月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

 

 

第56話 『高校生になったら』

 国連総会

 日本は、東南アジア・豪州。

 アメリカは、南アメリカ。

 ドイツは、アフリカ・中東域まで、勢力を拡大していく。

 各国とも、使徒戦のために莫大な借款と貸与をしていたことを口実に日本技術の平準化を要求。

 ゼーレ不在でナショナリズムが強まり。国際的な主導権争いが激しさを増していく。

 もちろん、国際協力とは、名ばかりで、各国とも足並みが揃っておらず、

 強い国は強いまま、地域格差を広げたくなるらしく。

 そして、エヴァ技術を流用できる国は、日本以外だと、アメリカとドイツに限られていた。

 「・・・日本のみがエヴァ技術を独占」

 「そして、アラエル軌道エレベーターを所有して、国際バランスを著しく狂わせている」

 「さらに宇宙艦隊を配備するなど。国際緊張を高め、紛争の原因に・・・・・・・」 某国代表

 各国とも、長々と自国の主張を伝えて、日本を追い込んでいく。

 ゼーレが存在しなければ、資本、資源、人材を第3東京市に集中させることは不可。

 NERV創設、そのものも不可能であり、

 国家間の緊張を低下させていたことに、いまさらの様に気付く。

 NERV、ゲンドウが国連(ゼーレ)を経由し

 全世界、各国から借款したNERV債は、天文学的で

 本来なら国連で、償還してしまう借財。

 全世界のために集めていた物を接収すれば、どうなるか・・・・

 日本がNERVを接収した時。日本がNERV債も背負うことになった。

 日本代表は、対応に苦慮しながら借款返済計画を説明する。

 最終戦争後の接収なら勝った者勝ち、

 しかし、最終戦争以前の接収では、言い訳も出来ない。

 最終戦争自体が、日本国の国際連合非公式組織NERVを接収したことに端を発していた。

 各国とも、日本代表の返済計画など、後回し。

 自国民の半分が飢えて死んでも、エヴァ技術、トリニティの導入を求めた。

 さらにアラエルへの査察事務所開設など、足枷、手枷を要求。

 日本代表は、足並みの揃わない国々を個別に切り崩し。

 国防や根幹にあたる部分を可能な限り守り、代用で済ませていく。

 しかし、苦渋の選択は、少なくない。

 各国とも、自国民の幸福、国益より。権力基盤の保身を優先し、

 権力のため国益や自国民さえ犠牲にするのだから、他国を犠牲にすることなど平気で、

 というより、他国や他国民を踏みにじっても、権力基盤と、自国・自国民の利益を追求する。

 それが巡り巡って自国の損失に繋がっても構わずで、

 立身出世栄達が動機で動いていた。

  

  

 箱根山NERV基地

 朝霧ハルカ、伊吹マヤ

 零号機と二号機の素体の3Dマップが浮かび上がり、刻々と数値が変化していく。

 「マヤ。零号機と二号機のS2機関因子は?」

 「現在。アイドリング状態です。初号機、4号機を100パーセントとした場合」

 「零号機が23パーセント。二号機が26パーセント。十分に機動レベルで。さらに増殖中です」

 「そう。S2因子が、100パーセントになれば、コアの回収が出来そうね」

 「なんだか不安です」

 「いくら半身不随でも、自分で動くことの出来る最強の生体が4体も・・・・・」

 「彼等は、種子を持っていないわ」

 「そして、求めるべきリリスも。それに頭上のロンギヌスの槍は、いつでも落とすことが出来る」

 「確かに・・・」

 「もっと、増えていくわ。第12使徒レリエル、第15使徒アラエルのコアを確保して、いま、培養中よ」

 「そして、第11使徒イロウル。第13使徒バルディエルをディラックの海から回収できたら」

 「新たに4種のエヴァを就役させることが出来る」

 「怖くありませんか?」

 「火が怖くても、焼死しても、人類は、火を使い続けてきた」

 「エヴァ光質とATフィールドを利用することが出来れば、宇宙開発も容易になるわ」

 「朝霧さん。ゼーレ球から。第3使徒、第4使徒、第5使徒、第6使徒、第7使徒、第9使徒の光質6種の解析報告です」

 3Dにデーターが流れ始める

 「随分、早いわね」

 「夜も、昼も、休息も、ないそうですから」

 ハルカがデーターを覗き込む。

 「・・・接木は、できそうにないか」

 「スペクトルに差がありすぎるせいでしょうか?」

 「生きているコアがなければ、増殖不可能ということね」

 「でも・・・トリニティの限界ということは、精度の問題ね」

 「初号機がゼルエルの生体を取り込み、腕にしてしまったのも強制的にスペクトルを転換させたので、融合ではないですから」

 「惜しいわね。使えそうな、特性なのに・・・」

 「予算は、足りるんですか?」

 「NERV債の返済を被った日本は、ともかく。NERVの収支は、プラスになっているわ」

 「実質、エヴァ4体は、アイドリング状態でも、第3東京市の電力の半分をまかなっているもの」

 「・・・そうですね」

 「あとは、ゼーレ球と共存が出来るかどうか。疑問ね」

 「液体生命体の誕生ですか?」

 「12個のコアが意識群体を統合・順応化させてからだから、100年以上も先のことだけど・・・」

 「本当は、地球そのものが、そうなっていたんですよね」

 「ええ、進化の一つの形態ではあるわね」

 「精神的な葛藤はともかく。少なくとも物質的な欲望で争いは起こらない」

 「ゼーレ球を保持しているのは、その形態を確認したいという欲望ですか?」

 「ええ、人類に対する貢献と、人権保護だけじゃないのは確かね」

 「宇宙に存在するかもしれない。もう一つの形態ですか?」

 「群れのままの未来か。液状群集意識体の未来か。興味があるわね」

 「そうですね」

 「問題は、人類にそれだけの多様性を認める度量があるかどうかね」

 「一応、ゼーレ球は、保持ですよね」

 「宇宙にそういう世界があるかもしれないと、思えば、大勢は、そうなるでしょうけど」

 「現実に液体生命体を生み出した後は、どうなるか・・・・」

 「その頃は、宇宙に進出していますよね」

 「ええ、その頃には、液状群集意識体の対抗策も考えられるでしょうね」

 「それは、液状群集意識体の方も・・・・」

 「当然、そうなるわね」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

  

 オーストラリア入植地

 海岸と内陸に向かって広がる緑の若芽。大規模な区画整理と建設工事が行われていく。

 アスカ、レイは、工事状況を実地で検証。

 「レイ・・・・住み良くなりそうね」

 「ええ、日本より計画的」

 「森林は、これからだけど、いずれ再生する」

 「牧畜じゃなくて、農耕だから食べていける人間も多いはず」

 「資源もある。日本本土より力が付くわね。いっそ、オーストラリアに遷都すべきかしら」

 「そういった機能があれば、後は、政治家が決める・・・実質的にはトリニティね」

 「どうかしら、懐古主義者は、手強いはずよ。トリニティに理解できれば良いけど」

 「わからないように、枝葉の部分から法整備していけば良いわ」

 「利益誘導のやり方も、トリニティにプログラムされているから」

 「計算外の反応が起きたら」

 「そのときは、トリニティのプログラムを修正するわ」

 「3賢者というのは、そういう人種だったわね」

 「・・・・・・」 レイ

 「でも、オゾン層を破壊されていたときの悪影響は、ほとんどないみたいね」

 「見事に再構成されている」

 「サードインパクトとバウンドインパクトの調整が良かったのかしら」

 アスカは、周りを見渡す。

 「そのようね」

 「他人事みたいに・・・・」

 「最終的な、スイッチを入れたのは、碇司令の意思よ」

 「本当に事前に司令と意思交換はなかったの? 阿吽の呼吸?」

 「ええ・・・」

 「はぁ〜 あやふやな計画で人類の未来が決められたなんて、日本人のやり方なの?」

 「いえ・・・碇君が・・・そう望んだから」

 「ったく。シンジ、次第だったなんて、あいつが、LCLに融ける方を選択しなくて良かったわ」

 「・・・そう、よかったわね」

 「あんたは、本当に、どっちでも良かったわけ?」

 「ええ」

 「シンジに感謝しないとね」

 「間に合えばね」

 レイが空を見上げると、アスカもつられて見上げる

 天に向かって柱が伸びていた。

 オーストラリアから採掘された資源を加工精製し、アラエルへ送る。

 アラエルの無重力で、さらに加工精製したものを地上に降ろしていく。

 地球上の政治経済ピラミッドは、徐々に大きくなっていく。

 アスカも、レイも、計算していた。

 この政治経済のピラミッドをアラエルまで伸ばし、

 アラエルを中心に、もう一つ、逆さのピラミッドを造らなければならなかった。

 ・・・・・・・・。

 そして、地球のピラミッドより、大きな宇宙の生存圏を・・・

  

  

 箱根山

 零号機(ケンスケ、チアキ)、

 初号機(シンジ、レイ)、

 二号機(アスカ、ハルカ)、

 四号機(マナ)

 エヴァ4体が、巨大な輪を持って円陣を組み。

 渚カヲルが初号機の肩に乗っている。

 トリニティ制御で輪の中の黒い膜が広がっていく。

 カヲルが光質のリールを持って、初号機から、黒い膜に向かって飛び降りる。

 自由落下より少し遅い速度で膜の中に沈み込む。

 「カヲル君。聞こえる?」

 ヒカリが、オペレーターを務めて、カヲルを誘導していく。

 「・・・聞こえるよ。ヒカリ」

 「良かった」

 トリニティは、第11使徒イロウル。第13使徒バルディエルの欠片から同じスペクトルを探知。

 マヤの管制が始まる。

 「初号機。ハーモニックス率98パーセント。シンクロ率117パーセント」

 「二号機。ハーモニックス率93パーセント。シンクロ率106パーセント」

 「零号機。ハーモニックス率35パーセント。シンクロ率69パーセント」

 「4号機ハーモニックス率48パーセント。シンクロ率74パーセント」

 「現状でMAXです。第11使徒イロウルと第13使徒バルディエルを探知」

 「初号機、二号機、渚君は、現状の精度を維持して、誘導に従ってください」

 そして、黒い膜から第11使徒イロウルのコアが現われ、

 コアを持ち上げていた渚カヲルが地上に転がり落とす。

 「渚君。ご苦労様。続けられる?」 リツコ

 「ええ、大丈夫ですよ」 渚カヲル

 「では、このまま続けます」 リツコ

 渚カヲルが黒い膜の中に入る。

 そして、第13使徒バルディエルのコアを同じように地上に転がす。

 その後、ロンギヌスの槍でコアを貫くと、無傷のままコアと種子を抜き分けて、無力化。

  

  

 シンジたちは、第壱高校に入学。

 新校舎の高校。

 一番、点数の低い相田ケンスケに学校のレベルの方を合わせる。

 という裏技で、全員を準備していた高校に入学させる。

 さらに “高校は、海岸近くよ” という某勢力の圧力を受ける。

 桜並木は、日本の四季を回復したことを物語り。

 シンジたちは、珍しげに風に舞う桜の花弁に魅入っていた。

 「見て、見て、シンジ君」

 マナが、くるりとターンを見せる。

 「霧島マナ。15歳。早朝6時に起きて、シンジ君のために身支度しました」 敬礼

 桜の花びらが舞い散る中では、絵になるらしく。

 ケンスケが 「オゥー!」 と言いながらビデオをまわす。

 「と、とても、に、似合うよ。マナ」

  

  

 そして、アスカの裏工作で綾波レイ、朝霧ハルカは、生徒だけでなく、

 先生と生徒の兼任になっていた。

 「アスカ。人材有用法案って、このことだったのね」

 レイは、教員免許も取っていないのに、いつの間にか、先生にされていることに気付く。

 「ふっ レイも、シンジに “綾波先生” と呼ばれると良いわ」

 「何を言うのよ」 ぽっ

 「なに、赤くなっているのよ。変なやつ」

 「でも、碇君。大学レベルに達しているから、教える事ないもの」

 「本当に、どうなっているのかしら。中2までバカだったのに」

 「逃亡して戻ってきたら、大学生並みって、どういう頭の構造しているの?」

 「あいつ。危なく。わたしたちと同じ教員になるところじゃない」

 「碇君は、頭も良い」

 「あんた。シンジに、どういう教え方したの?」

 「碇君。素敵」 ぽっ。

 「けっ!」

  

  

 シンジ、ケンスケ

 「シンジ。良かったよ。第壱高校に補欠で入れたよ〜」 泣き。

 「ケンスケは、がんばったよ」

 「シンジは、わかってくれるよな」

 「新城に殴られ。タダシに嫌味を言われながら。惣流にバカ扱いされながら・・・」

 「うぅっ うっっ ぅぅぅ 暗黒時代だったよ〜」

 「わ、わかるよ。仕事ばかりしていたのに良く受かったね」

 「ぅぅぅ 辛い地獄の日々だった」

 「ははは」

 「あ、シンジ。そういえば、第壱高校の分校をアラエルに造るかも知れないんだってさ」

 「そうなんだ。まだ、再建で大変なのに」

 「バウンドインパクトで傷病者が健康体で再構築されなかったら、無理だっただろうね」

 「足手まとい無しは、大きいよ」

 「うん」

 「でもさ、シンジが予備役扱いになるのって、本当なのか?」

 「うん、僕も、綾波も、アスカも、カヲル君も、一階級昇格させて」

 「そのまま、予備役にするんだって、仕事量は減るんじゃないかな」

 「コアを回収して、することがなくなったから?」

 「んん 実戦配備じゃなくて、研究配備だって」

 「年齢と階級の辻褄を合わせるとか言ってたけど。かなり、自由な時間が作れるよ」

 「ふ〜ん。それで、俺ら新兵4人が実戦配備かよ」

 「NERVの方が楽なんだけどな」

 「ふっ シンジ。いい加減に人前で話すの慣れた方が良いぞ」

 「人前に立つ度に、げぇ〜 げぇ〜 やってたら胃が持たないだろう」

 「アスカの陰謀のような気がする」

 「人に財産を任せるんだから、シンジも良い度胸しているよな」

 「だ、だけど。ど、どうやって良いかわからなかったから・・・・」

 「まぁ 惣流もあれで、才能過多で良くやるよ」

 「同級生で先生だから。綾波も、朝霧も、凄過ぎだよ」

 「だけどさ。ケンスケも随分、カッコ良くなったよ」

 「シンジのそばにいなければ、かなりモテるよ」

 と、デジタルカメラを覗きながら呟いた。

 シンジは、思わず苦笑いする。

  

  

 綾波レイ(地理歴史・社会)。

 惣流アスカ(英語・ドイツ語)。

 朝霧ハルカ(数学・理科)。

 入学したばかりの一年生が二年、三年の教壇に立つと、

 生徒は、わざと難しそうな質問をする。

 しかし、三人とも、わかりやすく答えて、二年、三年も、絶句させてしまい。

 有能な教員であることを証明してしまう。  

  

 

 海岸近くの堤防で釣りをする集団。

 背後に古城のような大邸宅が建っている。

 「・・・シンちゃん、レイ。アスカ、マナとも、コンフォート17から、お別れか・・・・」

 ミサトが感慨深く呟いた。

 「でも、良く釣れますね。レイが竿に触っただけで、当たりが来るなんて凄いです」

 マヤがカレイを釣り上げる

 「んん・・・釣りがこんなに楽しいとは、将棋より楽しいかもしれんな」

 冬月が刺身を頬張る。

 「確かに楽しいですね」

 リツコも刺身を食べていた。

 釣った魚を次から次へと料理人が料理していく。

 その場で釣った魚を料理。食べられる贅沢な会食。

 レイは、自分で釣る暇がなくて、少し不機嫌だったりする。

 「・・・高級取りでエンゲル係数を下げたら貯まる一方だな」

 日向は自分で、釣り上げたヒラメを巻尺で計って、写真を撮る

 「料理人がいなかったら、そうなるわね。餌も、竿も、選んでないみたいだし・・・きた!」

 マヤが、きゃー! きゃー! と、釣り上げる。

 「竿垂らせば、新鮮な魚が釣れるんなら。わざわざ、買い物に行く必要もないだろう」

 「買うとしても肉か、野菜ぐらいだろう」

 青葉が思いっきり遠投。

 しかし、レイが触るだけで釣れるのなら、遠投にこだわらなくても面白いように魚が釣れる。

  

 釣りの後、古城へと案内されていく。

 見た目が古くても、最新のシステムで設計構築されていた。

 プロ仕様のキッチン。

 温水プールなどなど、広々とした空間と部屋。

 シンジ、レイ、アスカ、マナ、冬月が住んでも十分に余りある空間。

 その日。カヲル、ケンスケ、ヒカリ、チアキ、ハルカが泊まった。

 そして、やっぱり、3Dゲームが始まる。

 いろんな思惑が絡みながら。

 いくつかのグループに分かれて競争しながら魔王を倒しに行く。

  

  

 レイ、アスカ、ヒカリ、マナは、巨大な室内風呂(温水プール)に浮かび、

 ハルカ、チアキは、カプセルサウナに入って、首から上だけを出している、

 もちろん、全員、全裸。

 「良いわね。毎日、大豪邸のプールで泳げて、夏になれば海で泳げて。魚は、釣り放題」

 「生き残った者が勝ち取る栄冠かしら」 チアキ

 「でも・・・なんか恥ずかしくない?」

 「こんな広いプールで、全裸なんて」 ヒカリ

 「風呂だもの・・・・」

 レイが泳ぎながら、呟いて、潜る。

 まるで人魚の様に水に馴染んでいる

 「風呂ね・・・・・」

 ヒカリは、全長25m×幅10m×1.5mの浴槽を風呂と言い切るレイを尊敬の眼差しで見詰める

 「清掃ロボット付きの大豪邸か・・・・」

 チアキが浴場を掃除しているロボットを感心しながら見詰める。

 「新型清掃ロボットのモニターよ」

 「・・・・・・・・」 マナ

 「なによ? マナ」

 「んん・・・やっぱり、アスカの体が一番、プロポーションが良いわね」

 マナが思わず、アスカの胸に触る。

 「きゃ〜 マナ、なにするのよ」

 「あれ〜 アスカ。何気に教師やったり、金儲けやっている割に反応が良いわね」 マナが面白がる。

 「あんたね。マナ用に宿題を出してやるわ」

 「げっ!」

 「ふっ ふっ ふっ」

 「むむむ。職権乱用して」

 「職権を乱用できるだけの才能があるということよ」

 「ったく。アスカといい。レイといい。ハルカといい。どうして、こう、頭が良いのかしら」

 「天才だからよ」

 「くぅ〜 なんて、世の中不公平なのかしら」

 「マナのバカ力だけは、認めてあげるわ」

 「あのねぇ〜 技なの。技」

 「ふっ ねえ〜 ヒカリ。渚カヲルとどこまで、いったの?」

 アスカの言葉に視線がヒカリに集まる。

 「碇君と綾波さんと同じかな」

 「カヲル君が・・・高校を卒業したら結婚しようって・・・婚約」 真っ赤

 アスカ、チアキ、マナは、思わず退いて行く。

 「ヒカリも変わったわね。昔は “ふけつよ” とか言って、大騒ぎしていたのに」 チアキ

 「だってぇ〜 婚約だもの〜 “ふけつ” じゃないわよ」

 「なぜか、中途半端な婚約が流行ってるわね」 マナ

 「それを言うなら、結婚だって怪しいし」 ハルカ

 「そうでもないわよ。精神感応世界になってから。浮気は、すぐばれるから」

 「それこそ、破談や離婚を前提とした浮気になるわね」

 「さらに周囲にもばれるでしょう」

 「社会的にも、決死の覚悟が必要になるから、両方ともバレ難い者同士で浮気しないとね」 チアキ

 「なるほど・・・でも、婚約って、チョッカイかけたくなる誘惑に駆られるわね」

 「そうなのよね。相手がいるから気軽に声をかけても誤解されないし」

 「駄目元でチョッカイかけて、落ちたら。やった〜 で」

 「落ちなくても婚約者がいるから当然ねって、傷つかないから楽なのよね」

 「チアキ〜 なんて、こと言うのよ」 ヒカリ、ムッとする。

 「だって、シンジ君なんか、綾波さんと婚約してから、モテまくっているじゃない」

 事実だった。

 「はぁ〜 波風立てなくても・・・・」 ヒカリがぼやく

 「・・・・・・・・」 アスカ

 「・・・・・・・・」 マナ

  

  

 居間

 冬月とカヲルとシンジ

 将棋盤を挟んで考え込んでいるのは、冬月とカヲル。

 シンジは、横から見ていたが良くわかっていない。

 わかる者が見ると、矢倉(冬月)と美濃囲い(カヲル)で、同じ側に玉を囲って、側面の鍔迫り合い。

 その後、頭上戦を含めた。総力戦へと向かっていく。

 「・・・・ほう〜 渚君。なかなか、切り口が良いな」

 冬月が側面の不利さを省みず。

 玉頭攻めの一手を指す。

 「・・・幼少のころ、父に教わりましてね」

 「10日ほど前。ニューギニア島開発予算委員会で君の父上と話し合ったよ」

 「そうですか」

 カヲルが側面に3二へ飛車を成り込ませる。

 「間に入っても良いが・・・・」

 「もう、変わってしまって、会っても情感も湧かずに嫌な思いをするだけです」

 「そうなのか・・・・しかし、洞木君は?」

 「シンジ君も、彼女も、僕を敵ではなく。人として見てくれていました」

 「耳が痛いな」

 冬月が9筋の端歩突いて、さらに圧力をかける

 「自然な反応ですね。むしろ、そうじゃなかった二人に興味を惹いただけですから・・・」

 「隙が強みになる場合もあるわけか。4筋の様に・・・・」

 「構いませんよ。攻め筋です」

 カヲルが龍で、2一の桂を取る

 「・・・まだ、駒が、足りないな」

 「・・・・・・」

 カヲルが微笑み。冬月は眉間にしわを寄せる。

 ??のシンジ。

 冬月にすれば、個人で世界を破壊できる渚カヲルでも好敵手は歓迎。

 しかし、NERV副司令という立場と、年の功を見せたいところだ。

 盤上は、混戦状態から、中盤から終盤へと向かっていく、

 攻めるためには、互いに手駒が足りない。

  

 冬月は、シンジ、レイ、アスカの保護者に納まっていた。

 歳を取って、環境が変わるのも困ったものだが生活は、安楽だった。

 シンジ、レイ、アスカは、未成年でありながら大金持ちで実績も、実力もある。

 保護者になれる人間は、そう多くなく、

 いくつかの思惑の結果。冬月副司令に決まっても不当ではない。

 そして、正面で将棋を刺している渚カヲルは、リリンと馴染んで、

 加持と共に内調からNERVに出向扱い。

 リリスの不在と彼の人格と信用が、そういう状況と環境を作った。

 NERVの組織体系が複雑怪奇になったのも、

 それだけ、巨大な利権が渦巻いていたからといえる。

 今後の舵取りと調整は、使徒戦で挙党一致していた頃より難しく。

 保身で味方を作ろうとすると敵が生まれ、

 利権構造から、あっという間に派閥が作られていく。

 トリニティと派閥の癒着防止の戦いも激しさを増し。

 無論、癒着は潤滑油的な要素もあった。

 癒着構造というより。

 不正腐敗が悪いのだが、その線引きが微妙と言えた。

  

  

 ケンスケとタダシがビリヤードに興じていた。

 「タダシ。クロカミケル社の営業部長が試作スーツのモニターで煩いけど、どうしたら良いのかな」

 ケンスケは、白玉と3玉と穴のラインを固定させて突く。

 白玉が3玉を弾いて、穴に落とした。

 「あそこは、出来が良くないって、言ったばかりなんだけど」

 「だけどさ。自社用のパンフレットに一言 “賞賛のコメントを載せてくれ” だぜ」

 「コメントで、執筆料って、なんだ?」

 「接待だろう」

 「わかっちゃいるんだけどね。広報部の人も “頼むよ〜” だからな・・・・」

 「だいたい、俺らがパイロットだって言うのは、名目上は秘密だろ・・ げっ! はずれた」

 玉4が穴に入らず、中央に転がっていく。

 タダシがニヤリ。

 「ったく。汚いよな。会社案内とか言ってよ」

 「社員が働いている姿や、家族がそれを応援する場面を見せたり」

 「潰れたら数百人の家族が・・・・ とかいうし」

 「とんでもない昼食を並べたりさ・・・いや、わかるけどさ・・・・・よし!」

 タダシが玉4を落とす。

 「本当に自社用かな・・・ミサトさんがチルドレン用にマネージャを付けようかしら、とかいうけど・・・」

 「市販用だけならいいけど、ズルズルいかれたら困るよな〜」 タダシは、玉5で玉7を落とす

 「NERVも、むかしから、そういう、癒着めいたことやっていたからな。NERV印の小物も多いし」

 「トリニティが一番に標的にしているのが碇・惣流・伊吹連合財閥だろう」

 「だけど、枝葉の部分は、随分、手放したって、聞いたけど・・・・・」

 「根幹のエヴァ、トリニティ、アラエルのラインだけでも十分な癒着構造だよ」

 「国家並み権限を持つ大財閥だね」

 「まぁ〜 良いのか、悪いのか。今のところは良いけどね」

 タダシが、白玉を壁をぶつけて、玉5を落とした。

 「大きくなって、聖域が作られたら腐るだろうが、トリニティの決め付けだよ」

 「だけど、精神感応世界以前のプログラムだから・・・」

 「惣流社長の手腕次第かな。楽をして組織を大きくしていくか」

 「恨まれ苦しくても正道を通すか・・・・げっ! 外れたよ」

 タダシが、玉6を落とそうとしたが、失敗する。

 ケンスケがニヤリとして、白玉と玉6と穴のラインを合わせるが、玉9が間に入って邪魔をしていた。

 「でもさ、使徒戦の時代は、殺伐としていたけど」

 「人間同士で生き残ろうの意志が強くて、連帯感があったけどな」

 ケンスケがキューガイドを置いて、やりにくそうに身を乗り上げて、玉6に当てようとするが失敗。

 「そうそう。最近は、使徒以上に頭にくる人間が出てきたりして」

 「使徒は、憎しみに駆られてというより、継承権を行使しただけだもんな」

 タダシが玉6に当てて、そのまま、玉9にぶつけて落とした。

 「よ〜し」

 タダシのガッツポーズ。

 ケンスケの あちゃ〜。

  

  

 とある日の海岸、

 アスカとシンジは、国連関係者、山岸トオルを接待していた。

 そして、レイと山岸マユミは並んで釣り。

 こちらの方が、より深刻な問題を含んでいた。

 「サードインパクトで溶解した後。バウンドインパクトで再構成された場合」

 「使徒の種子を投与されていた人間は、種子が活性化して、特殊能力を持つ可能性があったの」

 「・・・・・・・」

 「NERV方式は、種子を投与されていたとしても不活性の状態がわかっていた」

 「だから、そういった実験は、されなかったけど」

 「ニュートラル型の場合。調整の関係で有効かもしれないと考えられていたわ・・・・」

 「それで?」

 「あなた・・・精神感応世界とは、連結されているの?」

 「連結されているけど・・・人とは、少し違うかもしれない」

 「こちらの能力は、隠すことが出来るから」

 「レリエル系のエヴァを建造しているけど。あなたなら乗れそうね」

 「それだけなの?」

 「もう少し、人権とか保障問題について、話すべきじゃない?」

 「あなた自身に価値が証明されれば、NERVの方から擦り寄ってくるわ」

 「・・・なるほど」

 「スポンサーにも困らない」

 「ど、どこが良いのかしら」

 「このままだと。国連から出向という形になるかもしれない」

 「レリエル型エヴァを起動できれば、国連でも、NERVでも、碇財団でも、即、内定」

 レイがヒットを確認。リールを巻き上げる。

 レイは、自分の特技をアスカの渉外に使われていた。

 そういう時は、人に釣らせる側に回ってしまう。

 最近は、魚群が減ったのか、魚床造りまで手を出していた。

 もちろん、魚床を作れば良いというものではなく、

 土壌のミネラル分を増やして、プランクトンを増やしていく。

 自然の循環をある程度、維持するため、人工的な干渉も必要だった。

 当然、開発や資金面でアスカの反発もあった。

 しかし、釣りの渉外が成果を上げているため、アスカも、渋々、妥協する。

 レイは、チヌを釣り上げて、ニンマリ。

 「・・・人体実験とか、されないかな」

 「わたしは、毎日、人体実験されていたわ。いまは、随分、減ったけど」

 「・・・ゼーレにいたときは、わたしも、そうだったけど・・・・もう、嫌だな」

 「そう・・・手品師にでもなれば、自由に生活できるかもしれない」

 「手品師か・・・ディラックの海を使えるのなら、良いかもしれないわね」

 「廃物処理業者でも良いわ」

 「んん・・・いけるかも」

 「敵は?」

 「あの後は、接触がないわ」

 レイがオレンジ色の結晶を取り出して、見詰める。

 「そう・・・推測も含めて話すとレリエルの種子が人間の体に入って、活性化」

 「増幅装置の様になっている」

 「彼らが飢えていると感じるのは、存在しないリリスへの渇望なの」

 「そして、存在しないリリスの代わりにATフィールドを持つ者を欲しがるわ」

 「生きている者なら、リリスのへの渇望は、小さいけど」

 「種子によって生かされる人間は、その欲望に抗しきれないみたい」

 「わたし、普通の生活は、出来ないのかな」

 「普通の生活より楽が出来るわ。見つからなければ、誰も、あなたに害を与えられないもの」

 「それは、大きな特典ね・・・・寂しいけど」

 「同じ仲間は、いないの?」

 マユミがヒットして、釣り上げに入る。

 楽しいのか、 キャー! キャー! と、はしゃぐ。

 「綾波さん。これなに? これなに?」

 「メジナ」

 「メジナ〜♪ 凄い。凄い。生きてる〜・・・・きゃー! はねた」 ニンマリ

 「・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・」

 「仲間は、まだ、見つかっていない。研究所も、宿舎も、破壊されていたもの・・・」

 「綾波さん。そういえば、渚カヲルが探すって、言ってなかった」

 「ゼーレの量産型エヴァのパイロットは、内調でも捜索しているけど」

 「パイロットの記録も、経歴も、抹消。顔を知っている者が探さないと無理」

 「それは難しいわね。パイロット同士が一緒にいたのは、少なかったし」

 「写真を撮られることも、なかった」

 「柔軟で連携した作戦能力は、低下するけど。上位下達を徹底させる方法で有効ね」

 「でも、結局は、コアで操作が出来るようになって、パイロットは、無用になったわ」

 「そう、おかげで、不確定要素が増えたわね・・・・!?」

 綾波の竿にヒット。

 釣り上げられる。ヒラメ。

 釣り上げられた魚の料理が運ばれてくる。

 「美味しい〜♪ この煮込みはなに?」

 「冬月副司令が、暇潰しに作った料理」

 「・・・美味しい」

 「渉外の手料理は、敵対心を減らせるから有効なの・・・」

 「ふ〜ん、確かに好感度は、アップね」 パクパクと食べる。

 「そう・・・」

 「ねえ、レリエルのエヴァは、いつ建造されるの?」

 「急いでないから3年後」

 「んん、18歳で乗るの? エヴァに〜」

 「虚数空間。ディラックの海に対する研究よ。戦う可能性は低いわ」

 「・・・・だと良いけど」

 「でもアダム系の複製コピーじゃなくて、レリエルの複製コピーだから。別の名前になるかも」

 「ふ〜ん。カッコいい名前じゃないと乗りたくないわね」

 「どういう名前が良い?」

 「んん・・・・・んん・・・・レリ・・・・・レリ・・・・・レリアース」

 「・・・そう・・・・レリアースで、いいのね」

  

  

 アラエル軌道エレベーターステーションのLCL液室

 第1使徒アダム(複製)。

 第11使徒イロウル。

 第12使徒レリエル。

 第13使徒バルディエル。

 第15使徒アラエルのオリジナルコアの5基が浸されていた。

 トリニティで解析され。

 データーが3Dで流れる。

 リツコ、ハルカ

 「・・・ハルカ。オリジナルの再生は、軌道に乗ったわね」

 「ええ、スペクトル偏差の調整。なかなか、手間取らせてくれた」

 「問題は、どうやって、パイロットを見つけるかね」

 「人柱は、抵抗が大きいわよ。セカンドインパクト後のような狂気は、ないから」

 「・・・やっぱり生贄待ちね」

 「それしかないわね。いくらトリニティがA8神経接続でも人類の生贄あっての数値だもの」

 「出来れば、良識を踏まえた良い人柱が良いわね」

 「子供を生んだばかりの母親ね」

 「よくよく考えれば、ひとでなしね」

 「セカンドインパクト級の出来事がないと無理かな」

 「いくら政府が残った家族を保証するといっても、それが人情ね」

 「精神感応で意図が伝わっていくのが止められなくても。政府も、世論が怖くて公募も出来ないみたいよ」

 「ふっ よくやったわね。わたしたちも」

 「でも・・・やらないと、NERV債を払えないんじゃない」

 「戦闘で、消費、破壊された分まで保障は、辛いわね」

 「接収なんかするからよ」

 「結果、良し。だったんだけどね」

 「債務総額を見れば、考え直したくなるけどね」

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 いつまで、『一人暮らし』のタイトルのまま続くのでしょう。

 いい加減に新しいタイトルを考えなければならないのですが。

 思いつくまで、そのままです。

 『続 一人暮らし』

 ・・・んん・・・いまいち。

 国連での日本の立場は、エヴァ技術、アラエル軌道エレベーター、トリニティのおかげで高いです。

 しかし、巨大なNERV債を被って対外債務は史上空前、前代未聞の影を落としています。

 使徒戦後、高校入学、ディラックの海からコアの回収。

 引越しなど、新たな状況と生活環境が生まれつつです。

 精神感応世界でも人の欲望は、渦巻いて、不正腐敗の予兆あり。余力が削がれます。

 チルドレンたちも巻き込まれ、少しずつ、無垢で、いられなくなります。

 シンジは、バカ殿のまま、傍観者を続けられるのでしょうか。

 少しだけ、綾波レイの寡黙な策士ぶりを出しました。直情型のアスカとは違いますね。

 

 

 

  

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第55話 『トライデント宇宙艦隊』
第56話 『高校生になったら』
第57話 『飄々と』
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