第26話 『四人目の適格者』
403号室
シンジ、レイ
夕食は、焼き魚と野菜炒。
後片付けは、全てレイがするようになり。
シンジは、食後のコーヒーを入れるのが、パターン化していく。
そして、シンジの学力は、レイのお陰で著しく伸びていく。
後から数えた方が早かった順位も、今では、クラスで、5本の指に入る。
このまま、レイに教わり続けて、3年の学力レベルに達するのも悪くない。
と思うほど勉強に身が入る。
「碇君」
「なに?」
「勉強するのが楽しい?」
「うん、なんか。知識を吸収していくのが苦痛じゃなくて・・・楽しくなってきたよ」
「そう・・・」
「綾波のお陰だね。ずっと無気力だったから・・・」
「自分から勉強したくなるなんて・・・・変わってきたかな・・・」
「強いのね」
「えっ」
「碇君は、強い」
「綾波は、僕よりも強いじゃないか」
「私は、訓練されたことに強いだけ・・・・でも碇君は違う・・・・なぜ?」
「わ、わからないけど。この前の使徒だって、僕の力じゃないんだ・・・エヴァの力だったから」
レイは、首を振った。
「違う、鈍感なの?」
「綾波・・・なんか、酷いこと言ってない?」
「・・・ごめんなさい」
「あ、いや・・・特に強いとは思わないけど」
「綾波とアスカが強すぎて、そう思えないのかもしれない」
「死にかける前と、生き残った後。変わったところは、ある?」
ゴクン。
シンジは、綾波に見つめられて動揺する。
『こ、これは、チャンスなのでは・・・綾波が僕のことに興味を持ってる・・・』
『ああ、でもなんて言ったら良いんだ・・・気の利いたセリフが思い浮かばないよ〜・・・』
『うぅ 加持さんモード、加持さんモード・・・駄目だ〜 思い浮かばない・・・』
レイに見つめられているうちに真っ赤になる。
「どうしたの?」
「あっ いや・・・綾波が見つめるから・・・・」
レイは、思わず眼を伏せて頬を赤くする。
シンジも、舞い上がってしまったのか、あと一歩を踏み込めない。
「ケーキ食べる?」
「ええ」
シンジは、冷蔵庫から買ってきていたケーキを出す。
そして、なんて健全な中学生になってしまうんだろうと思いながら夜が更けていく。
学校
昼休み。
トウジは、ヒカリから弁当を貰う。
それを見ていた一部の生徒が動揺する。
シンジの弁当の3倍強の大きさで、ドカ弁。
「よーおし。メシや。食べるぞ・・・」
トウジは、ヒカリの作った弁当を持って気合を入れる。
“2-A組の鈴原トウジ君。鈴原トウジ君。至急、校長室まで・・・・・・” アナウンス
「なんや?」
トウジは、ガックリと肩を落として、弁当を見る
「なんかしたか?」 ケンスケ
「心当たりないわ・・・・って。あの事なら・・・俺一人やないし・・・・」
トウジは、首を捻りながら教室を出て行く
シンジ、レイ、ケンスケの3人の昼食
「くそっ トウジのやつ。委員長に弁当作ってもらいやがって」
ケンスケ荒れる
「トウジと委員長・・・仲か良かったんだね・・・そうは、見えなかったけど」
「小学校からの腐れ縁だよ。俺たち3人はね・・・」
「まあ、委員長は、トウジに気があるようだったから」
「いつか、そうなると思っていたけど、パン食は、俺だけだ〜」
「ははは・・・新横浜に行ったの?」
「新横須賀・・・・これだ・・・」
ケンスケが写真を見せる。
「ふうん、これが軍艦?」
「おう、装甲巡洋艦 “みょうこう” 最新鋭艦だぞ」
「へぇ〜 変わった感じがするね。宇宙戦艦みたいだ」
「これまでの軍艦とは違う」
「完全にアメリカのシステム依存から脱却した始めての軍艦だぞ」
「火器管制が進んで、12000トン級で総員45人」
「3交替で考えても、軍艦より爆撃機に近いくらいだ」
「へぇ〜 なんか、カッコいいね」
「そうだろう。宇宙戦艦みたいだろう・・・」
「性能がまた凄い。1対1で勝てる軍艦はない」
「物理的な攻撃は、プラズマ障壁で干渉迎撃してしまう。昔でいうならバリアだな」
「高速弾であるほど衝撃が大きいから防ぎやすい」
「装甲も、凄いらしい。良く分からんがN2爆弾でさえ、直撃を防げば大丈夫だそうだ」
「ふ〜ん」
「男なら、込み上げてくるものがあるだろう。シンジ」
ケンスケは、感動に震える
「そうだね」
「ところでさ。ちょっと気になる情報を仕入れたんだけど・・・」
ケンスケは、チラッおとなしく食べているレイを見る
食後
シンジは、ケンスケに連れられて、隅に行く。
「エヴァ3号機が来るんだろう」
「エヴァ3号機?」
シンジは、素っ頓狂な声を出す。
「そう、アメリカで建造してたやつだ。完成したんだろう」
「知らない」
「隠さないといけないのは、わかるけど、少しだけでも教えてくれよ」
「知らないよ!」
「パイロットは、まだ決まっていないんだろう」
「俺にやらしてくんないかな」
「シンジからも頼んでくれよ。エヴァに乗りたいんだよ」
「本当に知らないんだよ」
「じゃ 4号機が欠番になったというのは?」
「何? それ?」
「本当に知らないのか。アメリカの第二支部ごと吹き飛んで大騒ぎになったらしいけどな」
「本当に?」
「ニュースで、やったかな」
「するか!」
「・・・・・・」
「おかしいな。情報は正しいはずなのに・・・」
「当事者が、知らないという事は・・・もう一度、確認する必要があるな・・・」
「シミュレーション用の事例は、入らないはずだけどな」
ケンスケは疑心暗鬼に陥ったのか、しきりに頭をかしげて、チラチラとシンジを見る
「・・・・・・」
「まあ、もう一度確認してみるよ」
「末端のパイロットは知らなくてもいいのかも知れないし・・・・」
授業中にトウジが戻ってくる。
「遅れてすまんです」
「話しは聞いている。席に着きなさい」
「ちょうど良いか・・・本日は、これまで」
放課後
トウジは慌ててヒカリの作った弁当をかっ食らう。
「トウジ。何で呼ばれたんだ」
ケンスケは、ヒカリの作った弁当を覗き込む。
「たいしたこと、ないわい」
「ひょっとして・・・この前のカラオケがバレた」 シンジ
「おう、全部俺のせいにしといたわ・・・・感謝せい」
「ばれたんだ」
シンジは、落ち込む
「何の話しだよ。シンジ」
「ケンスケが新横須賀に行った日に。カラオケで朝まで歌ってたんだ」
「うそだろう、二人のキャラに合ってないぞ。カラオケなんて」
「新城に誘われて、アスカと洞木さんと一緒に5人で」
ケンスケは、絶句
「チ、チクショウ。俺のいない間に楽しんだな!」
「ケ、ケンスケもカラオケって、タイプじゃないだろう」
「そ、そうだけどさ。持ち歌の一つや二つはあるぞ。俺だって」
「アホゥ! 持ち歌なんか歌えんかったわい」
「だいたい、一曲や二曲で足りるか」
「末尾の番号しか選べんで、他人が適当に数字を入れて歌わされるんや・・・」
「新城とかいう女。あれは、あくどいでぇ・・・」
「いいように遊ばれたのはこっちや・・・朝まで歌わされて、脳みそ膿んでしもうたわ」
「本当だよ。ケンスケがいたら、もう少し、楽だったのに」
「なんか、楽しそうに聞こえるんだけどな」
「ははは」
シンジが、苦笑する。
「あれは、性格変わるな」 トウジ
「一皮どころか、十皮くらい剥けたよ」
「おう・・脱皮しそうになったわ」
「とりあえず。今度は、俺も、誘ってくれよ」 ケンスケ
「そうだね。でも、学校にばれたとなると〜」
「心配すんな。俺が話しを付けといたからな」
トウジは、急いで食べ終わると日誌を付けているヒカリのもと行く。
「委員長・・・ありがとう・・・弁当。美味かったわ」
トウジがいうと、ヒカリが弁当を受け取る。
「カラオケのことで呼び出されたの?」 ヒカリ
「気にせんでいい。たいした事やない」
「そう・・・鈴原・・・無理してない?」
「む・・・無理なんかしとらんわ」
トウジ、動揺。
「ならいいけど・・・」
学校帰り
アスカ、ヒカリ、チアキ
「ヒカリが、鈴原の弁当の材料を買いにね」 チアキ
「鈴原だけじゃないよ。ついでよ。ついで」
ヒカリが誤魔化す。
「ああ、パン食は、私だけか」
「アスカも時々、弁当作ってくるし。わたし、相田と対じゃない」
「男に弁当作らせている女より良いわ」 アスカ
「碇君まだ作っているんだ」
「もう勉強、教えてもらう必要なんてないのに」
「惰性ね。まだ手を出してないみたいだし、何やっているんだか」
「えっ 良いの、そんなことになったら・・・アスカ、辛くない」 チアキ
「なんで、わたしが辛いのよ」
「まぁ 良いけどね」
「変な誤解しないで」
「ヒカリも遂にラブラブ学園モードに突入か」
「ヒカリも、いい趣味しているわね」
「うん」 ヒカリ
「なんか、影があるわね。上手く行ってないの?」 チアキ
「なんか呼び出された後、鈴原の様子。変だったから」
「ぼんやりしてたかな」
「そう? いつもの3バカだったけど」
「もう3バカとは、言えないわよ」
「碇君。前回のテストで追い抜かれそうだったもの」 チアキ
「へぇ〜 チアキ。シンジが気に入ったんだ」
「あら、碇君・・・あれで人気が出てきているのよ。赤丸急上昇中。学園人気投票で12位」
「なんか最初のころと雰囲気が全然違うもの」
「それに比べて、ヒカリの好みは、変わらないわね」
「・・・・・・・・・」 ヒカリ
「「どこが良いんだか」」アスカ、チアキ
「二人で、はもらないでよ」
学校帰り
シンジ、トウジ
「・・・トウジ。話しって、なに?」
「んん、いや・・・シンジ。エヴァに乗ってて大変やなと思うてな」
「うん、でも生きているって良いなって、思うんだ」
「そうか・・・・」
「なに? エヴァの話しは、ほとんどできないよ」
「わかっとるって。気持ちをな、聞きたかったんや」
「気持ち?」
「ああ。エヴァに乗るときの気持ちや」
「落ち着くけど、とても怖いんだ」
「そうか、怖いんか。そうやろうな、得体のしれんものと戦うんや」
「でも、最近は、綾波やアスカを守りたい。なんて思うようになったし」
「そうか・・・・そういう事もあるのか・・・・って。おまえバラしとるやないか」
「あ!」
「まあ、ええわ・・・・うすうす気付いていたことやから」
「ははは・・・・」
「じゃ 行くわ・・・・シンジ。すまんな」
「うん、また明日」
NERV本部
特別監査室
扉の前で深呼吸するアスカ。そして、気合を入れる
「加持さ〜ん」
慌てて端末と書類を整理する加持
「こ、こら・・・ここは関係者以外、立ち入り禁止だぞ」
「ふ〜ん。夕食一緒に食べようと思ったのに・・・」
「なんか、浮気の現場を押さえられたような、慌てぶり」
アスカが、むすっとする
「ははは・・・アスカも言うね」
「ミサトと約束があるんじゃないでしょうね。これ、わたしたち四人のシンクロ表」
アスカは、机から落ちた書類を覗き込んだ。
「あっ!」
アスカは、加持が慌てて取ろうとした書類を先に手にしてしまう。
「四人?・・・・TOUJI・SUZUHARA・・・・」
アスカは、書類を加持に取られたが呆然と呟いた。
「ど、どういう事よ!!」
アスカがパニくる
12個の黒い墓標が、闇の中に浮かぶ。
「・・・4号機と、第2支部の消失。大きな損失だ」 01
「3号機の移送に合わせて、NERV本部に対する圧力の強化必要だ」 05
「現有するエヴァの本部集中は、バランス上、座視できない」
「第12使徒のコアとの交換でもね」 09
「第2支部の消失。本部の秘密主義に原因があるのではないか?」 03
「第11使徒の隠匿と第12使徒の重複の可能性。調査が必要だ」 02
「コアから判別がつくだろうか?」 04
「迎撃の拠点・・・・・日本においたのが失敗だった」 02
「だが欧米に置くと我々の存亡と直結してしまう」
「他の場所では基地を維持できないか、信頼に値しない」 05
「冬月副司令の拉致。尋問の必要性があるな」
「状況によっては碇司令の解雇もありうる」 01
「あの男にやってもらうか、鈴として有用だが事態は急を要する」 10
「あの男が抜けると極東バランスが変わるのではないか?」 06
「代用は揃える。時期を見て真実を明らかにさせよう。使徒の重複は致命的だ」 01
太平洋上を西に向かって飛ぶ。巨大な輸送機。
「エクタ64より、ネオバン400へ。前方航路上に積乱雲を確認」
『ネオバン400.確認。回避行動は到着遅延の恐れあり。現状のまま待機』
「エクタ了解」
『ネオバン400よりエクタ64。積乱雲の気圧状態は、飛行に支障なし』
『航路を変更せずに到着を遵守』
「エクタ了解。航路維持」
巨大な輸送機が不気味な放電を放つ積乱雲に突入していく。
NERV訓練場
ミサトとシンジは休憩に入る。
アスカとレイの組み手。
二人の高度な技の応酬は、シンジの時と、まったく違う。
次から次へと突きと蹴り技を繰り出され、フェイントも多彩で飽きない。
シンジは、ミサト相手の組み手で疲れたのか肩で息をしていた。
ミサトは、単純に力技で急所に打ち込んでくる。
わかりやすかったが実直なだけに一つ一つを全力で防御しなければならない。
相関関係によって、戦い方も変わってくる。
「シンジ君」
「なんですか?」
「あ、あのね・・・・」
「はい」
「んん、最近、レイとは進んでる」
「健全な中学生としての付き合いですよ」
「ふうん、健全ね・・・意外と難しい相手よね」
「私からレイちゃんに言ってあげようか」
「や、やめてくださいよ。ミサトさん」
「じ、自分で何とかできますよ」
「へぇ〜 どうできるのかな・・・・『綾波とキスしたかったな〜』・・・」
「もう、やめてください。本当に、その話が、したかったんですか?」
シンジ、真っ赤になってムッとする
「んん・・・・・んんん・・・・・・・」
ミサトは、腕を組んで考え込んだまま、フリーズ。
時が流れ、訓練時間が終わる。
NERV野戦指揮車両
リツコ、ミサト
「・・・じゃ ミサト。シンジ君に言ってないの?」
「んん、あの子、反応が予測し辛くて言い出せないのよね・・・」
「アスカも、レイも、知っているみたいだけど、反応が予測できるじゃない・・・」
「シンジ君、なに考えているのか、わからないし」
「年頃の男の子だものね」
「要だし、エースだものね」
「シミュレーションじゃ 単独のアスカが一番強いけど、前回での喪失感は本物だった」
「・・・・・・・・」
「で、いつ呼ぶの・・・パイロット」
「まだいいわ・・・起動試験は、3日後だから」
「彼が自分から話すかもしれないわね」
「彼は喜んでなかったもの・・・」
「妹をもっと高い医療技術で治療して欲しいというのが、彼の条件だったから・・・」
「自慢するような状態でもなかったし。すき焼きパーティはしないの?」
「・・・・・・」
「オヤジの一人暮らしじゃないんだから、万年床は止めなさいね」
「・・・・・・」
学校
シンジ、ケンスケ、トウジ
「・・・ああ、エヴァに乗りたいな」
ケンスケがつぶやく。
「そんなに良いものじゃないと思うけど」
「それでも乗りたいんだよ。三号機に・・・な、トウジ」
「お、おお」
トウジは、ぼんやりと呟く。
教室に入ってくるアスカは、ムッとしている
「どうしたのアスカ? 先に出たのに」
無視するアスカ
「今日は、痴話ゲンカなしか?」 トウジ
「あんた達の顔を見たくなかっただけよ・・・この、3バカが!」
アスカは、教室を飛び出す。
呆然とするシンジとケンスケ。表情を変えないトウジ
『なんや。あいつは、知っとるんか』 トウジ
廊下で、
機嫌悪そうに歩くアスカがシンジ、ケンスケと擦れ違う。
「シンジ。何かしたのか?」
「なんだろう。ミサトさんにも、つんけんしていたし。聞く勇気はないな」
「あれか〜」
ケンスケが意味深にニヤケる
教室に入るシンジとケンスケ
「あれ、トウジは?」
「どこ行ったんだろう」
「食べないのかな。まさか、屋上かな」
「いや、今日は、教室だろう。綾波も、いないぞ」
「まぁ 食べてたら、そのうち来るよ」
トウジは、一人、校舎裏。
回想シーン
『碇・・・・おまえが、ロボットのパイロットなのか』
『違うよ』
『何で、この時期に転校してくるんや。おかしいやないか』
トウジがシンジの胸倉を掴む
『親の仕事の都合』
『おまえ・・・あのロボットのパイロットやないんやな』
『な・・なんで・・・そんな風に言われないといけないんだよ』
シンジ。動揺して目が泳ぐ。
『っう・・・』
トウジは、シンジを突き放し。
シンジは、よろけて倒れる。
トウジは当時を思い出して、ため息をつく。
「・・・・鈴原君」
レイが、背後から声をかける
「何や。綾波か。シンジんとこ、行かんで、いいんか」
「・・・・・・・」
「知っとんのやろう、ワシのこと。惣流も知っとるようやし」
「うん」
「知らんのは、シンジだけか。人の心配とは珍しいな」
「そう、良くわからない」
「おまえが心配しとるのは、シンジや」
「そう、そうかもしれない」
「そうや・・・」
教室
アスカ、チアキの昼食
「アスカ。機嫌悪そう・・・・一週間先でしょう」
「そういう時もあるわよ」
アスカ、さらにムッとする
「ヒカリ、遅いな」
「・・・・・・・・・・」
ヒカリが教室に戻ってくる
「どこ行ってたのヒカリ・・・って。ヒカリも機嫌悪そう」
ムッとしたアスカと、思いつめたヒカリの間で、げんなりするチアキ。
シンジとケンスケが食べているとレイが来る。
「綾波。トウジ見なかった」
「校庭にいた」
「食べないのかな」
「わからない」
公園
アスカとヒカリがベンチに座る
「アスカ。ごめんね、つき合わせて」
「なに?・・・・」
アスカは、タイヤキをほお張る
「・・・・・・・・」
「鈴原のこと?」
「弁当渡せなかったの?」
「はぁ タイミングが悪かったのかな・・・」
「そんなんで落ち込んでるの」
「元気出しなさいよ。ヒカリが、その気になってるんだったら、鈴原なんていちころよ」
「鈴原が好きなのは、綾波さんかもしれない」
「はぁ〜?」
「昼食の前。校舎裏で二人が一緒にいるの見たから」
「へぇ〜 抱き合ってたの?」
「そ、そんなことないけど」
「なんか、綾波さんが相手だと負けるかなって」
「ないわね。あの優等生が興味を持っているのはシンジだけよ・・・」
「鈴原が入り込む余地なんてないわよ」
「あの女が動くのは、全部シンジがらみ」
「だったら良いけど」
「安心して。鈴原と、あの優等生は、くっ付かないから」
ヒカリは、アスカの断言に安心する
「ヒカリ。一つ聞いていい?」
「なに?」
「あのバカのどこが良いわけ」
「やさしいところ・・・」
ヒカリ照れる
ウゲッ!
アスカが奇声を上げる。
笠置病院
ベットの前のトウジ
「・・・兄ちゃん。決めたわ」
「本当にいくん?」
「ああ。そやけど。ミドリは、もっと良い病院にいける」
「わたしのためやったら、無理せんで、いいんよ。兄ちゃん」
「おまえのためだけやない。あいつも、がんばっとるんや」
「お兄ちゃん・・・・」
「無理は、するけどな。せやけど、見て見ぬ振りは出来ん」
「むかしは、もっと打算的やったけど。いまのお兄ちゃんの方が好きや」
「そうやったかな」
「むかし、洞木おねえちゃんを助けようとして、ケンカに巻き込まれてからやろう」
「よう覚えとるな、おまえ。小さいときやったのに」
「また巻き込まれるんやな」
「そうや」
「勝つんやで、お兄ちゃん」
「そうやな」
学校
昼休み
アスカ、ヒカリ、チアキ
「鈴原。今日も来てないわね」 ヒカリ
「朝から見てない」 アスカ
「一言いえば良いのにね。せっかく、弁当作ってきているのに」 チアキ
「二人とも食べる?」
ヒカリは、トウジ用の弁当を出した。
「ラッキィ〜 ヒカリの料理って美味しいのよね」
「やった!」
しょんぼりしているヒカリの横。
アスカとチアキがパンを食べながらドカ弁をつつく。
松代
実験場
アメリカ人と日本人の混成で日本語と英語が飛び交う。
「・・・リツコ。いけそう?」
「順調よ」
「英語は、苦手だわ。専門用語になるとチンプンカンプンよ」
「ミサトは、大学でドイツ語だったものね。ドイツ支部あがりだし」
「S2機関は、取り込んでないの」
「何回も言っているでしょう。取り込んでないわよ・・・怖いの?」
「黒いエヴァか。どうして黒にしたのかしら、邪悪さが増している」
「確かに邪悪な風格を漂わせているわね。アメリカ人の好みでしょう」
「まぁ エヴァ4機あれば、ローテーションも組みやすくなるけどね」
「フォーメーションもでしょう」
「ロッテ戦法は、基本的に優れた戦術よ・・・」
「使徒が単体で来ると仮定すれば、背後を気にすることはないけど」
「バックアップがあれば安心して戦える」
「ダブルエントリーの出撃はしないの?」
「そうね。シンジ君も、アスカも、レイも、単体でもシンクロ率70を超えているから」
「個々の戦闘力を上げるためのダブルエントリーになってしまうわね」
「余程、高度な作戦か、精神的に参っていない限り、ダブルエントリーはないわね・・・」
「トウジ君は、最初、ダブルエントリーで出した方が良いかもしれない」
「誰と?」
「チョッチ。気持ち悪いわね」
「アスカとは、合わないわね」
「比較的近いのは、シンジ君か、レイだけど、あまり、期待できそうもないわ」
「ATフィールドが展開できれば、何とかなるわ」
「彼とは、上手く行きそう?」
「そうね、シンジ君よりは、精神的にタフね」
「無理がきく?」
「ふっ」
ミサト、ふいに微笑む
「何よ」
「あの子、私に言い寄って来たわ」
「ははは・・・自慢?」
「まぁ シンジ君よりは、大人ね。ふっ」
「まさか、手を出したりしないでしょうね」
「まさか・・・でもね。中学生を死地に追いやるなんて、敗戦間近って感じね」
「好きでやっているわけじゃないわ・・・」
「基礎からしてサードインパクト以後の生まれた子しかシンクロ出来ない。そういう事」
「そうね」
「あと、30分で始めるから。フォースチルドレンに準備をさせといて」
「わかったわ」
「あ、ミサト。まだ。シンジ君に言ってないんでしょう」
「起動試験が成功してから言うわ」
「なるほど・・・・そういう希望を持っているわけ」
「はかなくてもね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第25話 『スイカ畑』 |
第26話 『四人目の適格者』 |
第27話 『崩 壊』 |
登場人物 | |||