月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

   

   

第33話 『シンジとレイ、そして、マナとアスカ 2』

   

 ナイトメアの中。

 シンジ、レイ、アスカ、マナ

 「・・・シンジ君。プラチナが好きなんだ。高いのに」

 マナは、シンジに買ってもらったエメラルドのペンダントを嬉しげに弄ぶ。

 「金は、なんか見かけが豪勢過ぎて」

 「成金趣味じゃなくて、白金趣味ね」

 「じゃ 食事に行く」 アスカ

 「どこに行こうか、車だと、どこでもいけるんだよね」

 「シンジは、期待出来ないから、車に選んでもらうわよ・・・何が良い・・・って、肉以外か」

 「碇君が食べたいなら、私は、構わないわ」

 「中華は? 自分で好きなの選べるし」

 「満漢全席ね」

 「豪勢・・・大丈夫。シンジ君」

 「僕が出すんだね。やっぱり」

 「わたしが出すわ」 レイ

 「ぅう。やっぱり、3人とも高給取りだから違うわね」

 「そんな・・・いつもは、質素だよ」

 「シンジ君とレイは、そうね」

 「なによ、わたしだって年収の割には地味よ」

 「シーズン過ぎた服、古着に出していたでしょう」

 「おにぎり一つで命がけだったセカンドインパクトは、過去の話ね」

 「その程度の年収よ。一回着たら捨てる人間だっているんだから・・・」

 「だいたい、新しい服買うと部屋が狭くなるし、買うから新しい服が出来るんでしょう・・・」

 「古着に出しているのは良い服を買える人が出るという事だし、日本経済に貢献しているのよ」

 「だいたい、いつ死ぬかわからないのに金持っても仕方がないでしょう」

 「有意義に使うべきよ」

 「なるほど、そういう考えもあるのか」

 「で、何で知っているのよ」

 「だから、3人の言動は、バグ機関で追跡されているって・・・」

 「その報告が碇司令に送られていたとは知らなかったけどね・・・」

 「敵の人材と予算を使って、身内の諜報するなんて信じられない人間ね」 

 「・・・・・・・・」 シンジ

 「秋津司令も、そういう人間と比較されるのは、なかなか、哀れね」  アスカ

 「でも、顔つきからして、悪の組織っぽく、ないでしょう」

 「表面的には人付き合い知っているし」

 シンジは、暗い部屋で番号が付いた喋る黒い墓石との問答を思い出す。

 一般的な見方をすれば、NERVは、悪の組織に思える。

 「その悪の組織に手玉に取られていたくせに」

 「あ、あのね。悪の組織といっても表面的なものだし、実態は、人類史的な主流だもの」

 「本当。戦自も良い度胸ね。ゼーレの資産を没収するなんて」

 「たまたま。タイミングが悪かったって、秋津司令は、言ってたけどね・・・」

 「元をただせば、アスカとレイが第13使徒に、だらしなく、やられちゃったのが原因ね」

 「マナ〜 気にしていることを・・・・」

 「・・・・・・・」 レイ、落ち込む

 「アスカって、感情を刺激すると思考が短絡になるのよね・・・猪突猛進の自滅型」

 「こういう精神的なパターンは、学歴に関係ないんだって」

 「マナ。今に見てなさい・・・い、いつか、捻じ伏せてやるわ」

 「アスカ。硬気功と体術の流れとバランスが悪いのよ」

 「下積みを怠けるとそうなるの・・・」

 「負けず嫌いの割りに根気がないのね」

 マナは、エメラルドのペンダントを見つめながら嬉しそうに呟く

 「あ、あんた。よくもズケズケと言ってくれるわね」

 「もう、深層心理学、統計学、全部ひっくるめて何度もカルチャー受けたわ」

 「3人の研究したから他人のような気がしなくて」

 「あんたみたいな奴、後、何人いるのよ」

 「シンジ君用に12人。まぁ みんな、シンジ君好みに、かわいいわね」

 「・・・・・」 シンジ

 「むかつく奴が、12人もいるわけ」

 「これでも、総合で上位よ。運の良さでトップかな。ね、シンジ君」

 「・・・うん」

 「シンジ。なに、ソワソワしてんのよ」

 「女の子3人に囲まれて、居心地が悪いのよ。シンジ君、モテモテ〜」

 「ははは」

 「ふんっ 軟弱。そんなんで、よく使徒に勝てるわね」

 「シンジ君、えらい、えらい」

 マナに頭を撫でられてシンジが赤くなる

 「次の使徒に勝ったら、また撫でて、あげるからね」

 「こら、レイ! あんた、シンジと付き合っているんでしょう」

 「ボケーとしてたら、この女に寝取られるわよ。なんか、言いなさいよ」

 「・・・そうなの、碇君?」

 「そ、そんなことないよ」

 「ぅ・・・絆強い・・・ただ好みのタイプというのと違うのね」 マナ

 「二人で何時間もエントリープラグ内にいられるんだから、かなり特殊な関係よね」

 「バグ機関でもレイの出生の秘密、わからなかったのよね」

 「というより、NERV以前、ゲヒルン時代の経緯からもたどれないし」

 「委員会やゼーレの影はちらつくけど、発生源じゃないのは確かね」

 「レイは、どこから来たのかしら」

 「知らないもの」

 「綾波という姓が碇司令の親友で葛城調査隊にいたのは調べたの」

 「なかなかの好人物で、なぜか、碇司令と気が合ったみたい」

 「京都の高校、大学で七不思議の一つみたいに思われていたみたい・・・」

 「でも綾波という人との血縁関係はなし」

 「じゃ 若いころから、お父さん、あんな感じだったの?」

 「んん・・・誤解されやすいタイプだったみたいね」

 「シンジ君くらいの年の頃は、結構、虐められていたみたい」

 「シンジ君と違うのは、夜中に虐めた相手の家に火炎瓶を投げ込んだことね」

 「証拠はないけど。5人の家に共通するのは、その家の子供達に虐められていた碇ゲンドウ君だけ」

 「全焼とか死んだ人が出なかったのは運が良かったわね」

 「・・・・・・・・・・・」 シンジ、レイ、アスカ

 「結構、それで、有名になっちゃったの」

 「証拠もないし少年法もあるから、捕まったりしなかったけど・・・」

 「放火は、普通、極刑だもの」

 「証拠もないのに・・・どうしてそんなこと言えるんだよ」

 「だって、残っている調書だとゲンドウ君、否定しなかったんだもの・・・」

 「火炎瓶が投げ込まれた場所も子供部屋だし」

 「黙秘権行使で有耶無耶。その頃は、うそがつけないタイプね」

 「そういう事まで調べているわけ」

 「んん・・・諜報の訓練も兼ねてね」

 「人って先天的なものと、後天的なものと、両方があるんだけど」

 「その人を知ろうと思えば、両親と子供を調べると正確になるの・・・」

 「でも、いい気味じゃない・・・」

 「虐めた子供は、政治家。ヤクザ。警官。資本家。マスコミ関係者の子供がいたのね」

 「でも先にマスコミが騒いだから、干渉しあってゲンドウ君に手出しできなかったみたい・・」

 「その後、模倣犯が急増して、社会的に大騒ぎになったらしいけど・・・いじめは減ったみたいね」

 「そういうところって、監視カメラとかあるんじゃない」

 「監視カメラの死角とか、遠くから投げればわからないでしょう・・・」

 「セカンドインパクト以前だから、わからない部分も多いけどね・・・」

 「ゲンドウ君の性格が著しく変化した切っ掛けね」

 「高校は、周りの目を別にして割と普通だったみたいね」

 「友達は、その、綾波っていう人だけ」

 「あと、ミサトさんのお父さんの葛城博士と仲が良かったみたい」

 「苦学生を続けながら大学に入ると生物、物理系列の研究に没頭」

 「そして、シンジ君のお母さん、ゼーレ系列企業のご令嬢、碇ユイさんに出会った」

 「誰からも好かれて、とても美人だったみたいね」

 「ていうか、一定以上の企業でゼーレ資本と関係ない企業ってないでしょう」

 「まあ、そうなんだけど、ゼーレ系と自覚している企業主という意味よ」

 「なるほど」

 「そこでは、医療用という名目でカーボンをナノレベルで人工人体生成の研究をしていたの」

 「ある種の不死の追求ね」

 「これが、NERVの前身。外資系医療メーカーのゲヒルン」

 「ユイお嬢さんは、大学で神経伝達による意思疎通で言語を超えた伝達手段を構築していたの」

 「ビフォ・バベル計画・・・」

 「ところが、ユイお嬢さん。なぜか、大学で知り合った朴念仁のゲンドウ君に惹かれてしまったのね」

 「どこに惹かれたか、わからないけど周りは不思議がっていた・・・」

 「二人の組み合わせが人類補完計画に発展して、ゼーレの老人達を刺激したの・・・」

 「少なくとも彼らが進めようとしていた30の未来設計より、ましな設計図だったらしいの・・・」

 「ゼーレは、その頃、南極の地下資源開発中に眠っていた遺物を発見して」

 「人類補完計画をさらに進歩させようとした・・・」

 「そして、セカンドインパクト」

 「・・・・・」  シンジ、レイ、アスカ

 「シンジ君。知ってた?」

 「・・・知らなかった」

 「諜報の初歩よ。今度、部屋に行って教えてあげるね・・・」

 「シンジ君の端末を使うとバレバレになってしまうけど、やり方だけなら教えられるからね」

 「うん」

 「マナ。あんた、上手いこと言って、シンジと良い関係になろうとしているわね」

 「あら、護衛の延長よ」

 「どこまで延長を狙っているのかしら」

 「あれ、アスカったら牽制しているの? なぜかな?」

 「べ、別に」

 「加持さん。捕まった?」

 「全然!」

 「いま、ゼーレの刺客と遊んでいるから。そばに来ないよ。危ないから・・・」

 「3日前、新潟の薬品工場で爆発事故があったでしょう。近くにいたみたいよ」

 「ぶ、無事なの?」

 「さあ・・・簡単に死なない人みたいだけど」

 「く、詳しいわね」

 「なかなか、有能でしょう。わたし」

 「そうね。顔と声が性格を裏切っているところなんか一流の資質ね」

 「そんなにかわいい?」

 「けっ!」

  

  

 中華料理店の満漢全席、

 15年前のセカンドインパクトが既に過去のものと証明しているような豪華さだった。

 並べられるご馳走にシンジ、レイ、アスカは絶句、マナはウルウル。

 「これ全部、食べられる?」

 「・・・無理」  レイ

 「余ったら、包んでもらえるようにするわ」  アスカ

 「うう、こ、こんなご馳走がこの世にあるなんて、天罰が下るわ。世界中で・・・」  マナ、泣き

 「NERVのスタッフに配ってあげようか。夜勤で働いている人多いから」  シンジ

 「そうね」  レイ

  

  

 NERV本部

 秋津ヨシキ、崎村ヒロコ

 「・・・エヴァチームか・・・・困ったものだな」

 「ええ、チームリーダーの適性に欠けた者ばかりですね」

 「んん、シンジ君は、戦略戦術をしらなすぎる」

 「さらに覇気と視野に欠けて優柔不断。何より人殺しは無理」

 「アスカ君は、チームワークを後回しにする」

 「レイ君は、一番戦略性で優れているはずなのに控えめなのか」

 「寡黙し過ぎて人心掌握は難しい」

 「それと、綾波レイの遺伝子ですが・・・」

 「わかっている。事前の調査でも確認されていた」

 「黄色人種でもなく、白人、黒人でもない。既存の人類種から隔絶しているな」

 「アルピノらしいが突然変異なのか、新しい人類種だ」

 「南半球ではオゾン層の不安定化で症例があるが親をたどれないほどじゃない」

 「もちろん、南極で亡くなった綾波ナオキのものじゃない」

 「どうされますか?」

 「これまで通りだ。使徒戦が全てに優先する」

 「赤木博士は、何かを隠している節もありますが」

 「赤木博士がいなくては、エヴァを維持できないし、使徒に勝てない」

 「彼女の報告を追及するのは、賢明じゃない」

 「それに彼女自身知らないことも少なくないようだ」

 「加持室長も、綾波レイの件は、詳細不明との事でした」

 「彼は、いまどこだ。ゼーレ日本の掃討作戦をしていたはずだが・・・」

 「まだ、新潟です」

 「ゼーレの狙撃用衛星をどこまで干渉できるかが問題だな」

 「一定の空域に干渉波を起こさせているので、対人用狙撃は、不可能なはずです」

 「それと、むかしのように数を揃えられていないので、それほど怖くありません」

 「第10使徒サハクィエルに感謝すべきだな」

 「衛星の9割を破壊して、日本の自主独立を助けてくれた。電磁弾道弾は、怖いが」

 「日本からの報復を恐れて、それはないと思いますが」

 「電磁弾道砲があれば、世界中のどこでも好きなだけ砲弾を落とせる」

 「まあ、半分撃ち落とされるとしても、弾頭の種類によっては、再起不能だ」

 「では、冬月副司令は?」

 「全世界を相手にケンカしているようなものだだからね」

 「副司令の話しの真偽はともかく、ゼーレとのパイプ役で不可欠だよ」

 「ですが一人の新人種を生成誕生させるなんて、碇ゲンドウ氏1人では、不可能だと思います」

 「気になるか?・・・綾波レイ」

 「存在には、目的があるはずです。目的だけは知っておくべきでは」

 「マギにも、最下層にも、それらしい物があった」

 「エヴァ誕生の副産物としての綾波レイ。それが、いまの見解だ」

 「彼女自身の罪とはいえない」

 「それにシンジ君とレイ君の関係を考えれば、鈴原トウジ君どころじゃない。アンタッチャブルだな」

 「では、何もしないと」

 「綾波レイから、善意も、悪意も、感じない・・・」

 「何かをすれば悪くなるばかりという時期と状況がある」

 「いまは、無為であることが最上策という時期だ」

 「当面は、3人にリーダー教育を少しずつ刷り込ませるだけでいいだろう」

 「チームリーダー不在は、危険では」

 「葛城三佐は、現状やむなしと報告している」

 「まぁ 事前の調査でも、わたしが見た限りでも、三人にリーダーの資質が欠けている。同じ意見だ」

 「次の出撃は、シンジ君とレイ君のダブルエントリーで初号機を使うのが基本になるな」

 「零号機、二号機とも修復に25日を必要とするそうです」

 「二号機優先だ。現状で初号機のみは、心もとない」

 「トライデント機が、どこまで援護できるかだ」

 「葛城三佐によれば、エヴァによるATフィールド中和と」

 「トライデント巡洋艦による荷粒子砲狙撃をシミュレーションしたそうです」

 「トライデントチームとの連携は、良いといえないそうです」

 「基礎となる戦闘能力が違いすぎるか」

 「ええ、既存の科学技術の結晶でさえ、エヴァにとっては、足手まといのようです」

 「ATフィールドの差だ。機動力や火力の差ではない」

 「エヴァが振り下ろすナイフの荷重表面圧力は、一立方p当たり80000tに達します」

 「逆に言えば、ATフィールドを中和後でも」

 「それだけの貫通能力がなければ使徒を破砕できないという事です」

 「パワーの差でもあるわけか」

 「それこそ、電磁弾道弾の直撃が必要だな。よくナイフが堪えられる」

 「ATフィールドで覆っていると考えられます」

 「パレットガンの砲弾もATフィールドで覆われていると考えて良いのか」

 「ATフィールドの力に比例して、威力が向上しているのが、確認されています」

 「電磁弾道弾も摩擦熱と衝撃波による砲弾の消耗は大きい」

 「大気圏突破と再突入で質量が半減してしまうほどだ」

 「ATフィールドで覆いたいものだな」

 「ATフィールドの観測結果から、いまだ原理がわかっていません」

 「コアを解体して、もわからないとはね。やはり、秘密はリリスか、ロンギヌスの槍」

 「最地下層のリリス。下手に触れるとサードインパクトの恐れもあります」

 「ゼーレの失態を繰り返すのは得策ではないと思います」

 「そうだったな。結局。現状のままか」

 「死海文書の解析によれば種子は、17個」

 「NERVの記録からすると前回のが13体目。あと4体で終わりです」

 「14体目という報告も加持君から受けている。それだと、あと3体」

 「そして、宇宙から落下してきた使徒と3号機を乗っ取った使徒のコアの破壊を確認していない」

 「重複しているのか、別の使徒なのかわからない」

 「この場合、数を間違えるという事は深刻な問題だ」

 「使徒戦が、終わったのか、終わっていないのか、判断できない」

 「状況から第10使徒のコアは破壊されているだろうが・・・」

 「なぜ、リリスは、人類にメッセージを残すような行為をしたのでしょうか?」

 「人類を滅ぼしたいのなら南極大陸で眠りに付く必要などないと思うのですが」

 「その辺は、死海文書に記されていない・・・」

 「人類でない物だ。彼らの目的が、なにか、などわからんよ・・・」

 「同じ人類のゼーレの目的も独善的でよしとは、いえないがね」

 「民主的な手続きをへていませんね」

 「ふん。我こそは人類歴史の主流。人類そのものだと思っている輩だ」

 「民主的な手続きを必要と思っていないだろう」

 「使徒戦後、ゼーレとの戦いになると思われます」

 「アメリカ、ドイツ、ロシア、イギリス、フランス、イタリアとも足並みを乱し始めている」

 「相互確証破壊を前にすれば誰もがしり込みする」

 「セカンドインパクトから立ち直れ切れていない国も多い」

 「ゼーレは、ともかく国家同士の戦いになるか不確定要素が大きい」

 「日本が、一番早く立ち直り始めています」

 「アメリカは、無法化した6州を放棄すれば、日本を抜いて第一位に返り咲き」

 「ドイツは総合で日本に準じています」

 「そのほかの国は、メタンハイドレード産業構造への切り替えが遅れているので徐行段階です」

 「結局は、資源、エネルギー、食料の差でなく、国民の意識差だったな・・・」

 「セカンドインパクト。酷い時代だったが、日本は、比較的酷くなかったという事か」

 「早い段階で一時的にでも人口が半分に減ったからでしょう」

 「大陸と違って内陸に逃げることが出来ませんでしたから」

 「そう・・・酷い時期だった・・・」

 「南極大陸と氷が蒸発して良かった」

 「そうでなければ、日本列島ごと、あっという間に水没して全滅だったよ」

 「セカンドインパクトの被害の大きさに助けられたということですね」

 「ああ、もう少し小さければ、日本民族は、津波で消えていたな」

  

  

 学校

 霧島マナは、持ち前の明るさと人当たりの良さから、特定のグループに固執することなく。

 いつの間にかクラスの花、クラスのムードメーカー。

 いくつものグループの垣根を越えて友人を作れる渉外力の高さは、シンジも羨望の眼差しを向けるほど。

 「シンジ。いいねえ、霧島さん。輝いていて」 ケンスケ

 「うん」

 「でも不思議だな。あれだけ、好意を寄せている霧島より、無機質な綾波が良いのか?」

 「シンジ。霧島と仲良くした方が楽しくないか」

 「綾波は、人が怖くて感情が乏しいだけなんだ。綾波が、悪いんじゃないよ」

 「好きになりやすい方に気持ちが流れないというのは、シンジも苦労人だな」

 「そ、そういう、わけじゃないけど」

 「いつまで持つかな、人の心はうつろいやすく、変わりやすい」

 「でも、綾波も少しずつ変わってきているし」

 「まあ、かなり変わってきたな。綾波、惣流、霧島が互いに名前で呼び合うくらいだから」

 「それに綾波は、シンジだけに表情を見せるし、シンジは、良いよな、女っ気があって」

 「だけど、どういう風に話そうか」

 「なにをしたらいいかとか、いろいろ考えると不自然になったりして、難しいんだ」

 「この〜 うらやましいやつだ。俺なんかそれ以前だ」

 「そうかな。同じだと思うよ」

 「なにを話したらいいか、どうしたらいいか、いろいろ考えないといけないから」

 「ケンスケも好きな子に声かけてみなよ」

 「シンジ〜 言うようになったな・・・」

 「んん、俺の高尚な趣味が、わかってくれそうな女の子が、いればいいんだが・・・」

 ケンスケが腕を組んで辺りを見回す

 一時は、半分に減っていた教室の席は、わずかながら埋まり始めていた。

 疎開していく者の席を埋めるように転入、編入でクラスメートが増える。

 新たに参入する企業体の子弟や戦自の少年兵だった。

 「なんか、そういう雰囲気じゃないような気がするな」

  

  

 NERV本部

 憮然とするミサト

 「何? わたしには、中華ないわけ」

 「いなかったんだから、しょうがないでしょう」  リツコ

 「パイロットだけ、口座が凍結されていないなんて、ゼーレのひいき」

 「こっちは、ローンが残っているのに・・・」  ミサト

 「しょうがないでしょう」

 「それでも、加持君が在日ゼーレ資産を退避させていたから最小限の損失で済んだのよ」

 「当面は、政府の一時金で生活するしかないわね」  リツコ

 「満漢全席なんて、一生のうちに一度、味わえるかどうか、わからないのに」

 「いやあ、夜勤も悪くないっすね」

 「あの子達が、僕達に良くしてくれるなんて」 青葉、泣き

 「そうね。めったに食べられないご馳走だったわね」 リツコ

 「先輩。フカヒレ、ツバメの巣、美味しかったです。初めて食べました」 マヤ

 「良かったわね。マヤ」  リツコ

 「はい」  涙

 「あんた達・・・」 ミサト、怒

 「日頃の勤務姿勢が、結果として現れたのね」

 「うう・・・」

 「そういえば、アスカは、全自動操縦の車。ナイトメアを買ったみたいですね」  日向

 「そうそう、初の無免許車。高いのよね」  マヤ

 「あの3人もようやく高額所得者という事に気付いたか。寂しいような羨ましいような」

 「昨日は、子供4人で豪遊だったみたいですよ」

 「シンジ君は3人に洋服を買ってあげたみたいだし」  青葉

 「ふ〜ん。マナって子も一緒か」  ミサト

 「シンジ君直属の護衛ですからね」  日向

 「まあ、子供同士ならそれほど窮屈な思いをしなくてもいいか」  ミサト

 「シンジ君を中心に4角関係。なかなか、良い関係ですよ」

 「シンジ君が綾波レイに決めて、霧島マナと惣流アスカが一歩引いているせいでしょう」  青葉

 「シンジ君も一途ね〜」

 「ええ、フラフラしないところがいいですね」  マヤ

 「ですが霧島マナも、惣流アスカも、牽制しあっているようですが」

 「シンジ君に対して、なかなか、良い位置にいますよ」  青葉

 「でも、アスカが、その気になるとは、思えないんだけど」  マヤ

 「若いわね。マヤ。どんなに孤高を気取っても女の子」

 「男の子に良くしてもらえば喜ぶし、シンジ君は命の恩人で、しかも一番近い男の子だもの」

 「シンジ君がソッポ向いているから気付かないかもしれないけど」

 「シンジ君がその気になれば・・・ムフッ♪」

 「なに面白がっているんですか」

 「シンジ君は、レイと一緒に幸せになる。それでいいじゃないですか」

 「それだと、おもしろくないでしょう」

 「そんなの駄目です!」

 「よし、シンジ君が、誰とくっ付くか、みんなで賭けない」

 「そ、そんなの不謹慎です!」

 「綾波レイが本命。霧島マナが対抗。惣流アスカが大穴かしら」  リツコ

 「せ、せんぱい〜」

 「じゃ、霧島マナに1万」  日向

 「あ、僕も霧島マナに1万円」  青葉

 「そんなの駄目です・・・・綾波レイに1万円」  マヤ

 「じゃ・・・・わたしは、惣流アスカに1万」  リツコ

 「んん・・・みんな、本命外しできたか、霧島マナに1万よ」

 「なんか酷いです」

 「みんなして、二人が上手く行かないように誘導しようとしているみたいです」

 この管制室から始まった賭けは、瞬く間にNERV全体に広がってしまう。

  

  

 訓練場

 シンジとアスカ。

 レイとマナが対峙。

 レイとマナの体術は、互いの体術を確認しあうような余裕があって、落ち着いた形で進んでいる。

 一方、アスカとシンジは、蛇と蛙。

 数度、打ち合った次の瞬間。

 シンジが、体勢を切り返して掌をアスカの脇腹に極めてしまう。

 アスカがよろけ。辺りに信じられないといった静寂が漂って、注目を浴びる。

 「あれ?? 当たった・・・」

 「シンジ。やってくれたじゃない」

 アスカが不敵に微笑む、

 その後のアスカが攻め、シンジが防ぎ続けた、

 その攻防戦は、アスカとレイとソックリ。

 そして、次の瞬間、アスカが力任せにシンジの腕を捻り上げ、シンジが落とされる。

 「レイのテクニックを模倣できても、筋力や瞬発力は、真似できなかったみたいね」

 「はあ はあ はあ・・・負け・・・」

 「それでも、素人が半年もしない間に模倣できるようなレベルじゃないはずだけど」

 「どういう事? 天才じゃないわよね」

 シンジが辺りを見回すとアスカと同じように、

 レイ、マナ。そして、他の保安部員や戦自の少年兵が見ている。

 「わ、わからないよ。そ、そんなこと」

 「シンジ。闇討ちの方に行くわよ」

 アスカがシンジを引きずる

 「す、少し休ませて」

 「軟弱な奴」

 アスカは、かまわず引き摺っていく。

  

  

 NERVからの帰り道

 その日、シンジは、技、センス、経験だけでなく。

 基礎体力でもマナ、アスカ、レイに劣っていることを思い知らされる。

 「ぅう、綾波も、アスカも、マナも、痩せているのに何で強いんだろう」

 「思春期を過ぎると一般的に女子は、男子の筋力の60パーセント」

 「でも、瞬間的に重心と支点を利用して、力で男子を上回ることがあるの」

 「レイ、はっきり言ってあげたら、力負けしているって、シンジは弱いって」

 「男だからって、少しくらい鍛えても」

 「14年間だらけた生活を送ってきた人間と。14年間、鋼のように鍛えられた人間の差だって」

 「腕相撲でも負けないわよ」

 「・・・・・」

 シンジ。うつ状態

 「シンジ君。自信を持って。ばか力の赤毛ザルに負けたからって、落ち込んじゃ駄目よ」

 「だ、誰が赤毛ザルよ。この〜」

 「惣流・アスカ・ラングレーでS・A・L。サルでしょう」

 「ムキィ〜 頭きた」

 アスカの突き。

 マナがかわす。

 マナとアスカのストリートファイト。

 「・・・碇君。行きましょう」

 「うん・・・・」

 「今日は、てんぷらにするわ」

 「ありがとう。いつも悪いね」

 「いいの、碇君が喜んで食べてくれるのが嬉しいの」

 「綾波の料理は美味しいよ」

 「でも、碇君の方が料理作るの上手」

 「そうかな、綾波の料理も、上手くなってきているよ」

 「そう」

 「でも、ダブルエントリーで強くなれるなんて、ずるいかな。アスカ怒ってたし」

 「そんなことない・・・わたし、嬉しいもの・・・・腕組んでいい」

 「うん。いいよ」

 「高校になれば、碇君の方が強くなる」

 「そ、そうかな」

 レイの腕が、シンジの腕に絡む。

 最初の頃のぎこちない腕組みも、最近は、馴染んで様になっている。

 後ろでアスカとマナがギャギャと騒ぎながら歩いて異様に目立つ4人組。

 アスカは、祖国ドイツから遠くはなれた日本で戦う寂しさがあった。

 それもエリート。

 エースとしての参戦でありながら単独での使徒殲滅は、一つもない。

 そして、急場しのぎで出撃したサードチルドレン碇シンジ。

 人間的に格下に思える碇シンジが使徒殲滅の主役であり続けた。

 意気消沈するアスカの気を紛らすようにマナが突っ込み始める。

 小気味良く反応を返してくれるマナは、刺激があって面白く。

 アスカのケンカ相手に収まっていく。

 頭一つ分低いマナがアスカの攻撃をするりとかわし、

 レイの反対側、シンジの隣に来て腕を組む。

 「シンジ君。今日はどうするの?」

 「買物して、帰るよ」

 「私も、一緒に行って良い?」

 「うん」

 「こおら〜! マナ。まだ決着付いてないでしょう」

 「キャッ〜! シンジ君、怖い」

 マナが、シンジにしがみ付く

 「けっ! いまさらかわい子ぶるな。あんた。それが目的。いい加減に諦めたらどうなの」

 「シンジ君。パフェ、食べない。私奢るから」

 「でも・・・」

 「みんなにも、奢るよ」

 「パフェか、食べたことないな」

 「ええ〜 シンジ君。パフェ食べたことないの〜」

 「苦しい訓練の合間に食べるパフェ。それは、生きる糧、明日への希望よ」

 なぜか、夕日を指差す。

 「綾波は、食べたことある。パフェ?」

 「・・・一度、碇司令にご馳走してもらったことがあるわ」

 「・・・・・・・」

 「じゃ 決まり。こっちよ」

 マナが、近くの喫茶店にシンジを引き摺るとレイが引っ張られ、

 アスカも不承不承についてくる

 喫茶店に入るとシンジとレイが並んで、

 マナがシンジの正面、アスカが、マナの隣、レイの正面に座る。

 ビックチョコパフェ4つがテーブルに並べられ、マナとアスカは目の色が変わる。

 シンジは、女の子3人と喫茶店に入って注目されていることの方が気になる。

 「大きい。一食分、ありそうだね」

 「シンジ君。食べて食べて」

 シンジが一口。

 「・・・・美味しい」

 「でしょう。シンジ君。いやなことを一気に忘れるわ」

 「そうだね」

 「ねえ、レイ。碇司令もパフェ食べたの?」

 「・・・私だけ」

 なぜかホッとしたような空気が流れる

 「良かった。なんか、碇司令のイメージが完全に壊れるところだった。ははは」

 「マナ。司令と会ったことあったっけ」

 「会ったよ。シンジ君と一緒に、あの悪趣味な部屋に入ったとき」

 「んん、確かにあの部屋は、悪趣味ね。何なの図?」

 「カバラの絵図」

 「(1)ケテル(王冠)、(2)ホクマー(知恵)、(3)ビーナー(理解)」

 「(4)ヘセド(慈愛)、(5)ゲブーラー(公正、力)、(6)ティフェレト(美)」

 「(7)ネツァー(耐久、勝利)、(8)ホード(尊厳、栄光)、(9)イェソード(土台)」

 「(10)マルクート(王国)を図象化したもの」

 「相変わらず。丸覚えの知識。レイ、自分の感性とか感情とかないわけ?」

 「シンジ君は、レイのどこが好きなの?」

 「ど、どこって・・・なんとなく」

 思わず退いていくアスカとマナ

 「悪趣味同士。ふん! お幸せに」

 「レイは、シンジ君のどこが好きなのかな」

 「わたしには、碇君しかいないもの」

 「・・・・・・」  アスカ

 「・・・・・・」  シンジ

 「そ、その姿勢にシンジ君が、なんとなくメロメロなのね」

 「恋愛は、一途になったほうが負けよ」

 「でも、覚悟がある、というのは強みよ」

 「どこが、いいんだか?」

 「誰が? 誰を?」

 「どっちもよ」

 「ねえ、シンジ君。いつからレイが好きなの?」

 「だ、第5使徒を倒した後かな」

 「・・・・・」 レイ

 「レイは、いつからシンジ君が好きなの?」

 「第14使徒の後」

 「・・・・」 シンジ

 『ふっ 噂の第11使徒は、殲滅した。ということね』 マナ

 にやり。

 「第14使徒って、最近じゃない、それ以前は、好きじゃなかったの?」 マナ

 「わからない」

 『よ、良かったよ。キスをせまらなくて』

 「なるほど・・・・二人がキスしたのは14使徒の後ね」 アスカ

 「ええぇ〜」 マナ

 「・・・・」 シンジ、レイは、頬を赤くする

 「・・・・」 アスカ、マナが、むっとする

 「私は、双子の第7使徒辺りかな。事情がわかると情が通じちゃうのよね』

 『アスカは、第8使徒の後ね」

 「ばっかじゃないの。わたしを巻き込まないで!」

 「へえ、でも、シンジ君。片思いの時期、長かったんだ。良かったね思いがかなって」

 「・・・あ、ありがとう」

 「私の片思いは、いつかなうのかな」

 「・・・・・・」 シンジ

 「シンジ。あんた。自分が、モテているなんて勘違いしているんじゃないでしょうね」

 「そ、そんなことないよ。あ、綾波と仲良く出来ればいいだけだから」

 「・・・・・」 レイ、頷く

 「アツアツね。あんた達」

 「アスカだって、ラブレター。たくさん貰っているじゃないか」

 「・・・・・」 アスカ

 「あら、シンジ君。ラブレターの数は、わたしが一番よ。人気投票ナンバー1」 マナ、親指を立てる

 「ふん!」 アスカ

 「上手に断らないとね。アスカ」

 「問題外よ。あんな連中」

 「まあ、そういう一面は、あるけどね」

 「マナ、もてるんだ。良かった」

 「むっ!・・・シンジ君。泣いちゃうぞ」

 「ご、ごめん」

  

  

 発令所

 ミサト、リツコ、伊吹、青葉、日向がモニターを覗き込んで騒ぐ。

 「・・・そ、そこよ。シンちゃん!! そこで、後ろからレイに抱きつく」  ミサト

 「レイも、気付いていますね」  青葉

 「あれは、期待している目よ」

 ミサト。目がランラン

 「シンジ君。レイと二人っきりになると、こればっかりですね」  日向

 「ああ、もう、じれったいわね。あと一息なのに」  ミサト

 シンジが、レイに触れようとする

 「・・・・・・・・」 一同、固唾を呑む

 「あ、くじけた」  マヤ

 「ブッ!・・・・・何やってんのよ。シンちゃん!」

 「レイも、落胆していますね。気付きましたよ」  日向

 「あああ、もう、シンちゃんたら気が弱いわね。レイは、待っているのに〜」

 「レイも、勘が良いから、なんか、かわいそうですね」  日向

 「そうよ。蛇の生殺しよ。レイちゃんは、その気になって待っているんだから」

 「そうですね。女の方からというのは、ちょっと難しいから。シンジ君。がんばらないと」  マヤ

 「やはり、レイの方が強いというのが引いてしまう原因ですかね」  青葉

 「レイは才色兼備だからな」

 「シンジ君は、外見から人並み、優男、優柔不断で、一歩引いていますね」  日向

 「それくらい何よ。天文学的な戦績で二佐なんだから階級を利用して押し倒すのよ」

 「“レイ好きだ” で、レイも抵抗しないわよ」

 「あんた達も、暇ね」

 リツコ、呆れ

 「何、言っているの、パイロットの心理状態は、重要な戦略的要素よ」

 「そうでしょうとも」

 シンジとレイは離れて、それぞれの部屋に入っていく。

 「次は、次。マヤ、次」

 「ええ、と・・・・ここからかな」 マヤ

 ジオフロントの森の遊歩道。

 シンジが、チラチラとレイの様子を覗き込む

 「ぶっ・・・・シンちゃん。男の子なんだから」

 「なにか話せばいいのに。支離滅裂でも女は、愛の囁きに弱いのよ」  マヤ

 「支離滅裂は、レイに逆効果よ」  リツコ

 「シンジ君も、レイも、聞き役で、話しベタですからね」  日向

 「でも、シンジ君も話しやすいのは、マナやアスカなのにどうして、レイなんですかね?」  青葉

 「最初にキスした相手は、アスカのはずだけど」 ミサト

 「えぇぇええ〜!!  本当ですか? ミサトさん」伊吹

 「あのね・・・浅間火口でシンジ君がアスカを助けたでしょう」

 「その時のお礼でアスカがシンジ君にキスしたと思う。見てないからわからないけど・・・」

 「その時の二人の態度で。か・く・じ・つ」

 ミサト。面白がる

 「じゃ それなのにシンジ君は、レイが良いんですか?」  日向

 「アスカも変に態度大きいのとシンジ君を虐め過ぎたのかも知れないけど」

 「シンジ君も女心がわからないわね」

 「アスカの場合、少し抵抗するかもしれないけど」

 「“僕は、アスカが好きだ” と言えば、すぐ負けた振りするわよ」

 『そればっかりね。ミサト』  リツコ

 「そういえば、マナとは、もっと良い関係でしたよね。裸と裸の付き合いというか」

 「トウジ君とのことがなければ、一線越えていたんじゃないですか」  青葉

 「アスカにも、マナにも目をくれない」

 「それだけ、レイが好きという事ですか?」

 「それだけの魅力がレイにあるんですかね。アスカやマナの方が・・・」  日向

 「それは、日向君の趣味ですか?」

 マヤ、白い目

 「い、いや。一般論だよ。一般論・・・・」

 「おっ! シンジ君がレイと湖に誘いましたね」  青葉

 「あ、ドサクサに手を握った。やるね。シンジ君」  日向

 「んん・・・シンジ君。もう少しエスコートの仕方を工夫すれば、レイも腕を組みやすいのに」

 「でも、レイも、シンジ君にべったりですね」

 「特に二枚目というわけじゃないし」

 「エヴァを除けば刺激の少ない男の子なんですけどね」 青葉

 「確かに野性味とか、面白みというか、刺激に欠けますね」

 「待っている方とすれば辛いですよ」  日向

 「でも、女の子の扱いが下手なだけで十分、魅力的だと思うけど」

 「じゃ ちょっと俺が手ほどきを・・・」  青葉

 「駄目よ。加持さんを師匠にしている。青葉君は、駄目!」

 「じゃ わたしが」 ミサト

 「やめてください。生活破綻者になってしまいます」

 「マヤ。あんたね・・・」

 「今度は、ボートに乗るみたいですね」 日向

 「定番ね。男が主導権を取って、漕いで力を証明できて、行き先も決められる」

 「女は、全て、ゆだねて座っているだけ・・・」 リツコ

 「でも、レイの方が強いですよ」 日向

 「儀礼的にレイは、漕がないでしょう。たしなみというか、女の子だし」

 「そういえば、レイは、シンジ君に三食料理を作っているようですね」

 「第14使徒以降、完全に逆転していますね。意外と家庭的ですし」  青葉

 「シンジ君をアスカとマナに取られたくないんじゃない。あの娘なりに必死なのよ」

 「マナは、近くにいるのかな」  日向

 「マナは、二人の死角だけじゃなくて、監視カメラにも気を配っているみたいね・・・」

 「木の陰に沿って移動しているから、赤外線カメラを解析させて入れないと難しいわね」  リツコ

 「マナも辛いわね」

 「好きな男が他の女とデートしているのを護衛しなければならないなんて」

 「レイも、マナに気付いているんですかね?」 日向

 「実力的には、マナの方が上ですから」

 「マナが教えるつもりがなければ、気付かないと思いますよ」  青葉

 「どの道、湖の中央だと手が出ませんよ」  日向

 「キス。しますかね」  青葉

 5人は、知らず知らずモニターに引き込まれていく。

 「シンちゃん。行け!」  ミサト

 「シチュエーションとしては、良いですよ」  青葉

 頷く一同。

 「・・・・」 一同

 結局、何も起きずに終わってしまう。

 NERVが失った時間は少なくなかった。

  

  

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第32話 『シンジとレイ、そして、アスカとマナ 1』
第33話 『シンジとレイ、そして、アスカとマナ 2』
第34話 『NERV 誕生』
登場人物