月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

第50話 『そして、未来へ』

 学校 屋上

 タダシ、マナ

 「霧島は、これからも、碇の護衛をするんだ」

 「当然!」

 「思いが叶いそう?」

 「んん、レイの存在が大きいのよね。それとアスカもね・・・・駄目かな〜」

 「霧島には、賭けないね」

 「レイとヒカリがくっ付くとか、あればな〜」

 「ぶっ ははは」

 「クス♪ ヒカリったら。本当にレイに惹かれているんだもの」

 「確かに、あの笑顔は見たいけどね」

 「まあね。彼女の微笑んだ写真は高値で取引されているから」

 「悔しいのは、シンジ君が、そばにいないと、見れないという事ね」

 「んん・・・」

  

  

 国防省、本部ラウンジ ミサト、リツコ

 3Dで人口増加率と資源消費率、火星と金星のテラフォーミングの様子が映されている。

 人口増加と火星と金星のテラフォーミングが間に合わないことは明らかで、

 シミュレーションの結果は、人類が生き場を失い、軋轢はデットゾーンに変わる。

 地球規模で資産の再分配が何度も行われ、血が流されていく。

 シミュレーションは複雑多岐に渡り、何度も試算されていた。

 「・・・リツコ。なんか、微妙に良くないわね」

 「科学技術は2016年で、産業基盤はズタズタだけど、総人口20億は1927年代よ」

 「資源も、それなりだから、状況は、セカンドインパクト以前より有利ね」

 「ミサトは、鉄鉱石から自動車まで作れる?」

 「無理よ」

 「小麦粉からパンは?」

 「無理よ」

 「産業が大きくなれば、工業は、複雑、精密、高度になる」

 「でも、個人の作業内容は、逆。工程の簡略化が進み、先鋭化、細分化される」

 「セカンドインパクトほどじゃないけど。細分化された産業の大半が破壊されて、ノウハウを失った混乱は大きいわ」

 「産業の再建は、四苦八苦ということね」

 「貧富の格差を広げ、大規模投資で科学技術の開発」

 「大量生産、大量消費じゃ 同じことの繰り返し」

 「違うやり方は?」

 「貧富の格差を減らして質素倹約。少量生産、少量消費の江戸時代生活ね」

 「・・・・」

 「ミサトは、そういう生活、無理でしょ」

 「ぅぅ・・・リツコ。人類の寿命は延びそう?」

 「軌道エレベーターが完成すれば、さらに地球外へ進出できて寿命が伸びる」

 「軌道エレベーターは期待できそうなの?」

 「エヴァ光質ならね」

 「ATフィールドを展開させる技術が完成すれば、強力な宇宙艦隊も編成できる」

 「そんなに早く宇宙に行く必要があるの?」

 「人類が一つの星にしかいない事が世界の分裂につながっている」

 「もう一つ世界を創れば、地球は、まとまりやすくなけど」

 「いまのところ、人口密度は低いし、資源もある」

 「既に精神感応で緩やかな平和になりかけているわ」

 「表面上はね。人口増加速度と地球資源の枯渇速度の関係は深刻よ」

 「引き延ばす手段を考えないと、最悪のシナリオに向かっていく」

 「もう一度、セカンドインパクトを起こすか、資産の再分配で核戦争したくなるわね」

 「じゃ 資源とエネルギー不足で引き篭もるか、外に向かって発展するかの瀬戸際ね」

 「中間はなさそうね」

 「それも、マギの再建しだいか」

 「松代のマギを核に生き残ったコンピューターでネットワークを作れるわ」

 「それがなければ西暦1980年レベルに戻ってしまうところだったわね」

 「カヲル君を使うの?」

 「わたしは、使ってもいいと思う。というより使わないと間に合わないというべきね」

 「政府は、彼を用心しているみたいだけど」

 「純正の使徒だから当然だけど。現段階で彼が暴れたら大変よ」

 「でも、アメリカやドイツが彼を雇いたいなんて言い出したら、それこそ、目も当てられないでしょう」

 「カヲル君が日本にいるとしたら、シンジ君とヒカリのおかげかな・・・」

 「ほかに有利な可能性はないの?」

 「確保したエヴァ技術を運用できれば、いくつか、物理学の法則を無視できる」

 「ねぇ 虚数空間の活用。本当にタイムマシンになるの?」

 「可能性の問題よ」

 「仮に過去に戻れるとしてもATフィールドを消失させなければならないし」

 「一緒に負の世界を流れていくから、100年戻るには100年が必要になる」

 「もう一つ。歴史を変えた瞬間、いまのわたしたちは、消えて。違う世界になっている、かも知れない」

 「それは悲し過ぎるわね」

 「マギに理想的な歴史変換をプログラムさせて、人類が滅ぶときまで凍結したいわね」

 「・・・ミサト。結婚式はいつ? やり直しは利かないわよ」

 「来年の春」

 「ギリギリ。30前に駆け込み?」

 「そうよ。あんたも、胸やお尻が、弛む前に結婚しないと知らないわよ」

 「そういうチャチな薬は、作っていないもの」

 「・・・こっちは使徒戦が終わって干されているのに、リツコは引っ張りだこか」

 「引っ張りだこは、マヤの方よ。彼女、エヴァ技術の民間転用が上手いから、大金持ちよ」

 「社会に必要にされているって重要ね。はぁ〜」

 「わたしは、目標達成と同時に生き甲斐の喪失か」

 「彼も、真実を知ってから爺臭く落ち着いてしまっているし」

 「浮気もしてないんだ」

 「破壊されたゼーレの遺品収拾で忙しいみたいね」

 「リツコは、どうするつもり? 髭親父のこと、まだ・・・・・」

 「・・・もう・・・済んだことよ」

 「碇司令は書き換えられた種子を持ったまま、リリスに取り込まれていった」

 「最後まで不器用だったわね。あの人・・・」

 「シンジ君に知られるのは、時間の問題よ」

 「彼は、旧人類よ。知られるとしても何年も先の話し」

 「でも、あの髭親父。レイと同じようなことを考えていたなんて、流石と言うか、なんと言うか」

 「バウンドインパクトを均一に成功させる事ができたのは、彼の意志のおかげよ」

 「たぶん、いくつかのシナリオの一つだったみたいね」

 碇ゲンドウは、リリスと融合した状態で12本のロンギヌスの槍で串刺しにされながら、

 人類の未来のために意志を放った。

 リツコは、碇ゲンドウの愛人であることを恥じるつもりも、捨てるつもりも無かった。

 「カッコ付け親父ね」

 「置いてけぼりか」

 「一緒に行きたかったの? あの髭と」

 「嫌いになれないわね」

 「母娘揃って馬鹿ね」

 「ゼーレを退けた彼の選択が正しかったと、証明して見せるわ。人類の未来で・・・」

 「正確には、綾波レイのでしょう。オリジナルの人類補完計画は碇ユイ」

 「本当。バカな母娘ね」

 「リツコも頭が良いのに不器用な生き方ね」

 「そうね」

  

  

 桜舞い散る春

 シンジ、レイ、アスカ、ハルカ、カヲル、

 ヒカリ、ケンスケ、チアキ、マナ、タダシは、中学3年に昇級する。

 

 

 

 日本政府と国防省は、エヴァ関連施設防衛機構をNERVのまま継承させていた。

 箱根山をNERVの基地として再建し。中核のマギを再生。

 エヴァシステムの再構築も成功させていた。

 この頃になってようやく、ヒカリ、タダシ、チアキのハーモニックすテストが成果を上げ、

 アルファ・(ヒカリ)。

 ベータ・(タダシ)。

 ガンマー・(ケンスケ)。

 デルタ・(チアキ)ともATフィールドの発生に成功

 シンジとレイは、時折、エヴァ光質の厚みを増やすためトライデント4機に搭乗し、

 日本上空を飛んでいた。

  

 

 そして・・・

 戦後、ローテーションで余裕ができたのか、

 試しに霧島マナを4号(ニュートラル)機に乗せると500分の1の確率で同調。

 ハーモニックス率24パーセント、

 シンクロ率33パーセントに達し、

 NERV職員とエヴァチームを絶句させてしまう。

 スケジュールが一杯で、

 目の前に貴重なパイロットが転がっていたのに誰も気付かなかったらしい。

 そして、霧島マナは、正式に4号機のパイロットに任命。

 リツコ、伊吹、ハルカ、レイは、マギをさらに進化させ50倍の性能を持つトリニティ開発を進めていく。

 人間の欲望、動機、自己矛盾も、認知するという。

 いやらしさ満点の人工知能を持つ新機軸のコンピューターが作られようとしていた。

  

  

 加持とミサトの結婚式と披露宴。

 加持の職業柄、人数が制限されて参席者は50人程度。

 子供で呼ばれたのは、既に正体がばれたシンジ、レイ、アスカ、ハルカ、マナだけ。

 精神感応時代で、加持の才能が、どの程度発揮されるか、怪しくもあった。

  

  

 発令所

 霧島マナは、4号機に搭乗し建設作業をしていた。

 ミサト、リツコ

 「・・・どう? リツコ」

 「やはり、霧島マナより、渚カヲルのシンクロ率が上ね」

 「渚カヲルにエヴァは必要ないわ。自前のATフィールドでやれるから」

 「それにトライデント機をATフィールドで覆えば、それだけ宇宙開発が早くなる」

 「それは・・・そうか」

 「これからは、トライデント4機が主軸になっていくわね」

 「ふっ でも霧島マナが500分の1で4号機にシンクロできるなんて・・・間抜けだわ」

 「冗談のネタにはなっていたけど、調べる余裕なんて、なかったもの」

 「戦争が終わって気付いてもね。今は、発電か、土木建設作業くらいしかないけど」

 「渚カヲルの方が役に立っているの?」

 「ええ。コア切り替え無しでハーモニックス率96パーセント、シンクロ率98パーセント」

 「渚カヲル君のATフィールドは、シンジ君とレイのペアと同じ規模でデルタ機をエヴァ被膜で覆っている」

 「渚カヲル君一人で、シンジ君とレイを合わせたのと、互角?」

 「さすが使徒ね。例の計画も上手く行くかもしれないわね」

 「コア探し?」

 「虚数空間に第11使徒イロウル、第13使徒バルディエル、第16使徒アルミサエルのコアがあるはず」

 「入手したいわね」

 「ドイツが所有している第12使徒レリエルのコアは確保した?」

 「加持君が位置を確認して・・・オリジナルと予備を全て確保できたわ・・・後は持ってくるだけ」

 「エヴァ技術が集中するわね。戦力バランスは日本が最強か」

 「でも精神感応後に国家間戦争は、起こっていない。それどころじゃないというのが本音ね」

 「精神感応のおかげで、実力主義、能力主義、権威主義も行き詰ってぼろぼろ・・・」

 「既存の帝王学も組織論もガタガタ・・・好まれるのは良心家・・・」

 「戦争は、ともかく。第15使徒アラエルは、必ず確保したいわね」

 「バウンドインパクトでオゾン層も回復しているから南半球側への投資も増加している」

 「東南アジア・豪州の開発も急がせているから、予算上は厳しいわね」

 「はぁ 使徒来襲がなくなれば、純粋に経済波及効果の高い方に流れていくのね」

 「アスカの自己資金は、ほとんどが南半球開発機構関連企業の株に流れているし」

 「マヤも、アスカと協調投資しているみたいね」

 「マヤが特許と実用新案を認めている企業で、アスカも補足した特許をとっている」

 「シンジ君も、お金の使い方がわからないみたいで、アスカに投資しているみたい」

 「ええっ〜 アスカ、そんなことやっているの? いつの間に・・・・」

 「二人ともかなり目聡いから、お金持ちになりそうね」

 「最近の子供って怖い」

 「あなたが自堕落なのよ。少しは見習いなさい」

 「再建中なんだからビジネスチャンスが転がっているかもしれないのに」

 「はあ・・・・・」

 「今後は、カヲル君と、ヒカリでトライデントに乗ってもらおうかしら」

 「問題ありよ。それ。ヒカリは、レイと乗りたがっているみたいだけど」

 「ヒカリもしょうがないわね。あの子」

 「あの4人組は、レイとカヲル君以外は上手く行っているわね」

 「でも調べてみたいわね。カヲル君とレイのダブルエントリー」

 「止めた方が良いわね・・・子供たちの反応が怖すぎる」

 「子供を戦争に狩り出せても、得体の知れないものと一緒にするのはいやという事ね」

 「当然ね・・・・実際のところ、どこまで進んでいるのかしら子供達」

 「シンジ君とレイは婚約だけ、肉体関係はないようです」

 「カヲル君とヒカリは、親密になってキスまで・・・」

 「ほかは、仲良しというところですね」 青葉

 「へぇ〜 カヲル君とヒカリ。キスしたんだ。映像ある」 ミサト。ニタ〜

 「コンピュータ処理すればなんとか」

 映像が流れる。

 「隠れてやったんだ」 ミサト、ニマ〜

 「ミサト。人のことより。そっちこそ、新婚生活はどうなの?」

 「まあ、コソコソと後ろめたくないと言うのが良いけどね」

 「ちゃんと掃除している?」

 「うぅ・・・・」

 「離婚は間近ね」

 リツコ呆れ

   

   

 学校の昼休み

 シンジ、レイ、タダシ、ケンスケ、チアキ

           VS

      カヲル、マナ、アスカ、ヒカリ、ハルカ、

 休み時間、二組に分かれてのバスケは、恒例になっていた。

 シンジとレイ、アスカとハルカのコンビネーションは、神業に近かった。

 心身感応は、同時性、同調性、瞬間的な動作で新人類の精神感応に勝っていた。

 マナは圧倒的な機動力と判断力を見せ。

 カヲルは運動性と跳躍力に勝って群を抜いている。

 ケンスケ、タダシ、ヒカリも平均的な中学生の動きを超えて速く。

 ハルカは、標準的な中学生レベルながら、有利な位置に移動することで体力を温存。

 精確なパスで、戦力不足を補う。

 昼食後、アスカ帝国のバスケは、多くの生徒を興奮させ、楽しませた。

 「マナ、どう思う・・・あいつ」

 アスカは、バスケが終わったあと聞いた。

 「体力と運動神経は、最高にいいわね・・・それだけ・・・」

 アスカとマナは、不適に微笑む。

 渚カヲルは、格闘術でド素人と評価されてしまう。

 学校は、新人類化によって雰囲気がガラリと変わっていく。

 見掛けだけでなく、心根の差も評価され、学園人気番付も大きく変化していた。

 番外のケンスケは、アスカ帝国の一員となって評価を上げ、

 バスケでも評価され、人気番付下位に顔を出し、降格落ちしたタダシと並ぶ。

 そして、旧人類のシンジ、レイ、アスカ、ハルカの5人も上位ランキング入り。

 カヲルも男子の人気ランキングでトップになっていた。

    

    

 小春日和の公園

 ため息のヒカリと、呆れるアスカが季節外れのアイスクリームを食べていた。

 「ヒカリの趣味にとやかく言うつもりはないけどね・・・」

 「自分でも分かっているんだけど・・・綾波さんの微笑んでいるのを見たくて、つい・・・」

 「あはは」

 アスカ乾いた笑い

 「・・・レズじゃないと思うけど」

 「あれ、前はレズじゃないって言い切っていたのに」

 「最近、自信がない・・・」

 ヒカリ、どんより

 「まあ、確かにあの笑顔には惹かれるものがあるけどね」

 「アスカも、そう思うでしょう。ね、ね」

 「彼氏の笑顔で、我慢しなさい」

 「・・・・・」

 ヒカリ、どよ〜ん

 「上手くいってないの? あいつと」

 「上手くいってるから。心苦しくて・・・・・」

 「あいつと上手くいっていることも凄いけど・・・・どこが良いんだか」

 「や、やさしいから」

 うげっ!

 「ヒカリ。相変わらず悪趣味」

 「渚君は、か、変わっているけど・・・」

 「でも、良いところもあるし・・・・かわいそうなところもあるし・・・」

 「ふ〜ん。キスしたの?」

 ヒカリ、頷く

 うげっ!

 「もう〜 アスカ。渚君だって、良いところあるんだから。ほら、学園の人気番付でもトップだし」

 「あれ、ヒカリは、そういうの気にしていないと思ったけど」

 「うん。あれは、やめて欲しい」

 「そういえば、ヒカリも上位に入ってきたじゃない」

 「ちょっとアブノーマルだけど、気持ちの良さが評価されているみたいね」

 「アブノーマル」

 ヒカリ、塞ぎ込む。

 「相手の心が見えないのは不安?」

 「そ、そんなことない。見えない方が楽な気もする」

 「わたしとも?」

 「んん、精神感応よりダブルエントリーが上かな」

 「心身感応の方が上か・・・」

    

    

 訓練場

 シンジとレイの組打ちは、芸術的といえるほど、華麗だった。

 互いの突きや蹴りの多くは、瞬時に分かるため技の組み立てが難しい。

 そうなると格闘センスと経験。総合力でレイが競り勝ってしまう。

 「はあ〜 負け〜」

 「碇君、鈍っている」

 「ほとんど一緒にいるのに、綾波は全然、鈍ってないよ」

 「何年も、やってきたことだから」

 「これからは、ちゃんと訓練もするよ」

 「でも、午後からベータに乗らないと」

 「そうだった」

 「その後は、初号機で休んで、夜は、4号機で新城さんと乗るのね」

 「で、でも、あれは、新城さんのATフィールドが引き上がれば、後々、楽になるって」

 「そう」 レイ寂しげ

 「僕は、綾波だけだから」

 レイ微笑む。

 レイは、その言葉を聞きたいばかりに少し拗ねた真似をする。

 シンジもそれがわかるのか、慰めながら髪を撫でるのが日課になっていた。

  

  

 教室 

 ケンスケとタダシ

 「それ、違う」

 タダシがケンスケの小テストの一つを指差した。

 「はぁ〜 新人類も勉強が必要なのか・・・ゼーレの方が良かったかも」

 「ゼーレのコアは、12個ともLCLにつけて、保存しているらしいから、入れば?」

 「・・・やめとく」

 「精神感応が優れていても、ベクトルがわかるだけで、数値や細かい表現になると分からないだろう」

 「そいつの解答があっているのか間違っているのかも分からない」

 「相手が教えまいとすれば、細かいことは分かりにくいし」

 「誰がカンニングしようとしても、すぐ疑われるから。結局、自分でやるしかないんだ」

 「そういえば、学校も先生が変わってしまったからな」

 「先生が変わったというより、本性が露わになったというべきだね」

 「それに相田。先生のせいに出来るほど、先生に依存していなかっただろう」

 「人間不信には、なったよ」

 「悪かったな」

 「ははは、そんなに酷いわけじゃないよ。久坂君」

 「はぁ〜」

 「平和だね〜」 ケンスケ

 「いいから勉強しろよ。国防省の偉い人も “馬鹿は、困る” と言ってただろう」

 「戦争でも、するのかな」

 「ガンマーを落とされたくないからだろう」

 「操縦は、パイロットが別にいるだろう」

 「パイロットも、して欲しいんだよ」

 「おれは、零号機のハーモニックステストも、やっているから、遅れているんだよ」

 「時間は同じだろう。時間は・・・・」

 「はぁ〜 朝霧さ〜ん」

 「あれ、新城じゃなかったのか」

 「一番が朝霧。二番が新城」

 「誰を好きになってもおまえの勝手だ・・・・だけど馬鹿を好きになるやつは少ないぞ」

 「うぅぅ・・・・・・・」

 「ったく! 新城に頼まれてやっているんだからな。少しは親身になれよ」

 「なあ、明日は、入間で新型ミサイルの公開実験をやるんだってさ」

 「予定が入ってて、駄目だろう」

 「3年になると勉強ばかりだ。おまえはいいよ」

 「みんな一緒にコンフォート17に住んでいるんだから」

 「そうでもないさ。家族がいると、家族でいる場合が多いし」

 「碇は綾波と、渚と洞木だろう。惣流と霧島がペアになることが多い」

 「妹のユウキと洞木の妹のノゾミちゃんも仲がいいな」

 「久坂は、一人が多いのか?」

 「悪かったな」

 「そういえば、マヤさんもコンフォート17に引っ越すんじゃないのか?」

 「聞いてないな」

 「情報オンチ」

 「どこから情報を仕入れているんだ」

 「たしか、芦ノ湖の湖水がジオフロントに流れ込んだせいで」

 「地盤が緩んでマヤさんのアパートを傾けているらしいんだ」

 「良いなあ。花があって」

 「ケンスケ。節操なさ過ぎ」

 「おまえこそ、惣流や霧島とは、上手く行かないのか?」

 「訓練場で、コテンパンにやられているのに気の聞いたセリフが言えるか。みっともない」

 「ははは、確かに」

 「それに二人とも碇の方を見ているようだ」

 「んん、やはり、惣流もか」

 「諦められないみたいだな。思いがますます強くなっている気がする」

 「なるほど、それを誤魔化すために株投資か」

 「って、勉強しろよ」

 「わ、分かったって」

  

  

 NERV発令所

 着々と新NERV 建設が続いていた。

 「・・・ミサト。新NERVは、どう?」

 「悪くないわね。することがないのが辛いけど」

 「予算が厳しいから器だけ。なにも出来ないわよ」

 「エヴァ関連だけは、何とか体面を保っているだけね」

 「やっぱり」

 「それで、エヴァ初号機、4号機で発電事業なわけね」

 「また電力不足?」

 「基幹産業が立ち直っていないし。メタンハイドレートの採掘も遅れ気味だから」

 「はあ〜 使徒来襲がなくなったと思ったら、国際競争に明け暮れることになるのね」

 「予算を取るため、ロンギヌスの槍の回収と第15使徒確保があるけど」

 「予算先行か」

 「予算がないと何も出来ないもの」

 「わかるんだけどね」

 「子供達は、元気にしている?」

 「そうね〜 時々、訪問しているけど。しっかりしていること」

 「あなたが、だらしないのよ」

 「子供達のところで、ご飯を食べさせてもらっているなんて、嘆かわしい」

 「ち、違うわよ。コ、コミュニケーションよ」

 「だって、子供達を誘っても来ないんだもの」

 「ペンペンだって家出して、ヒカリの家に行っちゃうし」

 「ビールばかり飲んで、掃除しないからよ」

 「まぁ マヤが行くから、子供たちの私生活は、マヤにお願いするのが一番ね」

 「うぅぅ ハルカは、引っ越さないの?」

 「わたしの家は、被害なかったもの」

 「そうじゃなくて、アスカとハルカの関係でしょう」

 「距離を置くみたいね」

 「お互いに和解しているみたいだけど、アスカの心の傷もかなりのものだから」

 「それに記憶はともかく、実体は違うもの・・・まず、ママとは、呼べない」

  

  

 アルファ機 カヲル、ヒカリ

 カヲルとヒカリのダブルエントリーは、注目を浴びる。

 使徒と人間の初のダブルエントリー。

 伊吹マヤの管制が正常に進行していく。

 カヲル主導でハーモニックス率78パーセント、

 シンクロ率80パーセント、重複率0.008を引き出した。

 リツコが、含み笑いしながら注視し、

 ミサトは、ため息。

 「ヒカリ。大丈夫なの?」 ミサト

 『ええ・・・・』 ヒカリ。ポ〜ッ

 「な、なんともない?」

 『ええ・・・・』 ヒカリ。ポ〜ッ

 「いっちゃっているわね」 リツコ。ぼそっ

 「渚君は、どうなの?」

 「最高の気分だね」

 「それは、よござんしたね」

 NERVスタッフは、若い娘を生贄に差し出したような気分になる。

 「カヲル君が、単独で乗るよりは、落ちるわね」 ミサト

 「だけど、ヒカリのハーモニックス率、シンクロ率が、これほど飛び上がるなんて」

 「重複率は、シンジ君とレイと同じ最高レベルね」

 「やはり、これ以上は、個体の個性を失いかねないという事か・・・」 リツコ

 「マヤ。ATフィールドは?」

 「展開していますが。カヲル君が単独で乗るときより70パーセント落ちています」

 「取り合えず。荷粒子砲を試射してもらうわ」

 「ATフィールド粒子を含んだ荷粒子砲の威力を測定しないと・・・」

 「渚君。慣性誘導に従って目標を撃って」

 「はい」

 渚カヲルが発射した荷粒子砲は、海上に水壁を作って割り、水平線上の廃船を消し飛ばし、

 そのまま、宇宙空間へと消えていく。

 トライデント機の荷粒子砲の50倍の威力に近く、

 ラミエルを貫通した陽電子砲の威力に近い。

 渚カヲルは、涼しげな表情で微笑み、

 NERV職員は、第17使徒タブリスの戦闘能力の高さに絶句する。

 「・・・マヤ。カヲルと。シンジ君とレイの組み合わせとの相違は?」 ミサト

 「ATフィールド発生に関する心理展開が恐怖心によるものではなく」

 「純粋な生存本能に近いようです」

 「一人乗りのときと同じか・・・さすが使徒。オリジナルは違う」

 映像で、いってるヒカリの表情が映され。

 カヲルも薄い笑みを見せている。

 スタッフは、娘を怪物に差し出した気分なのか顔を曇らせる。

 『・・・み、見なかったことにしよう』 不特定大多数。

 「生存本能ならシンジ君より直接的ね」

 「生存本能がATフィールドを展開させるエンジンのようなものか」

 「シンジ君より有利なの?」

 「より、直接的で本質に近いという事ね」

 「ヒカリが、それを習得できたら、飛躍的にレベルが上がると思うけど・・・」

 「リツコ。本当にヒカリは、大丈夫なの?」

 「計測している範囲内は、大丈夫みたいね。シンジ君とレイのパターンと似ている」

 「これほどトライデント機を引き揚げられるなんて、渚カヲルが敵にならなくて良かったわね」

 「だといいけどね」

 「彼の目的は喪失したもの、ヒカリが慰めれば有効だと思うけど」

 「はぁ〜」

 その後、ヒカリはカヲルにベッタリ状態となっていく。

  

  

 シンジとレイが腕を組み、カヲルとヒカリが腕を組んで歩く。

 あまりのアンバランスに多くの人間が振り返る。

 その後をアスカ、ハルカ、マナ、チアキ、ケンスケ、タダシの集団がついていくと。

 目だってしょうがないほどの集団になる。

 「ヒカリもついに・・・・・・」

 アスカ、嘆かわしげに呟く

 「でも、なんか幸せそうじゃない」 マナ

 「どこが良いんだか」

 「二人っきりの世界ね」 ハルカ

 「うっ シンジ君とレイは、駄目」 マナ

 「羨ましいな〜」 チアキ

 「次は誰がカップルになれるかしらね」 ハルカ

 「わたし〜」

 チアキが手を挙げる

 「へぇ〜 チアキ。誰か、心当たりでも居るの?」 マナ

 「いないけど勢いよ。勢い」

 「勢いだけじゃね〜」

 「でもさ、マナって、自分より弱い男と付き合えるの?」

 「な、なに言っているの。シンジ君となら大丈夫よ」

 「ふ〜ん。シンジ君のほかは?」

 「・・・・」 マナ

 「人間離れした強さっていうのも考え物ね〜」

 「に、人間離れなんかしてないでしょう」

 「そうかな、アスカと綾波さんは、動きが、なんとなく分かるけど」

 「マナの場合、視界から消えるほど動きが速いから、普通の男の子なんか物足りないんじゃない」

 「ミサトさんが捻り上げられて、落とされるところなんて、めったに見られないもの」

 「マナ、あんた本当は、改造されているんじゃないの?」 アスカ

 「改造されてなんかいないって」

 「標準的な女の子より、筋肉質が多いみたいね。泳ぎは苦手でしょう」

 「少し苦手かな」

 「でも、マナは可愛いし、性格も良いし」

 「出ているところは出て、引っ込んでいるところも見事に引っ込んでいる」

 「とても、魅力的よ。男が言い寄ってくるから困るでしょう」 ハルカ

 「・・・な、なんか1万メートル上空から見下ろされているような気分だけど・・・」

 「まあ、言い寄ってくる男には困らないわね」

 「そういえば、マナは、アスカと綾波さんを抜いて学園人気番付1位ね」 チアキ

 「やっぱり、新人類は強いわね」 アスカ

 「でも、2位ハルカ。3位アスカ。4位綾波さんで旧人類が占めているじゃない」

 「ハルカに負けるなんて」 アスカ

 「んん、もう少し、体を鍛えれば、1位もいけるかも。アスカも、棘が無ければ、1位なんだけどな」

 「別に・・どうでも良いわよ・・・そんなの」

 「ハルカは、鍛えがいがあるわね」 マナ

 「二人とも厳しすぎない。使徒はもう来ないんだから。ゆっくり、やろうよ」

 「ダラダラやっても駄目よ。チアキなんか、物凄く強くなっているでしょう」

 「オスッ! 並の男なら勝てるわ」

 「高校になったら、厳しいと思うけど」 ハルカ

 「んん・・・やっぱり、か弱い女の子路線で行くか」 チアキ

 「あら、わたしも、か弱い女の子路線を捨てていないけど」 マナ

 「マナのバスケを見てそう思う人間はいないわよ」

 「だいたい頭ひとつ低いあなたが、何で、わたしと同じ高さまで届くわけ」

 「ちょっと、健康的なところが、良いんだって。ムフッ♪」

 「本当は、暴力女なのに」

 「ほほほ、新人類になっても気が付かれていないということは、暴力女じゃないという事ね」

 「んん・・・精神感応に壁をつくれるなんて。信じられないやつ」

 「コツがあるのよ。予備動作抜きで動く訓練をしないとね」

 「それが出来れば、視界から消えるように見えるの」

 「精神感応も、その応用で誤魔化せるの」

 「・・・全然、わからん。全然、わからん」

 「アスカちゃんは、もう少しね」 マナ

 「ふんっ!」

 「でも、二組とも、どこまで・・・」

 ハルカの言葉にムッとするマナとアスカ

 「シンジとレイのところは、肉体関係を超えていないみたいだけど、カヲル君とヒカリはどうかしら」

 「・・・・・」 アスカ

 「・・・・・」 マナ

 「んんん・・・やっているかも」

 「ちょっと・・・微妙ね」

  

  

 洞木ノゾミ、久坂ユウキ。

 そして、もう一人、鈴原ミドリ。

 三人は、第壱中1年に入学。

 シンジは、霧島マナと新入生に入学案内を配布していた。

 シンジは、入学案内を渡そうとした時。正面の鈴原ミドリに気付いて真っ青になる。

 「・・・・」

 「シンジお兄ちゃん。お兄ちゃんのこと。ありがとう」

 「・・・ミ、ミドリちゃん」

 「ほら、見て、バウンドインパクトで簡単に直っちゃった」

 鈴原ミドリが手を広げる

 「ぼ、僕は・・・」

 「わかってる・・・お兄ちゃんのことで、迷惑かけてごめんね」

 鈴原ミドリが微笑んだ。

 「ぼ、僕が・・・」

 唐突にミドリがシンジの鼻を摘んだ。

 「女々しいよ。シンジお兄ちゃん。もっと強くならないと。お兄ちゃんが、浮かばれないよ」

 鈴原ミドリは、微笑むと、入学案内を貰って去っていく。

 「・・・・・・」

 なぜか、警戒する霧島マナ。

  

 

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第49話 『新しい世界』
第50話 『そして、未来へ』
短編 一人暮らし 『赤木リツコ物語』
第51話 『コア世界』
登場人物