月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

   

第39話 『徴 兵』

 402号室

 食後のコーヒーを飲んだ後、

 音楽を流して、シンジとレイは、見よう見まねでワルツを踊る。

 ヘタッピだったシンジも、20分もすると。なんとなく、それらしくなる。

 「・・・わたし、間違っていたの?」

 「何が?」

 「ハルカのように出来なかった」

 「・・・・・・・・・」

 「わたしが、悪いの?」

 「綾波は、悪くないよ」

 「ハルカのように出来る人なんていないと思うよ。ハルカは特別だよ」

 「でも、わたしも、ハルカも同じ、エヴァから作られたのに」

 「赤木博士は、わたしを嫌って、ハルカを好き」

 「ぼ、僕は、綾波が、一番好きだから」

 「碇君・・・ありがとう」

 レイは、シンジの肩に頬をのせる

 「ふぁ くすぐったいよ。綾波」

  

  

 学校

 シンジ、レイ、アスカ、マナが登校する

 「シンジ〜」 ケンスケ

 『今度は、なんだ』

 「・・・・・・」

 「おまえ、何で、学年トップなんだよ」

 「あぁぁ」 脱力

 「シンジ、綾波、惣流の3人で学年トップを独占しているじゃないか」

 「そ、それは・・・・・たくさん勉強したから」

 「チクショウ。最初は、俺と同じ下から数えたほうが早かったのに。シンジ〜」

 「そういえば、がんばったから。ははは・・・」  誤魔化す

 「よく勉強する暇があるな。仕事で忙しいのに」

 「綾波が、教えるの上手だったから」

 「そうか・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「俺な・・・・シンジ」

 「何?」

 「国防省にトライデントに乗らないかって、誘われているんだ」

 「そう」

 「乗ることにするよ」

 「でも、何があっても。死んでもシンジのせいじゃないから。無茶するなよ」

 「うん」

 「でもさ、よく学校の勉強が手につくよな」

 「綾波と一緒にいたくて、勉強を教わったようなものだから」

 「だと思っていたよ。上手いことやったな」

 「うん」

 『一応さ、霧島に買収されているから、表向き霧島の味方するけど。がんばれよ』

 「うん」

 「俺も、彼女が欲しいよな」

 「そのうち、できるよ」

 「トライデントに乗れば少しは、もてるかな」

 「しゅ、守秘義務があるから。乗っているなんて言えないよ」

 「一応な」

  

  

 NERV

 赤木研究所

 リツコ、ハルカ、マヤが、並んでキーボードを打ち込んでいる。

 マヤは、ハルカの情報処理能力に舌を巻く。

 そして、ことエヴァ関連に関して朝霧ハルカは、赤木博士の知識を抜いている。

 「・・・マヤちゃん。待っているんだけど」 ハルカ

 「ご、ごめんなさい」 マヤ。泣き

 『ひぇ〜 先輩がもう一人いる』

 ハルカは、主要な命題を処理しながら、

 証明や裏付けに当たる情報処理項目をマヤの端末に送り込んでいく。

 曖昧な処理で送り返すとすぐにやり直しで送り返されてくる。

 「第11使徒、第13使徒のコアのサルベージ。上手く行くかしら」 リツコ

 「費用対効果の問題でしょう。科学者に費用対効果を求めるのも空しいけどね」 ハルカ

 「金欲しさに第12使徒のオリジナルコアをゼーレにくれてやったのが悔やまれるわね」

 「虚数空間に関する特性で優れているはず」

 「複製のコアでもだいたい見当つくわ」

 「虚数空間にあることが確実なら」

 「4号機のサルベージも不可能じゃなくなる。エヴァも3対9から4対9に出来るでしょう」

 「この理論が正しかった場合ね」

 「あら、第11使徒の時より勝率良いでしょう」

 「S2機関とATフィールドと虚数空間の相関関係は、納得いくものがあるわね」

 「マヤちゃんは、どう思う?」

 「えっ いえ、わたし、とても意見を言える内容なんて、ありませんから」

 「リツコちゃん」

 「・・・・・・・・」 リツコ

 「こういうのリツコちゃんの教育方針なのかしら?」

 「・・・・・・・・」 リツコ

 リツコとハルカの間で緊迫した空気が流れ。引きつるマヤ

 「あっ! そうだ。4号機のS2機関の暴走で虚数空間が出現したと仮定すると・・・」

 「S2機関がパイロットのいない4号機にATフィールドを派生させたという事なんですよね」

 「いいえ、ATフィールドがなかったからエネルギーと空間が熱力学の法則を超えてしまったの」

 「無限にねじれて特異点的に虚数空間を広げてしまった」

 「初号機が動ける状態であるのにもかかわらず、最小限のアイドリング状態にある」

 「これは、ATフィールドがない状態で熱力学の法則を超えた場合の危険性を本能的に知っているからよ」

 「あっ そうでした」 マヤ、恐れ入る

 「・・・・・・・・・・」 リツコ

 「・・・・・・・・・・」 ハルカ

 「す、すみません」 泣き

 「そんなことない。マヤ。がんばってね。マヤは、才能がある」

 「ハルカ〜」 感涙

 「はあ〜」 リツコ

 「・・・・・・・」 ガックリ

  

  

 学校

 久坂タダシは、数人の女の子と最近の音楽について話していた。

 学園、学年、学級内の人気投票で上位。

 性格良し、二枚目、頭良し、スポーツも並以上で、雰囲気的に硬派に属し。

 人当たりが良いため、女の子が寄ってきやすい少年だった。

 男子生徒の9割がああいうタイプだったらと思われる男子で、

 ある意味、優男で、性格的に陰に篭もりやすいシンジの対極。

 むかしの熱血ヒーローに最も近いタイプ。

 そのタダシがなんとなくシンジに近付いてくる。

 「碇。ちょっと、いいかな」 タダシ

 「うん」 シンジ

  

  

 中庭

 シンジ、久坂タダシ

 「碇。俺のこと、聞いているだろう」

 「うん」

 「子供を戦わせているなんて冗談だと思っていたのに・・・本当だったんだな」

 「うん」

 「碇。よく、わけのわからない化け物と戦う気になったな」

 「乗りたくて乗ったんじゃないよ・・・・」

 「いまは?」

 「い、いまは、乗るのが当たり前みたいになったけど」

 「そういうものか、だんだん、麻痺してくるんだろうな」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「引き受けたよ」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「鈴原が死んだって聞いたとき、まだ、他人事だったけど」

 「断れないもんだな。偽善者じゃないつもりだけど、大義名分ってさ、説得力があるよな」

 「うん」

 「碇。足手まといにならないようにするつもりだけど。お互い運命だと思って生きるしかないよ」

 「そうだね」

 「じゃ・・・」

 タダシ。カッコよく去っていく

  

  

 赤木研究所

 「・・・マヤちゃん。ATフィールドとS2機関の次元階層偏差は、取れた?」 ハルカ

 「は、はい」

 「マヤ。共鳴偏差は?」 リツコ

 「自動修正できます」

 「あとは、シンジ君次第か。彼に見つけられるかしら。虚数空間に漂うコアと4号機を」 リツコ

 「急いだほうがいいわね。ゼーレが先に気付く可能性もあるから」 ハルカ

 「ケルベロスを調べた限りだと、その心配は今のところないわ」 リツコ

 「いまのところよ。それにケルベロスの解析は、半分も進んでいない」

 「第1使徒アダムの複製である4号機は、見つけやすいはずよ」

 「初号機を精神汚染ギリギリまで探知させて引き摺りだせる」 ハルカ

 「S2機関装備の4号機。誰を乗せるべきかしら」

 「コアのインストールは難しくないけど」

 「専用機でなく、初のニュートラル型だから14歳以下なら誰でも可能性がある」

 「でも、パイロットは、素人が多過ぎるわね」 ハルカ

 「やはり、2号機のコアを4号機のコアにインストールするのが順当では?」

 「その手の戦力計算は専門家にやらせるべきね。いまのところ、机上の空論だし」 リツコ

 「ケルベロスのデータから推測すると・・・」

 「第4使徒シャムシェルのS2機関の組み込んで」

 「エヴァ4号機に無理やり電圧の負荷を掛けたのがS2機関の暴走につながっている」

 「でも、本当にそれだけなのかしら」 ハルカ

 「タイムスケジュールからすると、次の実験にダミープログラムの実験が入っているけど・・・・」 リツコ

 「ケルベロスのデータだと、ゼーレは、2000万人もの人間を12個のコアに取り込ませている」

 「だから、理論上、分子が大きくなって、09システムでも500分の1の確率でエヴァを動かすことが出来る」

 「母子愛というような曖昧なものに頼ることなくね」 ハルカ

 「残酷です」 マヤ

 「飢えて死ぬか、コアに入るかの二者選択よ。残酷とばかりはいえないでしょう」

 「日本のように津波と地震でいきなり半分が死んで」

 「欧州は、食糧難で暴動と暴力による殺し合いで3分の1が死んだの」

 「コアの中で生きていけるのなら幸せな部類に入るわ」 ハルカ

 「アメリカは、内陸の穀倉地帯が生き残っていたから、まだよかったけど」

 「南半球から難民が流れ込んで、やはり、半分が殺しあったわ」

 「最終的には、パナマ地峡をN2爆弾と、核で吹き飛ばして流入を止めたけど」

 「内戦にならないで、人口減を天災のせいに出来た日本は、幸せな方よ」 ハルカ

 「それで、食糧をインスタント食品に加工」

 「メタンハイドレードの採掘と産業化を成功させて、農地を再生、国民生活水準を軌道に乗せた」

 「セカンドインパクトが起こらなければ数年後に国債の未払いで国家破産するはずだったのに・・・」

 「国債は海の底で引受人無し」

 「有耶無耶にしてしまって。国連からの使徒防衛の資本と物資で前途洋々」 ハルカ

 「日本人は、昔から天災に育てられてきた国だったものね」 リツコ

 「2000万の人柱を使ったゼーレ方式は、パイロットで悩まなくてもいいから汎用性で優位よ」 ハルカ

 「ゼーレの人類補完計画も、なかなか倒錯的で素敵ね」

 「老人達のコアを核にしてLCL液に全人類の精神を融合させた王朝」 リツコ

 「でも、海外では、日本政府が、それをしようとしているって」 マヤ

 「そうやって、日本を滅ぼそうとしているわけね」

 「老人達の考えそうなことよ。武力より、謀略が好きだから」 ハルカ

 「それより、4号機のサルベージは、いつやるの?」 リツコ

 「早い方がいいけど、ダンスパーティの後が良いわね」

 「・・・ハルカ〜」

 「リツコちゃん。良い子だから男の子と手をつないで踊るんですよ」

 「ぶっ!」

 マヤが噴出した。

 「ハルカ!」

 リツコが走ると、はるかはすぐに逃げ出した。

  

  

 学校の屋上

 アスカとヒカリ

 「・・・アスカ。わたしにも白羽の矢が当たっちゃったみたい」

 「・・・・・」

 「なんかさ、アスカや綾波さんと違って、選ばれるようなタイプじゃないけど・・・わたし、乗るわ」

 「本当にいいの?」

 「うん・・・・鈴原のこともあるけど、これで吹っ切れるかもしれないから・・・」

 「それに結構、後ろめたかったんだ」

 「アスカや碇君。綾波さんに守られているのに何も出来なかったから」

 「気にしなくても良いのに」

 「そ、それって、結構、難しいよ。アスカ」

 「そうかもしれない」

 「そうだよ。だから選ばれたからには逃げない・・・乗るわ、鈴原の分も・・・」

 「そう」

 「そう」

  

  

 公園

 アスカとチアキ

 「・・・アスカ。戦うとき、怖い?」

 「慣れているから・・・」

 「それは、戦うことに、怖いことに」

 「両方」

 「守秘義務の中で応えている?」

 「減棒されちゃうもの」

 「減棒は、イヤよね」

 「ええ」

 「わたしも、戦うことにするわ」

 「そう」

 「わたしも、慣れるかな。戦うことに、怖いことに」

 「一番、軟弱なくせに一番手柄を上げている人間がいるわ」

 「くすっ 碇君か。なんとなくホッとするけど。本当に中佐なの?」

 「ええ、国防省は、貧乏過ぎて褒賞金に転化できなくて、階級を素直に上げたみたいね」

 「窓際佐官だけど」

 「デザイナーになりたかったんだけど。まぁ 良いか、軍人になるのも一つの道ね」

 「描いていたら。きっと夢は、かなうよ」

 「デザイン帳、見てくれる」

 「うん」

  

  

 NERV

 ジオフロントダンス会場

 ハルカは、抜群の行動力と企画力で、NERV社交部長という立場に収まっていた。

 NERVに入って、僅か3週間。

 少佐待遇で、葛城少佐と並ぶ異常事態だった。

 誰も、意識していなかった役職と団体を個人で切り開いたため、

 対抗馬が、まったく存在せず、文句をいう者すらいない。

 ハルカの能力をそのまま階級に転化すれば少佐待遇でもおかしくなく。

 惣流・キョウコからの経緯を含めれば、赤木リツコ博士を超えて、冬月副司令と並んでしまう。

 そこで赤木研究所の実務を少佐待遇の社交部長の形で制度上と給与上の辻褄を合わせしていた。

 

  

 音楽が流れる中

 シンジは、レイと踊り。

 ヨシキとヒロコ。冬月とリツコ。日向とミサト。青葉と伊吹が踊る。

 他にも、20数組が広い空間で踊る。

 アスカ、マナ、ハルカも、少年兵の男子と踊って、それなりに楽しむ。

 そして、タイミングよくマナにシンジを盗られたレイがムッとする。

 ハルカがレイに声を掛ける。

 「レイちゃん。ちょっと話しがしたいんだけど」

 「なに?」

 「こっちで話しましょう」

 「ええ」

 レイは、シンジと踊っているマナを気にしている。

 「ねえ、レイちゃん。もっと自分の能力を使ってみない?」

 「・・・・・・」

 「わかっているでしょう。レイちゃん、形而上学、生物工学、生化学。得意よね」

 「ひょっとして、ゼーレの人類補完計画も抜け道を考えているんじゃない?」

 「・・・・・・」

 「このままだと、ゼーレの人類補完計画が勝利を収めてしまう」

 「ユイちゃんの捻じ曲げられた人類補完計画が遂行されてしまう」

 「どうしたら良いのかわからない」

 「じゃ どうしたら良いのか、考えて」

 「ゼーレがアンチATフィールドを全開にしてリリスと融合するとサードインパクトが起きて」

 「全人類は、心身の結合力を失って、液化生命体化してしまうわ」

 「そう」

 レイ無表情

 「ムッ。どうでもいいのね」

 レイが頷く。

 視線は、マナと踊っているシンジに注がれている

 「ええ」

 「シンジ君が、液化しても?」

 「碇君が、望むなら」

 「シンジ君が、望まなければ?」

 「その時は・・・碇君を守るわ」

 「そういうタイプなのね。レイちゃん」

 ハルカ、ガックリ

 「・・・・・・・・」

 「わかったわ。シンジ君と話して見ましょう・・・おいで、レイちゃん」

 レイの手を引っ張るとシンジとマナのところに行き、サッとマナとレイを入れ替える。

 「あ〜ん。シンジ君〜」

 「マナ。かわいそうでしょう。レイちゃんは、シンジ君しかいないんだから」

 「それって、ずる〜い」 マナ泣き

 「もう、十分に踊ったでしょう」

 「そんなことない。このまま、シンジ君と星の世界に行くの〜」

 「そっち系だっけ・・・・初日くらい遠慮して、次の機会にしなさい」 ハルカ苦笑

 「あ〜ん」 泣き

  

  

 シンジとレイ

 「ごめん、綾波。マナがいなかったら、いま、僕は生きていなかったから」

 「マナにどうしてもと言われると断りきれなくて」

 「わたしが悪いの、わたしが負けたから」

 「本当は、綾波と踊っていたいんだ」

 「・・・碇君」

  

  

 ジオフロント

 初号機と2号機が直径30mのリング状の物体を持って立っている。

 「良い。シンジ君、レイ。4号機のサルベージを始めるます」

 「S2機関とATフィールドのバランスが問題になるわ」

 「こちらで調整を行うからゲージにしたがってATフィールドを展開させて」

 「はい」 シンジ、レイ

 「アスカとハルカは、4号機を引き摺りだすのが役目よ」

 「命綱は、あるけど決して全身が虚数空間に入らないように注意して」

 「はい」 アスカ、ハルカ

 「じゃ。スタート」 リツコ

 シンジが、S2機関を増大させていくとエネルギーがリング状を加速しながら移動。

 ATフィールドが相転移空間を段階的に偏重させていくとリング内が漆黒になる。

 同時に白黒の球体が直上に出現。

 見覚えのある球体にムッとするシンジ。

 「シンジ君、レイ。これから深度を降下させるから、初号機の管制に合わせて、4号機を捜索させて」

 ハーモニックス率が高まり94パーセントにまで上昇。

 4時間後、漆黒の円盤から白い突起物が出現。

 「アスカ、ハルカ。いまよ、引き摺りだして」

 二号機が白い突起物を掴んで引き摺りだすとエヴァ4号機がジオフロントに投げ落とされた。

 「調整を正常値に戻して、オールクリアよ」

 「はい。オールクリア・・・完了」

 初号機が持つリングの漆黒の円盤が消えると上空の黒白球体が消滅。

 発令所から歓声が上がった。

 「成功したのか」 ヨシキ

 「これで4対9ですか?」 ヒロコ

 「4号機は、ゼーレが保有する5号機以降の試金石よ」

 「データーだけでなく実物を手に入れたのは、大きいでしょう」

 「データーと実物に相違があるものなのかね」

 「培養時のS2機関導入の微調整は、実物と比較した方が、確かですので」

 「なるほど。しかし、ハルカという娘。たいした実力じゃないか」

 「ゲヒルン時代。碇ユイ、惣流キョウコ、赤木ナオコの3人は、それぞれの分野で傑出していました」

 「世界的にも、東洋の3賢者と総称されていたほどですから」

 「なるほど、その3賢者の成果を君がまとめ上げたわけか」

 「まとめ上げるだけで、余力を失うほどでした」

 「4号機の戦力化。予算が下り次第。進めることになるだろう」

 「はい」

 「第11使徒、第13使徒のオリジナルコアのサルベージも進めて欲しい」

 「第10使徒は、状況から見込み薄だろう」

 「はい」

 「・・・さて、崎村君。予算交渉に出向くか」

 「はい」

 真っ白な4号機がケイジに入るとデーターの分析が開始。

 リツコ、マナ、ハルカは、赤木研で泊まり込みで解析が進められる。

  

  

 当然、作戦課でも効率的な運用が進められる。

 ミサト、日向

 「・・・・やはり、シンジ君とレイの初号機」

 「アスカとハルカの4号機で行くのが合理的且つ経済的ね」

 「そうですね。零号機、二号機は、相田ケンスケ、久坂タダシ、洞木ヒカリ、新城チアキの中で選んでも、いいですね」

 「問題は、ニュートラル機の場合、コアインストールで、反応速度が10パーセント以上低下するという事らしいの」

 「じゃ 零号機、初号機、二号機とそれ以降の機体は、前提から反応速度が低下しているのでは?」

 「どうも、NERVとゼーレ間の確執みたいなものがある見たいね」

 「NERVがゼーレに対し、丁稚よりマシというのは、技術が独立しているからか・・・」

 「じゃ 仮にS2機関が導入されていても、4号機は、反応速度で二号機に劣るという事ですか?」

 「そう。専用機は、伊達じゃないわね」

 「だからオリジナルコアで、S2機関を装備した専用機の初号機は最強のエヴァね」

 「その代わり、専用機のコアを書き換えて乗っても20パーセント低下する」

 「汎用性では、ゼーレが優れている」

 「じゃ 赤木博士の言われたように、最初に人柱になった者が核で、それ以外は付属的な立場になるという事ですね」

 「それとコアインストールによるデーターだけの移送より、心身をダイレクトに取り込んだ方が優位」

 「専用機は、伊達じゃないという事」

 「S2機関装備で、反応速度が10パーセント以上低下は、微妙な線ですよね」

 「4号機のコアは、誰も入っていないニュートラル状態だから」

 「予備機としては、優れているけど・・・シミュレーション次第ね」

  

  

 ジオフロントにトライデント巡洋艦4機が並べられた。

 既存の技術とエヴァ技術を結集した機体。

 LCL液に満たされたコクピットに入ったパイロットは、機体との一体感に包まれ、

 1人で火器・航空管制が出来た。

 空中を自在に機動するトライデント機は、ダブルエントリープラグが採用されている。

 機首に荷粒子砲1基、迎撃用レーザー4基。ミサイル20基を装備。

 ブースターを装備すれば、機体にかかる圧力が逆の海中から宇宙空間まで行くことが出来た。

 トライデント機は、NERV基地の上空を機動しながらシンジとレイの乗る初号機を荷粒子砲で攻撃。

 初号機のATフィールドが、荷粒子砲を弾く。

 「シンジ君。20パーセントの出力だけど・・・どう?」 リツコ

 「楽に防御できます」 シンジ

 「じゃ 次、50パーセントで発射よ」

 「どうぞ」

 トライデント機から荷粒子砲が発射され、初号機の手前で弾かれた。

 「今度は?」

 「さっきより強いですが、まだ、大丈夫です」

 「次は、80パーセントの出力よ」

 「ATフィールド粒子は含まれていない」

 「ATフィールド粒子が含まれれば、第3使徒サキエルのATフィールドを射抜くから、注意してね」

 「どうぞ」

 トライデント機の荷粒子砲が伸び、初号機に弾かれた。

 「どうかしら?」

 「痺れます」

 「そう。トライデント機の出力だと、100パーセントで撃てるのは、3回」

 「80パーセントだと、4回」

 「4機が長距離波状攻撃を繰り返せば、12回から16回の攻撃が出来るわ」

 「良いと思います」

 「そう、実弾演習のデータは取れたから、今後は、シミュレーション演習で検討することにするわ」

 「はい」

  

  

 赤木研究所

 ハルカ、リツコ

 「・・・トライデント機のエヴァ化構想は、エントリープラグの基本設計がエヴァンゲリオン型であることね」 ハルカ

 「ATフィールドはエヴァ光質に沿って展開されるけどね」

 「ATフィールドの展開は、まだよね」

 「いまのところ、4人とも成功していないわ」

 「エヴァシリーズは、零号機・初号機をベースにコアを培養している」

 「一番互換性が高いのは、綾波レイ」

 「わたしでも、ATフィールドは、展開できるわね」

 「わたしが、4人とダブルエントリーしてみようかしら」

 「あら、レイでも良いんじゃない」

 「レイは、シンジ君にベッタリだから。上手く行かないような気がする」

 「ダブルエントリー。どういう感覚になるのかしら」

 「記憶と比較してもね〜 体感している方が強いから・・・」

 「でも、交配と、ダブルエントリーの感覚。違うから」

 「それって、本当ですか?」 マヤ

 「マヤも、体感したい?」

 「・・・・・・・・」 マヤ、モジモジ

 「マヤ、かわいい」

 「それで、エヴァとパイロットの振り分けは」 リツコ

 「ミサトは、なんと?」

 「まだ、なんともいえないみたいね。トライデントも4号機も戦力化されていないし」

 「シミュレーションの結果を見て決めるそうよ」

 「無難ね。高速機動だけならトライデント機は有効よ」

 「ATフィールドが展開できれば、N2爆弾の直撃を受けても生き残れるし」

  

  

 白いエヴァ 4号機

 アスカ、ハルカ

 「ハーモニックス率30パーセント、シンクロ率68パーセント。重複率1.6パーセント」

 「アスカ! どう?」 ミサト

 『・・・良くないわね。ぼやけた感じ、反応も、なんとなく鈍い』

 「はぁ ATフィールドも、10パーセントほど低いわね」

 『S2機関は、良いみたいだけど・・・』

 「アスカとハルカが4号機に乗らないのなら」

 「洞木ヒカリ、新城チアキ、久坂タダシ、相田ケンスケの誰かが零号機か、4号機に乗ることになるわね」

 『私は、二号機が良いわ。このぼやけた感覚は、埋まらないような気がするから』

 「じゃ 零号機と4号機を洞木ヒカリ、新城チアキ、久坂タダシ、相田ケンスケの4人のうち2人に振り分けていいのね」

 『ええ、構わないわ』

 『それより、連携作戦を取るのならトライデント機に、一度乗ってみたいわね』

 「わかったわ。トライデント機の方は調整してみる」

  

  

 待機中のトライデント機は、エイのような機体だった。

 リツコが前で話している。

 「・・・このトライデント機は、外見だけ戦自が開発したものだけど」

 「NERVで製作したものは、まったく異質よ」

 「機体の8割は、チタンと炭素繊維、シリコン、樹脂の複合素材になっているけど」

 「カーボンナノチューブの中空は、エヴァ光質が網の目のように広がっているの」

 「ATフィールドは、光質沿いに展開される」

 「コアインストールを行なったから操縦は出来るけど」

 「基本的に火器航空管制とATフィールドを分けているわ」

 「不便じゃないの?」 アスカ

 「統合することも出来るけど・・・」

 「エヴァの神経接続と違って火器航空管制は、デジタル感応センサーで登録された動きしか出来ない」

 「エヴァのように鮮明じゃない、体感というようなイメージはないわね」

 「とりあえず、マニュアルは、読んだから、乗せてよ」

 「ええ。でも安全のため、パイロットと緊急自動制御は入れておくわ」

 「ええ」

  

 アスカとハルカは、トライデント機のLCL液に浸ると、トライデント機を起動させる。

 ホバーリングから水平移動に入ると器用に機体を上昇させていく。

 「・・・どう? アスカ」

 『できなくはないけど。ATフィールドは?』

 「わずかだけど確認できたわ」

 『・・・・・・』 アスカ

 「乗り心地は」 リツコ

 『振動は、少ないからいいけど虫になった気分。表面的というか、ぼやけている感覚さえないわね」

 「ATフィールドが展開されているのかどうかも、わからないなんて。随分、機械的』

 「まだ、調整が6割程度よ」

 「それでも、ATフィールドのレベルは、低いわね」

 「二号機の20分の1程度。調整が完璧でも10分の1か」

 「それでもN2爆弾の直撃を受けなければ大丈夫。通常兵器なら弾くことが出来る」

 「最新のプラズマ障壁よりまし」

 『使徒相手に戦えるとは思えないけど・・・中距離支援兵器には、なりそうね』

 「国防省は、LCL液とデジタル感応センサーの組み合わせが気に入ったみたいよ」

 「指揮管制、航空戦力、戦車、艦艇に取り入れることが決まっているの」

 「エヴァに慣れている人間には不満で、そうでない者は、素人でもベテラン並み」

 「それも3分の1以下の員数で指揮管制、火器管制、航空管制が出来るって評判なのよ」

 『あいにく、人間相手の戦争は興味ないんだけど』

 「でも、随分、操縦が上手いわね」

 全長40m、全幅40mのエイのような機体が身軽に旋回する

 『これでも、ドイツにいた頃は、天才だと言われてたのよ』

 「オールマイティーに天才というのは、認めているわよ」

 『だいたい、わかったわ。レジャー用に欲しいわね』

 「非売品よ」

  

  

 シンジとレイがトライデント機をトロトロと発進させる。

 シンジ、リツコ

 「シンジ君。良い。揚力が足りないと落ちるのよ」

 『はい』

 「だったら加速して、そのままだと失速するわ」

 『はい』

 シンジの操縦するトライデントがヨロヨロとジオフロント上空を滞空する。

 「シンジ君、上昇する時は必ず加速する」

 「垂直尾翼で方向転換しないで機体を行きたい方向に傾けて、水平翼で旋回しなさい・・・」

 『はい』

 シンジ、汗

 「こら。車じゃないんだから曲がるたびに速度を落としたら揚力が落ちて動きが取れなくなるわ」

 「ヨタヨタ飛んでたら撃ち落とされるわよ。加速して!」

 『はい』

 「・・・くっくっくっ おかしい」

 『わ、笑わないでください!』

 「だったら、加速しなさい。自転車で遊覧飛行機じゃないんだから落ちるわよ」

 『はい』

 「シンジ君。一定以上の揚力があれば、すぐに逃げ出すことが出来るの」

 「ゆっくり飛んでいたら逃げる前に落とされるわよ」

 『はい』

 シンジのトライデント機操縦は、散々だった、

 それでも、数時間後には、何とか飛びまわれるようになっていた。

 「シンジ君」

 『はい』

 「ATフィールド展開は、さすがに強いわね」

 『そうですか? あまり展開している。感じがしませんけど』

 「でも・・・トライデント機の表面のエヴァ光質が増大しているの」

 「自己培養が進んでいるから、あなた達が操縦するとトライデント機の防御力が強化されるわね」

 『そうなんですか?』

 「エヴァ光質は、チタン鋼の10倍の防御力』

 『ATフィールドも光質の量に比例して増大するから、ずっと操縦していてもいいわよ」

 『そんな』

 「一番下手だけど、一番の適任者よ。シンジ君。レイもね」

 『はい』

 シンジ、ガックリ

  

  

 発令所

 リツコ、ミサト

 「・・・シンジ君も、何とか及第点ね」

 「ご苦労様。リツコ」

 「なかなか疲れたけど、数時間で、あれだけ乗れれば、十分ね」

 「本当なら300時間くらい必要だけど」

 「リツコが飛行機の操縦を知っているとは思わなかったわ」

 「知らないわよ。わかるのは、航空力学」

 「あ・・・そう。まあ、いいわ、シンジ君。階級が上だからやり難くて」

 「シンジ君は、気にしていないわよ」

 「相手が年上だと自分から丸め込まれようとするから」

 「でしょうとも」

 「でも、トライデント機に時々乗せた方がいいわね」

 「連携作戦をするためには感覚の共有が必要だから」

 「それにシンジ君とレイ。ATフィールドをエヴァ光質に転換させることが出来るなんて・・・」

 「二つは、違うものなの?」

 「種子がATフィールドを使って光子を固体化」

 「構成の仕方でコアと肉体に分かれるけど、ATフィールドが光子を個体化させているのは事実よ」

 「エヴァ製造では、加速器を使ってコアが自己培養するのをするのを助け」

 「とんでもない予算を投入して、絶対零度域でエネルギー加えている」

 「それをあの子達、ATフィールドを展開させて、アッサリとエヴァ光質を増殖してしまうなんて」

 「割安で経済的」

 「という事は、あの子達は、コアさえあれば、エヴァ光質を精製できる?」

 「ゼロからじゃないみたいだけどね。ATフィールドの操作能力が、高まっているみたいね」

 「シンジ君。何でもありになってきたわね」

 「当面は、トライデント機に乗ってもらうわ」

 「チューブ内だけでなく、機体の表層面が光質で覆われれば防御力も高くなる」

 「どの程度、期待できるの?」

 「あと1mm皮膜が増えると、ATフィールドが15パーセント増す計算になるから」

 「計算上、エヴァのパレットガンGAU23型の直撃に耐えられる比重になるわね」

 「1機当たり200時間。4機だと800時間乗ってもらうことになるけど」

 「相手が使徒だと、泣けてくるレベルだけど。空中巡洋艦で、それができるというのが味噌ね」

 「基本的にATフィールドに期待するしかないけど、それは、エヴァシリーズでも当てはまるでしょう」

 「少なくともシンジ君、レイ、アスカ、ハルカは、ATフィールドを展開できたからいいけど」

 「トライデント機の荷粒子砲なら中距離で第3使徒サキエル、第4使徒シャムシェルを倒せるわね」

 「AT粒子を含んでいる場合だけど」

 「凄いじゃない。エヴァか、トライデントか、悩むわね」

 「ATフィールド次第でしょう。結局、推定でしかないから」

 「とりあえず。新兵の4人と話してみましょう」

  

 

 

 

  

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第38話 『リツコ & ハルカ』
第39話 『徴 兵』
第40話 『秀 勝』
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