月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

  

  

第32話 『シンジとレイ、そして、アスカとマナ 1』

 シンジは、霧島マナを連れて校内を案内する。

 シンジが、そうでなくても、

 隣でニコニコしているマナが歩いていると目立つ。

 親友を失った身で

 シンジの気持ちがどうあれ、いろいろ思う者が多く、居心地が悪い。

 しかし、シンジもマナの申し出を断れるほど恩知らずでなく。

 あちらも、こちらも、立てられず。身が立たず・・・

  

  

 ケンスケは、後ろから小突かれると振り返る。

 「いてっ!」

 「・・・あの女は、誰よ?」

 「新城・・・さぁ 戦自の関係者だろう。って、殴ることないだろう」

 「むかつくわね」

 「俺と関係ない腹いせで殴るなよ。だいたい、そっちの方が情報通だろう」

 「あんたみたいに積極的に探っていないでしょう。何とかしなさいよ。目障りでしょう」

 「シンジと霧島の問題だろう。三角関係に巻き込まれたくないよ。野暮だし」

 「何で、あの女。碇君にくっ付こうとしているわけ?」

 「たぶん、推測だけど。戦自の少年兵だと思う。シンジの直属護衛かな」

 「ごえい・・・護衛になるの? あの子が?」

 「さぁ 推測だよ」

 「戦自がNERVを接収した経緯から。シンジは、政府と戦自にとっても最重要人物だからね・・・」

 「護衛の少年兵がシンジに付いていたっておかしくないよ・・・」

 「たぶん、最近、転入、編入してきた生徒のほとんどは、戦自の関係者だな」

 「パイロットの護衛と監視の両方をやっていると思うよ」

 「護衛にしては、ちょっと、かわい過ぎない。彼女」

 「いや、あれで、心得があるんじゃないか、試す気になれないけど」

 「まったく、NERVが間抜けなことしてくれて、こっちは、えらい迷惑よ」

 「しょうがないさ」

 「使徒来襲と、脱走したシンジが戦自に確保されていたのが重なっていたらしいから・・・」

 「トウジのことでシンジも辛かったんだろうな」

 「ったくぅ お陰で、おとうさん、どうにか首がつながったらしいけど、窓際に回されたみたいね」

 「保安部は、引継ぎが終わったら戦自の特務機関に吸収されてしまうし」

 「へぇ〜 こっちは、受注先に変動が、あったらしいしいけど」

 「まぁ 忙しくて、帰れないらしい」

 「碇君を怒らせると怖いという事か」

 「エヴァで殴られたら、ぺっちゃんこだな」

 「ぺちゃんこ、といえば、鈴原君の妹。大丈夫なの?」

 「ぺちゃんこで思い出すなよ。酷いな」

 「実際には、エヴァじゃなくて、瓦礫の下敷きになっただけなんだから・・・」

 「トウジのことでシンジの親父さんがミドリちゃんに土下座して謝ったらしい・・・」

 「人類を守るために勇敢に戦って犠牲になってくれたってな」

 「ミドリちゃん。落ち込んでいるけど、それほど酷くはないさ」

 「知っているんだ。お兄ちゃんが死んだこと」

 「いつまでも隠しとおせるわけないさ・・・」

 「シンジは、逃げ出して父親に腹いせしたのに」

 「親父さんは、キチンと受け止めてけじめをつけたわけだ」

 「まぁ 経験値の差ね」

 「でもな〜 レベル1がレベル10を追い出してどうするんだよ」

 「特殊能力の差があるんじゃない」

 「だけど、大変なことした割には、シンジの奴。落ち着いているよな」

 「感覚が麻痺しているようにも見えないし」

 「あの霧島って、娘のおかげ・・・・ただならぬ関係になってるのかしら?」

 「どうだろう。押されっぱなしという関係みたいだけど」

 「じゃ 碇君と綾波さんの関係は終わり?」

 「どうかな・・・綾波の表情も柔らかいから・・・」

 「ただならぬ関係になっているのは、シンジと綾波の方じゃ・・・」

 「そうね。無表情で、いつも空虚で何もないという雰囲気だったのに・・・」

 「ああいう風に目が輝いているような表情は、初めてよね」

 「当面は、様子見だね」

 「別に何するってわけじゃないけど・・・」

 「あの二人、どうにかしないと、男子生徒が碇君相手に乱心気味よ」

 教室でレイを彼女にして、アスカとそれなりの距離を保ち。

 新しくきたマナと親しくなっているシンジは、男子生徒の反感を一身に買う。

 「だよね」

  

  

 昼休み

 マナは、ちゃっかり、シンジの隣に座る。

 シンジの両隣にレイとマナ。

 正面のケンスケが困惑する。

 「・・・その弁当。綾波さんが作ったの?」

 マナが聞くと、レイが頷く

 「あれ、シンジが作ったんじゃないんだ」

 ケンスケが思わず、シンジとレイの弁当箱を覗き込む

 「うん・・・」

 「お〜 綾波の作った弁当か」

 「シンジ君。わたしのも食べてみて」

 マナが、おかずをいくつかをシンジの弁当にのせる。

 「霧島。馬に蹴られるぞ」

 「ぅぅ シンジ君。食べてくれないの」

 マナのウルウル攻撃

 「た、食べるよ」

 マナの作ったおかずは、綾波より上。

 プロ並のできばえだった。

 「あのな・・・霧島。別の男を捜せよ。独り者が一杯いるだろう」

 マナが周りを見渡す。

 「趣味じゃない」

 「俺は?」

 「趣味じゃない」

 「おい・・・綾波。何とか言わなくて良いのか。このままだとシンジを霧島に盗られるぞ」

 「・・・そうなの? 碇君」

 レイ寂しげ

 「そ、そんなことないよ」

 「そう」

 レイが微笑む

 「「・・・・・・・・・・・」」

 ケンスケ、マナは、レイの微笑みに魅せられる

 マナがイカリングと玉子焼きを蓋の上に載せてケンスケに渡す。

 「私の味方をしてくれるわよね。相田君」

 「うん、わかった」

 ケンスケは、イカリングと玉子焼きでマナに買収される。

  

  

 NERV本部

 訓練場

 シンジは、レイと組み手。

 アスカの挑発にマナが乗って、二人が対峙。

 頭一つ低いマナが不敵に微笑む。

 アスカが攻め、マナは巧みにかわす。

 反応速度でマナが勝っている。

 しばらく。アスカの攻撃が続く。

 マナがアスカの隙を突いて、関節を極めて、そのまま、倒してしまう。

 あまりの鮮やかさに呆気に取られる。

 「ま、まだよ」

 アスカがムッとして立ち上がる。

 アスカが、これほどあっさりと負けるのは、加持さんやベテランの保安部員を相手のときだろうか。

 同世代、それも自分より背丈の低い女の子に負けるのは、アスカのプライドが許さない。

 当然。アスカと良い勝負をするレイより。マナの方が強い。

 一方、シンジも強くなっているはずがレイに勝てない。

 こちらの手の内が読まれているのか、

 簡単に関節を極められて、以前よりやさしく落とされる。

  

  

 本部

 ラウンジ

 リツコが一人。コーヒーで、くつろいでいる。

 「どう? リツコ。少しは落ち着いた?」

 ミサトが何気なく隣に座る

 「ええ。私はね。頭に来ることばかりだけど。そっちは?」

 「こっちは、まぁ 適当に」

 「引継ぎといっても戦術のセンスだけは、理屈じゃないか・・・」

 「で、機密は、どうなったの?」

 「そうね、結局。情報の一部が流されるけど・・・」

 「エヴァ技術根幹にあたる部分は、そのままになりそうね・・・」

 「秋津司令も政府もNERVの機密が他国に流れるのはおもしろくないそうよ」

 「善悪以前に毒が強過ぎるみたいね」

 「一部の学者や産業界は失望しているけど」

 「へぇ 碇司令を悪者にして乗り切ると思っていたけど」

 「諸事の事情からそれはないわね」

 「まぁ シンジ君の反応が怖くて出来ないだけだけど」

 「そういう事か」

 「扱い難いわね。シンジ君」

 「そうね。階級一つ上で指揮系統から外れているし、作戦時でない限り、指揮権はないから・・・・」

 「ウツ気味?」

 「チョッチね」

 「レイは、随分変わったみたいだけど」

 「そうね。シンジ君がいなくなったとき、どうなるかと思ったけど・・・・」

 「・・・・」

 「いまでは、シンジ君にべったり」

 「完全に、いっちゃってるわね。シンジ君、いつでもレイを落とせるわよ」

 「ミサト。原因に心当たり、ある?」

 「リツコ。それは、あなたの分野でしょう」

 「さぁ シンジ君に関しては、わからなくなったわ」

 「どうして? 変わってないみたいだけど」

 「変わらなさ過ぎよ。というか、結果から判断すると」

 「・・・・」

 「変わっているべきところが変わらず」

 「変わらないであろう、ところが、変わっている」

 「知的水準が低いはずなのに大人のような視点とか、視野とか・・・経験・・・」

 「そう言えば、父親に対する気持ちは、吹っ切れているみたいね」

 「まだ、子供よ。14歳で吹っ切れるわけないでしょう」

 「ミサトは、吹っ切れたの?」

 「まだ・・・」

 「少しは、異常さが、わかるかしら」

 「吹っ切れているわけではないのに、あの強さは不自然ね」

 「そうね。元々、精神的に脆いくせに戦場心理に左右されない鈍感さがあったけど。それとは、違うわね」

 「彼、いま、何しているの?」

 「レイにやさしく、転がされているわ」

 「相変わらず」

 「まだ、訓練が始まって半年もたっていないのよ」

 「動きが良くなっても。体術は、最低3年くらい続けないとね。体が、ついていかない」

 「アスカは、大丈夫?」

 「小康状態かな。自信喪失しているけど。原因が単純なだけにどうしたら良いのか・・・・」

 「シンジ君に負けたことね」

 「ええ」

 「まあ、最近のシンジ君の変わりようから、絶望的じゃないでしょう」

 「そうね。男ぽっく、なっちゃったものね〜」

 「父親を国外追放して、男気を上げたかな」

 「周りの見る目が変わっただけね」

 「変わったのは、眼に見えない部分。もっと、脆いと思っていたのに・・・」

 「リツコ。何か、あったの?」

 「いいえ・・・」

  

  

 訓練場

 アスカは、息も荒く汗ビッショリ。対するマナも肩で息をしていた。

 アスカの攻撃は、マナの反撃で削がれる。

 スタミナの差でアスカが僅かに迫っていく。

 「・・・いい加減に観念したら。惣流さん」

 「まだよ! まだ負けていない」

 「言っとくけど、惣流さん」

 「戦自の少年兵の中で私は上位だけど、トップテンに入っていないわよ」

 「あんた。いちいち癇に障るわね」

 「だから〜 体術で強くても所詮それだけという事を言いたいのよ」

 「あんたに負けたくないだけよ」

 「あ、そう」

  

  

 シンジとレイは、休憩。

 「マナ、強いんだ」

 「そうね」

 「同世代の女の子だと綾波やアスカが一番強いのかと思っていたよ」

 「体術だけをやっていないもの」

 「この中で僕が一番弱いね」

 シンジは、周りを見回す。

 学校で見覚えある少年・少女が何人か入って訓練していた。

 皆、自分より強いのは確実。

 「気にすることない。碇君は強くなっている」

 「綾波は、戦自と一緒に訓練するの、大丈夫?」

 「平気。碇君がいるから」

 「もう、逃げたりしないから」

 「多分、逃げられないと思う」

 「そ、そうだね」

 シンジは、自分に付けられている監視の量が以前の数倍になっていることに気付く。

 それでも、自分が持つ能力をフルに使えば、第14使徒と同じことが出来る。

 その気になれば、第1使徒アダム、第14使徒ゼルエルのコアから力を引き出せるし、

 自分の力だけでATフィールドを形成できそうな気がしていた。

 「碇君は、私のこと怖くないの?」

 「綾波は、やさしいよ。誰より僕に優しくしてくれる・・・それに鍛えてくれる」

 「碇君が私のこと知ったら、私に近付かなくなると思っていた」

 『ぅう・・確かに・・・』

 『お母さんから事前に忠告されていなかったら、処理しきれなくて近付けなかったかも・・・』

 「そ、そうかな。でも、僕には、綾波しかいないから」

 「それは、わたし。私には碇君しかいないけど。碇君には、あの二人がいる」

 レイは、ヘトヘトになって対峙しているアスカとマナを示した。

 「アスカは戦友で、マナは恩人だけど。僕に必要なのは、綾波だよ」

 レイの頬が赤くなる。

 「へえぇ〜 シンちゃんも、言うようになったわね」

 ミサトが背後から声をかける。

 「ミ、ミサトさん!」

 「ふふふ」

 「い、いつから、そこに」

 「わたしに背後を取られているのに気が付かないようじゃ」

 「まだまだね。レイは、すぐに気付いたのに」

 「・・・・・・・・・」

 「さて、そろそろ上がって、初号機でレイちゃんとダブルエントリーよ」

 「もう大丈夫なんですか?」

 「初号機だけは、何とかね」

 「零号機と二号機は、あと1ヶ月は、駄目みたいだけど・・・」

 「レイちゃん、嬉しい」

 「はい」

 レイ、晴れやか。

 「良いわね。二人とも、ラブラブで」

 「か、からかわないでください」

 「それくらいで照れちゃ駄目よ。シンちゃん」

 「仲良くなると。あんなことや、こんなことだって、あるんだし」

 シンジは、真っ赤。

  

  

 発令所

 初号機

 エントリープラグ

 シンジとレイのダブルエントリーは、すんなりとシンクロ率を上げていく。

 電源供給が反転して、初号機からNERV基地に電力を供給し始めると歓声が上がる。

 それまで発電所一基分の電力を供給をしていた初号機から逆に電力が基地側に流れ込んだ。

 「・・・どう? リツコ」

 「シンクロ率の制御は、これからよ」

 「S2機関の調子は?」

 「シンクロが始まったと同時にエネルギーが増大したわ」

 「ATフィールドに比例して、発電も増大している」

 「初号機は、自我と神経接続を再生しているはず。暴走したりしないでしょうね」

 「現時点で暴走しない理由が不明よ」

 「もっと、低い段階で暴走したこともあるじゃない」

 「あれは、こちらが望んでの暴走だもの」

 「無制限に暴れられたら、手が付けられないでしょう」

 「でも、エネルギー量は凄いわね」

 「基地どころか、第3東京市に電力を供給できるなんて、さすが、S2機関」

 「建造費からすれば、元を取るのが大変だけどね」

 「メタンハイドレードが割安?」

 「そう、安全で暴走はないわね」

 「いまは、初号機頼みか。二人も、気分よさそうね」

 「一体感だけなら “あれ” 以上かもね」

 「アスカとは、させるの?」

 「アスカは、二号機以外に乗りたがらないでしょう」

 「それに基礎の部分で微妙に違うから。初号機に入っても効果が薄い」

 「そうだったわね」

 「マヤ。安定した?」

 「はい。二人の重複率は0.073パーセントで、安定しました」

 「以前よりも増えているじゃない。どんな気分なのかしら?」

 「さぁ 人類史上、初めての経験のはずね」

 「ちょっと比較させてみたいわね」

 「命令で?」

 「まさか、自然にそうなるわよ。時間の問題」

 にやり。

 「いまのところ、十分に満足しているみたいだけど・・・」

 「・・・・」

 「二人とも汚染域に近付いているのに平然としているなんて・・・ひとりじゃあ、ありえないわね」

 「チョッチ。羨ましいわね、二人なら強くなれるなんて」

 「ちょっと若すぎるけど。ロマンチック」 マヤ

 「若すぎる?」 ミサト

 「ええ、興味本位の時期で本当に必要で求めているわけじゃないですから・・・」

 「下手にくっ付くと逆に溝が大きくなると思います」

 「まあ、心身の発展段階から、統計的にそうなってしまうわね」

 「今回は、いつまで、やらせとくつもり」 ミサト

 「弊害は、ほとんどないみたいだから、好きなだけやらせときましょう」

 「こっちもデータを集められるし、電力供給で経費が浮くし」

 「せこい」

 「そうも言ってられないと思うけど」

 リツコが最上階層を見ると秋津司令と冬月副司令が渋い顔をして書類を見ている。

 「ところで、日本経済は、堪えられそうなの?」

 「日本の国連分担金の流用と臨時の国債発行で、何とかね」

 「ふ〜ん。当面の目安だけは、付いていたわけね」

 「ゼーレと切れて国際的に孤立したけどね。経済破綻は、時間の問題ね」

 「以前にもあったような」

 「100年前にね」

 「はぁ〜」

 「いまのシンクロ率は?」

 「ハーモニックス率88パーセント、シンクロ率96パーセントで安定している・・・」

 「たぶん、シンジ君が上限を決めてセーブしているみたいね」

 「シンジ君が!」

 「・・・もう、なんでもありね、あの子」

 「次の使徒が来ても、なんとかなりそうね」

 「零号機も、二号機も、修理中なのに・・・不安よりも、シンジ君が、頼もしく見えますね」

 「血は、水よりも濃い。か」

 「シンジ君。碇司令みたいになるの? なんかイヤね」

 「というか、信じられません」

 マヤ。イヤイヤ

 「マヤも、言うわね・・・・」 リツコ

 「なんにしても、初号機、零号機を別々に出すより」

 「シンジ君とレイの二人で1体出す方が勝率良さそうね」

 「そうね。基礎体力で、零号機1、二号機1.2倍、初号機2.2倍になって」

 「さらにS2機関を持っている初号機なら、そのほうが良いわね。敵が人間じゃなければ・・・・」

  

  

 初号機

 エントリープラグ内

 シンジとレイは、互いに重複した心身の感覚に酔いしれる。

 それでも、発令所から送られてくるシミュレーションを難なくこなす。

 ATフィールドとシンクロ率をシンジが分担し、戦術や体術をレイが分担。

 これまで、倒した使徒の多くを暴走抜きで倒していく。

 自分が、もう一人いるような感覚にも慣れ。

 相手の気持ちも以前より表層面で伝わってくる。

 その感覚は、エントリープラグを出てからも残照のように残り、

 周りのスタッフをして、既に一線を越えた。と誤解させる。

  

  

 赤木研究所

 リツコ、レイ

 「・・・レイ。体の調子は、どう?」

 「問題ありません」

 「シンジ君とは、どこまでいったの?」

 「以前と同じです」

 「たいしたものね。司令の次は、司令の息子。変わり身の早さは、どこから来たのかしら?」

 「司令とも、碇君とも、職分を越えた関係は、ありません」

 バシッン!!

 リツコがレイの頬を叩く。

 「レイ。あなたは、人間じゃないわ、図に乗らないで」

 「シンジ君は、意外だったけど他の人間も、そうだとは思わないことね」

 「すみません。赤木博士」

 「まあ、いいわ。エントリープラグ内でのことを聞きたいわ」

 「はい・・・・」

  

  

 休憩室

 シンジは、休憩室でコーヒータイム。

 「・・・あら〜 これは、これは、二佐殿がこんなところで、一人で、お茶」

 休憩に来たアスカが絡む

 「アスカ・・・久しぶりのような気がする」

 「そりゃ 右左に女を侍らせているんじゃ 私の出る幕はないわよね〜」

 「そ、そんな、侍らせているわけじゃないけど」

 「英雄色を好むか。いい身分だ事」

 「ぼ、僕が好きなのは、綾波だよ。アスカも、マナも、大切に思っているけど」

 「じ、自分の身くらい自分で守れるわよ」

 「そ、そうだね。アスカ。僕を加持さんに探させてくれてありがとう。助かったよ」

 「あ、あんた・・・そのう・・・大切に思うって、誰の言葉? あんたのガラじゃないわよ」

 「ミ、ミサトさん」

 「あ、あの女か」

 アスカ、憮然

 「・・・・・・・」

 「チッ! 少し良い気分になった、わたしがバカだった・・・」

 「ふん! ほら、あんたのママが来たわよ」

 アスカは、スタスタと去っていくと、レイが休憩室に入ってくる。

 「綾波。一緒に帰ろう」

 「ええ」

 「綾波、大丈夫。リツコさんに冷たくされなかった?」

 「平気」

 シンジは、レイに手を差し出し、レイが応える。

 シンジがホッとする。

 「どうして、リツコさんは、綾波に冷たくするんだろう」

 「人間じゃないから」

 「綾波は、人間だよ」

 「違う」

 「・・・僕は、人に冷たくされたことがあるよ。同じ人間なのに」

 「・・・・・・」

 「人って、冷たい生き物かもしれない」

 「碇君は・・・あたたかい」

 「綾波も、あたたかいよ・・・・」

 「そう」

 「そうだ。寒くなったから。服。買いに行こうよ」

 レイは、制服を除けば、シンジが買った服しか持っていない。

 買ったのが、6月中旬で春物。

 セカンドインパクトの影響で気温が上昇していたものの、

 今年の冬は、寒くなろうとしていた。

 「ええ」

 シンジとレイが帰ろうとすると、当然のようにマナがやってきてシンジの隣に並ぶ。

 そして、3人が外に出ると、赤い車の前にアスカが立っている。

 「ジャジャン。見て車買っちゃった」

 3人は、呆気に取られるが、すぐに合点がいく。

 最近CMで流れている免許証不要。初の全自動操縦型・自動車。

 「へぇ〜 すごい。アスカ、車買ったんだ」

 「ふふふ 3人とも、乗せてあげるわよ」

 「僕と綾波は、洋服屋に行くんだ」

 「シンジ君。私も付いて行く」

 「ふ〜ん。ファーストに服を買ってあげるんだ」

 「えぇえぇ 良いな〜」

 「うぅ 2人にも買ってあげるよ」

 「やった。シンジ君、うれしい♪」

 「さすが2佐。気前が良い」

 「2人には、世話になったから」

 シンジ、レイ、マナはアスカの車に乗る。

 助手席は空いて、後部座席にシンジを挟んでレイとマナが乗る。

 アスカは、運転する必要もないのに運転席。

 よくよく考えると、女の子3人とも関係が良いとは、いえない。

 アスカは、自動走行システムをONにして行き先を入力すると颯爽と走り出す。

 「本当は、自分で運転したいんだけどね」

 「あら、わたしはできるわよ」

 マナが運転免許を見せる。

 「あんた。何で免許証、持ってんのよ。年誤魔化してんじゃないの?」

 「ふふふ、戦自特例法でね」

 「少年兵に関する特例法、第32項から35項。制限付き」

 レイが呟く

 「ムキ〜 って、ちょっと待って。という事は、わたしも免許が取れるっていう事?」

 「年齢が足りないから書類で上官に事前報告の義務があるけどね」

 「私の場合、書類を書いてシンジ君に渡せば自分で運転できるわけね」

 「でも戦時下の場合は報告の義務は無いから、使徒が来れば制限無しで乗れる」

 「わずらわしいわね。ていうか、使徒が来れば、緊急避難で、わたしだって使うわよ」

 「ねぇ マナ。その書類をどうしたらいいの?」

 「事務所にある書類にサインするか、印鑑を押して事務に渡すの。車に乗る前に」

 「そういう事もするんだ」

 「まぁ 本当は良くないんだけど、書類にサインか印鑑を押してもらえれば私自身で持っていくけどね」

 「めんどい。でも全自動操縦の自動車なんて、よく作れたわね」

 「まだ、アメリカやドイツにないのに」

 「惣流さん。所属の件は済んだの」

 「一応、ドイツNERVを休業して、戦自所属の傭兵よ」

 「政府間でも使徒対策を優先で話しが付いているみたい」

 「アスカでいいわよ。惣流と呼ばれるのは慣れていなから、ファースト。あんたもね」

 「ええ、惣流さん」

 「ファースト。あんた。ケンカ売ってんの?」

 「わたしもレイで、いいわ・・・・アスカ」

 「ぅ・・・わかったわ。レイ」

 「あ・・・あのう・・・僕も・・・その・・・レイって呼ぶの?」

 「碇君は、綾波でいいわ・・・慣れているから」

 シンジがホッとする。

 「あなた達。いままでチームだったんでしょう」

 「人類存亡を賭けている戦友のはずなのに・・・なんか、複雑ね」

 「ははは」 シンジ

 「3人とも年少期のトラウマから、精神的な軋轢が見られる、調査通りか・・・」

 「ちょっと、何よ。トラウマって、マナ。いったい、なに知っているのよ?」

 「だいたい、知っているわよ」

 「ぅ・・・」

 「対NERV対策で、内調、戦自諜報機関、公安、警察、検察も手を組んで組織が作られているわ」

 「バグ機関」 レイ

 「へぇ〜 レイ。知っているんだ」

 「ええ、失策から国内に作られた獅子身中の虫から。バグ機関と総称されるようになったの」

 「やっているだろうと思ったけど、実際に聞くとむかつくわね」

 「って。ファ・・・・レイは、なんで知ってんのよ」

 「碇司令と冬月副司令がバグ機関の内定報告を受けていたとき、いたもの」

 「それ、いつよ」

 「4年前。作ったの碇司令だから・・・ダダ漏れ・・・名称を考えたのも碇司令」

 「なっ!」

 「ぶっ!」

 「・・・・・・・・」 シンジ

 「どういう事?」

 「どうせ、組織化されるだろうから、自分で先に作ったと言っていたわ」

 「あははは、傑作・・・手玉に取られていたんだ・・・溜飲が下がるって言うのね。こういう場合」

 「・・・むかつく」 元バグ機関マナ

 「マナ。あんた、私のこと、どこまで知ってんのよ」

 「アスカ。ここで言って良いの?」

 「・・・駄目」

 「かわいい・・・アスカちゃん」

 「マナ〜」 アスカ怒る

  

  

 ナイトメアは、指定された高級服店の駐車場に止まる。

 シンジは内心焦る。

 「・・・な、なんか。場違いじゃない?」

 「あら、私は、いつもここで買っているもの」

 「そういえば、アスカの服ってセンス良いよね」

 「へえ〜 シンジ。あんたでも、わかるの?」

 「アスカは、元がいいから何着ても似合うよ」

 「さあて、シンジに選んでもらおうかな」

 「ぼ、僕が選ぶの?」

 「当然。プレゼントする人が選ぶに決まっているでしょう」

 「ははは」

 『ものすごく高そうだよ。年棒は、ほとんど残っているけど』

 シンジは、レイ、アスカ、マナの服を選び始める

 「シンジ・・・その色は駄目」

 アスカは、赤っぽい服を選ぼうとしたシンジを制した。

 「えっ そう、似合うと思ったけど」

 「駄目よね〜 赤っぽい髪と赤いルビーのペンダントが薄れちゃうものね」

 「な、何言ってんのよ。マナ」

 「いつも付けているものね・・・そのネックレス」

 「レイも、サファイアのネックレスを付けているし・・・良いな」

 『ひょっとしたら、もてているのかな・・・3人とは、あんなことやこんなことがあったし・・・・・』

 シンジとレイ、アスカ、マナの4人は、3時間ほど店内を物色。

 店内中の客と店員の眼を惹きながらレイ、アスカ、マナのファッションショーを見ることになった。

 アスカ、レイは、超美人。マナも美人。

 シンジは、人も羨む立場といえる。

 買った服は、30着に達し、支払った金額は、とんでもない金額になる。

 最後にマナにエメラルドのネックレスを買って、マナの首にネックレスを付ける。

 アスカとレイの視線が痛かった。

 レイの素朴なネックレスとアスカの洗練されたネックレスの中間的なデザイン。

 豪勢な買物をした中学生4人組が大量の荷物を最新の自動車に積み込むと走り出した。

     

 

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第31話 『綾 波』
第32話 『シンジとレイ、そして、アスカとマナ 1』
第33話 『シンジとレイ、そして、アスカとマナ 2』
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