月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

第49話 『新しい世界』

 天井都市は崩れ落ち、直径5kmの大穴が開き。ジオフロントは瓦礫で埋まっていた。

 周囲の岩盤は崩落が続き、

 ゆるんだ地盤から芦ノ湖の湖水が流れ込み断崖を崩していた。

 再開発区の綾波マンションは、土台から傾斜しているのか半壊。

 シンジとレイ。アスカ、マナ、カヲルは、土台が傾いた綾波マンションを見上げる。

 「もう・・・駄目なのね」 レイが呟く。

 「このマンションとも、お別れか・・・」

 綾波との生活と、思い出が詰まったマンションが傾いている。

 「シンジ君。もう、住めないから荷物を出さないとね」

 「あ、危なくない?」

 「命がけね」

 「はぁ〜 どこに行こう?」

 辺りを見るとアンチ・ATフィールドとATフィールドの余波は同心円状に被害を広げている。

 視界に入るのは、瓦礫の世界ばかり。

 戦災地特有の雰囲気が第3東京市に漂う

 日本全国、世界中が、似たような状態になっている。

 「ほら、行くわよ」

 「どこに?」

 「ミサトに相談するのよ」

 「さっさと、しないと。NERV本部も、マギも、やられているから、テント暮らしになるわよ」

 大人たちの話だと、セカンドインパクトより。マシだという。

 テント暮らしかと思えば、さにあらず。

 何とか、原形をとどめていたコンフォート17への引越しが決まってしまう。

 402号室にレイ、

 403号室にシンジ、

 404号室にアスカ、

 404号室にマナ、

 405号室にカヲルが住む。

 家族用の大きな住居で一時、同居という話しもあった。

 しかし、共有物の購入の問題で煩わしいなど、資金的に余裕の多い者が多く。

 同居は落ち着いてからと、後回しにされる。

  

  

 506号室

 ミサト、シンジ、レイ、アスカ、マナ、カヲル。

 「・・・はぁ〜 もう無茶苦茶。マギがないと、どうにもならないわ」

 「リツコとマヤは、松代に篭りっきりになっちゃうし・・・」

 「エレベーターは、止まっているし。水道は、半分しか出ないし」

 「電気も、制限されているから、ろうそく。火事は、起こさないでね」

 ミサトがため息混じりに呟く。

 「ミサトさん。松代のマギは、大丈夫なんですか?」

 「半分死んでいるけど、松代のマギで日本のネットワークを再構築するから第3東京市は後回しよ」

 「NERVも、機能不全で半分は、松代か、第2東京に異動が決まっているの」

 「僕たちは?」

 「これがシンジ君への秋津司令からの命令書」

 「レイは、リツコから連絡があるまで待機」

 「アスカも待機ね」

 「当面はすることはないわ」

 「住む場所だけは、別格で確保できるけど状況は厳しいの」

 「いまは、口座が300万を上限に凍結されている」

 「価格統制、物価統制が、どうなるかわからないから。気をつけて使いなさい」

 「日本は、大都市の被害が大きく、世界は、中都市の被害が大きいわね」

 「NERVは体制を立て直すまで職員の生活保障能力を失っているから、各自で、がんばってね」

 「「「「「「・・・・・・」」」」」」

  

  

 コンフォート17

 切り詰められる生活。

 電力が少なく、水を貯水タンクまで持ち上げられず。節制が義務付けられる。

 廃墟と化している第3東京市は、何もなかったが、たくましく生きようとしている市民がいた。

 電力を必要としない初号機と4号機が廃墟の瓦礫を片付ける原動力であり。

 世界最大の電力供給源になっていた。

  

  

 廃墟と化した再開発区。

 安全保障上、補強されていた綾波マンションだけが半壊で取り残されていた。 

 アスカ、ハルカの二号機が綾波ビルを支え、

 家具や日用品を取り出そうとした時。

 !?

 どた〜ん! がら がら ぐしゃん!!!

 三分の二が瓦礫の中に崩れ落ちてしまう。

 アスカは、ショックで硬直し、

 「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 シンジ、レイ、マナ、カヲルが二号機を白い目で見上げる

 「な、なによ!! わたしのせいだって、言うわけ!!!」

 

 アスカは、二号機で開き直る。

  

 翌日。

 レイが仕事で、松代に呼ばれ。

 残ったシンジ、アスカ、マナ、カヲルが綾波マンションの残骸から荷物の運び出し。

 綾波マンションから家具や生活用品の一部をコンフォート17に運びこむと、

 少しは、人間らしい生活になっていく。

 アスカが自ら選んだハイセンスな家具が無残に壊されているのを見つけては騒ぐ。

 騒ぐことで、怒りを発散させているのだろうか。

 シンジは、瓦礫の隙間でレイのコーヒーメーカーを見つけると微笑み。

 瓦礫の中で完全に押し潰されたチェロを見たとき、軽い喪失感を感じる。

 「・・・チェロ。残念だったね。シンジ君」

 「・・・うん」

 「シンジ君のチェロ。もう一度、聞きたかったな・・・・」

 「シンジ君。チェロが弾けるのかい?」

 「僕も聞きたかったよ。文化の極みだね」

 「そんなこと無いよ。惰性で続けていただけだから」

 「僕が探してくるよ」

 カヲルがそういうと、次の瞬間、消えていた。

 「いいのに・・・」

 「便利なやつね」

 「うん。マナの物は、見つかった?」

 「元々、たいした物はなかったから、今日は運転手よ・・・」

 「一番かわいそうなのは、お金をかけていたアスカかな」

 マナは、機嫌の悪そうなアスカに同情してしまう。

 「・・・さてと」

 マナは、生活用品を一輪車に載せ、

 外のトラックに持っていく。

   

 格調高いロココ風家具が無残に破壊され。

 セット物の日本製カラーボックスが、それなりの形をとどめている。

 特殊樹脂にカーボンナノチューブが編み込まれたカラーボックスは、軽い上に丈夫だった。

 アスカは、ブツブツ言いながら当り散らす。

 「もう、あたまに来た。シンジ!」

 「えっ! な、なに?」

 「あれ、取ってよ」

 アスカが瓦礫の上にある目覚まし時計を指差した。

 「・・・危なそう」

 「根性ないわね。訓練を生かしなさいよ」

 「わ、わかったよ」

 シンジは、瓦礫を上る。

 ヨタヨタと瓦礫を上るシンジ、腕を組んでイライラと待つアスカが見上げる。

 シンジは、危なかしく時計を取る。

 アスカは心配なのか途中まで来ていた。

 突然、滑り落ち、

 「わっ!」

 「ちょっ! きゃ!」

 シンジは、アスカを巻き込んで、瓦礫の下にまで転がって、

 アスカの理想的な体と甘美な香りに慌てる。

 「・・・いっつつ、もう〜 このバカシンジ」

 「ご、ごめん。アスカ」

 「ったく・・・き、気を付けてよね」

 アスカが離れる

 「・・・うん」

 シンジは、時計をアスカに渡す

 「あ、ありがとう」

 二人は、瓦礫の中から一通り、使えそうなモノを取り出した。

 「シンジ!」

 「なに?」

 「ちょっと来なさいよ」

 アスカは、救急箱を見つけたのか持っていた。

 良く見るとシンジは手から血を流している。

 アスカは、サバイバル訓練を受けているのか、手早い。

 「シンジ。パイロットが、手を怪我したら駄目よ」

 「うん・・・ありがとう」

 「最後くらい。わたしが一人で止めを刺したかったのに・・・」

 「使徒と友達になるなんて。あんたといい、ヒカリといい・・・」

 「本当にカヲルを信用しているの?」

 「うん」

 そして、非難の声が後ろから聞こえる

 「ああ〜 一緒にいる。油断も隙もない」 マナ、むくれる

 「うるさいやつね」

 シンジは、慌てて離れる

 「ち、違うよ」

 「はぁ〜 マナ・・・・・レイがいないからって、上手く行くとは限らないでしょう」

 「でも、チャンスだし。アスカも狙ってないでしょうね」

 「あ、あのね。わたしが・・・・」

 アスカは、言いよどんだあと、他の物を探しに行く。

  

 エリート意識を振りかざすだけの根拠は消えていた。

 使徒一体に付き成功報酬一億。

 例え、最後の使徒を倒してもシンジとの差は縮まらない。

 緒戦から戦い、生き残ったシンジの戦果は、それだけ大きかった。

 被害が大きい場合、査定で引かれた。

 それでも使徒殲滅の主役はシンジだった。

シンジ レイ アスカ ハルカ
第03使徒サキエル 100000000
第04使徒シャムシェル 100000000
第05使徒ラミエル 50000000 50000000
第06使徒ガギエル 30000000 70000000
第07使徒イスラフェル 50000000 50000000
第08使徒サンダルフォン 30000000 70000000
第09使徒マトリエル 40000000 30000000 30000000
第10使徒サハクィエル 100000000
第11使徒イロウル
第12使徒レリエル 100000000
第13使徒バルディエル 10000000 10000000
第14使徒ゼルエル 80000000 10000000 10000000
第15使徒アラエル 40000000 40000000 20000000
第16使徒アルミサエル 20000000 20000000 20000000 40000000
740000000 160000000 280000000 40000000

マイナス査定

100000000 20000000 40000000 0
640000000 140000000 240000000 40000000

 成功報酬をお金に換算すると7億4000万

 査定で1億引かれ、6億4000万がシンジの口座に振り込まれることになっている。

 アスカがシンジに対してとやかく言えるものはなかった。

 最後の対ゼーレ戦で4人に1億ずつ別枠で成功報酬が振り込まれることが決まっていた。

 それでさえ、比率が縮まるだけで決して、戦果の差が縮まると思えない。

 条件が同じであれば、マギの戦績計算は公平で、ケチをつけるつもりもない。

 せめて、最初から参戦していれば、もっと良い戦果だったかもしれない。

 そして、ATフィールド展開という最大の功績はシンジのものだった。

 人類の救世主が貰う報酬として多いか、少ないか。

 使徒に簡単に叩き落される重戦闘機1機が、100億。あっさり撃沈される戦艦が、7000億。

 とすれば、3人のパイロットは、それより、はるかに価値ある存在。

 そして、何もしていない、使徒のカヲルでさえ、ゼーレから5億が振り込まれていた。

 世の中は、理不尽極まりない。

  

  

 ある休日の朝。

 シンジは、起きて外に出る。

 ジオフロントの巨大な穴の周囲が整地され再建されつつあった。

 カヲルを誘って、配給センターに食料をもらいに行く。

 「・・・シンジ君、今日も、混沌とした風景だね」

 カヲルは、灰燼と化した第3東京を眺めて呟く

 「風景だけはね」

 どことなく、非日常を楽しんでいたのは、最初だけ。

 いまは、廃墟然とした風景が日常になっている。

 そして、人間は、廃墟慣れして秩序らしいものが作られていく。

 カヲル君の話しだと、

 他の国や地域では、精神感応世界でも、暴動、クーデター、革命が連鎖反応で起こっていて、

 日本人は、変わっているそうだ。

 世界中を敵に戦ったという意識で緊張感があるのだろう。

 いまのところ一枚岩。

 「量を優先で、食べ物を決めるのも慣れたね」

 「僕は、食べても、良いし、食べなくても、良いんだ。慣習的に食べているけどね」

 「シンジ君〜」

 不意にマナが後ろから腕を組んできた。

 「マナ・・・全然気が付かなかったよ」

 「どこ行くの? シンジ君」

 「配給センター」

 「それより、バラック市場に行こうよ」

 「バラック市場?」

 「そう、資本主義は、偉大ね。闇市ができているよ」

 「そうなんだ」

 「まぁ ほとんど、瓦礫から引っ張り出した盗品だけどね。最初は、そんなものよ」

 シンジとマナがバラック市場に行くと人が集まっている。

 「リリンは、たくましいね。雑草より強いよ」

 「盗んできたものをここで売るの?」

 「拾ってくる人、盗む人、売る人に分かれたみたいね」

 「つ、捕まらないの?」

 「現行犯じゃないと。それに瓦礫ばかりで混乱しているし」

 「精神感応で、ばれても、それを利用できる法律がないし」

 「経済が安定するまで、当分、必要悪よ」

 「人の数の割りに静かだね」

 「精神感応で五月蠅いくらいよ」

 「精神感応が聞こえないのは、寂しいな」

 「言葉じゃないの、意思みたいな漠然としたものよ。言葉の代わりになるの」

 「度量とか、はっきり伝わるのに、交渉する度に曖昧になっちゃうのよね」

 「人間の思考って変化しやすいから」

 「配給センターより。品数が多いし、量も多い」 シンジが驚く

 「盗品は配給センターに流せないから・・・」

 「ヒカリにも教えてやりたいな。早く帰ってこないかな」 カヲル

 「ていうか、レイが出張でアスカも、ヒカリも、ローテーションに入っているのに」

 「邪魔な、こいつがいるから・・・ったく」 マナ

 「あ・・・あれは、なんだい?」 カヲルが指差した。

 「射的ね。弓で当たれば、景品が入るの。意外と儲かるのよね」

 「護衛をしてなければ、小金作りにやっても良いかなっていう、仕事ね」

 「へぇ〜 シンジ君。やってみないか」

 「うん」

 矢は10本。

 カヲルは、一本も、当たらず。

 シンジも、一本も、当たらない。

 しかし、マナは、一番遠くの高額商品を二つ当ててしまう。

 見ていた観客の歓声があがる。

 「す、すごいよ。マナ。すごい」

 「癖のある弓と矢だから手間取ったけど。こんなものかな」

 「リリンの才能には、敬服するね」

 その後、市場でオニギリと味噌汁を食べ、廃墟を散策する。

 悪党らしい連中が十数人、遠巻きに見ていた。

 襲ってくれば、保安部の護衛数人を含めて、戦いになるだろう。

 もっとも、カヲルが、あっさりと片付けてしまうだろうか・・・・

 結局、襲われるようなことはなかった。

 生き残っている土地の持ち主らしい人間が、あちらこちらの廃墟を見張り。

 物を持たない人間が持ち主のいない地所を物色している。

 シンジ、カヲル、マナは、人間模様を監察して楽しみ、

 買い物をしてコンフォート17に戻ると、テレビゲームをして遊ぶ。

 この電気は、ケンスケ、チアキか、アスカ、ハルカが交代で4号機を動かして発電したものだ。

  

 一週間後

 零号機、初号機、二号機、四号機、トライデント4機は、プレハブ屋根のLCL液プールで仮住まいだった。

 ゼーレは、欧米の首脳部、有力官僚層、財閥層を巻き込んで喪失。

 日本は、国連の攻撃を凌ぎ切ってしまうと、

 国際情勢は大混乱。

 政治・産業・軍事の中核、ゼーレを喪失した国連は、日本と停戦、和解の交渉を開始する。

 松代のマギを除いて、世界中のマギと基幹システムが完全に破壊されていた。

 再建の早い国が今後の国際情勢で主導権を握る。

 そして、最有力は、松代のマギと、エヴァ4体の現物を所有する日本だった。

  

 第3東京市

 ジオフロントの大穴は、大きく深く。

 芦ノ湖の湖水が全て流れ落ちても足りず

 崩落が進み、大穴の淵が広がっていく。

 ヒカリの家も引っ越さなければならなず。

 タダシの家も、完全に天井都市と一緒に落ちていた。

 しかたなく、大穴から比較的遠いコンフォート17に洞木家族と久坂家族が引っ越し。

 伊吹マヤも、アパートの地盤が緩んだのか、

 地下水が溢れ出して、コンフォート17に移り住むことが決まる。

 そして、ようやく、金融や物流が安定。経済が少しずつ回り始める。

  

 郊外の大規模ショッピングセンター

 シンジ、レイ、アスカ、マナ、カヲル。

 洞木家族(父、コダマ、ヒカリ、ノゾミ)、

 久坂家族(父、母、タダシ、ユウキ)。

 シンジ、レイ、マナは、空き部屋に入れる家具を買うだけ。

 カヲルも、一人暮らし用のセット物で揃えただけだった。

 アスカの買物は長かった。

 久坂家は、天井都市とともにすべてを失ったため。

 すべてを買い揃えなければならず。

 「・・・・お兄ちゃんとお姉ちゃん達は、旧人類なの?」

 ユウキ(タダシの妹)10歳がシンジとレイに聞く

 「うん、そうだよ」シンジ

 「・・・・・・・・・・・」 レイ

 「相手が、なに考えているかわからない方が楽よね」

 「そうなんだ」

 「だって、うちなんか、離婚直前まで行ったんだよ」

 「そ、そう・・・」 シンジ、たら〜

 「お父さん、再婚だから結構。修羅場って感じ」 ユウキ。ボソボソ

 「そ、そうなんだ」 シンジ、汗

 「でもね、新人類でも差があるんだ」

 「精神感応が鋭い人と鈍い人がいて、チラッとみて分かる人と、ジッと見ないと分からない人・・・」

 「大変なんだ。新人類って・・・」

 「これまで仲が良かった同士でも大喧嘩したりして」

 「でもケンカしていた人同士が仲良くなったりするの・・・」

 「わたしも、仲が悪かった友達と仲良くなって、仲良かった子とケンカしたり」

 「そうなんだ」

 「なんか、旧人類の方が話しやすいな。新人類って反応が怖くて」

 「ユウキ。何やっているんだ。碇たちの邪魔したら駄目だろう」

 タダシが気付く。

 「は〜い」 ユウキが去っていく

 「可愛い妹だね」

 「新人類になってから特にね。分かり合えるというのも良し悪しだよ」

 「ゼーレのやろうとしていた融合になっていたら、もっと酷い状況だったかもしれないな」

 「いやでも、離れること、できないんだから」

 「実際は、どうだったの?」

 「あのシェルターにいた人たちは、全員・・・・」

 「んん・・・近くにいたから特に分かりやすいかな」

 「融けるような感覚のあと、いろんな思いが混ざり合って・・・」

 「何かに向かって統合されかけたような気がしたけど、すぐに引き裂かれた感じ・・・」

 「一瞬だったから良くわからないけど」

 「その後さ。相手の事情がわかりやすくなって」

 「じっと見ていると、その人の思っている事が伝わってくるんだ」

 「表情と思っていることが違うから最初の内は戸惑ったけどね」

 「新人類は、評判悪いんだ」

 「表層的な思いは、分かってしまうみたいだけど、深層部分は分からないから」

 「2重構造になっていくかもしれないね」

 「誰でも踏み込んで、これる部分と、隠れている部分。だから技巧的な問題なのかもしれない」

 「話さなくても、分かり合えるのは、いいかもしれないけどね」

 「霧島は、そういう2重構造みたいなの習得しているみたいで、分かり難いよ」

 「問題は、言っている事と、思っている事が違うことが相手に伝わってしまうことかな」

 「・・・そう」

 「本音と建前の両方が、ばれたら、日常生活は、やっていけないよ」

 「ははは・・・・」

 「でも、病人とか怪我人とか、再構築で、みんな、健康体になったみたいで喜んでいるけどね」

 「あと犯罪者と冤罪も、すぐ分かるみたいで、大騒ぎ」

 「じゃ 混乱が収まったら、僕達は阻害されるかもね。精神感応しないから」

 「そんなことにはならないよ。4人には感謝しているからね」

 「本当は4人とも、お金なんか要らないんだよ」

 「宣伝のために一緒に写真を撮ったり、サインだけで、タダって店も多いから」

 「ははは」 シンジ、苦笑

 「実を言うと妹のやつも、おまえに近付こうとしているから気をつけろよ」

 「・・うそ・・」

 「可愛いと思われれば、とりあえず成功かな」

 「はは、はは・・・・かわいいのは認めるよ」

 「腹違いの妹だから、何かとややこしくて」

 「新人類になってから特にそうだ。俺も、一人暮らししたいよ」

 「駄目だって、言われたんだろう」

 「妹が俺の方と住みたいなんていうからだ。親父がそれで怒ってな。もうしばらく脛をかじるかな」

 「お金を入れなくても良いって?」

 「今回も、全額出すと言い張って・・・高校卒業するまで、お金は入れなくていいって」

 「という事は高校卒業するまで一人暮らしできないじゃないか」

 「収入があるのに一人立ちさせないなんて、絶対に嫌がらせだぜ。親の面子の犠牲だよ、みえみえ」

 「親が、いるなら親と住んだ方が良いと思うよ」

 「そうか?・・・なんか中学生で一人立ちしている、碇が羨ましいよ」

 「僕は、親から離されていたようなものだから、良くしてくれる親は、羨ましいよ」

 「・・・」

 「その・・・碇のお父さんのことだけど。仕方がなかったことだと思うよ」

 「いろんな意識が混ざったとき、そう感じたよ」

 「今は、仕方がないと思えるけど・・・あの頃は、そうじゃなかった」

 「なあ、碇。親父とケンカしたときとか、泊めてくれよ」

 「いいよ。ソファベットも、余計に買ってるから」

 「あ・・・だけど、綾波とか渚とかも泊まるんだよな」

 「大丈夫だよ。4LDKで持て余しているから」

 「というか、綾波の時は邪魔になりそうで。渚は、なんか苦手だな」

 「あ、綾波とは、婚約しているだけだから・・・そういえば、カヲル君と、あまり話さないね」

 「俺って既成概念で人を見る人間だったんだよ」

 「渚の近くにいると良く分かったよ。物凄く怖くてさ」 タダシ、ガックリ

 「カヲル君は、意外と話しやすいよ」

 「最近は、アスカとマナとも気軽に話せているし。漫才みたいで面白いよ」

 「そういう風には見えないような・・・・どういうタイプなんだ?」

 「ボケと突っ込みならボケかな。普通の人と感覚が違うから新鮮で面白いよ」

 「ATフィールドとか使わないのか」

 「んん、サードインパクトの時。使っていたのを見たけど。その時だけかな」

 「じゃ ほとんど使わないんだ」

 「うん」

 「なあ、碇、これからはエヴァじゃなくて、トライデント型が主役になっていくんだよな」

 「そうみたいだね。宇宙に行くらしいから」

 「よ〜し。俺もがんばるか」

 「うん。久坂君が一番、ヒーローぽいから、似合うと思うよ。二枚目で絵になるし」

 「俺も、そう思いたいけどな・・・」

 「はあ〜 自分の “思い” が知られるのってイヤだ。それに、二枚目でも、渚に負けているし」

 「心根の悪い俺にとっては、冬の時代だな〜」

 タダシ、頭を抱える。

 「へえ、好きになる人間も変わってくるんだ」

 「そりゃ、良心的な人間に人は近付いていくだろう」

 「そうじゃない人間には、誰も寄って来なくなるさ。俺は人気があった分、落ち込んだよ」

 「良心的な人間になればいいだろう」

 「実に建設的な意見だよ」

 「宗教関連が賑わっている。もっとも宗教団体の過半数が崩壊と人事刷新」

 「そして、警官の3分の1が適性の問題で処分待ちで笑える」

 「議員の6割は、次で落選確実。落ち着くまで、旧人類の4人が有利だね」

 「俺も、精神修養で苦行に入るかな」

 「精神感応は、そんなに効果があるんだ」

 「精神感応が馴染むまで3世代くらいかかるよ・・・」

 「なぁ 惣流の買い物は、まだ終わらないのか」

 「アスカは、凝り性だから」

 「他の買物もあるから俺達家族は先に行くよ」

 「でもな〜 第3東京市の中央がスッポリ消えて、残されたのは郊外」

 「とりあえず家があるから、あそこに落ち着くけど」

 「中心部の直径6km、深さ2kmの大渓谷だけで、何もないんだよな」

 「これから・・・どうなるんだろう」

 「観光地にはなるかも」

 「まあ、見晴らしはいいけどね・・・じゃ 行くよ」

 「うん・・・」

  

  

 ショッピングセンターのレストラン

 「綾波。もうすぐ正月だね」

 「正月は、何かあるの?」

 「大晦日の夜から正月は、恋人同士にとってイベントになるんだよ」

 「クリスマスは、無粋なゼーレのお陰で台無しになったからね」

 「大晦日は、年越しそば。正月は、おせち料理を食べて、神社にお参りに行くのさ」

 「そして、雑煮を食べるんだ。子供は、お年玉が、もらえるんだよ」 カヲル

 「大晦日にそば。正月におせちとお雑煮を作れば良いのね」

 「えっ いや・・・」

 「はいはい。わたしが作る。わたし、わたし」 マナ

 「わたしが作るわ」

 「むっ レイ、おせちと雑煮、作ったことないでしょう」

 「作れるもの」

 「わたしの方が料理、美味いでしょう」

 レイ、頷く

 「よ〜し。決定。わたしが、おせちと雑煮を作るね、シンジ君」

 「年越しそばを作るわ」

 「うん、ありがとう・・・・・初詣は、どこの神社に行こうかなって思って」

 「一番近くて、それなりに由緒があって大きいのは、箱根神社ね」

 「じゃ・・・初詣は、箱根神社に行く?」

 レイ頷く

 「あれ、シンジ君、初詣なんて行くの?」

 「いままで、行ったことなかったから。行ってみたいなって。戦争が終わったら、なんとなくね」

 「洞木君も、行ってくれるかな・・・」

 カヲルが家族で食べているヒカリを見詰める

 「行ってくれると思うよ。でも家族が一緒かも」

 「家族か・・・・」

 「カヲル君は、実家に戻ったりしないの?」

 「もう、親子といえないだろうね。記憶だけって感じかな。そういう気分にもなれないし」

 少しばかり郷愁めいた空気になる。

  

  

 学校

 シンジ、レイ、アスカ、ハルカ、ケンスケ、ヒカリ、タダシ、チアキ、マナ、カヲルが登校。

 レイと同じ蒼髪赤眼のハルカの転入は話題になり、

 10人は、学園生活を過ごすことになった。

  

  

 雪が降る屋上

 シンジとカヲル

 「ロシアの氷原を思い出すね」

 「僕の心も、凍土のように凍っているんだよ」 カヲル泣き

 「洞木って、簡単にキスするタイプじゃないと思うよ」

 「シンジ君は、綾波レイと、どうやってキスしたんだい?」

 「ど、どうって、自然だったと思うけど」 シンジ赤

 「どうせ、僕は、使徒さ。リリンとは、心と心が通じないんだよ」

 「良し悪しだと思うよ」

 「精神感応で事前に相手の心の動きが読めるというのはお互いに萎縮してしまうし」

 「分からない方が刺激が、あっていい面もあるから」

 「それに人は、刺激を求めて生きるんだって、カヲル君も、言ってたじゃないか」

 「君たちは、どうなんだい。その点は、究極だろう。心身感応なんだから」

 「僕たちは、もう、切っても、切り離せないから・・・」

 「羨ましいね」

 「そうかな、でも・・・洞木は、カヲル君のこと好きだと思うよ」

 「良く話し合ったほうが良いよ。親密になれば意識しなくてもキスできるようになると思うし」

 「じゃ もう一度、当たって砕けるかな」

  

  

 校庭の木陰で、レイとヒカリ

 「どうしよう。綾波さん。わたし、嫌われたかな」

 「嫌われていない」

 「本当! 本当にそう思う!」 レイ頷く

 「だって、突然だったのよ」 ヒカリ、真っ赤

 「・・・・・・」 頷く

 「心の準備だって出来てなかったし、なに考えているのか、全然、分からなかったから」

 「・・・・・・」 頷く

 「嫌われたかな」

 「嫌われてない」

 「本当!」

 レイ頷く

 「もう〜 どうしよう」

 「だって、普通、相手に意識を集中すればなんとなく、考えていることが分かるのに」

 「彼は、わからないから」

 「そう」

 「ねえ、綾波さん。碇君とキスするとき、どうだったの?」

 「吸い込まれるように・・・・・」

 「吸い込まれるように・・・・・」

 ヒカリ、ときめく

 レイ、頷く

 「いいな、綾波さんと碇君って、恋人同士の理想なのよね」 ヒカリ、ポッ。

 「そう・・・」

 「なんか、碇君が羨ましいな」

 「そう?!」

 「ねえ、綾波さん。今日も遊びに行って良い」

 レイ頷く

  

  

 校庭

 アスカとハルカは、薄っすらと積もろうとする小雪を眺めていた。

 「ハルカ・・・この世界、これからどうなっていくのかしら」

 「予測を立ててみたら。面白い研究になるわよ」

 「わたし、武闘派だから」

 「修士課程は、伊達じゃないでしょう」

 「修士課程か。エヴァに乗るために、ついでに取ったようなものだから」

 「・・・・・・」

 「エリートの頂点がエヴァに乗る資格があると・・・」

 「でも、そうじゃなかった。ママとの絆が資格になっていただけ・・・」

 アスカがチラリとハルカを見る

 「・・・・・・」

 「ママなの?」

 「アスカのママ。キョウコの記憶はあるわ。個体としては違うけどね・・・」

 「シンジ君の発案で二号機から引っ張り出されたの」

 「シンジが?」

 「シンジ君を馬鹿にしたら駄目よ。あれで、頭も良いんだから」

 「分かってる。もう、馬鹿になんて出来ないもの・・・」

 「好きになったから」

 「・・・・・」 アスカ、頷く

 「・・・素直が一番よ」

 「・・・ハルカを、どういう風に受け止めたらいいのかしら」

 「わたしは、アスカが好きよ」

 「とても、いとしいもの・・・それは、変わらない」

 「わたしも、ハルカといると楽かな」

 「アスカの小さい頃って、物凄く可愛かったのよね」

 「いまは?」

 「いまは、かなり、にくったらしいわね。大きくなって・・・・」

 くすっ♪ アスカ微笑む

 「パパのこと怒っている?」

 「かなりね・・・でも、アスカは、かわいいわ・・・頭撫でていい?」

 アスカ頷く。

 ハルカは、アスカの頭を撫でる。

 「ごめんなさいね、アスカ。あなたの記録を見たの」

 「記憶にないけど、辛い思いをさせたわね」

 「いいの・・・・もう・・・・忘れることにする。あれは、ママじゃなかった。そう思う」

 「それに昔のママのことも思い出したから、ダブルエントリーのお陰かな」

 「いつから気付いたの?」

 「ママのむかしの写真に似ていたから」

 「それに子守唄を歌ったとき。思い出したの。小さい頃、ママが歌ってくれたって」

 ハルカがアスカを抱きしめる。

 「ごめんね。アスカ。辛い思いをさせて」

 「ママ」

 「大きくなったわね」

 「ママが小さくなったのよ」 アスカが離れる

 「くす♪ そうね」

 「ママとは、呼べないけど」

 「人前で、ママと呼ばれると困るわね」

 「ハルカは、これからどうするの?」

 「本部が破壊されてエヴァの管制は出来なくなったから」

 「政府とNERVは、松代のマギで新しいマギシステムとネットワークを構築していく事になるわね」

 「リツコとマヤが当たっているけど、わたしとレイも、時々手伝いに行くことになる」

 「そう」

 「シンジ君もね。彼、かなり鋭いときがあるから」

 「父親と母親の血を引いているだけあるわね」

 「エヴァに頼らなくても、将来は、有望な学者になるかも」

 「あいつもか・・・わたしは、置いてけぼりね」

 「アスカも、手伝いに来る」

 「わたし?」

 「精神感応が出来ないから、チームワークから外れて足手まといになるだけよ」

 「わたし達4人は、みんなそうよ」

 「精神感応出来ない特典もあるの、褒賞金と年金暮らしなんて、年じゃないでしょう」

 「発電だけで、何もしていないけど」

 「まだ、傭兵で国防省に在籍しているから、給与、ボーナスも貰っている」

 「そのうち、再編成されるから、声がかかるわ」

 「マギを再建したらエヴァも再就役させるから。その前に好きな部署に入るのが良いわね」

 「エヴァって、もう、戦う相手がいないでしょう」

 「次は、あそこよ」

 ハルカが上空を見る

 第16使徒が雪雲の隙間から見える

 「宇宙・・・・」

 「そう。アルファ、ベータ、ガンマー、デルタは、既存の技術に近い」

 「コアの書き換えが出来るようになれば、再就役される」

 「ヒカリ、久坂君、相田君、チアキの4人がメインだけど」

 「シンジ君とレイも、そちらに取られることになるわね」

 「宇宙か、一度は、行って見たいわね」

 「国家再建と南半球再開発」

 「その後は、第16使徒から軌道エレベーターを降ろすことになるから」

 「人口密度は少ないけど、宇宙開発は難しくないでしょうね」

 「エヴァ光質を通したカーボンナノチューブにシンジ君がエヴァ光質の皮膜を覆えば、ほとんどの攻撃は凌げる」

 「第16使徒のコア書き換えて、シンジ君とレイに入ってもらうことも出来る」

 「シンジ頼みは変わらないのね」

 「ATフィールドの力は尋常じゃないもの」

 「カヲル君でも出来そうだけど、慎重に扱うほうが良いといわれているしね」

 「で、いつまで、頭を撫でているつもり?」

 「アスカ、可愛いから」 ハルカが名残惜しそうにやめる

 「くす・・・」 アスカ

  

  

 ケンスケとチアキ

 「・・・・・・・・」 チアキ

 「・・・・・・・・」 ケンスケ

 ハリセンでケンスケが叩かれる

 「いてぇ〜 なんだよ。ちゃんとやっているじゃないか」

 「いま、いかがわしい事考えていたでしょう」

 「そんなに覗かなくたって良いじゃないか。新城だって・・・」

 また叩かれる

 「うるさい。何も言わずに、公式を、そのぼんくら頭に叩き込め」

 「はいはい・・・新城がね〜」

 ケンスケ、また叩かれる

 「いてっ・・・思ってたより、嫌われていないのは嬉しいね」

 「あまり、気持ち悪いこと考えていたら。こっちも考え直すからね」

 「お互いに煩悩には悩まされるね」

 「だから覗くな。バカ」

 「俺が、なに考えているのか気になるんだ。いい傾向だね」

 ケンスケ、嫌味

 「言っとくけど、同じ高校じゃなくても良いかもしれないって、言われているんだけど」

 「かもだろう。かも・・・・保安部の予算を聞いたら常識的な判断をするだろうよ」

 「相田〜 スパルタでやってやろうか」

 チアキは、ムッとする

 「既にスパルタだよ」

 「アホな高校だとアホしかいないでしょう。選択肢が減るのはイヤよ」

 「気が多いのか、恋愛症候群だね」

 「あのね、年寄りじみたこと言わないでくれる」

 「若いんだから新しい出会いを求めるべきよ。刺激を求めてね」

 「刺激ね〜」

 ケンスケが腕を組む

 「あのね、軍事オタク、やってて面白い?」

 「新城だって国防省じゃないか」

 「わ、わたしは、仕事で割り切っているもの。あんたと違って趣味じゃないから」

 「デザイナーは、諦めたのかな・・・でもダブルエントリーは良かったけどね」

 「スケベ、なにがハルカさ〜んよ。あんたなんて相手にされないわよ」

 「げっ!」

 「ったく。どいつもこいつも」

 ケンスケ、ハリセンで叩かれる

   

   

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 月夜裏 野々香です。

 数的な間違いを指摘されまして、使徒殲滅の成功報酬表をわかりやすく書くことにしました。

 こうやって表にすると、自分なりですが、かなり難しいです。実は自信なし。

 “それは、おかしいだろう” という声もあると思いますが、その時は、指摘してください。

 一応、名目上は、マギの合議制の査定ということです。

 双方に納得となれば、書き換えるつもりです。

 

 

 

 

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第48話 『ゼーレ来襲』
第49話 『新しい世界』
第50話 『そして、未来へ』
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