月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

   

第38話 『リツコ & ハルカ』

   

 発令所

 ミサト、リツコ

 「・・・これが新しい見解」

 「ええ、ケルベロスから盗った情報を足したり引いたり。なかなか、ハードだったわ」

 「どうやったのかしら。ゼーレのメインコンピュータ。ケルベロスにケンカ売るなんて」

 「使徒戦が終わる前に戦争を始めたかったの?」

 「気付かれたらね」

 「あのね、リツコ。素人だと思っていい加減なこと言わないでくれる」

 「ケルベロスに気付かれないように情報を引っ張り出すなんて、できるわけないでしょう」

 「たまたまね。抜け道を見つけたの。全体の解析は終わっていないけど」

 「お土産も、置いてきたから、いつでもペシャンコ出来るわよ」

 「たまたま? 偽の情報じゃないの、時限爆弾付とか」

 「自爆プログラムは、片付けたわ」

 「いくつかのシグナルを一定時間内に流せば、不活性化するようなものだから」

 「ふ〜ん。それにしても、ずいぶん、整理されたけど、これまでのものと違うわね」

 「ゼーレにすれば大打撃か・・・どう思うマヤ」

 「・・・凄いです。640桁の解除コードをたまたま見つけて、短期間に一人でこれだけのことが出来るなんて」

 「先輩が、もう一人いるみたいです」

 マヤ。羨望の眼差し

 「円周率と黄金率を交互に特定の素数を一定の間隔で、かけただけだったわ」

 「へえ〜 それも、たまたま」

 ミサト、疑いの目。

 「・・・物理。時間的に不可能なような」 マヤ。羨望

 「へぇ〜 どういう事かしら」

 「リツコ。まさか、日向君とワルツを踊ったから、なんて、いうつもりじゃないでしょうね」

 「あっ! 眠い。徹夜続きだったから、もう限界。寝るわ。後よろしく、マヤ」

 「あ、はい」

 すた、すた、すた・・・・

 「逃げたわね」

 「マヤ。思いっきり怪しいわね。あんたも、そう思うでしょう」

 「わ、わたしは、エヴァの調整をやっていたから・・・」

 「先輩の仕事に比べたら遊んでいたのと同じ・・・」  ガックリ

  

  

 休憩室

 アスカ、ハルカ

 簡易ベットに眠っているアスカの髪を触りながらハルカが歌う。

 「・・・・か〜ご〜め〜か〜ご〜め・・・」

 「・・か〜ご〜の〜中〜の〜鳥〜は・・・・い〜つ〜い〜つ〜で〜や〜る・・・・」

 「夜〜明〜け〜の〜晩〜に・・」

 「・・・つ〜る〜と〜か〜め〜と〜す〜べ〜っ〜た・・・・後〜ろ〜の〜正〜面〜だ〜あ〜れ」

 眼を覚ますアスカ

 「・・・なに?」

 「アスカ。ハーモニックステストの時間」

 「そう・・・ハルカ、その歌は?」

 「えっ なんだろう、昔、聞いたような気がして」

 「そう」

 「お昼は、ちゃんと食べた?」

 「食べたわよ。つまんないこと聞かないで」

 「じゃ、行こう」

 「ハルカ。ダブルエントリー、どう思う?」

 「んん・・・かなりエグイわね。今度、シンジ君とダブルエントリーしたいな」

 「レイに殺されるわよ」

 「そう、ちょっと怖いタイプかも」

 「青髪紅眼なのに二人とも。随分、タイプが違うわね」

 「レイちゃんは、根底に人間不信があるみたいね」

 「きっと、レイちゃんのせいじゃないわ。信じられるのはシンジ君だけ」

 「会ったばかりで、ろくに話していないのにわかるわけ」

 「表情が乏しいのは、無機質に育てられたか、強い衝撃を受けたか」

 「でもシンジ君にべったりなら、まだ希望があるわね」

 「ねぇ〜 どうして、ハルカは、リツコと一緒に住んでいるの?」

 「さあ、わからないけど、リツコちゃん、ほとんど家に戻らないから、お留守番みたいなものよ」

 「リツコをリツコちゃんなんて呼ぶの。ハルカだけよ」

 「ははは」

 「どうも苦手なのよね。リツコって」

 「そうね、知性優先主義だから婚期を逃しそうになって、開き直ってしまうのよね」

 「何か趣味が必要ね・・・・そういう出会いもあるし」

 「リツコと日向マコトにワルツを踊らせたって、本当?」

 「ええ、上手に踊っていたわ」 にこっ。

 アスカが引きつる

  

  

 公園

 アスカ、マナ、ハルカは、ベンチでソフトクリームを舐める

 「・・・ねえ、アスカ、マナ。あの3人組は、感じ良いわよ」

 「そうね。手頃そうだけど、面白みがなさそうよ」

 「・・・・・・・・」 アスカ

 「あれくらいが長く付き合いやすいのよ」

 「渋〜 ハルカって、渋〜い」

 「何よ。マナ、ポイ捨てするつもり。味見して損するのは女よ」

 「やだ〜 ハルカ、露骨〜」

 「ちゃんとキープしなきゃ いい思い出を残せば、いつでも連絡が取れるようにネ」

 「・・・・・・・」 アスカ

 「アスカは、どの子がタイプ」

 「たいした子は、いないわ」

 「アスカ。タカビ〜 は駄目よ」

 「タカビ〜?」 マナ

 「高飛車美人」

 「ふる〜」 マナ

 「いい、アスカ。あなた姿勢が良すぎて、隙が無いんだから。いい」

 「ここぞ、という時は、ヨロ〜 だからね、ヨロ〜 そして “ごめんなさい” よ」

 『やるわね。この娘。アスカのウィークポイントを一撃で言い当てたわ』 マナ

 「何で、わたしが ヨロ〜 で “ごめんなさい” なのよ」

 「意外性で男の気持ちを掴み取るのよ」

 「特にアスカは、効果的よ。ちょっとだけ、腰を低くして相手に頼るの」

 「けっ!」

 「・・・じゃ 誘うからね」

 ハルカがそう言うと隣に座っている。

 マナのつばの長い帽子を後ろから跳ね上げる。

 帽子は、風に吹かれて3人組の男達の方に飛んでいく。

 「良い。女の狩は、風上が鉄則よ。いろんな意味でね」

 「うっ! 負けました」 マナ

 「あとは、わかっているわね?」

 「わたしは、問題ないけど・・・」

 マナがアスカを見る

 「何よ!」 アスカ

 「アスカ。微笑みなさい。こっちを見ているんだから・・・じゃ 行くわよ」

 「それから、断る時は “わたし、結婚するまで綺麗な体でいたいの” だからね」

 「半殺しにしたら駄目よ」

 男の子達が帽子に気付いて拾うとアスカ、マナ、ハルカと出会う。

 3組のカップルは、その日一日、公園で健全な遊びをすることになった。

 

  

 黄昏の公園

 アスカ、ハルカ、マナ

 「・・・アスカ。結構、楽しかったでしょう」

 「諜報訓練で、良くやらされたわ」

 「知らない男の子の気を引いて必要な情報を聞き出すの」

 「ええ、マナに後ろから小突かれなければね」

 「アスカ。卓球で本気になったら駄目でしょう」

 「それにバスケでダンクしそうになるし。なに考えてるのよ」

 「ラブラブモードを熱血モードにするつもり?」

 「でも、まあ、青臭いけど高校生なら、あんなものかな」

 「なに、物足りなそう。ハルカって、どういう生活して来たの?」

 「ハルカの相手の子、完全に手玉に取っていたでしょう。年が逆転していたわよ」

 「マナも、なかなかやるじゃない。相手の性格を良く掴んでいたわ」

 「ハルカには、負けたわ」

 「ミステリアスな容姿をアクセント程度しか利用してないし」

 「器の大きさというか、懐の広さというか、老獪さというか。中身で勝負は正道ね」

 「アスカは、もう少し、棘を無くさないとね」

 「綺麗なバラには棘があるのよ」

 「相手の気持ちをまず考えてあげるの、自信を持たせてあげれば、相談してくる」

 「相談してきたら、自分で解決できるように誘導する。あとは、それを繰り返せばいいだけ」

 「マンネリのように思えても、男の子は、とてもよくなるわ」

 「育成ゲームと同じ」

 「逆に相談してあげたら向こうも一生懸命になってくれるし、そうでなかったら見込みなし」

 「バラは、いつまでたっても観賞用よ」

 「はい、わかりました、師匠」 敬礼

 「うむ、よろしい。精進しなさい」 答礼

 「ハルカって、誰とでも、仲良くなれるのね」

 「アスカも、こういう諜報訓練を繰り返せば、誰とでも仲良くなれるわよ」

 「ねえ、夕食は私の部屋で取らない?」

 「これでも、プロ職人直伝の腕前なの」

 「そうね。じゃ アスカ。今晩泊めて」

 「私の部屋?」

 「そうよ。同じエヴァに乗っているんだから親睦よ」

 「いいけど・・・・」

  

  

 305号室

 アスカ、ハルカ、マナ

 「・・・マナ。凄く美味しい。負けた」

 「シンジ君をたらし込むために戦自の特訓を受けたのよ」

 「もう、厳しかったんだから」

 「それで、目当てのシンジ君は、落ちなかったんだ」 マナ泣き

 「そうなの、シンジ君とレイの絆が強すぎて・・・確かにレイは、わたしよりも美人よ」

 「それは認めるけど、私といた方が楽しいわよ」

 「料理だってわたしの方が上手なのにシンジ君も、浮気心ぐらいだして私と遊んだらいいのに」

 「へぇ〜 じゃ わたしが・・・・」

 「やめて!」

 「ハルカ、お願い。アスカが狙っているくらいなら平気だけど」

 「ハルカは、駄目。勝てる気がしない」 手を合わせる。

 「私は、別にシンジなんて狙ってないわよ。っていうか」

 「マナ。わたしと男を争って、勝てるつもりでいる。あんたに頭に来るわ」

 「今日の戦果。ハルカは余裕の満点。私は80点、アスカは20点」

 「・・・・・」

 「はぁ 諜報のプロのわたしが完全に凹まされたわ」

 「赤木博士と日向さんにワルツを踊らせるし」

 「青葉さんを魅了しちゃうし。わたしがあと10人いても出来ないわよ」

 「・・・他を探すか」

 「本当。ハルカ♪」

 「レイちゃんが、かわいそうだから、やめとくわ」

  

  

 404号室

 ベットに並んで寝るアスカとハルカ

 「・・・わたし、勝てなかったんだ。エヴァで、もう私の価値なんてなくなったの、どこにも」

 唐突に話すアスカ

 「・・・・・・・・」  ハルカ

 「嫌い、だいっきらい。みんな嫌いなの」

 「・・・・・・・・」

 「でも一番嫌いなのは、わたし」

 「・・・・・・・・」

 「もう、どうでもよくなっちゃった。何もかも」

 「・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・」

 「アスカ。アスカの価値は、エヴァじゃなくてアスカ自身にあるわ」

 「怖がりで、前向きで、一生懸命で、投げやりで、怒りんぼうで」

 「やさしくて、正義感が強くて。それで良いと思う」

 「わたし、戦いのこと知らないけど。でも、アスカに命を預ける」

 「・・・ハルカ」

 ハルカは、すすり泣くアスカの頭を撫でる

  

  

 発令所

 「・・・いや、まいった」

 「あのハルカって娘には、負けたよ。ワルツなんて大学のとき以来だ」 日向

 「はぁ 先輩が日向君とワルツを踊るなんて・・・」 マヤ、落ち込む

 「いや、かわいいですね、ハルカ。あの娘は、良い娘だ」 青葉

 「青葉君。目が怪しい。手を出そうと思ってないでしょうね」

 「い、いや。ほら、年の差があるから・・・駄目ですよね」  青葉

 「考えているじゃないの・・・・このロリコン!」

 「ある意味、魔性の女っぽいところがあるね」

 「あの赤木博士にワルツを躍らせるんだから」

 「思い出しただけで冷や汗が出ますよ」 日向

 「ぷぷぷ。マコトが赤木博士と抱き合って見詰め合うなんて・・・ふふふ・・・・」

 「笑うなよ。こっちは緊張のあまり、まともに動けなかったんだぞ」

 「で、赤木博士と見詰め合って抱きしめた感想は」

 「そ、そりゃ 大人の女性としての魅力が、そこはかとなく」

 「いや、今後の仕事に差し支えなければいいけど」

 「どうも、あの時のワルツが脳裏に焼きついて離れん」

 「おまえの脳裏に焼きついているのは、ハルカの目だろう」 日向

 「うっ 紅眼というのはインパクトが強くてな」

 「それで物悲しさと嬉しさの同居したような瞳が印象的だった」

 「そうそう」

 「なにが “そうそう” よ。二人ともロリコン」

 「マヤちゃん。妬いているな」

 「ハルカが踊りを誘ってくれなかったから、除け者にされて怒っているんだ」 青葉

 「なっ! なっ。そんなわけ無いでしょう。休憩室でワルツなんか踊りたくないわよ」

 「マヤ。エヴァと使徒の固有振動の変則係数。割り出しが終わったのかしら。待っているんだけど」

 背後からリツコが声を掛け。

 マヤ、青葉、日向が同時に直立不動。

 「はい、すみません。先輩」 マヤ、真っ青

 「マヤ」

 「は、はい!」

 「もうしばらく、エヴァの調整をお願いね」

 「わたしは、ケルベロスの情報を整理するから」

 「はい」

 「よろしく」

 リツコが出て行く。

 倒れこむマヤ。

 青葉、日向は、放心状態。

  

 リツコは、通路で擦れ違う職員の多くが奇異な眼で見ているのを感じていた。

 ハルカのお陰で仕事の効率が格段に良くなったのは、紛れも無い事実だ。

 『・・・お母さん。ユイ。キョウコ。最初の子供として、生まれたのが私だった』

 『放任主義のお母さん、面倒見が良かったユイさん』

 『でも、キョウコのさばけた性格が小気味良くて、一番好きだった』

 『キョウコがドイツ支部に出向していなければ、わたしは・・・・・』

  

  

 NERV

 本部

 ミサトが、面白げに話して、シンジが驚く。

 「えぇ〜 リツコさんと日向さんが休憩室でワルツを踊ったんですか?」

 「・・・・・・・・・」 レイ

 「そうなの。ハルカがリツコと日向君をくっ付けて美しき青きドナウよ」

 「本当に踊ったんですか?」

 「リツコさんがワルツを信じられません」

 「でしょう。わたしも信じられないけど、マヤも、青葉君も、見ていたし」

 「リツコも、ハルカにいいように操られているから笑っちゃうわ」

 「へぇ 凄い。朝霧って、そういう事が出来るんだ」

 「・・・・・・・」 レイ

 「でも変わった娘ね」

 「ハルカってプロフィールと比較すると完全に性格が逸脱しているし」

 「リツコをリツコちゃんと呼んで妙に仲が良いし。青葉君は、ハルカファンになっているし」

 「いまじゃ ムードメーカー。ハルカファンは急増中よ」

 「・・・・・・」 シンジ

 「・・・・・・」 レイ

  

  
ハーモニックステスト
  零号機 (基準) 初号機 二号機
パイロット

レイ・シンジ

シンジ・レイ

アスカ・ハルカ

素体 1.0 2.1 1.3
ハーモニックス率 46 72 39
シンクロ率 89 98 87
重複率 0.006 0.0079 0.0058
ATフィールド 1.0 2.5 1.2
    

 シミュレーションバトルの映像が流れる。

 果敢に攻める二号機に零号機がタジタジになる

 「どう?」 ミサト

 「単体でも、アスカは、完全に復調したわ」

 「シンジ君とレイのコンビが相手でも、格闘センスは、アスカが上ね」

 「リツコ。アスカが、不調だから零号機と二号機でシミュレーションをやらせたけど」

 「これなら初号機を使わなくても・・・・・」

 「使徒にもよるわね。第14使徒以上だと、初号機でなければ、勝てそうにないわ」

 「・・・・・・・・」

 「大の大人4人がかりでも復調させることが出来なかったアスカをハルカ一人。一晩で復調か」

 「なにやっているんだか・・・」

 「ぅぅぅ・・・・・」

 「そういうのを給料泥棒と言うのよ」

 しょぼんとするミサト、伊吹、青葉、日向

  

  

 冬月 TEL ゲンドウ

 「では、エヴァが9体、ロンギヌスの槍9本というのは、本当なのか・・・・・」

 『ああ・・・それと、日本政府・各省・官庁・企業体の切り崩し。気をつけた方が良い』

 「わかった。網を張るように調整しよう。息子に伝えることはあるか」

 『ない』

 「まだ、怒っているのか」

 『最初から怒ってなどいない』

 『こちらで受けている情報通りなら。心配することは無い』

 「そうか」

 『切るぞ・・ガチャ!』

 秋津ヨシキが横向きでタバコを吸い。

 冬月が正面を向いたまま。時間が過ぎていく

  

  

 NERV

 ジオフロント

 ハルカとリツコがバトミントンで遊んでいた。

 それを多くの職員が遠巻きに見つめる。

 「・・・リツコちゃん。またワルツ踊りたいでしょう?」

 「ませた子ね」

 「そういう年なんだから。やせ我慢したら駄目よ」

 「ハルカ。たしなみとか、慎みというのがあるのよ」

 「残念だけど、どちらとも付き合う気になれないわ」

 「あんたって子は・・・・」

 「リツコちゃんのために社交ダンスクラブを作ってあげようかな」

 「ハルカ。もう、大人をからかうんじゃないの」

 「リツコちゃんは、誰と踊りたい?」

 「わたし、調整するから」

 突然。リツコがハルカを追いかけ、ハルカが逃げる。

 「待ちなさい。ハルカ。あんたは、もう〜」

 「キャッ! キャッ! リツコちゃん、恥ずかしがっちゃ駄目よ」

 ハルカが逃げ回る

 「もう、ハルカ。その口、どうやっても塞ぐわよ」

 リツコが追い掛け回す

 「ほら、リツコちゃん。マイムマイムが好きでしょう。わたし知っているんだから」

 「も、もう、何てこと言うのよ。この娘は」

 「キャッ・・・・」

 ハルカ。リツコに捕まる

 「もう・・・・休憩は、お終い・・・はぁ はぁ はぁ はぁ」

 リツコが気付くと50人以上の職員から注目されていた。

 その中に絶句して、見つめているシンジ、レイ、アスカ、マナ、ミサト、伊吹、冬月の姿。

 「ほら、行くわよ。ハルカ」

 リツコは、ハルカの口を塞いだまま、連行していく

  

  

 「なんか、凄いもの見たね。綾波」

 「・・・・」 レイが強張る。

 「大丈夫? 綾波」

 「・・・・平気」

 「リツコさんが、あんな風に変わってしまうなんて・・・」

 「・・・本当。同じ青髪紅眼でも随分違うわね。性格も両極」  アスカ

 「アスカ。よかった。元気になって」

 「はぁ〜 あのハルカって娘にいいようにしてやられたわ」

 「へえ、アスカが、そんな風に人を認めるなんて」

 「毒気も、抜かれたわよ・・・・」

 「レイ。いままで、辛く当たってごめんなさい。わたしが悪かったわ」

 「・・・・」

 アスカの言葉にキョトンとしているレイ。

 アスカは、手を振りながら去っていく。

 「良かったね。綾波」

 「・・・・・・・」 レイ。戸惑う。

  

  

 発令所

 伊吹、青葉、日向

 「・・・今度は、バトミントンで赤木博士とハルカが追いかけっこ!?」

 「何かと話題の尽きない娘だな」  青葉

 「ハルカとレイ。随分違うわ」  マヤ

 「身体的な特徴にトラウマを感じて他者を無視することで自分を維持したレイと」

 「身体的な特徴を無視して他者との交流を図るハルカか・・・」

 「強いというならハルカの方だけど、反応としては、レイの方が自然だな」  日向

 「ええ、心理的な成長過程からだとレイの方が正常に近いわ」

 「ハルカは、ありえない方に近い」

 「台風みたいな娘だな」  青葉

 「だけど、そう考えるとレイは、かわいそうな娘だな」

 「他者を無視することで、自分を保ったというのは、十分に同情に値するよ」  日向

 「そう考えると、シンジ君とレイが一緒になって良かった」

 マヤ納得。頷く青葉と日向

  

  

 NERVの通路1

 シンジ、レイ

 「・・・シンジ君」

 ハルカが後ろから走って、シンジとレイの間に入って、3人で腕を組む

 「朝霧。楽しそうだね」

 「ハルカって、呼んで。ハルカ」

 「・・・ハルカ」

 「そうそう。シンジ君。生みの親みたいなものなんだから。もっと偉そうにしていいよ」

 「アスカのこと、よろしくね。ハルカ」

 「うん。アスカは、なかなか手強いけど、がんばるからね。シンジ君」

 「でも、リツコさんと仲良く出来るなんて凄いよ」

 「へへぇ〜 リツコちゃんの世話をしていたときの記憶があるんだ。アスカより楽ね」

 「そうなんだ。ハルカは綾波マンションとか学校に来ないの?」

 「んん、対ゼーレ用秘密兵器だから、なるべく表に出るなって言われているの」

 「酷い話し、人権蹂躙よね」

 「そ、そうだね」

 「まあ、中学の内容なんて程度低いけど、同世代のお友達は欲しいかな」

 「そ、そうだね」

 「ねえ、シンジ君、レイちゃん」

 「なに?」

 「NERV社交ダンスクラブを作ろうと思うんだけど、二人とも入ってよ」

 ハルカが名簿とボールペンを出す。

 「ええぇえぇっ!!」

 シンジ、怖気づく

 「リツコをクラブに入れてあげないとこのままだと男日照りよ」

 「秋津司令は、社交ダンスクラブに予算を出すって」

 「ぼ、僕は、踊れないよ」

 「レイちゃんは、シンジ君とワルツを踊りたいよね」

 レイは、何度も頷く

 「綾波・・・・・」

 シンジ途方にくれる

 「はい」

 名簿とボールペンが出され。

 綾波が名前を記入、仕方無しにシンジも名前を記入。

 「よし。決まりね。次は、あの3人組ね。リツコちゃんに捕まる前に交渉しなきゃ」

 ハルカが走り去っていく。

 「綾波。ワルツなんて、知っているの?」

 「18世紀末からウィーンを中心に発展したのがウィンナー・ワルツ」

 「19世紀初頭にヨーロッパからアメリカにわたって独自に発展したのがボストン・ワルツ」

 「その後、ダンスの秩序を守るため」

 「イギリスのダンス教師協会がステップを定めて、ワルツと総称」

 「4分の3拍子のゆるやかな音楽に合わせて踊る、流れるような優美なダンス」

 「そう・・・・」

 シンジ。ガックリ

 「でも社交ダンスだから、モダンダンスと、ラテンダンスに分かれている」

 「モダンダンスは、ワルツ、タンゴ、スロー・フォックストロット」

 「クイックステップ、ウィンナー・ワルツ、ブルースの6種」

 「ラテンダンスは、ルンバ、チャチャチャ、サンバ」

 「パソドブレ、ジャイブ(ジルバ)、マンボ、スクエア・ルンバの7種」

 「ブルース、マンボ、スクエア・ルンバの3種は、正式じゃないわ」

 「ありがとう。綾波・・・・とても参考になったよ・・・・本当に・・・」 ガックリ

 「碇君とのダンス。楽しみ」

 「そうだね・・・・踊れるかな」

 「今夜、練習しましょう」

 「うん・・・・綾波・・・踊ったことあるの?」

 「ないわ」

 「それで、練習になるかな」

 「本を読んだことあるもの」

 『・・・そういえば、第7使徒の時、見ただけでダンスを覚えて合わせられたっけ』

  

  

 NERV 通路2

 ハルカは走り。

 リツコが追いかける。

 「ハルカ。誰が男日照りですって。どうしてあなたは、そうやって物事を勝手に進めるの」

 「勝手じゃないわよ。秋津司令は、上司思いの良い部下だって」

 「ハルカ。あなた、司令に男日照りがどうのうこうの、言ってないでしょうね」

 「言ってないわよ」

 「リツコちゃんは、恥ずかしがり屋さんだからダンスを踊りたくても口に出来ないって言っただけよ」

 「よっ! 余計なことよ。待ちなさい」

 「ハルカ。この忙しいときに手間を掛けさせないで」

 「でも、でも、みんな喜んで社交ダンスクラブに入るって、リツコちゃんと踊ってあげるって」

 「キャ〜 信じられない。どうして、そういう事になるのよ。ハルカ。待ちなさい」

 擦れ違う冬月副司令に手を振るハルカ。

 軽く頭を下げて走るリツコ

 「冬月副司令も、社交ダンスに入ってくれるって!」

 「な、何ですって。いったい何人に声を掛けたのよ。それも私をダシにして」

 「主要なメンバーには、ほとんど声を掛けたから70人くらい」

 「なっ 70人くらいって!?」

 「どうして、そういう恥ずかしいことが出来るの!!」

 「リツコちゃん。恥ずかしさに負けちゃ駄目よ。がんばって」

 「こら! ハルカ。待ちなさい!」

 「私をここまでおちょくった人間は、いないわ」

 「あなたに比べたらミサトだって、まだ節度があったわ」

 「だって、マコトとワルツを踊った後、効率よかったじゃない」

 「リツコちゃんも、まんざらじゃないように見えたし」

 「もう〜 待ちなさい」 リツコ、ハルカを捕まえる

 「キャッ!」

 はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ

 リツコ。汗だくでハルカの襟首を掴んだまま座り込む

 「ほら、こんなに集まった」

 ハルカが名簿を見せる

 はぁ はぁ はぁ はぁ はぁ

 「ハルカ。しばらくは大人しくしてくれない。心臓が持たないわ」

 「リツコちゃん。みんな、リツコちゃんが元気になって、喜んでいるのよ」

 「あのね。私には、私のリズムがあるの。狂わされたくないの」

 「そんなババくさいこと言わないで。それなら大丈夫よ」

 「週に1回か2回。1時間から2時間くらいしか時間を取らないもの」

 「それにこのままだとマコト一人だけと踊ったことをずっと言われ続ける事になるでしょう」

 「こういうのは、不特定多数と踊らないと、もっと誤解されるのよ」

 「・・・・」

 「誤解されても良いのなら良いけど。イヤなら名前を書いて、はい」

 「ふっ もはや、ここに至っては是非もなし、か。負けたわ、ハルカ」

 リツコ。渋々と名前を書く

 「良かった♪」

 「仕事に戻りましょう」

 「は〜い」

 ハルカは、リツコに首根っこを押さえられたまま、連行される。

 ハルカが擦れ違う職員と気軽に挨拶を交わすのを見て、リツコが呆れる

  

  

 NERV

 ブリーフィングルーム

 ヨシキ、リツコ、ミサト、シンジ、レイ、アスカ、ハルカ

 「諸君。現在、第10使徒サハクィエル、第11使徒イロウル、第13使徒バルディエルの3体がコアの破壊を確認できていない」

 「重複している可能性もある」

 「しかし、順調に倒していると仮定すれば、第1使徒から第15使徒までを処理している」

 「死海文書によれば、残りは、第16使徒アルミサエルと第17使徒タブリスの2体だ」

 「最悪の場合、コアの破壊が確認されていない3体が増える」

 「使徒戦に関して言えば、戦力的に心配していない」

 「しかし、使徒戦後、ゼーレとの直接対決は、不可避なものとなっている」

 「ゼーレは、人為的にサードインパクトを起こして全人類を完全なる個体」

 「というより液状化させて、融合することで人工的な進化を進めようとしている」

 「ゼーレは、日本を除く全世界といっても過言ではない」

 「主戦力は、S2機関装備量産型エヴァ2号機9体、ロンギヌスの槍9本」

 3D映像でロンギヌスの槍を持つ9体のエヴァ2号機型が流されるとアスカの顔色が変わる

 「情報では、特殊なダミープログラムを使用している」

 「ゼーレは、第11使徒。第15使徒」

 「第16使徒以降の戦訓を利用できないと考えられる」

 「そして、ゼーレが、培養しているロンギヌスの槍は、最大の脅威だ」

 「アンチ・ATフィールドにより、ATフィールドによる障壁も時間稼ぎ程度にしかならないことがわかる」

 初号機がロンギヌスの槍を投げると大気圏・外気圏を突き破り、

 静止軌道上の第15使徒のコアを0.3秒で射抜く映像が流れる。

 アスカは、青くなる。

 「・・・回避も、防御も、困難だ」

 「対抗策は?」  アスカ

 「地の利を最大限に利用した近接遊撃戦闘。固体性能差で各個撃破」

 「しかし、ロンギヌスの槍を遮蔽できるものはない、と言っていい」

 「地の利は、ともかく。9対2か、9対3で物理的に各個撃破されるのは、こっち」

 「それに二号機はS2機関が装備されていないのよ。個体性能差でも不利ね」

 「最近、ゼーレ側の情報を手に入れているので、かなり正確なシミュレーションができる」

 「ゼーレは、第11使徒と第15使徒戦以降、こちらの情報を知らない」

 「決定的なのは、こちら側が実戦経験済みという点にある」

 「そして、予備のコアを利用した高機動兵器。トライデント改級巡洋艦4隻を建造した」

 「新規の搭乗者として、相田ケンスケ、洞木ヒカリ、新城チアキ、久坂タダシの4名を徴兵する」

 シンジとアスカが息を呑む

 「4人は、シンクロできる可能性がある。選択の余地は無い」

 「・・・・・・・・」 シンジ、レイ、アスカ

 「・・・・・・・・」 ミサト

  

  

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

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第37話 『ワルツで一休み』
第38話 『リツコ & ハルカ』
第39話 『徴 兵』
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