月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

 

第53話 『衛星軌道へ』

 2016年 7月 

 長野 松代第2支部

 リニアとレールガンを組み合わせたトンネルが深々度地下層から日本アルプス山脈を刳り貫き、

 南東方向の中腹に射出口を開けていた。

 入り口に少年と少女が立っている。

 「ここからトライデントを打ち出すんだ」 ヒカリ

 「別にいらないのに」 カヲル

 「アルファ機は、そうだけど・・・・」

 「アラエルか」

 カヲル。南方上空に浮かぶ、使徒の死骸を見詰めた。

 「お友達なの?」

 「いや、遠い親戚だよ」 カヲルは、感慨なし。

 「そう・・・わたし達にとっても、遠い親戚なのね」

 日本アルプス上空をベータ(タダシ)。ガンマー(ケンスケ)。デルタ(チアキ)が慣熟飛行をしている。

 「・・・綺麗で良いところね。松代」

 「そうだね」

  

  

 松代の管制室

 ミサト、リツコ

 ベータ(タダシ)。

 ガンマー(ケンスケ)。

 デルタ(チアキ)のデーターが3Dで流れる。

 「・・・悪くは、なさそうね」

 リツコが表を見ながら呟く

 「アラエルの接収か、妨害がなければ良いけど」

 「いまのところ、そういう動きは、なさそうだけど」

 「先週、第3東京市で起きた爆発事故はスパイ事件よ」

 「取られたと言っても、たいした技術じゃないわ」

 「そういう問題?」

 「いまのトライデントなら、例え電磁弾道砲で狙われても弾くことが出来るわ」

 「N2爆弾でさえ、直撃を外せば、助かる」

 「ったく。こんなに時間がかかるとは思わなかったわよ」

 「しょうがないわよ。予算が減らされているんだから」

 「うぅぅ 貧乏は嫌よね」

 「子供たちの方が生活力あるんじゃない。シンジ君、レイ、アスカ、ハルカも、すごい資産家よ」

 「うぅぅ 技術革新や株で成果を上げているアスカ、レイ、ハルカは、ともかく」

 「お金を預けているだけのシンジ君まで、お金持ちなんて。理不尽だわ」

 「それが自由資本主義社会よ。ミサトも、アスカにお金を預けてみたら」

 「・・・・・」

  

  

 翌日

 弾道トンネルから先行の氷弾が打ち上げられて、空気抵抗を弱めながら蒸発していく。

 アルファ(カヲル・ヒカリ)機。

 ベータ(アスカ・ハルカ)機。

 ガンマー(ケンスケ・チアキ)機。

 デルタ(シンジ・レイ)機。

 4機のトライデント機が次々と射出、打ち上げられ衛星軌道を回りながら上昇。

 夜になると地表の明かりの強さで国の豊かさがわかる。

 日本。アメリカの西海岸と東海岸。ドイツなどが明るく。

 それ以外の地域は、まだらで、南半球への移民状況も地表の光の度合いでわかる。

 ニューギニア島のワイゲオ島の北岸の沖合いに軌道エレベータが造られようとしていた。

 材質をエヴァ光質か。カーボンナノチューブか、

 という議論は、性能差でエヴァ光質に決まる。

  

  

 静止軌道に到達。

 「・・宇宙だ・・・無重力だと軽いこと」 ケンスケが感動

 「綾波。地球が綺麗だね」

 「そうね。碇君」

 鳥に似たアラエルが次第に大きくなっていく。

 「凄いわね。ほとんど、無傷じゃない。本当に死んでるの?」 アスカ

 「ええ、死んでいるはず。ロンギヌスの槍が、種子だけを射抜いたみたいね」 ハルカ

 「全機。聞こえる?」

 「ステーションブロックを切り離して、アラエルに固定させるわよ」

 アスカが指揮を執っていた。

 トライデント4機が、ステーションブロックを切り離し、アラエルに固定させていく。

 その後、松代の弾道トンネルから弾道カプセルが打ち上げられ

 トライデント機は、次々にカプセルを捕まえてアラエルに固定し、

 結合しながら大型宇宙ステーションに組み立てていく。

 これらのステーションの外板や内装の多くの材質は、基本的にエヴァ光質を使用していた。

 「・・・どう? ハルカ。アラエルとのシンクロ率は?」

 アダム型ニュートラル型コアがスペクトルを変調させながらアラエルのコアと接続していく。

 「まだ。5パーセント。ステーションの結合と神経接続が完了するまで48時間は、必要ね」

 『アスカ。そっちは大丈夫?』 ミサト

 「ええ、大丈夫よ。いまのところ、予定通りだから」

 『とりあえず。シンジ君とレイの二人でステーションのシンクロをやってね』

 「これだけ大きなステーションをATフィールドで覆えるかしら」

 『計算上はね。ほとんどの場合。デブリ対策だから程度の低いATフィールドでも十分よ』

 「わたしも、手伝いに行くから。あとは、ハルカに頼むわ」

 「ええ」

  

  

 日本の第15使徒アラエルの接収は、全世界的な大事件として、波及していく。

 静止軌道上に宇宙要塞を保有する国家は、史上初であり、前代未聞だった。

 アラエルを核にしたドーナツ状の宇宙ステーションが回転すると人工重力が作られる。

 アスカが指揮所に入ってくる。

 「どう、ハルカ。アラエルは?」

 「やはり、スペクトルが違うから、手間取るわね」

 「使徒の個性の違いね」

 「ええ・・・・渚君は?」

 「普段着で宇宙遊泳よ」

 コントロールルームの窓の外。

 半袖にズボン。

 スニーカーを履いたカヲルが涼しげに漂っている。

 「ったくぅ いくら日本が夏になるって、いってもね・・・・ヒカリが卒倒するし」

 「随分、少ないATフィールドね。宇宙空間は、あの程度でも十分ということか」

 「シンジとレイは、どうなの?」

 「ステーション全体をATフィールドで覆ったわ」

 「さすがにデタラメに強いATフィールドね。じゃ 糸を降ろしても良いのね」

 「ええ・・・でも。やはり懸念していた通り、ATフィールドの覆う範囲の大きさで反応速度が遅れているわね」

 「問題ありなの?」

 「大型宇宙船は、反応速度が遅くて、調整しても、おのずと限界があるということね」

 「小型宇宙船が機動性が良い」

 「そういうこと」

 「アラエルを第3NERV基地に・・・か」

 「ロンギヌスの槍を使えば、アラエルの加工は簡単だから。十分よ」

 「オリジナルのロンギヌスの槍は、いつ頃、取りに行くのかしら」

 「アメリカとドイツに負けない程度の予算で・・・」

 「貧乏くさいわね。相変わらず」

 「おかげで、日本経済は、少しだけ明るいわね」

 「あとは、アダム型エヴァ光質とアラエル型光質のスペクトル融合の調整ね」

 ハルカがキーボードを叩いて調整していく。

 「そうね」

 「アスカ・・・エヴァ技術の規制が一部解除されそうよ」

 「産業機械レベルでしょう。準備は、しているもの」

 「抵抗勢力が、随分、がんばっていたけど。限界みたいね」

 「わけのわからないものを産業基盤にしたくないって?」

 「わからない事もないけど。使わないと負けるものね」

 「エヴァ株に資産誘導しないとね」

 「少し収入減になるわね」

 「シンジ君の資産。随分増やしてあげたんじゃない」

 「シンジの資本のおかげで、随分、儲けられたもの」

 「相変わらず。資産運用をアスカに任せているんだ」

 「あのバカ。無頓着だから。あの収入の大きさで消費が人並み以下」

 「それで、投資をめんどくさがるのは、国家的犯罪よ」

 「あはは、父親は、自分でやっていたみたいだけど。シンジ君は、人任せか」

 「暇なくせにレイとも、いちゃついてないみたいだし。本当に高校を卒業するまで待つつもりね」

 「・・・・・・」 アスカ

 「ふっ」

  

 衛星側の軌道エレベーターからエヴァ光質の糸が降ろされていく。

 そして、地表からそびえ立つ塔と連結される。

 あとは、糸紡ぎの要領。

 エヴァ光質の糸が紡ぎ上げられて大きな物になっていく。

 エヴァ光質の糸の輪を地表と静止軌道上の間で回転させるだけの簡単なものだ。

 アラエルの初期運営がチルドレンの手によってなされると世代交代を予感させる。

 アラエルのコアと双方向回線が開かれ、データのやり取りが始まる。

 「ハルカ・・・いけそう?」

 「・・・ええ、時間は、かかりそうだけど。大丈夫よ」

 種子の死んだコアは、初期化されたコンピュータのようなものだった。

 スペクトル調整が進めば、双方向で通信が出来て、

 アラエルを部分的に機能させることも出来た。

  

 アラエルのラウンジ

 シンジ、レイ、ケンスケ、チアキ、ヒカリは、宇宙を眺めながら、ゆったりとくつろいでいた。

 カヲルが普段着で気持ち良さそうに宇宙に漂う。

 「・・・カヲル君。気持ち良さそうだね」

 シンジが羨ましげに呟く。

 「なんか、羨ましいな」 チアキも同意

 「いいよな〜」 ケンスケも激しく同意

 「相田。ガラス球に入って、宇宙を漂う?」

 「んんん・・・・それは、少し違うような気がするな」

 カヲルが窓に触って、ATフィールドを中和。

 ラウンジ内に現れる。

 瞬間移動が出来るのは、便利だ。

 「特に異常は、ないね」

 「コーヒーを持ってくるわ。カヲル君」 ヒカリが立ち上がる。

 「ありがとう。ヒカリ」

 「あれ、仕事していたんだ。遊んでいると思ってた」 チアキ

 「ふっ リリン流だよ」

 「それは、かなり問題かも」 ケンスケが苦笑いする。

 「清濁あるものね」 チアキ

 「素晴らしいリリンの文化だよ。好意に値するね」

 「嫌味と受け取って良いものか、どうか」 ケンスケ

 「十分に嫌味に聞こえるわね」 チアキ

 「地球のみんなは、元気にしているかな」 ケンスケ、少しホームシック

 「帰ったら、ようやく。訓練生からパイロット公認ね」 チアキ

 「そうそう。これで、ようやく。シンジたちと並んだぞ」

 「でも、みんな、夏休みで知らないことになっているけど」 シンジが微笑む。

 精神感応世界でも形式的な守秘義務が残っていた。

 「うぅぅぅ・・・・」

 「夏休みの工作にしては、大きすぎるわね」

 ヒカリがコーヒーを持ってきて並べる。

 「夏休みの旅行が静止軌道は、悪くないけど」

 「青い空、白い雲。コバルトブルーの海が懐かしい」

 「相田の考えているのは、砂浜で水着を着た転校生でしょう」

 「ははは」

 「あの転校生。嫌がってたんじゃないの」

 「ははは」

  

  

 地表の発令所でアラエルの作業を見守る。マナとタダシ

 「良いな・・・・宇宙」 マナ

 「俺も外れ組かよ」 タダシ

 「留守を守れなんだから、あなたたちに期待してのことよ」 ミサト

 マナとタダシはムッとする

  

  

 松代

 赤木研究所

 リツコ、マヤ

 「・・・やはり、レリエルの種子の核を投与されていた場合・・・」

 「サードインパクトとバウンドインパクトの再構成で人間の使徒化も、ありうるということね」

 「計算上は、そうなりますね」

 「ケルベロスは、完全に破壊してしまったし」

 「情報不足で何人の実験体に種子が投与されたか、わからないわね」

 「レリエルのATフィールドは、虚数空間の特性で秀でているはずです」

 「回収したレリエルのオリジナルコアには、そういう痕跡もあるから。可能性は大きいわね」

 「ケルベロスの情報が消されていると、不安ですね」

 「マギの後継機トリニティの就役を急がせたいわね」

 「ディラックの海から、他のコアを回収しないと」

  

  

 森の中

 山岸マユミは、逃げていた。

 第3東京から離れた方がATフィールド感知機に引っかからずに済む。

 ATフィールドの感度は、ゼーレにいたときの感覚で、だいたい、わかった。

 そして、男2人、女1人に追いつかれると囲まれた。

 「・・・・・美味そうだな」

 「ああぁ」

 「あなた達は、もう、死んでいるのよ」 マユミ

 「ばかな、良く見ろよ。俺たちは生きてるぜ」

 「見てよ。こうして生きているじゃない」

 「女の、あなたが、わたしを襲うのを、おかしいと思わないの?」

 「そんなのわからないわ。でも、飢えているのが、わかるのよ・・・・あなたを見ると・・・・・」

 「種子の核が、あなたたち死んでいる人間を生かしているだけ・・・」

 山岸マユミは、襲い掛かる3人を力任せに捻じ伏せていく。

 生態オーラをオブラートにATフィールドを隠していただけで、マユミが強いわけではなく。

 これで、NERVのATフィールド感知器を誤魔化すことが出来た。

 マユミは、なんとなく哀れみに似た視線を向けたかと思うと。

 右手から黒い塊を出し、3人の体を突き抜く。

 血が出ることもなく。

 体を素通り、3人は、次々に倒れていく。

 「とうとう、ここまで、追いかけてきたのね」

 マユミは、小さなオレンジ色の結晶を抜き取る。

 溶けて体中に広がっている粒子は、無視しても良かった。

 地面に黒い染みが作られると3人はディラックの海へと消えていく。

 彼らが人類の敵になるかどうか、不明。

 しかし、健全な使徒系人間にとっては紛れもない敵だった。

 そして、そのことが、問題を複雑にしていた。

 確実に味方になるのは、シンジ、レイ、カヲル、ハルカだけ。

 マユミが見上げるとアラエルが静止軌道上に浮かんでいるのが見える。

  

  

 夏休み明け。

 シンジ、レイ、アスカ、マナ、ハルカ、ヒカリ、カヲル、ケンスケ、チアキ、タダシは登校する

 そして、山岸マユミも・・・

 中学3年の授業が始まり、学力に余裕のあるシンジ、レイ、アスカ、ハルカは、余裕。

 しかし、ケンスケは焦る。

 カヲル、ヒカリ、マナ、チアキ、タダシは何とか追いついていた。

 「んん・・・・ 勉強か・・・・ なんだかな〜」

 ケンスケが鉛筆を銜えながら、ふてくされ。

 「・・・落ちてる。不味い。高校受験、どうしよう」 チアキ、落ち込む

 「霧島。受験問題をスパイしてくれよ」

 「しても、あんたには、見せないよ」

 「良いよな。シンジは、学力落ちていないんだろう」

 「綾波に教えてもらったから」

 「チクショウ。俺には、優しく教えてくれる人間はいないんだよ」

 バシンッ!!

 ハリセンで叩かれるケンスケ。

 「相田。いいから、さっさと、ドリルを片付けろ」

 「・・・だれか、僕に優しくしてよ」

 ケンスケが頭を抱え。

 シンジは苦笑いする。

  

  

 次の時間

 アスカが教壇に立つ。

 精神感応世界になったことで教員を続けられない者。辞める者が続出。

 そして、定年退職が重なった結果だった。

 アスカがドイツの大学で暇潰しに教員資格を取っていたことが学校側に知られ、

 臨時教員としても採用される。

 「さっさと座って、教科書を開く!」

 同級生が教壇に立ち教える。

 奇天烈な状況だったがアスカは、教え方が上手かった。

 最初、軽く見ていた一般生徒も、5分後には、真剣に勉強する。

 ハルカは嬉しそうに見詰め。

 レイは無表情に変わらない。

 シンジ、ヒカリ、マナ、チアキ、タダシ、ケンスケは感心する。

 そして、山岸マユミは、目を見張る。

 天才と凡人の差というのは、ここまでか。というほど圧倒的で

 たちまち認められたのか、惣流先生とか、アスカ先生とか、呼ばれるようになる。

 「アスカ・・せ、せん、せい」

 シンジの言葉にアスカの頬が赤くなる。

 「シ、シンジ・・・な、なに、言ってんのよ」 アスカ、動揺。

 「で、でも、呼び捨てに出来ないじゃないか。先生なんだから」

 「バッ、バッカじゃないの」

 「バカって、事はないだろう」

 「バカだから、バカって、言ってんのよ。バカシンジ!」

 「な、なんで、そうなるんだよ。先生になっているんだから、しょうがないじゃないか」

 「・・せ・・バッカじゃないの」

 「バカって、事はないだろう」

 「バカだから、バカって、言ってんのよ。バカシンジ!!」

 アスカ、真っ赤。

 「なんで、そうなるんだよ。先生になっているんだから、しょうがないじゃないか」

 「」

 「」

 「懐かしい。久しぶりの痴話げんかだな・・・」

 ケンスケの言葉に生徒達は拍手喝さいで喜ぶ。

 トウジが生きていた頃の光景だった。

  

  

 静止軌道上。アラエル要塞

 リツコ、ミサトがラウンジから地表を見下ろしていた。

 「眺めは、悪くないわね」 ミサト

 「地表までの距離は、36000kmよ」

 「でもさ。本当に、ここを新NERV基地にするの?」

 「通勤が大変よ。日本からニューギニアにまで行かないと行けないし」

 「ミサト。家に引き篭もりたいなら、専業主婦、やったら」

 「うぅ・・・・」

 「ホームシックに浸りたいなら。いまのうちに辞めた方が良いわよ」

 「そ、そこまでは、言ってないでしょう」

 「どう? 加持君」

 「そうだな。ミサトが家のことをやってくれると、うれしいな」

 後ろに加持が立っていた。

 「ウゲッ! ・・・何で、あんたがいるのよ」

 「政府の代理だって、言ってるだろう。一応、国有財産なんだぞ」

 「・・・・・・」

 「とにかく。アラエルを核に宇宙開発よ」

 「リツコ。えらく、燃えてるわね」

 「ミサト。国際紛争もセカンドインパクトを起こした原因も・・・」

 「ゼーレとNERVが人類補完計画を進めた主要原因も地球資源の枯渇なのよ」

 「解決できるかは、宇宙開発にかかっているんだから」

 「人口増加に弾みがつく前にやることをやらないと大変なの」

 「そ、そうでした」

 「とはいえ、残りの予算配分は、アラエルの無重力工場で量産される製品次第だがな」

 「まぁ がんばって、市場を潤してくれよ」

 「うぅぅ・・・経済至上主義」

 「しょうがないわよ。食べないと生きていけないもの。軍官僚さん」

 「リツコ。それは、あんたもでしょう」

 「わたしも、アスカの真似をして株で儲け始めているから」

 「あんた。これ以上、お金持ちになって、どうするつもりよ」

 「あって困るものじゃないわ。それに・・・・面白い使い方も出来るしね。加持君」

 「・・・今回は、りっちゃんにやられたよ。まさか、マヤ・アスカ連合と組んでいたなんてな」

 「合併しようとした途端に基幹部門に独立させられて、偉い迷惑したよ」

 「あんな、でかいだけの企業に飼い殺しさせて良い。部門じゃないわ」

 「おかげで俺は、お偉方から大目玉だったよ」

 「政官財の癒着で、私服を肥やすのも、いい加減に懲りたらどうなの」

 「戦後、半年で、そんなことをやられたら、先行き暗いわよ」

 「ははは・・・」

 「相変わらず。無節操ね。加持君」

 「さてと、一度、地球に降りるか」

 加持が去っていく。

 「あいつ、本当に働いているのかしら」

 「ふっ あんたの旦那でしょう」

 「なんだけどね」

 「少し重いわね」

 「あんたが、人工重力を1.2Gに決めたんじゃない」

 「無重力で作業しているんだから、バランスの問題でね」

 「それくらいしないと。地上で生活するのに辛いわ。心臓に負担が来そうだけどね」

 「やっぱり、ロボットが役に立ちそうね」

 「そういう計算で、アスカとマヤも動いているわね」

 「あいつらの計算どおりか」

  

  

 箱根山

 NERV基地

 冬月、シンジ、他三人。

 冬月が正面に座り。

 多くの書類がシンジの前にある。

 「じゃ これで、碇司令の資産は、シンジ君が正式に相続することになった」

 「本当に・・・僕が相続して良いのでしょうか」

 「これは、正式なものだ。君の父。碇ゲンドウの遺書もある。当然の権利だよ」

 遺言書の日付は、最後の決戦の3日も前に書かれたもので、息子に追放された後のものだった。

 「僕は・・」

 「あって、困るものでもあるまい」

 「しかし、この財産を維持する責任は、シンジ君にある」

 「潰されると数万人が路頭に迷うことにもなりかねない」

 「お父さんは、僕のことを・・・」

 「怒っては、いなかったよ・・・最初からな」

 「本当に?」

 「シンジ君・・・君も、父親になれば、わかる。親というのは、そういうものだ」

 「・・・でも・・・僕が・・・お父さんを・・・追放したのに・・・」

 「遺言書の日付を見たまえ」

 「・・・・・・・・・」

 「そういうことだ。不器用な男だったが不幸ではなかった」

 「君のお母さん。そして、自分の意思と成果を託す碇シンジという息子にも巡り合えた」

 「詫びる気持ちがあるのなら。託されたものをきちんと、管理することだな」

 「僕に出来るでしょうか?」

 「・・・既に君は自分の資産を上手く運用している」

 「ぼ、僕は、お金の使い方を知らないし。アスカは南半球の開発に頑張っているのを見たから」

 「シンジ君。君が信頼できる人間を見つけたのなら」

 「その人間が人類の発展と成長に寄与できるのだとしたら。投資するものだ」

 「自分が出来ないのなら。出来る人間に運用させるだけで良い」

 「君のお父さんも、そうやっていた。それは、ゼーレもだ」

 「・・・・・」 シンジ

 「じゃ 頑張って、みたまえ」

 「・・・・はい」

  

 

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 月夜裏 野々香です。

 レリエル系使徒人間の山岸マユミが出てきたのにいきなり、宇宙に出てしまいました。

 作者の神経を疑ってしまいますが、世の中というのは、そういうもので、

 社会の潮流には逆らえないということでしょう。

 アラエルの機能がある程度、整ったら、地表で、続きですね。

 シンジは、父親の遺産を相続して、政経に揉まれそうな予感。

 でも、中学生としての純粋さは、残したい。

 矛盾を何とかするのが構成の妙でしょうか。

 

 

 

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第52話 『転校生』
第53話 『衛星軌道へ』
第54話 『レリエルの影』
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