月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

   

   

第54話 『レリエルの影』

 2016年 9月

 シンジ、レイ、アスカ、マナは、3Dゲームに興じる

 「愛しているよ、綾波」

 「愛しているわ、碇君」

 のセリフにアスカとマナはムッとする。

 ムッとしながらもいるのは、二人を監視したい気持ちがあるからだろうか。

 魔王は、ミサトとリツコ。因みに退治アイテムは “猫”

 「でっ! その遺産・・・シンジの資産をどうするって?」

 「い、いや、アスカが、人類のために使っているなら、アスカに任せても良いかなって」

 「わたしはね。自分のためにお金を使っているの」

 「人類のためになんて、抽象的なモノのためになんか、働かないわよ」

 「えっ! でも・・・現に・・・・」

 「結果的にそうなったとしても、副次的なものよ」

 「だ、駄目かな」

 アスカがニヤリとする。

 「あんたね。わたしが資産だけ奪って、不良債権をあんた一人に押し付けないと、どうして思えるわけ?」

 「えっ そんな。アスカ〜」

 「ふっ そうね。やって、あげても良いけど。その代わり、わたしの言うことをききなさいよ」

 「・・・うん」

 

     

  

  

  

 天城空手道場の広間

 シンジがドアから、こっそりと顔を出した。

 ミサト、リツコ、マヤ、アスカ、レイ、マナ、ケンスケ、カヲル、ヒカリ、タダシが待っている。

 そして、空手道場の師範と弟子数人

 「・・・シンジ。早く、出てきなさいよ。協力してもらっているんだから」

 「酷いよ。アスカ」

 シンジは、泣きそうだった。

 「良いから、シンジ。早く出て来い」

 アスカ・ポーズ。

 シンジは、渋々、ドアから出てきた。

 ミサトは、噴出し、爆笑し、転げまわる。

 そして、友人たちと道場の師範と弟子は ほぉ〜 という表情。

 「シ、シンちゃん・・・」 ミサト。涙目

 リツコ、マヤ。そして、レイでさえ、目を逸らして、笑いを堪える。

 「・・・アスカ、酷いよ」

 シンジは、フード付きの服装にスカートを着た女装だった。

 ケンスケがカメラで撮影。

 「・・・ケンスケ・・・」

 「だって、シンジ・・・広告に使うって・・・アスカに命令されて・・・仕方なくやっているんだよ」

 笑いを堪えながら言い返す。

 もちろん、本音は違う。

 「くっ くっ くっ だって、まだ。女性用しか作って・・・なかったんだもの・・・あははは」

 「だったら、僕じゃなくても良いじゃないか。酷いよ」

 「わたしが実験する・・・つもりだったけど・・・・シンジに・・・・やってもらうわ」

  

  

 仲間たちは、なぜか、女装シンジと一緒に写真を撮りたがる。

 「シンちゃ〜ん」

 ミサトがシンジに迫る。

 「ミ、ミサトさん。止めて下さい」

 面白がるケンスケとタダシに両側から押さえられ。

 チアキに頭を押さえられる。

 「うごいちゃ 駄目よ。変になったら。嫌でしょう」

 ミサトの目が怪しく光り。

 「ア、アスカ」 シンジが抗議する。

 「・・・宣伝に協力してもらうから」 アスカ。肩が震える

 「ひ、酷いよ。アスカ」

 「うるさい男ね。人に財産を管理させようとしているんだから。少しくらい協力しなさいよ」

 「あんたの財産の維持費にもなるんだから。相続税をどうするつもり?」

 「ぅぅぅ・・・・」

 シンジ。半泣きのまま。口紅を塗られる。

 赤い唇をしたシンジに思わず、退いてしまうミサト、マヤ、リツコ、ヒカリ、チアキ

 「・・・・・・・」 レイ。ぽっ

 「シンジ君。素敵」 マナ

 「碇。お、おまえ・・・」 タダシ

 「シンジ〜!」  抱きつくケンスケ。

 「は、離れろよ。ケンスケ。気持ち悪いな」

 シンジの肘が軽く当たっただけで、ケンスケが昏倒する。

 シンジは、仲間達と写真を撮られることになった。

 そして、アスカとレイも、色違いの同じ服装で、何度も、ポーズを変えて映る。

 その度に笑いが漏れる。

 「良いな〜 アスカ。わたしのは、ないの」

 「3人分しかないよ」

 「良いな」 マナ、指を咥える。

  

  

 「天城師範。お願いします」

 アスカが、合図をする。

 「大田!」

 「おすっ!」

 師範に足された弟子が、シンジの前に出る。身長差20cm。体格でシンジは、完全に負けている。

 シンジも構えるが、真剣な姿が、笑いを誘うのか、友人たちの肩が震える。

 アスカが、合図をすると大田の攻撃が唐突に始まる。

 シンジは、攻撃を腕で防ぐが痛みの多くが服で緩和される。

 そして、攻撃する大田が顔をしかめる。

 スカートの僅かな広がりも、打撃を吸収するもので、

 蹴りが入ると相手に与える打撃はさらに加算される。

 アスカとマヤが開発した特殊素材で造った服。

 外側に対しては、強い反発力と吸収力を発揮。

 内側からは、どんな作用にも緩やかに反応する。

 衝撃こそ強かったが鉛のようなもので守られ、

 服全体で打撃や衝撃が吸収、散らされ、緩和されている。

 シンジの攻撃を受けている方は、鉛で打たれているのに近い。

 それでいて軽量。

 大田は、バットを平気で圧し折るほど強い。

 しかし、シンジは、普通なら絶対に勝てない太田を追い詰めていく。

 次第に笑いが静まり。新素材の衣服に声も出ない。

 「す、凄いじゃない。アスカ。あんな薄い生地なのに」 ミサト

 「まあ、まぁまぁね。マヤ」

 「えっ あ、そ、そうね。上々ね」

 マヤがモニタで確認する。

 「なに、ぼぅーとして」

 「だって、シンジ君、真剣な表情になると・・・・かわいいかなって」

 「・・・・・・」 アスカ

 「た、確かに中性が強いから。かわいいわね」 ミサト

 なんとなく、ミサト、リツコ、マヤ、アスカ、レイ、マナ、ケンスケ、カヲル、ヒカリ、タダシの頬が赤くなる。

 「シンジ君って、お母さん似だったのね」 マヤ。ドキドキ。

 「もう、良いわ。天城師範。二対一で、お願いします」

 「吉住!」

 「おすっ!」

 吉住も15cmは背が高く。覇気溢れる男だった。

 シンジは、二対一で挟まれるが落ち着いて構える。

 「ほぅ〜 一対多数で戦う訓練もしているのか。まだ荒削りだが、実戦的だな」

 師範が感心したように呟く。

 「ええ、訓練を始めて1年5ヶ月」

 「本当か。随分、成長が早いな。4年ぐらいやっていると思った」

 「それに闘争心に欠けている。かなり歪だな。NERVの訓練の方針なのかね」

 「ええ、そう・・・性格的なものもあるけど客観的な評価も知りたかったから・・・わたしの思った通りね」

 「ある程度、強くなれば、今度は、剥き出しの闘争心が邪魔になる場合もあるから」

 「それは、それで、構わないがね」

 組手が進むと二人の弟子は、戦意を低下させていく。

 「これまでのようね」

 「次は、俺が行こう」

 二人の弟子が下がると天城師範が前に出て、シンジに缶ジュースを渡す。

 「30分。休んだら。俺とやろう」

   

  

 シンジは、天城師範と対峙する。

 天城師範が自然体でありながら。付け入る気になれなくなるのに気付く。

 まるで空気のような存在で、こちらの意欲が萎えてくる。

 こういう相手と戦ったことがなく。

 比較的近いのは、加持だった。

 しかし、ここまで、無機質ではない。

 「どうした? シンジ君が自然にやっていることだ。遠慮はいらないぞ」

 シンジは、少しずつ近付く。

 師範の戦意がまったく感じられず。

 迷いながら横に回るが師範は、そのまま、ぼぅーと立っていた。

 刹那、シンジの突き自体が拍子抜けするもので、天城師範に簡単に腕を捻り上げられる。

 もちろん、服そのものにストッパーがかかっているのか、

 一定以上に捩じ上げられても、緩和されて痛みが抑えられる。

 しかし、反動で体自体が宙を数回、まわって落とされる。

 その後、首を固められて終わる。

   

 実験が終わり。

 モニターを覗き込むアスカ、マヤ。

 「・・・まあ、こんなものね。マヤ」

 「そうね。だいたい、計算どおりね」

 「ここまで構造計算したなんて、たいしたものね」

 リツコがモニターを見ながら褒める。

 「エヴァ技術があれば、これくらいの加工は、難しくないわ」

 「でも、構造は、本物。さすが天才・・・マヤもね・・・」

 「あ、は、はは」

 隠れてアルバイトをしているのが、バレバレ。

 ドタドタ!!

 走り回る音が聞こえる。

 「ミサトさん〜!!」

 スカートをはいたシンジが、ミサトを追いかける。

 「だって、シンちゃん。かわいいんだから、大丈夫よ」

 ミサトが着替えの入ったボストンバックを持って走り回る。

 「ミサトさん! 怒りますよ。本当に!」

 「シ、シンジ君。良く考えて! こんなチャンスは、二度とないのよ! ね!」

 「駄目に決まっているじゃないですか!」

 「駄目じゃないわよ。そんなに似合っているんだから。例え、神が許さなくても、わたしが許すわ」

 「そういう問題じゃありません!」

 「違うわ! シンジ君・・・・・大丈夫。自分を信じて。自分の可能性を信じるのよ。誰も気付かないわ」

 笑いで目が泳ぐ。

 「ミサトさん! 絶対、駄目です。返してください」

 ミサトとシンジが走り回り。仲間たちが笑い転げる。

 レイも、今度ばかりは、肩を震わせる。

 ケンスケは、見逃すことなく撮影。

  

  

 「シンジ君。頼むよ」

 天城師範が、帰り際に手紙を手渡す。

  

  

 帰り道の繁華街。

 「・・・ほら、シンジ君。わたし、奢るから好きなだけ食べて良いから」

 ミサトが手を合わせて謝る

 「もう、いいです」

 シンジが、ソッポを向く。

 「シンちゃん。シンちゃんの為を思って愛しているからこその行動だったの、信じて、シンちゃん」

 「信じられません」

 「そんなこと言わないで。シンちゃんが、かわいかったからよ」

 むくれたシンジは、取り返した自分の服を着ている。

 「本当よ。とても綺麗だったんだから。シンちゃん・・・信じて〜」

 ミサトさんが抱きつこうとする。

 「わ、わかりましたから。信じます。信じますから」

 「本当!! シンジ君ならきっと許してくれると思っていたわ」

 「・・・・・」 シンジ

 「よ〜し。今日は、飲むぞぉぉおおおお!!!」

 ミサトは、シンジの右手と一緒にロッキーの様に高々と両手を挙げながら世界の中心で叫ぶ。

 仲間達は、他人の振りをしながら、離れていく。

 『碇君。ごめんなさい』

 レイも、そう思いながら、僅かに離れて、そっぽを向く。

 シンジ。涙。

  

   

 居酒屋 らみえる

 マヤは、子供たちの方に座ろうとすると、

 ミサトに引っ張られて泣く泣くリツコ、ミサトの席に着く。

 「ぷっふぁあ〜!!・・・マヤちゃん」

 ミサトがビールを飲むと絡み始める

 「マヤちゃん。彼氏、出来た」

 「そ、そんな〜 ま、だです」

 リツコが興味深そうに見詰める。

 もはや、肉食動物の前にいる草食動物。

 マヤが羨ましげに子供たちを見るが手遅れ。

 「あれ〜 いないの? マヤちゃん」

 「え、ええ、まだ・・・・」

 「青葉君と日向君は、どうなの?」

 「えっ ちょっと、違うかなって」 泣き

 「マヤちゃん。適当なところで折れないと行き遅れちゃうぞ」

 「そ、そうですね」

 「んん、まず、飲め。マヤ」

 ミサトの目が据わり、追加をオーダーする。

 なぜか、ゲンドウポーズだ。

 「それから、考える・・・わたしに任せなさい」

 

 ミサトは、だんだん、ハイになっていく。

 『・・・マヤ。今日は徹夜ね』 リツコ

 「はぁ〜」

 マヤは、食事が終わって、帰っていく子供たちを羨ましげに見詰める。

    

   

 子供たちは、繁華街を帰っていく。

 シンジとレイは、少しずつ二人の世界に入っていく。

 「碇君。綺麗だった」

 「そ、そうかな」

 「ええ・・とても・・ふっ」

 「あっ! 綾波。笑った」

 「ごめんなさい・・・でも・・・」

 レイの肩が震える

 「綾波・・・笑っている表情も可愛いかな」

 ぼぅ〜

 そして、レイの頬が赤らむ。

 「碇君」

 レイが手がシンジの腕に絡む

 そして、レイが、不意にシンジの唇に軽く、口付け。

 それを見た。アスカ、マナ、ケンスケ、チアキ、タダシが固まり。

 カヲルと、ヒカリは面白げ。

 シンジとレイは、繁華街のど真ん中で、一気に注目を浴びる。

 シンジは、慌ててレイを引っ張って走る。

 一緒に走るシンジとレイは、互いに、いとおしく。

 なんとなく楽しく。微笑む。

   

 シンジとレイが繁華街の外れまで走った時。

 『碇君。綾波さん。そこを離れて』

 不意に声が聞こえる。

 誰というのは、なかった。山岸マユミしかいない。

 『見つかった。追われているわ』

 『どういうこと』 シンジ

 『早く! こっちよ』

 「・・・碇君」 レイ

 「こっちだ」 シンジが誘う。

 シンジとレイは、繁華街から離れて、戦災の残る場所にまで、逃げ込む。

 そして、そこに山岸マユミが立っていた。

 彼女の見詰める方向には、二人の男がいて、こちらを見詰めている。

 「山岸。あの二人は、何者なの?」

 「レリエルの・・・影かな」

 「どうして、狙われるの」

 「あの人たちは、レリエルの種子の核を投与された後、バウンドインパクトの前に死んだ人間なの」

 「彼らは、飢えていて、わたしたちのエネルギーを欲しがっている」

 「ゾンビ?」

 「・・・そうかもしれないけど。肉体は生きている。でも、何かが、足りないの」

 「危険なの?」

 「少しATフィールドが使えるわ。普通の人間は勝てない」

 「山岸は、違うの?」

 「わたしは、バウンドインパクトの前に、死んでなかったから」

 「もうすぐ、こっちに来る」

 「二人とも、互いに黙っているみたいだけど。ATフィールドが使えるんでしょう」

 「・・・・・・・・・」 シンジ

 「・・・・・・・・・」 レイ

 「・・・やっぱりね。ATフィールド感知器があると、簡単には使えないけど」

 「自分の気に混ぜて練り上げると。感知器が反応しない」

 「・・・碇君」

 「ごめん。綾波。知っていたけど。言えなくて」

 「わたしも、そう感じていたけど・・・ごめんなさい。言えなくて・・・・」

 「出来そう? 碇君。綾波さん」

 「たぶん。出来ると思う」

 「出来るわ」

 「戦うの?」 シンジは、気が進まない

 「戦わないと。綾波さんが狙われるかも」

 「た、戦うよ」

 「彼らに他に仲間はいるの?」

 「一応、パイロットは、12人」

 「でも、あの人たちは、パイロットのための実験体で、何人いるかわからない」

 「他のパイロットたちは?」

 「わからないわ。最終決戦で、わたしたちは、必要ないとわかって、訓練場に戻されたの」

 「でも、建物が、電磁弾道弾の直撃を受けて、後は、バラバラになったから」

 「そう」

 「パイロットは、みんな、アダム系、レリエル系の他にも投与されたけど」

 「一人一人、違う調整をされたわ」

 「でも、力が発動したのは、サードインパクトとバウンドインパクトの後だった」

 「・・・そう」

 「少なくとも、わたしは、味方よ。他の人たちに知られたくないのも同じ」

 「そっと、してもらいたいから」

 オレンジ色のぼんやりとした光に包まれた二人の男が現れた。

 「ATフィールド?」

 「気にATフィールドを練りこんでいるだけ」

 レイは、そういうと同じようにオレンジ色の光で空を包んだ。

 そして、シンジも、オレンジ色の光で包まれ、

 レイが一番大きな気に包まれていて、シンジの3倍。マユミの5倍、男たちの10倍にもなった。

 「凄い・・・」

 「訓練の成果」

 シンジとレイが二人と戦い始めると。

 山岸マユミが背後から黒い塊で、二人の体を突き抜くと二人とも力を失って倒れた。

 そして、山岸マユミが注視すると地面に黒い膜が広がり二人の男を沈めてしまう。

 「この小さな結晶が核になっているの。人によって結晶の大きさが違うみたい」

 山岸マユミが掌に7つほど結晶を見せた。

 「大きい結晶の方が力も強いわ」

 「二つほど貰える?」

 「良いわ」

 山岸マユミは、結晶を二つ、レイに渡す。

 「あなた。ディラックの海から使徒のコアを探して取り出せることが出来る?」

 「あまり長く居たくないから、すぐに出るの。逃げる時か、彼らを隠す時しか、使わない」

 「それにコアを背景にしていないから、あなたたち二人の様に強くないの」

 「そう・・・レリエルのコアは、回収したけど。種子が見つかっていないわ」

 「わたしも、知らないわ。破壊されたんじゃない。ゼーレ本部も、破壊されていたから」

 「そう」

 「あまり公にしたくない能力ね」

 「そうね」

 「うん」 シンジも頷く。

 「その残りのパイロット。11人に興味あるね」 カヲルが突然、現れる。

 「生きているかどうかわからない」

 「サードインパクトとバウンドインパクトの前に建物が破壊されたから」

 「・・・顔は覚えている。君たちの顔は見覚えがある」

 「まさか、ATフィールドが使えるようになるとは、思わなかったけどね」

 「そう」

 「じゃ 僕は、先に行くよ。ヒカリを待たせているからね」

 カヲルが すぅ〜 と消える。

 「あの人が使徒タブリス」

 「ゼーレで、あったことがあるの?」

 「転校して、会ったのが初めて」

 「そう」

 「良いわね。秘密が、あるのに。みんな仲良くしてる」

 「・・・うん」

 「わたしも、仲間になりたいな」

 「良いよ」

 「良いわ」

  

  

 カラオケ

 アスカ、レイ、マナ、ケンスケ、カヲル、ヒカリ、タダシ。

 マナは “心のこり” を涙ながらに熱唱。

 「わたしばかよね〜 おばかさ〜んよね〜」

 「うしろゆ〜び〜 うしろゆ〜び さされぇ〜ても〜♪」

 アスカ、レイ、ケンスケ、カヲル、ヒカリ、タダシは、不承不承に朝まで付き合わされる。

  

  

 コンフォート17

 401号室

 伊吹マヤは、自堕落な加持(葛城)ミサトに変わり、

 チルドレン達の良き保護者になっていた。

 もっとも、アスカが来ると、経営者同盟。

 名目上は、マヤは、赤木リツコに次ぐ実力者でも、ハルカやレイが来ると、

 どうしても頭が上がらず立場が逆転。

 それでも、チルドレンたちからも、良いお姉さんとして慕われていく。

 しかし “ミサト来襲” という憂鬱な時もある。

 ミサトがビールを飲みつつ、ニヤニヤしながら、

 シンジとレイ。カヲルとヒカリの様子をモニター越しに見ていた。

 しかし、マンションの周囲。

 基地、学校の主要通路は、カメラがあり、多くのカメラがマギを経由。

 死角は、多かったが、それでも子供たちの様子は大体わかる。

 「・・・もう、キスどまりなんて、4人ともまじめなんだから」

 「まだ、中学3年生ですから・・・」

 「んんん・・・青春を無駄にしているわね・・・・部屋の中は、どうかな?」

 「違法です」

 「つまんないな・・・・見ている方の身にもなってよ。サービスが悪いんだから」

 「ミ、ミサトさん。家の事しなくて、大丈夫なんですか?」

 「んんん・・・マヤ。早く、家事ロボットを作ってよ」

 「そんな、簡単には・・・」

 「マギ直結なら、できるんじゃない」

 「マギをそんな事に使えません」

 「しょうがないわね」

 「加持さんに怒られますよ。アラエルに行く前に部屋を片付けておかないと」

 「はあ、そうなのよね。でもあいつ、最近、帰ってこないから」

 「忙しいんですか?」

 「ほら、レリエルの種子」

 「ゼーレの量産型エヴァがサードインパクトで利用するのに改造して持っていると、思ってたけど」

 「違ってたでしょう。だから、いま、捜索中」

 「ゼーレ本部は、電磁弾道弾で破壊したんですよね」

 「でも、レリエルのコアは、回収できたわ。もう一度、捜索するって」

 「そうなんですか」

 「はぁ〜 ペンペンも子供たちの所に行っちゃうし。カレー作っても半分しか来てくれないし」

 「部、部署が違うから・・・・スケジュールが合わないだけじゃ・・・」

 「面白いことないかな〜 使徒でも来ないかしら」

 「あははは・・・」

 「ねえ、マヤ。最近のシンジ君。昔に戻ってない?」

 「なんか、自信なさそうに、妙にオドオドしているのよね」

 「使徒戦で戦った頃は、もっと覇気があったのに」

 「わたしも気になって、少し話したんですけど」

 「お父さんに我を張った事を後悔しているみたいです」

 「少しフォローしていますけど。我を張ることにトラウマがあるようですね」

 「はぁー なるほどね〜」

 「でも、あれじゃ 洞木さんのところのノゾミちゃんや久坂さんのところのユウキちゃんにだって、押し倒されちゃうわよ」

 「はは、まさか・・・」

 「自信。持っていいんだけどな」

  

  

 ニューギニア ワイゲオ島北岸

 大型洋上基地から軌道エレベーターが気が遠くなるほど天高く伸びていた。

 洋上基地は、多くの艦船が並んでいる。

 冬月と青葉

 「資材の搬出搬入は、上手くいってるな」

 「ええ、ようやく。碇資本も動き出しましたね。たいしたものです」

 「使徒迎撃に集中させていた機構や経営形態を僅かな期間で、人事から運営方針まで転換させたのですから」

 「シンジ君は、15歳の少年とは思えませんね」

 「ふっ そうだな」

 冬月の携帯が鳴る

 「・・・秋津司令・・・・ええ、順調です・・・・わかりました。二日後に交替ですね・・・了解です・・・・」

 携帯が切れる。

 「宇宙暮らしは、限界があるようですね」

 「宇宙は、閉鎖的だから年寄りには、少し辛いな」

 「この島の都市も、もう少し大きくなれば、人口も増えるはずです」

 「地球の総人口は、バウンドインパクト以降、20億を超えて上昇傾向にある」

 「人口を分散させた方が婚期が遅れて人口増加を抑えられる」

 「政府が人口問題と経済性とどちらを重視するか、わからんが、どちらも準備不足だな」

 「ですが無重力で作られる素材は、産業革命以来の大革命ですよ」

 「世界中の富が集まってきますよ」

 「・・・そうだな」

 見上げると天高く伸びる軌道エレベーター

 「だが “バベルの塔” という者もいる」

 「“バベルの塔” ですか?」

 「人は、民を結集させようと “バベルの塔” を造り」

 「神の怒りに触れて、破壊され、統一された言葉を失った」

 「そして、人類補完計画で精神感応世界を構築」

 「もう一度、民を結集させようと “バベルの塔” を造った」

 「この塔が神の怒りに触れないことを祈るよ」

  

  

 某企業の執務室

 アスカが偉そうな執務席に座り。

 レイがメーテル風の服装で立っていた。

 「・・・出来ないのなら。辞めてもらうしかないわ」

 アスカがニヤリと微笑む。

 40代、50代、60代の男女二十数人が黙って聞いている。

 「しかし、すぐでなくとも・・・」

 「ここに納品部門についての報告書があるの」

 「代わりの人間には、目星を付けて、面接を終わらせている」

 「他の部署も、既に新体制の青写真が作られているわ」 レイ

 執務室の真ん中に新体制が3Dで映された。

 そこに、幹部の不正・疑惑に関する数字が赤く。映されている。

 生殺与奪を握られた一部の幹部は青くなっていく。

 そして、流れる基本方針と移行計画。

 内情を知られ過ぎて、文句をつけるには見事過ぎた。

 「基本方針は、一貫させているけど、現在の経営は、段階的に移行させていく」

 「建設的な意見は、聞く用意があるけど。怠惰で、保身だけの抗議を聞くつもりはないわ」

 「・・・・・・」  一同

 「では、仕事に戻って、一応、人事は、保留しておくわ」

 幹部たちが、ぞろぞろと出て行く。

 「アスカ」  レイ

 「なに?」

 「なぜ、この服なの?」

 レイはメーテル風

 「黒は、少女を女に見せるのよ」

 「そう」

 レイは、視線が増えているのが気になったが黙っていることにした。

 「とりあえず。中間管理層の面接を進めるから」

 「問題のありそうな人間には、警告を与えて躾るわよ」

 「そうね」

 「とはいえ、不利なのよね。わたしたち、精神感応世界から外れているから」

 執務室の別室からマナが出てくる。

 「そう・・・思わせておけば良いわ」

 マナがレイを見て、思わず微笑む

 「なに?」

 「な、なんでもない」

 「マナね〜」

 「な、なによ。アスカ。愛するシンジ君のためになら。一肌でも、二肌でも、脱ぐわ〜」

 「はぁ〜」

 「なによ〜 でも、碇系グループも精神感応の痛手が大きいわね」

 「功罪がはっきりして良いんだけど・・・」

 「混乱。いまだ、やまずね」

 「でも良い方だわ。冬月副司令の助けと自浄能力で9ヶ月も、やってきたのだから」  レイ

 「ふっ 碇司令がライオンで、他が羊だったからでしょう」

 「企業体の構造は、中央集権でもなさそうなのに・・・」

 「碇司令の見掛けね」

 「碇司令は、素晴らしい人よ」

 「そうなの?・・・精神感応世界では、人類史上、最高の偉人になっているけど?」

 「あえて、否定しないけど・・・」  マナ

 「見掛けが否定しているだけなの?」

 「周りのシンジ君に対する。扱いを見ればわかるでしょう。碇司令に恩義を感じているからよ」

 「シンジ君の委任状見ただけ、重鎮が大人しくなったじゃない」

 「シンジのやつ、道理でモテるわけね」

 「わたしは、人類補完計画の前からだもの・・・・うふっ♪」

 「けっ!」

  

  

 箱根山

 赤木研究所

 3Dに黒い墓標が浮かんで、シンクログラフの調整のたびに微妙に揺れる。

 そこに、シンジが珍しく。赤木リツコの元にやってくる。

 「あら、シンジ君。珍しいわね」

 「あ、あのぅ・・・・これ・・・」

 シンジが手紙を差し出した

 「あら♪ シンジ君。わたしにラブレター」

 「あ、いや、そうじゃなくて、い、いや、そうなんだけど・・・そうじゃなくて・・・」

 「まあ、良いわ。コーヒー入れるから。待っていて」

 「あ、はい」

 ブルーマウンテンの香りが広がっていく。

 なんとなく、大人の女性の魅力が漂う。

 手紙を読むリツコの頬が赤らむ。

 「天城シロウ」 リツコが呟く

 「・・・・・」 シンジ

 「ありがとう。シンジ君・・・ひょっとしたら、御礼をすることになるかもしれないわね」

 「じ、じゃ これで」

 「あっ! シンジ君」

 「はい」

 「わたしとお父さんの関係は、もう、知っているのかしら」

 「・・・は、はい」

 「そう・・・わたしは・・・あなたのお父さんを愛していた。そして、いまも愛している」

 「・・・・・・・」 シンジ

 「現実には、もう亡くなったけど。あなたのお父さんは、良い人だった」

 「お父さんは、あなたに辛く当たったかもしれないけど」

 「あなたを守りたかったからなの。許してあげてね」

 「・・・ぼ、僕は、そんな、お父さんを追放してしまったんだ」

 「お父さんはね・・・追放されていく時に微笑んでいたわ・・・」

 「いくつかのシナリオの一つだったということ」

 「そして、現在の状況は、悪くないわ」

 「だから、シンジ君は、自己嫌悪に陥ることはないのよ」

 「・・・・・・」 シンジ

 「父親は、そういうものよ。シンジ君も、そういう、父親になりなさい」

 「ぼ、僕は、何も出来ないから」

 「そうでもないわ」

 「人を信じるというのは、危険だけど。とても勇気があって、楽で合理的な方法よ」

 「アスカも、レイも、マナも、良くやっている」

 「あなたのお父さんが、冬月コウゾウ、赤木ナオコ、惣流キョウコ、碇ユイに仕事の多くを任せたように・・・良く似ているわ」

 「そうでしょうか?」

 「そうよ」

   

  

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 月夜裏 野々香です。

 少しだけ、寄り道しました。

 なんとなく書きたかった場面もあったからです。

 今回の綾波レイは、微笑みから、笑いを少しだけ。

 そして、少し積極的でした。

 あんなの綾波じゃない!!

 という方もいるかも。

 ですが、シンジとの絡みで、少しばかり、うつ状態から出してあげました。

 ミサトは、少し暴走気味でしたけど。

 彼女の場合。同居していない反動でシンジに接近を試みた節もあり。

 あまり違和感がないと思います。

 アスカの天才ぶりは、相当なもので。

 本来、天才は、そういうものでしょう。

 さらにマヤ、ハルカと組んで、リツコとも共闘出来れば、相手が人間社会なら無敵です。

  

 エヴァンゲリオンの素晴らしさは、人の心を直視したアニメだからです。

 個々の人物像と相関関係と謎に面白さがあるからでしょう。

   

 

 

 

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