、シンジ、レイ
「碇君、少し強くなった」
「まだ、少しなのか・・・」
「3分超えると技がワンパターンになって、集中力が散漫になってくる」
「あと迷いが出ると隙が出来て付け込みやすいの」
「やっぱり・・・でも綾波、強すぎるよ。勝てる気がしないもの」
「保安部員と訓練するとき、どうしても体重差を埋める技を選ぶしかなかったの」
「そういえば、相手が保安部員だと、いくらやっても効果がないね」
「ほとんど無駄な抵抗って感じ」
アスカが保安員にぶつかっていく。
アスカのがむしゃらの突進に保安部員は、タジタジ。
「例外も、あるみたいだけど」
「あれは、八つ当たり」
「ははは、わかりやすい性格」
「・・・・・・・」 レイ
「昨日、どこかに泊まったみたいだけど、機嫌悪そうだね」
「あの人が気になるの?」
「しわ寄せが来るんだ。相手が僕じゃなくて良かったよ」
「そう・・・」
ハーモニックステスト
シンジ、レイ、アスカが並んでいる。
3人のグラフがそれぞれの動きを見せている
「ミサトさん・・・・なんだか疲れていませんか」 日向
「かなりね・・・・はあ・・・」
「加持君のこと?」
「はぁ〜」
ミサト、落ち込む
「・・・・・・・・・・・・」 一同
「どう・・・・調子は?」 ミサト
「見てください・・・・シンジ君・・・」 マヤ
管制室
どよめきが広がっていく。
「へぇ、シンジ君がアスカを抜いて一番か」 ミサト
「凄いですね。レイが9年、アスカが7年もやっているのに」
「4ヶ月のシンジ君が追い抜いてトップなんて」 マヤ
「エヴァに関してだけは、シンジ君が天才ね」 リツコ
「そうね。これがシンジ君の自信につながればいいんだけど、アスカは?」 ミサト
「アスカは、コンマ2ほど落ちていますね。少し波もあるようです」 マヤ
「あちゃ〜」
「何かあったの? 不調みたいだけど」
「はぁ〜」
女性用ロッカールーム
レイ、アスカ
「参っちゃったわね〜」
「あ〜っさりと抜かれちゃったじゃない」
「ここまで簡単にやられると正直。ちょっと悔しいわね〜」
レイは無言
「凄い! 素晴らしい! 強い! 強すぎる!!」
「ああ〜 無敵のシンジ様」
アスカが体をくねらせる
「これで、わたし達も楽ができるってものね」
レイは無言。
「まあ、わたし達もせいぜい置いてけぼりをくらわないようにがんばらなきゃね」
「さようなら」
レイが着替えてロッカールームを出てドアが閉じられる
ガァン〜ン。
アスカの右手がロッカールームを殴る。
悔しさと情けなさで歯を食いしばる
NERVの帰り
ミサトにすき焼きパーティーに出るように命令される。
アスカがごねて、運転席にミサト、助手席にシンジ、
後部座席の右がアスカ、左がレイ、真ん中が伊吹マヤとなる。
ミサトは、なんとか場を盛り上げようとし。
マヤは、リツコに頼まれて代わりに付き合わされる。
シンジは、不吉な予感がし。
レイは、無表情で
アスカは、不承不承だった。
「外食の方が良いんじゃない」
アスカは、あくまでもいやそう。
「なによ。すき焼きは家で食べるに決まっているでしょう」
「わたしは、肉はいらない」
「だから、レイちゃんには野菜と魚料理を用意するから」
「前回のデジャブーが・・・・」
シンジがぼそりと呟く
「そうよ・・・楽しかったわ」 ミサト
「「「・・・・・・」」」 シンジ、レイ、アスカ
ミサトは、スーパーアキモトで夕食の材料を買うとマンションに向かった。
コンフォート17
506号室
ミサトが部屋の扉を開けると、そこは、臭気漂う腐海だった。
シンジとアスカがゲンナリとし、伊吹が呆れる。
レイは動じない。
「さあ、さあ。入って、今夜は無礼講よ」
ため息交じりのシンジは、部屋のゴミを片付け、
マヤとレイが手伝い始める。
「ははは、ちょっと散らかっているけど。まぁ 気にしないで、無礼講よ、無礼講」
「な、なにが無礼講よ。既にこの部屋が無礼よ・・・」
「それ以前にこんな部屋に人を呼ぶ方が犯罪よ・・・」
「ミサト・・・これが、いい年こいた独身女の部屋?」
「そ、それ以前に人間の住む部屋?」
「良く、ここまで、ずさんで、自堕落な生活が出来るわね」
「な、なんですって〜!」
「いい年こいたなんて!」
「私は、まだ29よ。29。いい年こいたなんて、言わないでくれる」
「この部屋のどこが、29歳の独身女の部屋よ」
「掃除しなさいよ。掃除・・・恥ずかしくないの!」
「だから、チョッチ散らかっているだけよ」
「これのどこがチョッチなのよ。日本語、おかしいわよ。夢の島じゃないの」
「冗談じゃないわよ。成熟した女の花園よ」
「む、空しくない。この有様を見て・・・」
「・・・・・」 ミサト
ミサトとアスカのやり取りの間、シンジ、レイ、マヤは、黙って部屋の片付ける。
「そ、そんなことないわよ」
「ふん、どこが良いのかしら・・・・加持さん」
「だ、だから、誤解だって言っているでしょう」
「あの時、たまたま、仕事の関係で一緒にいただけ」
「お互いに情報を集めていただけよ」
「な、なんで、わたしが、好き好んで、あのヴァカと一緒にいるもんですか!」
「歓楽街で好き好んで腕組んで歩いていたくせに、なにトボケてんのよ」
「あ、あれは、向こうが勝手に・・・」
「加持さんは、無理やり腕を組ませるような男じゃないわよ」
「だから・・・あれは、あの場、限りだって・・・」
TELが鳴る。そして、留守電が入る
『・・・よう、葛城。酒の美味い店。見つけたんだ。今晩どうだ? じゃ』
アスカが引きつり、ミサトが真っ青になる
「もう、いいわよ。勝手にすれば!」
アスカが出て行った。
最悪の状態でアスカが出て行く。
ミサトは、誰に追いかけてもらうべきか、一巡。
レイ、不可・・・・
シンジ、逆効果・・・・・
マヤ、無難。
「マヤ、お願い!」
「・・・え〜」
「追いかけて」
ミサトが頼みこむ
シンジも、レイも、冷めたように事の成り行きを見ているだけ。
「はぁ〜」
大きくため息をつくとマヤが追いかける。
「はあ〜」
ミサト、墓穴を掘って落ち込む
シンジとレイは、黙々と片付けるとすき焼きの準備を始める。
「加持さんと飲みに行かなくて大丈夫なんですか?」
「いいわよ。気にしないで・・・はぁ 別に男と女という関係じゃないのよ・・・」
「ほら、加持君、いろんな裏の情報を知っているから・・・ね」
「お互い、探り合いっていうか。その、駆け引きみたいなものなのよ」
「すき焼き。するんですか?」
「や、やるわよ。こんなに買ってきたんだし、気合で片付けるのよ」
シンジとレイが片付けると。広い空間にペンペンが喜んで動き回る。
シンジは、すき焼きの準備と、レイ用の刺身を盛り付ける。
アスカ、伊吹マヤ
「・・・アスカ。大丈夫?」
ようやく追いついたマヤが声をかける。
「・・・・」
「仲間内でね・・・加持さんをカッコ良いと思う人と」
「毛嫌いする人に分かれているの」 マヤ
「・・・・」
「も、もちろん、加持さんが良いとか悪いとかじゃなくて・・・」
「なんというか〜 ものすごく優秀な面もあるんだけどね」
「性格的に受け入れられない人もいるの」
「その人の好き好きとか、相性とかもあるんだけど・・・」
「もっといろんな角度で見た方が良いかなって思うのよ」
「ほら、ひとつの方向から見るだけじゃなくて・・・」
「その・・・一人の目から見た主観的な見方だけじゃなくて・・・」
「多角的にというか・・・」
「・・・・・・・・」
「はは・・・・」
「で・・・・」
「で?・・・・」
「マヤは、加持さんに対してどう思うわけ、聞いてあげるわよ。参考までに」
「あ・・・ああ・・・わたしは・・・どちらかというと・・・」
「加持さんには恋愛感情はもてないかな・・・もちろん嫌いじゃないわよ・・・」
「刺激があって面白いかなって思うときもあるけど。本気にはなれない」
「加持さんも本気じゃない」
「世界に二人っきりなら、そういう関係もあるかなって、思うかもしれないけど・・・」
「加持さんは、男性として、ある意味、完成しているかもしれない・・・」
「私の見方からすると、家庭的な人じゃないかな」
「そんなのわかっているわよ」
「という事は、加持さんとミサトさん・・・」
「また、自分以外の他の女性と仲良くする事を認めても好きという事ね」
「・・・・・」
アスカ、表情が変わる。
「加持さんの性格は変わらないと思うわ」
「互いに遊びのつもりならいいかもしれない・・・」
「でも、普通の女性は傷付くわ」
「アスカは、どうして加持さんが好きになったの?」
「私の本当の気持ちを見てくれたから」
「人の気持ちを理解できる人は少ないけど」
「好きな人の気持ちを理解できる人は、もう少し多いわ・・・・」
「それに人は変わっていくの」
「既に男性として出来上がっている加持さんは魅力的かもしれない」
「でも10年前は? 15年前は? シンジ君のほうがましな15歳かもしれない」
「そ、そんなわけないわよ」
「バカシンジなんて。加持さんと比べるなんて。とんでもない間違いよ」
「そうね。あの年代は、セカンドインパクトを生き残ってきたんだもの独特の魅力がある」
「でもね。背伸びする必要はないと思う」
「ねえ。アスカが本当に好きになれる人、好きになってくれる人が現れるまで」
「いろんな勉強をしながら自分の身を守り」
「自分を磨き続ける人は、誠実な人よ。男性でも女性でもね」
「マヤって、まじめなのね」
マヤは照れる。
「まぁ 年齢別の指標って、あるから、あはは・・・・」
「でも、私の気持ち、わかってくれたのは加持さんだけ」
「普通に接してくれたのも加持さんだけ」
「惣流・アスカ・ラングレー。若干14歳にして大卒」
「容姿端麗。スポーツ万能。格闘センスも並外れて高い」
「エヴァ二号機のパイロット。大きな看板を背負って人類を守っているけど・・・」
「実は気丈で、努力家で寂しがりや」
「お高くとまっているけど、実力から判断すると控えめな態度を取ろうと努力している・・・」
「そして、傷付いた心を満たされたいと思っている」
「・・・・・・」
「プロフィールと、毎日の言動から裏読みするとこんなところね」
「・・・・・・」
「けっこう、人ってね」
「プロフィールと、毎日の言動を見ているとだいたいわかってくるの・・・」
「アスカは能力的にも、環境的にも、人と違うけど、共通する心の部分もあるの」
「・・・そう・・・」
「戻らない? すき焼き、食べごろだと思うわ。肉、好きでしょう」
「・・・・・」
「葛城さんも、あれで気を使っているのよ」
「突然、飛び出したから心配しているわ」
「・・・・・」
「アスカが行かないと、ミサトさん。加持さんと酒を飲みに行っちゃうかも」
「ぅ・・戻るわ」
アスカと伊吹は、戻り始めた。
「そう、でも意外ね。マヤがわたしのこと見ていたなんて」
「それは、命の恩人だもの・・・」
「パネルやモニターばかり見ているわけじゃないから」
「シンジ君やレイも見ているわよ」
「見ていることしか出来ないから・・・」
「へえ・・・」
「まだ、成長段階だし、シンジ君やレイも変わって行くわ・・・」
「現にシンジ君もレイも最初のころに比べると大変な変わりよう」
「確かに変わったわね」
「アスカもね。少し子供っぽくなったかな。中学校に行って良かったでしょう」
「まあ、ちょっと馴染んでしまったわね」
「それで良いと思うわ。年齢相応で楽しいと思う」
「うん」
「ごめんね、アスカ」
「子供を命がけで戦わせて後ろで見ている大人が偉そうなこと言っちゃって」
「そういうのがあるから、言えなくて・・・」
「・・・・・」
「シンジ君が、碇司令に向かって言ったこと」
「NERVでは、かなり影響を与えてしまっているの・・・・」
「碇司令に言ったという事は、親子だからという面もあるけど」
「私たち大人、全員に向かって言ったのと同じだから」
「特に葛城さんは、直接の上司だから、子供達の眼を正視できないって言ってたし」
「あの時は、売り言葉に買い言葉ってやつでしょう」
「訓練もされていない息子を呼び付けて、ファーストをダシに初号機に乗せて」
「命がけで働かせて、お礼の一言も、労いの言葉もないんだから」
「そうなのよね・・・」
「一言 “ありがとうぐらい” 言ってくれたらね」
「あのあと、自棄酒飲む職員が3割も増したって統計が出ているの」
「へえ」
「アスカのこと、わかっている人、いると思うのよ」
「こうした方が良いかなとか。でも、守られている方は、言い難いの」
「それが14歳の子供には、言った方が良い事柄でもね」
「・・・・・・」 アスカ
「思いっきり、恥知らずね。私も守ってもらっているのに・・・・」
「そんなことない、嬉しかった。マヤと話せて」
すき焼きパーティ
ミサト、伊吹、シンジ、レイ、アスカ
ミサトは、何とか場を盛り上げようとするが、
伊吹が、愛想笑い。
シンジは、のりが悪く。
レイは、我関せず。
アスカは、だんまり。
欺瞞に満ちた、すき焼きパーティになっていた。
それでもアスカの刺々しさがなくなっていたことから、ミサトは安堵する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第22話 『魂の座』 |
第23話 『すき焼きの味は?』 |
第24話 『死に至る病、そして』 |
登場人物 | |||