月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

 

 カヲルは、ヒカリに手を差し伸べ。

 ヒカリが手を添えるとリンクを滑り始める。

 周りの女の子がカヲルにモーションをかけ、

 自分を侮蔑するような視線を向けても、気にならなくなっていく。

  

第48話 『ゼーレ来襲』

 

 TEL

 ヒカリ チアキ

 『ヒカリ。デートは、どうだった』

 「視線でハリネズミになったけど、楽しかった」

 『やっぱり、渚カヲルは、トップアイドルになるから』

 『クリスマス前に刺されないように気を付けてね』

 「やだっ! チアキ。なんてこというの」

 『なに言っているの、チャートを読んでみなさいよ。カヲルファンは、かなり過激よ』

 「うそ」

 ヒカリは、慌てて端末を開く

 『訓練された技を試す、良い機会ね』

 「チアキ〜」

 『彼女が死ねば、次はわたしが、とか書かれているわよ』

 「そんな。なんで、そうなるわけ、わたしが望んだんじゃないわよ」

 『それは、言わない方が良いわよ。火に油を注ぐようなものだから』

 「うぅぅ やだっ 本当に書かれてる。信じられない・・・うそ・・・」 ヒカリ、泣き

 『ヒカリ。挫けないでね。わたしはヒカリの味方だからね』

 「うぅ 酷すぎ。碇君だって、こんなこと書かれてなかったのに」

 『男は諦めが良くて執着心が低いけど』

 『女の嫉妬って、怖いわね』

 『それに碇君と綾波さんは、否定していたけど』

 『避難命令のとき、二人とも抜けていたからエヴァのパイロットと誰でもわかる』

 『噂になってたでしょう。わたし達の場合。まだ、そういうのないから』

 「んん・・・これ、第壱中だけよね」

 『9割は、第壱中だけど、残りは卒業生とか、入学予定者とか、暇潰しの人もいるの』

 『話題独占ね。ヒカリ、人気者!』

 「わたしの悪口ばかりじゃない。人の気も知らないで」

 『くすっ もう “誰か代わってよ” とは言わないのね』

 「彼の気が済むまで付き合ってあげるわよ。私自身としてね」

 『良かった。なんか安心した』

 「仕事だからね。殉じるつもりはないけど」

 『それでこそ、ヒカリよ。えらい』

 「でも・・・」

 『でも?・・・・・』

 「ひょっとしたら・・・」

 『ひょっとしたら?』

 「彼のこと、好きになるかも、しれない」

 『なるほど。普通の女の子が持つ、正常な反応だわ』

 「・・・・・・」

 『で、好きになれそう?』

 「・・・なんか違う感じかなって、思うけど、もう、嫌いになれないかな」

 『・・・泣くことになるかも』

 「その時は、泣いてあげる・・・・」 ヒカリ 泣きそう

 『いまから、練習しているの?』

 「だって、鈴原の時だって・・・・・・」

 『中学生で彼氏二人と死に別れか・・・』

 『どっちが逝くか分からないけど。そういう宿命を持った女ね』

 「ぐすんっ・・・客観的にいわないでよ・・・・」

 『盗まれた心は、帰ってこないか』

 「もう〜」

 『残るのは、思い出だけね』

 「チアキ〜」 ヒカリ泣き

 『心の準備だけは、しておいて、鈴原の時だって大変だったんだから』

 「・・・ごめん。チアキ」

 『ヒカリが好きという気持ち。わたし、応援する』

 「ありがとう。チアキ」

 『わたしは、クリスマスは、一人か。ヒカリは、どうするの?』

 「まだ予定ないけど」

 『ヒカリは、いいな〜』

 「プレゼントは、用意した方が良いわね」

 『わたしも、用意するかな。相手がいないけど』

 「きっと、いい人が見つかるから、大丈夫よ」

 『そんな、世の中、甘くないよ』

 「久坂君は? チアキ面食いだから・・・」

 『んん・・・なんとなく踏ん切り付かないな〜 本気になれそうにないというか』

 「あら、チアキ。久坂君は、顔良し、頭良し、男義良し、とか言ってたじゃない」

 『でも、アスカも、ヒカリも、同意していた割に何もしていないじゃない』

 「だって、その頃、わたしは鈴原で。アスカは加持さ〜んだったじゃない」

 『そうか・・・・』

 「気が向かないんだ」

 『なんとなくね。おやすみ。ヒカリ』

 「うん、おやすみ、チアキ。ありがとう」

  

  

 発令所

 盗聴は違法。

 しかし、気にされていないらしい。

 いや、作戦中ということで、辻褄が合わされているのかもしれない。

 ミサト、リツコ

 「・・・・」 ミサト

 「なるほどね」

 「ヒカリには、辛いことかもしれないわね」

 「あの娘も良い女になるわね」

 「渚君も、まじめなのね。人間の渚カヲルの性格分析から、あまり逸脱していない・・」

 ミサトが書類に目を通しながら呟く。

 「それ、参考にしかならないわよ」

 「シンジ君も渚カヲルと殺し合う覚悟を決めているって感じね」

 「でも、ハルカのやつ。良く見ているわね」

 「カヲルと会っていないはずなのに心理学でもやっているの?」

 「映像は、見ているでしょう」

 「ヒカリも劣等感があるから・・・」

 「アスカ、レイと客観的に比べると見劣りする。チアキやマナと比べても不利だし」

 「でも、ヒカリ自身は、並み以上なんだけどな」

 「そうね。でも、アスカとレイは主婦としてみるとかなり不安になる」

 「チアキとマナは、普通。ピッッタリ来るのは、ヒカリね」

 「え〜 渚カヲルは、結婚しようと思っているの?」

 「わたしは、構わないけど」

 「このマッドが〜」

 「使徒の目的からすると妥協として人類との融合もあるの?」

 「えっ!」

 「ハルカは、1割の可能性で妥協すると計算している」

 「マギも、その可能性は、わずかにあると認めている」

 「本当に、じゃ 敵にならなくなるの?」

 「本来の本能と違うから1割以下よ」

 「可能性は低い。使徒がリリスに向かう生理的な欲望は我慢できないはず」

 「わたし達、もっと低い確率で勝ち残ってきたのよ」

 「そうね。でもゼーレが賭け事を始めただけで。私たちが好きで掛け金を載せたわけじゃない」

 「ちょっと、話しに行ってくるか」

 「会見? 1割は、こちら側の相違も含めてのことよ」

 「秋津司令が、どう思うか。という事?」

 「全体が受け入れるか、という事よ」

 「戦って排除することを望むか。危険を避けて融合・同化するか」

 「軍事的には、戦いたくないわよ」

 「渚カヲルの戦闘能力は、予測つかないけど、ファーストコンタクトから負けているのよ」

 「一応、文民統制だからね」

 「黙っていれば、分からないわよ」

 「それでも、一割程度は変わらない」

 「本来の姿じゃないから?」

 「一部でも大部分でも、使徒に対する恐怖心と戦い続けなければならない」

 「使徒を信じ続けるのは、大きな負担になる」

 「・・・・・・・」 ミサト

 「それにゼーレは知っている」

 「彼らの意志と支配力が人類の力の9割を占める」

  

  

 NERV

 ラウンジ

 ハルカ、アスカ、チアキ

 テーブルの上にコーヒーとポッキー、ポテトチップが並んでいる

 「はぁ〜 もうすぐ、クリスマスイブだというのに・・・寒いわ」

 チアキがポッキーを銜えながら呟く。

 「冬は、普通寒いのよ・・ドイツなら雪が積もる」

 「アスカ。この場合。寒いというのは、寂しいという風に受け取るのよ」

 「チアキ。ダンスパーティーが入っているよ」

 「はあ〜 ダンスパーティーか。少しは、慰められるわね・・・」

 「今頃、4人は、ダブルデートで楽しい学園生活か、良いな」

 「あれ、チアキ。相田君とデートしないの?」

 ハルカがポテトチップを頬張る。

 「誰が、あんなやつ」

 チアキは、ポーキーを咥えながら呟く

 「チアキ。ケンスケ君と、一緒にいること多いでしょう」

 「あの馬鹿に勉強を教えているだけよ」

 「あいつに合わせて、高校に行くなんて、冗談じゃない」

 「相田君は、悪くないと思うけど」

 「ハルカ。あんな男は、駄目よ」

 「ハルカには、勿体無いから。もっと高望みした方が良いと思う」 チアキ

 「そうかな・・・・じゃ 久坂君は?」

 「んん・・・相田より、まだましだけど。ハルカは、もっと高みを目指すべきよ」

 「へえ〜 どんな」

 「アイドルとか、超お金持ち」

 「チアキ。ミーハーね」

 「自分の値を落としちゃ駄目よ。ハルカにそんなことされたら値崩れが起こるじゃない」

 「ははは ははは ははは・・・」 ハルカ、苦笑

 「笑い事じゃないわよ。自分を高く売りつけなきゃ。そうよね。アスカ」

 「自分を売るつもりはないけど」

 アスカ、ポテトチップを食べる

 「アスカは、自立しているから。でも、ハルカ。自分を投売りしちゃ駄目よ」

 「アスカとレイとハルカって、超がつくほど美人なんだから」

 「美人は、自分を美人と意識しないときに発揮されるのよ」

 「うぅ 含蓄ある言葉」

 「相手によっては、そういう差が重荷になってしまう場合もある」

 「ヒカリとカヲルね」

 「シンジ君とレイちゃんも、それに近いわね」

 「シンジ君。なかなか、レイちゃんに好きと言えなかったみたいだし」

 「女の子の方から言い難いから、美人だと、損する場合もあるのよね」

 ハルカがアスカをチラリと見る

 「じゃ・・・」

 「わたしも、誰かに好かれているのに」

 「あまりにも素敵過ぎて好きと言えない男の子がいるかも・・・」 チアキ、ムフ♪

 「そうね」 ハルカ、微笑む

 「でもね。どんな美人でも、人が、どう見ようと好きになってしまう時は、好きになってしまうのよね」

 「悲しい恋と分かってもね」

 「え〜 ハルカ。誰か、好きな人がいるの?」

 「そうね。誰が、いいかしら」

 「ハルカなら、どんな相手でも、大丈夫よ」

 「じゃ 落ち着いたら、そのうち、第壱中に行くから、探してみるかな」

 「でも、第壱中には、ろくなのいないよ。端末見る。持ってくるね」

 チアキが去っていく  

 「チアキって、賢い娘ね」

 「そうね」

 「アスカ。シンジ君じゃないと駄目なの?」

 「・・・・・」 頬が赤くなる

 「軟弱でガキっぽいと思っていたのに惹かれていく。戦友で命の恩人」

 「無為の善意を受けると、意外に気になって仕方がないのね」

 「そ、そんなことないわよ。あんなやつ。神経質で、女々しくて、自虐的で、視野が狭くて、内罰的で、トウヘンボクじゃない・・・」

 「一緒に戦っていた時のことが忘れられない。会わなくなって、やっと気付く?」

 「シンジは、ただのストレスの捌け口よ」

 「わたしのせいで彼とダブルエントリーできなくなったわね」

 「ちょ ちょっと、何てこというのよ!」

 「わたしね。レイちゃんのこと好きだから。アスカのこと応援できないかもしれないな」

 ポッキーを咥える

 「別に応援してくれなくても良いわよ。あんなやつ、なんともないんだから」

 ポテトチップを食べる

 「そう、だと良いんだけど。マナもシンジ君を諦められないみたいだし」

 「このまま、ズルズルと二人でシンジ君を分けちゃうのかな」

 「・・・・・」

 「でもね〜 明日を知れぬ身。戦場心理で本能的に求め合うのって悪くないかな・・・燃えるし」

 「ハルカは、どうなの?」

 「シンジを見ても、なんともないわけ」

 「わたし?」

 「わたしは、ほかを探すわ、モテル男は、諸刃の剣。わたし欲張りだから。分け合うのはイヤよ」

 「そう・・・」

 「アスカ。もっと、プライドがあるかと思っていたのに」

 「・・・・・」 落ち込む

 「でも、好きになったのは、仕方がないか」

 「はあ〜」 ため息

 「クリスマス。シンジ君に何かプレゼントするの?」

 アスカが頷く

 「かわいい。アスカ・・・・なにプレゼントするか決めた?」

 「シンジ君は、レイちゃんだけで、アスカには何も用意してないかもしれないけど。大丈夫?」

 「いい、当てにしていないから」

 少しだけ切ない空気が流れる

  

  

 発令所

 警報音が響く中、スタッフがザワザワと動いていた。

 「戦闘配備!」

 NERVのコンピューターシステムが3D立体映像で映されていた。

 外周のメインバンクが全方位から攻撃を受け、

 3D地球全周ネットワーク網が削り取られていく。

 「ようやく足並み揃えて、日本対世界戦が始まったわけね」

 「赤木博士。衛星回線が遮断されています」

 「シナリオは、B22。想定内ね。防壁展開」

 衛星からの情報が削られ、国外の情報収集網が消えていく。

 中央のメルキオール、バルタザール、カスパーは、防壁を展開していく。

 「・・・正副予備、全回線がハッキングされています」

 「飽和攻撃で回線が封鎖され、こちらから反撃できません」

 視覚化された3D映像で攻防戦が繰り広げられ、

 「ネットワーク網が寸断されていきます・・・」

 「メクラにされたぞ」

 「メインバンクが全方位からハックされて、切り崩されていきます」

 「さすが、ケルベロスとマギ5台は強いわね」

 「リツコ。反撃は? 国外の情報が全く入って来ないじゃない」

 「ケルベロスのスペックはマギの3倍。プラス、同等のマギ5台」

 「こちらは、NERVと松代の2台。5対1なら予測されていたことよ」

 「何とかしなさいよ」

 「隠し回線はあるけど、まだ使いたくないわね」

 「メインバンクの36パーセントがゼーレに奪われました」

 リツコは、時計を見つめる。

 「ケルベロスは、自分で地雷を踏んだのよ」

 「反撃は、五秒後・・・・・・・始まる」

 NERVのマギ攻撃は、ケルベロス内の惣流ファイル、反乱プログラムをスタートさせていた。

 「博士。第353回線に外界との隙間を構築しました」

 「外と内側から反撃開始。ケルベロス経由でマギ5台を攻撃」

 「博士、メルキオール、バルタザール、カスパーもハッキングされます」

 「ズタズタね」

 「リツコ。な、なに悠長なこと、言ってんのよ」

 「隠し回線を開いて」

 衛星回線が開かれ、世界中のネットワーク網を再建していく。

 「ゼーレがサイロ12基を準備中のようです」 青葉

 「ミサト。ゼーレから大陸間弾道でクリスマスプレゼントよ。直接、エヴァを送り込むつもりね」

 「で。30分後、プレゼントが第3東京市に届くわけ?」

 「葛城少佐。ケルベロスは?」

 「半分ほど、削いでいます」

 「それでも1.5倍か・・・正念場ね」

 「青葉君。サイロは?」

 「開いたままです」

 日本の電磁弾道弾と、世界中の電磁道弾の軌道が交差しながら互いの弾頭を破壊していく。

 3Dで、日本のトライデント機が接近する国連軍を迎撃しているのが映っていた。

 「日本側の電磁弾道弾による迎撃率は、99.56パーセント。ゼーレ側は78.5パーセントです」

 「各地で被害が出ています」 日向

 「松代のマギ。政府機関、金融機関、産業機関、交通機関もウィルス攻撃されています」 青葉

 「こちらの反撃は?」

 「同じです。ハッキングで、ケルベロスの機能は低下しつつあり」

 「配下のマギシステムもハッキングに成功しつつあります」

 「世界中のネットワークが破壊されています」

 「現在、ケルベロス経由で、ゼーレ側のマギ5台との攻防戦で勝敗が決まります」 青葉

 「物理的な攻撃も増えているわね。日向君。シンジ君とレイは?」

 「はい。渚カヲルと分かれて、こちらに向かっています」

 「どうやら渚カヲルに邪魔されずに済んだわね。何しているの?」

 3Dの映像が大きくなる。

 「公園でクレープとコーラを飲み食いして、くつろいでいますが・・・」

 「高みの見物を決め込む気ね」

 「サードインパクトが終わったあと、フォースインパクトを起こせば良いのだから」

 「イチゴ・ティラミス・クレープだ」 マヤは、ボソッ

 「マヤ〜」 ミサトが睨む

 「あっ ごめんなさい〜」

 「ったく。マギも、2対5で負けているというのに」

 「大丈夫よ。ケルベロス経由でマギ5台にも爆弾を送っているから。時間が来れば落とせるはず」

 「こっちのマギが無事なら再建は出来るわ」

 「太平洋艦隊と日本艦隊が交戦に入ります」 日向

 「アメリカ艦隊は?」

 「動いていません」

 「アメリカ、ロシア、中国、ドイツ、イギリス、フランス、イタリアとも、絶対防衛線の外で沈黙」 青葉

 「そう。完全には足並みが揃っていない、国連軍だけみたいね」

 「戦力を使い潰して、世界中に負担させるわけね」

 「ずるくないですか、それって」 日向

 「良くある話しよ」

 「旧型で日本の新鋭艦を消耗させて、戦況しだいで国軍を一気に出す気か」

 「ゼーレ弱体化で、国粋主義の復活ね」

 「松代のマギが集中して攻撃されています」 青葉

 「どのくらい持つ?」 リツコ

 「この調子だと、あと20分で、防壁がズタズタにされます」

 「あと12分で5台とも落ちるわ。計算より1分早いか。第1回戦は、凌いだわね」

 「次は、物理的に攻撃してくるでしょうね。サイロに動きは?」

 「まだ動きはありません」 青葉

 「本当に? エヴァの輸送で大陸間弾道弾を使うつもりがないのかしら」

 「潜水艦や商船は?」

 「商船は、全てトレースしていますから、エヴァを運んでいるような節はありません」

 「潜水艦は予断を許しませんが」

 「ミサト。ゼーレのエヴァなら海底を歩いてこれるのよ」

 「うっそ〜」

 「可能性の問題ね」

 「じゃ 近くまで来ている可能性もあるの?」

 「リツコ。シミュレーションの時に言ってよ」

 「居住区の問題がなければね。いま気付いたの・・・」

 「いまのところ、対潜用監視網には引っ掛かっていません」 青葉

 「エヴァ12体のほかに、最新鋭のアメリカ潜水艦15隻、ドイツ潜水艦11隻も、計算に入れないと・・・」

 「シミュレーションでは、日本の潜水艦と7隻と同レベルですが・・・・・」

 「数で負けているのは辛いわね」

 「トライデント機13機と、新型巡洋艦10隻で、何とかバランスが取れるはずです」

 「トライデント1機撃墜されました」

 「「「・・・・・」」」

 「国防省から要請があればNERVのトライデント4機を出してもいいわ」

 「どうせ、ATフィールドを張れてないし」

 「シンジ君とレイが初号機に入りました」 日向

 「参謀本部からです!」

 「呉軍管区のメインコンピュータが電磁弾道弾の直撃を受けて破壊されました」

 「こちらで迎撃を補って欲しいそうです」 青葉

 「ちっ! リツコ、大丈夫?」 ミサト

 「・・・処理能力が喰われるか・・・了解して!」

 「青葉君。こっちで呉軍管区の迎撃システムを管制して」

 「了解」

 「シンジ君、レイ。調子はどう?」

 『問題ありません』

 『問題ありません』

 「そう・・・・ゼーレの攻撃が始まったの、敵の主力は、ロンギヌスの槍を持ったエヴァ12体よ」

 『はい』 シンジ、レイ

 「アスカとハルカは、まだ、待機室ね」

 「はい」 日向

 「マヤ。初号機の管制をお願い」

 「了解」

 「初号機で体調を整えられるシンジ君とレイは助かるわね」

 「そうね。渚カヲル君は?」 リツコ

 「公園から動いていません、一人です。ハトにポップコーンをあげています」 日向

 「「「「・・・・」」」」

 「緊張感を無くさせようという心理戦なら成功しているわね」

 「問題は、対人戦の不安ね、シンジ君の投入はできそうにないわ」 リツコ

 「アスカとハルカ組も精神衛生上良くないわ」

 「問題のない戦争なんてないわよ」

 「でも故障を装って、シンジ君への視神経接続を切って、レイ主導にすることは出来るわね」

 「そ、それ行きましょう。いざという時は」

 「もう、いざというときよ」

 「最悪のときは、フィルターをかけて、渚カヲルを画像処理して、ロボットに見せかける」

 「それ、行きましょう」

 「最悪の場合よ。処理速度が、間に合わないかもしれないし」

 「そうね。やはり、計画通り、住民を第3東京市から避難させましょう」

 「呉経由で、新種のウィルスが進入!」

 「保安部の一部に食い込まれました」

 「メルキオール、6パーセントダウン」

 「バルタザール、5パーセントダウン」

 「カスパー、2パーセントダウン」

 「回路を回避します」 青葉

 「ちっ! 呉基地の木馬型ウィルスか・・・やるわね。TC防衛ウィルスを展開!」 リツコ

 「TC防衛ウィルス展開します」 青葉

 「こんどは、富良野基地に電磁弾道砲が集中しています。飽和攻撃です」

 「富良野基地から救援です」 青葉

 「同じ手を・・・TC防衛ウィルスを富良野基地に送り込んで」

 「三分の一秒だけ、干渉して、迎撃」 リツコ

  

 

 緊急避難警報

 第3東京市から人気がなくなり。

 渚カヲルは、一人。公園のベンチで、ハトにポップコーンをやっている。

 都市に残っているのは、火事場泥棒か。余程の酔狂人といえた。

 そして、棚ボタ狙いの第17使徒タブリス。

 「シンジ君と洞木君。大丈夫かな?・・・」 ボソッ

 そこに一人の男が近付いてくる。

 「・・・隣に座っていいかね? 渚カヲル君」

 「どうぞ」

 「俺は、加持リョウジ。日本政府のお使いできた」

 「へぇ なんだろう?」

 「日本政府は、君と友好関係を結びたいそうだ」

 「友好関係?」

 「君は、人類種と親しい関係を結んでいる」

 「君が、このままサードインパクトを凍結するのであれば、戦わないというものだ」

 「友好関係というより、不戦協定だね」

 「日本政府は、君に対し年金の支払いと」

 「人類種に対する貢献が認められるのであれば、報奨金も出す用意があるそうだ」

 「本能に逆らって生きろというのかい?」

 「現在。本能に逆らって生きているように見受けられるがね」

 「好奇心だよ」

 「その好奇心は、どのくらい続くのか興味があるんだ」

 「分からないね」

 「君は、ウソをついて物事を有利に持っていこうという考えはないのか?」

 「必要ないよ」

 「共存の可能性は?」

 「・・・困難だろうね」

 「条件があれば、聞くが」

 「日本政府には、何もないよ。何かを約束するつもりもない」

 その時、使徒上陸の警報がなる。

 「カヲル君は、どうするつもりだ?」

 「何も」

 「高みの見物かね」

 「高みの見物をしているのは、彼らの方だよ」

 カヲルは、ベンチに座ったまま真上を見る。

 12機の巨大な輸送機に向かって電磁弾道砲や重戦闘機40機、トライデント機3機が波状攻撃をかける。

 しかし、輸送機はATフィールドに守られているのか、効果がなく。

 そして、12機の白いエヴァが分離すると同時にATフィールドが消え。

 輸送機12機は破壊される。

 「第3東京市から逃げ出した方が良いよ。加持さん」

 「そのようだ・・・渚カヲル君。政府の提案は確かに伝えた。出来れば検討して欲しい」

 加持は、そう言うと去っていく。

  

  

 発令所

 ロンギヌスの槍12本を持つ12体のエヴァが、第3東京市を囲むように降り立つ。

 「オーソドックスに輸送機で来るとはね」

 「どの道、ATフィールドが展開できるのなら、迎撃不能か」

 ミサトは、苦々しく見詰める。

 「輸送機は、ネットワークから独立したコンピュータだった。みたいね」 リツコ

 「純軍事学的にネットワークから切り離しても、戦力としての価値があるのかしら」 ミサト

 「ウィルスに破壊されていないバックアップがあるのは、強みよ」

 「12体に老人達が乗っていると?」

 「言ったでしょう。可能性はあると」

 「では、老人たちは、神になったという事かしら」

 「なろうとしているのよ。自分達の望むサードインパクトを起こしてね」

 「人は誰しも全知全能の神になりたいと望む・・・」

 「失うものも多いけどね」

 「司令、作戦通りで、いいでしょうか」 ミサト

 「いいだろう」

 「シンジ君、レイ、アスカ、ハルカ。あとはあなた達に任せるわ」

 「「はい」」 シンジ、レイ

 「「はい」」 アスカ、ハルカ

 「では、作戦開始」 ミサト

  

碇ゲンドウ物語 へ (気が向いたらどうぞ)

 

 12体のエヴァは、瞬時に天井都市を破壊するとジオフロントへ侵入。

 カヲルは、こっそりと天井都市の淵に立つといぶかしんだ。

 「・・・リリンは、融合進化を選択するというのかい?」

 「完全な個体から不完全な群れへ」

 「そして、完全な群れに向かうことなく」

 「融合したキメラのような群集になろうというのかい?」

 「僕にはわからないよ」

 カヲルは、軽い嫌悪感をみせる。

 「人類の起こすサードインパクトか」

 「その選択なら、僕は、リリンの敵になるよ。シンジ君、洞木君」

 エヴァ12体は、NERV本部を破壊すると、セントラル・ドグマへと降下して行く

 「我らが神となるとき」 01

 「永遠の生命、永遠の精神」 02

 「人類すべての諸悪が根絶されるとき」 03

 「苦しみと病と貧困、無理解が消滅するとき」 04

 「戦争と飢餓、争いと苦役が止むとき」 05

 「永遠の平和を迎えよう」 06

 「永遠の平穏を迎えよう」 07

 「不死の世界よ」 08

 「人類が求めた理想郷」 09

 「新たな天と地」 10

 「争いのない世界」 11

 「人の間で、葛藤のない世界」 12

 本部が吹き飛ばされると、リリスが剥き出しで現れる。

 次の瞬間、12体のエヴァはリリスを包囲し、12本のロンギヌスの槍をリリスに突き刺した。

 黒いアンチATフィールドの閃光が世界を覆い。

 カヲルは、すぐにATフィールドで身を守る。

 そして、すべての人類が一瞬にして液化していく。

 うぉおおおおおおおお!!!!

 狂喜の咆哮をあげていた12体のエヴァ。

 突然、アンチATフィールドとATフィールドの濁流にもまれた。

 そして、リリスは崩れながら淡いオレンジ色のATフィールドを発し、世界を覆っていく。

 「・・・リリス・・・絶対位相圏が消える?」

 カヲルは、ATフィールドの濁流に煽られながらも平静を保とうとする。

 そして、すべてを理解した。

 初号機と二号機がATフィールドでリリスとエヴァ12体を覆っていた。

 『リリスは、存続のためのエネルギーまで消費させられたわけか』

 『これじゃ・・・フォースインパクトの夢も潰える』

 カヲルは、アンチATフィールドのサードインパクトで液状化した人類がATフィールドを受けて再生していくのに気付く。

 「そういうことか。もうひとつのリリン、無茶なことをする」

  

    

 初号機と二号機は、量産型エヴァ12体の残骸を挟むように立っていた。

 12個のコアが剥き出しのまま、本体から切り離されて転がっている。

 カヲルは、一瞬にして、初号機の足元に立った。

 見上げるカヲルと、見下ろす初号機と二号機。

 踏み潰せば、一瞬で終わるという状況で、カヲルは恐れた風でもない。

 「・・・カヲル君」

 「やあ、シンジ君。やってくれたね。リリスが消えてしまったよ」

 「怒ってる? カヲル君」

 「いや。君たちの勝ちだ。どうやったんだい?」

 「改造したアダムの種子をリリスに埋め込んで」

 「初号機と二号機のATフィールドで、リリスと12体のエヴァを一時的に閉じ込めただけ」

 「なるほど、それでリリスと12体のエヴァをエネルギーに、もう一度インパクトを起こしたわけか・・・」

 「連続インパクトで、エネルギーを失ったリリスは、絶対位相圏を消滅」

 「だけど、一度、融合して、再生した人類種がどうなるか、見ものだな」

 「君たちとも、違う存在になるよ」

 「これから、確かめに行くよ」

 シンジとレイが、初号機を降りて、無造作にカヲルのそばに行くと、

 殺意を込めて見つめるアスカも、あきらめる。

 アスカとハルカも、二号機から降りて、シンジ、レイ、カヲルのそばに近付く。

 「君は、初顔合わせだね」

 「始めまして、渚カヲル君。わたしは、朝霧ハルカ、よろしくね」

 「秘密兵器かい?」

 「ええ。そうよ。カヲル君」

 ハルカが、ニコリ

  

  

 天井都市。

 ジオフロントの基地とセントラルドグマは、完全に破壊され、

 本物の空が見えていた。

 セントラルドグマを走る通路は岸壁の向こうにまで続く。

 ボロボロになって、砕かれた量産型エヴァが転がり。

 5人は、量産型エヴァから転がり落ちたコアの一つにたどり着く。

 「ゼーレは、肉体を失ってもコアだけは、残そうとしたようね」 アスカ

 「この中にゼーレの指導者がいるの?」 シンジ

 「一個当たり数百万人の人柱もね」 ハルカ

 「・・・・・・」 一同

 「欧米は、生皮で絞め殺されるような国が多かった。安楽死用の薬を墓場で売っていた」

 「そして、そこが、コアの培養施設」

 「中で生きているのかな?」

 「生きている可能性はあるわね」

 無機質な球が転がっているように見えて、コアは死んでなかった。

 それだけは、なんとなく、わかる。

 「中に一つの世界があるのか・・・・」

 「リリンは、リリスの試練に対して、二つの方法を選択した。これは、一つの結論だね」

 「でっ リリンの選択は、正しかったの? 渚」 アスカ

 「・・・さあ、分からない。正解なんてないのかもしれない」

 「弱肉強食。強い種族がこの星を相続するのさ」

 「そして、君たちリリンは、その試練に勝ち残った」

 シンジ、レイ、アスカ、ハルカ、カヲルが通路を通って行くと途中で車を見つける。

 「わたしが運転するね」

 と、ハルカが運転席に座ると隣にカヲル。後ろにアスカ、シンジ、レイが乗る。

 「これで、終わったのかな?」 シンジ

 「仮免許の歴史は、終わっただろうね」 カヲル

 「うん」

 「でも良いのかい?」

 「リリスの絶対位相圏の秘密は消えたよ」

 「リリンにとって、大きな損失じゃないのかい」

 「それが大きなことなの?」

 「シンジ君は、裏死海文書を読んでいないのかい」

 「リリスに “人類が完全な群れ” になるための秘密があるかもしれないのに」

 「それに。この銀河に生命の種が送られていたとしたら、どういう進化をするか、分からないのに」

 「カヲル君。戦う方が良かったの?」

 「・・・結果としては、悪くないね。生と死が等価値でも、死にたがっているわけじゃない」

 シンジ、レイ、アスカ、ハルカ、カヲルが扉の前に立つとハルカが暗証番号を打ち込む。

 そして、扉が開くと、倉庫のような空間にNERVのメンバーが揃っていた。

 NERVのメンバーは、カヲルの存在に驚きつつ、

 シンジ、レイ、アスカ、ハルカとの再会を喜んだ。

  

  

 

 

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第47話 『ダブルデート+1』
第48話 『ゼーレ来襲』
第49話 『新しい世界』
登場人物