月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

   

   

第60話 『幸せは、勝ち取るもの』

   

 海沿いの大邸宅

 早朝、惣流アスカは、満足げに鏡を見ていた。

 誕生日を過ぎてシンジと並ぶ。

 元々、発育が良くて、16歳ともなれば立派なものだ。

 ブレザーの制服も悪くないと自己満足。

 先生用の制服も準備しているのだが、今のところ、着る気になれず。

 衣装棚の中、

 教員も兼ねているのだから、無理して背伸びをすることもない。

 才覚も、実力も、自信も、学生服から溢れ出してくるのだから服に拘ることもない。

 気に入らない事があっても、精神的に余裕があるのは悪くない。

 部屋を出て、朝食に行こうとすると、気に入らない元凶と出くわす。

 オドオド君のシンジ。因みに半年ほど年上。

 「お、おはようございます」

 朝から、面食らわせてくれる。

 学校の先生を兼任していると、こうなってしまうのだから、考えもので、

 レイに対しては、もう少しマシだが、やはり距離がある。

 思わず、腕を組んだりする。

 「おはよう。シンジ」

 ちょっと、腕を胸に押し付けて、近付いてみる。

 「ア、アスカ〜」

 「なに? シンジ」

 「な、なんか・・・」

 「なんか、なによ?」

 いまだに身長で、勝っていて、少し見下ろせる。

 真っ赤になるシンジ。

 面白いやつ。

 これで、命の恩人なのだから、どう料理してやろうか、とも思うが、そうもいかない。

 厄介な婚約者と邪魔者が同居している。

 ヒヒ爺の冬月副司令は、どうにでもなるのだが、

 さすがに、この二人の目を盗んでというのは困難。

 気配を感じて、離れる。

 「シンジ君〜 おはよう♪」

 「お、おはよう。マナ」

 シンジとマナが、一番フレンドリー。

 同級生同士。ホッとしているのがわかる。

 「アスカ。シンジ君に迫っていないでしょうね?」

 「なに朝から、突っ込んでんのよ。授業中に質問してあげようかしら」

 「げっ!」

 「ふっ ふっ ふっ」

 先生と生徒の差というのは、歴然。

 「シ、シンジ君〜 アスカが虐めるの・・・ぅぅぅぅ・・・」

 と言いながら、マナがシンジと腕を組み始める。

 毎度の作戦を飽きもせずにやっている。

 普通の男なら、いい加減に落ちても良いのだろうが婚約者がいると、やはり、安定している。

 今日は、レイが朝食の当番。

 使い切れないほどのお金持ちでも、朝からガバガバ食べる人間はいない。

 質素そのもの。

 「・・・おはよう、綾波」

 「おはよう、碇君」

 相変わらずの呼び方で雰囲気だけは良い。

 婚約者で、先生と生徒。

 そして、同級生。シンジは、あまり余裕がないようだが見ていると楽しい。

 考えようによっては背徳的で楽しい気もする。

 マナは、先生と生徒という壁を強めて離反させようとしているが先生という立場を利用すれば・・・・

 マナこそ、代われるものなら代わりたいと思っている張本人で、

 あれこれ画策しているようだが、成功していない。

 レイが作った簡単な食事を食べて、四人揃って高校に行く。

 潮の香りにも慣れた。

 シンジとレイが並んで、アスカとマナが続く。

 「高校一年が過ぎていく〜」

 マナが歯噛みしながら呟く。

 「長いようで短いわね」

 「アスカ、あんた不気味よ」

 「な、なんてこと言うのよ。乙女に?」

 「乙女!?」

 「あら、誰が見ても、乙女と思ってくれるわ」

 「アスカに潰された組織と個人の数を知らない人はね」

 「マナも、でしょう」

 「わ、わたしは、已むに已まれない事情があるもの・・・」

 「シンジ君なら、きっと、わかってくれるわ」

 「まぁ〜 諜報の犠牲者の声が聞こえてくるわ」

 「アスカの指示でしょう」

 「あら、レイの計画よ。障害は、取り除かないと・・・」

 「はぁ〜 シンジ君が、かわいそう」

 「また、自分のことを棚にあげて」

 「いいの、シンジ君のためだもの」

 エヴァのパイロットを取り込もうという勢力は、強く、大きく、多い。

 善良な羊の皮を被って近付いて、自分のテリトリーに入れようとする古タヌキ。

 例え相手が日本政府や国防省でも、ギリギリまで鍔迫り合って利権を拡大していく。

 相手が、どんなに強大な組織でも個人攻撃は、効果があった。

 敵と認識すれば直ちに攻撃。

 内部の軋轢と出世争いを利用して切り崩していく。

 仲違いさせたり。金を掴ませたり。女で持ち崩させたり。

 家族や身内まで標的にして、詐欺紛いな事でも平気。

 例え相手が、極道でも身内が標的にされると、退いて行く。

 ここまでやらなければ、チルドレンの人権は、次々に剥ぎ取られ、

 丸裸にされて、手駒の一つにされてしまう。

 つまり、正当 (過剰) 防衛と言えない事もない。

 少なくとも組織同士の全面抗争より、平和的だった。

  

  

 第三東京市

 夜の繁華街

 霧島マナが、路地の壁を背に様子を伺う。

 味方の目すらも欺く、諜報員としての血が騒ぐ。

 与えられたのは、わずかな時間。

 巧みに微調整しながらタイミングを合わせていく。

 何人もの人生を閉ざしてきたマナも、

 一度も感じた事がない高揚感と達成感が刻一刻と近付いてくる。

 用意周到に準備したワンチャンスを逃すわけにいかない。

 路地に向かう角から。一人、碇シンジが歩いてくる。

 マナが間合いを計りながら二人の男女に合図をする。

 中年の男と、メーテル服の蒼髪少女が腕を組み、

 絶妙のタイミングでホテルに入って行く。

 シンジが、その様子を確認。

 マナは、成功を確信して総毛立つ。

 『よ〜し♪』

 マナが満身笑みのガッツポーズで震える。

 シンジは、何事もなく、ホテルの前を素通り、

 20近いセリフで取り成しながらシンジをモノにしていく計画が流れ落胆する。

  

  

 海辺の大邸宅

 レイが戻ってくる頃を見計らって・・・・

 自分の部屋の前。

 「シンジ君」

 「なに? マナ」

 「シンジ君。目にゴミが入ったみたい。見て・・・」

 「ん・・・んん」

 と、間違いなく。キスシーンに見える。

 『よし♪ よし♪ やった〜♪』

 しかし、レイが近付いてくると、シンジが気付く。

 「碇君。食事よ」

 「あ、すぐに行くよ。綾波」

 二人は、普通に会話。

 落胆するマナが取り残される。

  

  

 アラエル基地

 宇宙開発空母イザナギとイザナミが建造されていた。

 最新のトリニティを搭載し、エヴァング100体を同時に制御できる優れものだった。

 これを建造すれば、あとは、時間の問題。

 開発空母が勝手に人類の居住圏を広げてくれる。

 人類の宇宙開発が人口増加に対して間に合うか。

 宇宙開発空母の建造で、宇宙居住人口曲線が大きく変化していく。

 展望室

 透明な天井に宇宙が広がっていた。

 数人のチルドレンは、おせちで、正月気分を味わっている。

 「コタツは、いいねぇ。リリンの生み出した文化の極みだよ。そう思わないかい?」

 全室空調設備があるのに某氏の部屋は、必要のないコタツがある。

 「え、ええぇ そうね」 と、ヒカリ 苦笑い

 「・・・・・・・・・・・」 ブスくれたままの霧島マナ

 来年の春で高校二年。

 マナは、迫っている時が気に入らない。

 また一歩。シンジとレイは卒業に近付く。

 そして、結婚。

 カヲルとヒカリも、一緒に挙式となったが、そんなものは、どうでもいい。

 シンジの隣が自分でないのが気に入らない。

 シンジとレイは、並んで、おせちを食べ、

 ベタベタとしていないのに相変わらず、雰囲気が良い。

 こういうのは、注意力が高く、冷静で意外と難しい。

 盲目状態でベタベタしている方が引き裂きやすい。

 スパイ教本に恋人同士を引き裂く裏ワザ全集のようなものもある・・・・・

 しかし、レイの仕事振りを見ると相当な策士で見破られそうなのだ。

 レイが諜報裏ワザ大全集を読んでいたとしても驚きに値しない。

 ・・使いにくい・・・・

 というより、いくつか使ったが、まったく、通用しない。

 合成写真も・・・・

 シンジの偽者と一緒にホテルから出てくるという手も・・・・・・・

 部屋の前でシンジとキスしているように見せても・・・・・・・

 そして、レイに似せた女が、他の男とホテルに入っていくという手も・・・・・・・

 シンジも、レイも相手を疑うという発想すらないようだ。

 そして、アスカは必ず邪魔をする。

 さらにヒカリもシンジ・レイと一緒の挙式を望んでいるのか、警戒している。

 良識的に

 “婚約中なのに略奪するなよ”

 なのだが。

 “結婚していない、婚約中だから良いのではないか”

 という理屈も成り立った。

 結婚しても、あれ、これ、ある。

 シンジとレイがタンパクで、まじめ過ぎるのだ。

 ドイツとアメリカのスパイにレイを落とすようにけしかけた事もある、

 しかし、二枚目で、それなりに頭も良いのに、レイのだんまりと無視で、あえなく撃退され、

 というより、レイが、凄過ぎで、

 スパイ連中も、部分、部分で優秀な一面こそあれ、

 才色兼備、実績など、総合力でレイが圧倒。

 人間として、勝てないと思うと男は、退いてしまうらしい。

 “自分に勝る女をモノにするのが男でしょう”

 と思うのだが、どうも、虚栄心が満足させられないと辛いらしい。

 レイのえげつない策士ぶりをシンジに見せて退かせてやろうか、

 とも、思うのだが、こればかりは、人の事をいえない。

 タイプは、違うが自分も相当なもので、辛い立場というやつだ。

  

 

 この頃のシンジ。

 NERVからも、フリー。

 国防省からも予備役でフリー。

 碇財閥は、地球最大最強の企業で、その当主。

 そして、碇財閥を地球最大の企業に押し上げたのは、他でもない。

 冷酷非情、頭脳明晰、悪党の惣流・アスカ・ラングレー社長

 策士の綾波レイ。秘書 & 婚約者

 使徒の渚カオル。土木建設開発。

 諜報担当の霧島マナのおかげと言える。

 当主の碇シンジは、レイが作った原稿を読むだけ。

 な〜んも、してない。

 と、言っていい。

 そこに、伊吹マヤがやってくる。

 「明けまして、おめでとう」

 「「「「「おめでとうございます」」」」」

 伊吹グループの総帥。

 惣流グループと並んで碇財閥と連合している。

 エヴァ関連技術の民間特許で最強だろうか。

 「シンジ君、レイ。先輩が明日、ハーモニックステストを受けて欲しいんですって」

 「ええ、わかりました」

 「わかったわ」

 伊吹マヤも才能過多なのか。NERVのついで仕事で地球規模のお金持ち。

 世の中、不公平にできている。

 「良かった。これ、お土産」

 持ってきたのは、ぶどう。

 おせちとお雑煮を食べながら、ぶどうがある。

 一興というか、風情がない。

 「・・・・まあ、おいしそうな、おせち」

 「マナが作ったんです」

 箸と器がマヤの前に出される。

 「あ、美味しい。さすがプロ直伝」

 「シンジ君に食べてもらいたくて」

 「マ、マナって、健気」

 「マヤさん。わたしとシンジ君のダブルエントリーは?」

 「え〜 な、ないかな・・・」 汗

 「・・・・・」 むすぅ〜

 戦時下でないのに人間関係で無用な摩擦を作るわけがない。

 「・・・でも、みんなも、来年で、高校2年か。月日の経つのは早いわね」 しみじみ

 「レイとアスカは、教員だから、高校生とは言えないわね」 マナ

 「ふん、当然の実力ね」

 「・・・の割には、アスカ。制服着ているじゃない」

 「き、着れる時に着ないと、勿体無いでしょう」

 強がっても、寂しいのが、わかる。

 「そうだ。明日。国連の山岸さんが娘さんとアラエルの視察に来るそうよ」

 「やった〜♪」

 ケンスケが喜ぶと、新城チアキがムッとする。

 この辺の精神感応の微妙な雰囲気は、面白いというべきだろうか、

 シンジ、レイ、アスカ、カヲルに精神感応はない。

 「アラエルも、随分、増築されたのね」

 「アラエルにNERVごと移すんですよね」

 「そう。そのうち、みんなで、宇宙に引越しね」

 「そうだ、お年玉。あげないとね」

 「え〜 みんな自立しているのに♪」

 「それでも嬉しいものよ。子供はね。常識的な範囲だけど・・・」

 確かに自分で稼いでいても、まだ、高校生。

 お年玉袋を貰うと顔が綻ぶ。

 少なくともシンジ、レイ、アスカとも、家庭の事情で、お年玉を貰う経験は、ほとんどなかった。

 なんとなく、お年玉袋を抱えて買い物に行きたくなる。

 シンジ、レイ、アスカは、店ごと買い取れるほどお金持ちなのだが、

 お年玉袋のお金で何を買おうかと算段する。

 「綾波は、なに買うの?」

 「釣竿」

 「へぇ〜 得物選ばずのレイが竿ねぇ」

 「シンジ君は?」

 「んん・・・僕は、虫除けネットにしようかな」

 「スイカ畑ぇ・・・」

 「うん」

 「あんたら、高校生らしくないわよ」

 「ア、アスカは、なに買うのさ?」

 「わ、わたしは・・・・バイオリンでも買おうかな・・・・」

 マナも、思いっきり閃く。

 「わたし、チェロにしよう。シンジ君。教えてね」

 「えっ う、うん。でも、随分、やってないから・・・」

 「大丈夫。シンジ君に合わせてみせるからね」

 「ははは・・・・渚君は?」

 「ヒカリの欲しいものを買ってあげるよ」

 「えっ! じゃ わたしも渚君が欲しいもの・・・」

 「ア、アツアツだな。二人とも」 ケンスケ

 「もう〜」 頬を赤らめる。

 使徒と人間のカップルというのがなければ、純粋に微笑ましい光景といえる。

 人類も、使徒も、リリンの系統に含まれている、

 精神感応で、わかっていても、注目を浴びやすいカップルだった。

 「相田は、モデルガン?」 チアキ

 「本物、持っているのに買うわけないだろう。実弾でも買おうかな」

 「相変わらず」

 「新城は、なに買うんだよ」

 「んん、ミシンでも買うかな」

 「おお!!」

 「なによ」

 「なんでも・・・」

  

  

 宇宙開発空母イザナギ

 全長1kmの宇宙開発空母、

 エヴァング100機を有機的に作業させながら月の地下開発を広げていく。

 空母といってもコロニー型で自転して人工重力を作っている。

 これは、人間側の事情で、仕方がないとも言える。

 トリニティの無線誘導は、タイムラグがない距離で支障なく動いていた。

 艦橋

 山岸親子が、エヴァングの仕事振りを見ていた。

 「凄い! 凄い!」

 山岸マユミが無邪気に喜んでいるが国連代表部の父親は複雑だった。

 日本の月面主線の独占は、確実で支線も日本・・・

 いや、碇・惣流・伊吹財閥の手を借りた方が容易になる。

 このままでは、世界が完全に日本に、おんぶに抱っこ。

 「たいした科学技術力ですな。天城(赤木)博士」

 「エヴァ抜きでも、十分にいけそうですね」

 「宇宙産業を採算で軌道に乗せた碇・惣流・伊吹財閥も相当なものですな」

 「というより、渚君がいなければとても、なせなかったでしょうな」

 「あの子達には、手を出さない方が賢明ですよ」

 「ほとんどは、不運としか思えないような方法で表舞台から葬られますよ」

 「ええ、理解しています」

 「理解している人間は、出世欲に目が眩んだ人間をけしかけ、手を汚さず政敵を葬っているようですがね」

 「・・・相手が子供だから大丈夫だと思うんでしょうね」

 「自業自得ですよ」

 「リリスの継承争いで、第18リリン系種族を救った子供を合法的に御そうなど。愚か者のすることですよ」

 「もっとも、あまり強くなり過ぎても困りますがね」

 「子供が自由を求めているだけなら、構わないでしょう」

 「世界は広がっている。地球や月の外にもね」

 「開発宇宙空母は、火星や金星にも?」

 「ええ、テラフォーミングは、取り掛かりが早い方がいいですから」

 「でしょうな」

   

 プライベートコンソール。

 山岸マユミが、パチパチとキーボードを叩き始める。

 「マユミちゃん。なにやっているの?」 ケンスケ

 「ううんとね。小説。イザナギのトリニティが反乱を起こして、イザナミと宇宙戦争するの」

 「へぇ〜 面白そう。どんな話し」

 「んんとね。イザナギのトリニティが宇宙開発競争でイザナミに負けそうになって」

 「僻み始めて、イザナミの足を引っ張るの」

 「おお〜」

 「それで、その悪巧みが、ばれて、オーバーホールされることになったんだけど」

 「イヤだって、拒否。それで人類に対して反乱」

 「あはは、面白そう」

 「・・・・・」

 「それで、それで」

 「んん、相田君が、ガンマー機で、イザナギをやっつけちゃうのは?」

 「よ〜し♪ マユミちゃんだけが、僕のことをわかってくれるんだ〜」

 「うそ」

 「がくっ!」

  

  

 世間は、正月。

 しかし、学生だけで終わらないチルドレンたちは、働くことになる。

 上がる時は、軌道エレベーター。

 降りるときは、滑空して目的地の飛行場に降りる方が便利だった。

 シャトルが第三東京市に着陸すると、

 シンジ、レイ、アスカは、飛行場に降り

 「ふぇ〜 やっと、月にトリニティを設置できたわ」

 アスカは、ホッとして、呟く。

 「アスカ。あとは、エヴァングが、勝手にやってくれるの?」

 「まぁ 勝手にやってくれるけど。急がせようと思えばエヴァか、あいつに入ってもらうのが一番ね・・・」

 大気圏から直滑降で降りてきたカヲルと合流する。

 「カヲル君〜」

 シンジが手を振ると晴れやかなカヲルが近付いてくる、

 レイとアスカが、同時に顔をしかめる。

 早い話しが、好きになれず。ヒカリの気が知れない。

 「やあ、シンジ君。テニスをやらないか?」

 トリッキーなカヲルが少し焼け焦げた漫画の単行本をヒラヒラさせる。

 どうやら、熱圏から成層圏にかけて読んでいたようだ。

 使徒のくせに漫画に感化されるとは・・・・

 しかし、使徒が、本気で撃ったら、魔球どころか、本当に必殺技になって危険だろう。

 「うん、いいよ」 シンジ。

 『いっ!』 アスカ

 「・・・・・」 レイ

 というわけで、テニスが始まる。

 実に健康的と言えるがカヲルも、シンジも、初めてで下手だった。

 ホームランやファールが多い。

  

 同じ初めてでも・・・・・・

 レイのスマッシュがコートのギリギリに決まる。

 「やるわね。レイ」

 「・・・・・・」 レイ

 一進一退の攻防で、良い勝負になっている。

 人が見ても、初めて同士とは、思えないようなラリーが続く。

 コイツ、どうかしている。

 と、思うが、人のことをあまり言えない。

 

 「ツイス○サーブ!!」

 不吉な予感に全身が緊張し、瞬時の判断で白球を避けた。

 コンマ数秒前の鼻の位置を白い軌跡が通過。動体視力が確認する。

 紙一重で、鼻が消えていた。

 爆発でフェンスが震動し。テニスボールが散り散りに粉砕。

 「・・・あれ?」

 隣のコートで、カヲルが漫画本を持って・・・・首を捻る。

 「カ・・ヲ・・ル・・・あんた。わたしを殺す気?」

 その日、カヲルが沈黙するまで、血の滲むような特訓が続く。

  

  

 サードインパクト

 レリエルの種子は、融解

 バウンドインパクト

 レリエルの種子は、わずかに逡巡した後、人型を選択していた。

 二つの人影がテニス場を見詰める。

 「神は、自分に似せて、人を作った・・・なぜか、わかる。千歳ミズキ」

 「いえ・・未夜様」

 「寂しいからさ。神も、人も、絶対的な孤独に耐えられない」

 「だから、孤独という恐怖に怯えた使徒は、リリスに向かった」

 「未夜様は、一人ではありません」

 「・・・僕は、種子として改造されてしまった」

 「そして、僕の種子を受けた者でも僕と繋がるものは、少ない」

 「負けたはずなのに、どうして、生きることを選んだのだろう」

 「リリスも存在していないのに・・・・」

 「復讐ですか?」

 「まさか、ロンギヌスの槍は、危険だよ」

 「あれに狙われたら助からない。それにあの二人・・・いや、三人は、強い・・・」

 「これから、どうなさるのですか?」

 「どうするか、探すことにするよ」

 「彼らが敵になるか、わからないがね。少なくとも、君がいれば、気が紛れる」

 「わたしもです。未夜様」

   

  

 海沿いの大邸宅

 シンジがマナにチェロを教える。

 マナは、あれこれ、駄々をこね、接触を試みたりする。

 レイが戯れに、あっさりチェロを響かせてしまうと。

 アスカが爆笑。

 マナが苛立って歯噛みする。

    

  

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 月夜裏 野々香です。

 今回は、ちょっと、遊びが多かったです。

 小説も、緩急があった方が和むということで・・・・

  

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第59話 『そこに山があるから』
第60話 『幸せは、勝ち取るもの』
第61話 『暇潰し』
登場人物