第61話 『暇潰し』
教壇に立つ、綾波レイ。
教え方が上手いだけでなく。
恋焦がれる男子生徒たちの視線が集中し、憧れる女子生徒も多い。
人気のプラスアルファで成績も向上。
進学率も高くなりそうで、学校側は、よしよし。
上級生の場合、下級生のしかも女子に教わるのだから、複雑な心境にもなるし、
一部の生徒は反発する。
しかし、絶対、わからないだろう。というような質問も、あっさり答えられる。
そういう、一年の生徒が、三人もいると、さすがに諦める。
それでも、諦めない生徒もいる。
メラメラと闘志を燃やす霧島マナ。
クラスは違うのだが飛び級でシンジと同級生になった鈴原ミドリも参戦。
こっちは、教員資格を狙ってさえいるから、
バウンドインパクト後の人材は、尽きない。
それとは、別に自暴自棄の問題児が数人。
主要な原因は、剥き出しの精神感応にあるのだが・・・・・
3年の問題児、石尾カイは、教室に居た堪れなくなって飛び出す。
授業に来たレイと出会い頭。
「どこに行くの?」 レイ
「・・・・・」
綾波レイの人類補完計画原案で苦しんでいる。
と思えば腹も立つのだが、公然の秘密。
エヴァのパイロットでリリン系人種を救ったと、社会的にも尊敬されている。
碇財閥でも、当主の婚約者、秘書、作戦立案、参謀格で重責。
そして、容姿端麗。
「授業が始まるわ」
「・・・・・」
頭二つ分低いレイに諌められると、少しばかり、調子が狂う。
まさか同級生の見守る中。
先生を兼ねた、下級生の女生徒を殴るわけにも行かず。
かといって、後にも退けない。
「う、うるせぇ! 邪魔すると、ぶん殴るぞ!」
脅迫。
「・・・・・」
石尾カイは、表情一つ変えないレイに気後れする。
「ど、どけよ!」
「・・・・・」
レイは無造作に近付き。
石尾は、振り上げた腕をそのままに退いていく。
教室の中にまで、じりじりと気圧されて、自分の席にまで戻され、
教室を見回すと精神感応で、自分がまったく支持されていないことがわかる。
「・・・・・・・」
「授業を始めるわ」
「・・・・・・・」
普段通りレイが教壇に立つと授業が始まる。
『・・・・・・・』
『なんだよ。石尾。怖気づきやがって』
後ろから、不良Bの声。
『い、いくらなんでも殴れるかよ』
ふてくされる。
大半は、おまえが悪いと、白い目。
そして、精神感応世界で、あまり知られていないこともある。
一部の生徒は、麻酔針を納め。
一部の生徒は、命拾いしたのは、おまえだという表情。
体格が良くても、急所は、ガラガラ無防備の素人で
マイナー情報で、レイは、格闘術もベテラン。内気功も、硬気功も自在。
ATフィールドを使うまでもなく、好きなように料理できたのは、レイの方だった。
その綾波レイが同じ一年の碇シンジと腕を組んで下校すると違和感がある。
こちらもエヴァのパイロットで碇財閥の当主。
しかし、人間的に弱そうなのだから不思議。
見ようによっては、才女が気弱な財閥当主を操っているよう見え。
実質、そういえなくもない。
愛があれば良いのだろうか。
どちらも、見た目で慎ましいせいか、お金持ちに見えない。
それでも、アスカに “今度の社交パーティで使うから装飾品を買いに行け” と言われ。
相応の物を買いに宝石店に行ったりする。
豪勢な美咲宝石店。
場違いな高校生達が美人店長に案内される、
接客室
マイセンの容器でケーキセットなど出されて、似つかわしくない接客がされる。
テーブルに宝石、貴金属が並べられる。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「綾波。どれがいい?」
「・・・別に・・・」
「・・・・・・・」
「碇君は?」
「・・・別に・・・」
「・・・・・・・」
どちらも宝石に興味がなかった。
レイは、シンジに買ってもらえば、それが宝物になるだけで、
テーブルの上で、キラキラと光る大きな宝石に関心を示していない。
まだ、胸に着けている小さなサファイアのネックレスの方がレイにとって価値があった。
世のお金持ちおじさんは、付け入る隙もない。で。
レイは “好きなの選んで良いよ” と言われても、好きな宝石がない・・・・・
希少資源の宝石も、持ち主を選べるのなら泣きたくなるほどで、
どちらかというと “塩が少なくなっていたっけ” とシンジとレイは思い出す。
「ほら見て、シンジ。似合う?」
アスカが宝石を付けて喜ぶ。
実に女の子らしい。
「「・・・・・・・・」」 シンジとレイが頷く。
「シンジ “アスカ、可愛いね、買ってあげるよ” くらい言ったらどうなの?」
「アスカ、可愛いね、買ってあげるよ」 棒読み
「・・・・・・」 憮然
「アスカ。自分の店の宝石を人に貢がせて、面白い?」 マナ
「あ、あのねぇ。世間には、世間の楽しみがあるの」
「楽しみねぇ・・・・・」
マナも、シンジが宝石に惹かれないとわかると眺めるだけ。
関心も、価値も、薄くなる。
アスカが美人の店長に目配せされる。
「シンジ。ちょっと、新作のデザインを見てくるから、ちゃんと選ぶのよ」
「うん」
「レイ、マナも見る? 新作デザイン」
「・・・・・」 レイ頷く
「・・・そうねぇ」 マナ
即金で、好きな物を購入できるようになると、目標を持って働いて購入する。
という楽しみがなく。
逆に金で買える物が色褪せ “賢者の贈り物” と、ほど遠い世界にいる。
お金持ちになったことで失った物悲しさを感じる。
一番、貧しかった対ゼーレ戦後ですら、貨幣制度が機能していた。
髪より値打ちのある金があると、ああいった関係を味合う機会もない。
仮に自分の髪を売って、シンジにプレゼントをしても、逆に退かれるだろう。
生存権を確保した富裕層は、面白みも、刺激も、贅沢になる。
そして、面白みや刺激を見出そうとすると、
組織防衛、勢力拡大、支配欲など、利己主義を追求したくなり。
きな臭い世界になっていく。
アスカ、レイ、マナが新作のケースを覗き込み。美咲店長が説明を始める。
『リクルーア株が増資するそうですが』
『実体のない、バブル企業株には、手を出さないわ』
レイとマナが頷く。
『あと・・・・ナノ技術のエヴァ関連規制を緩和する動きがあるようです』
『・・・どの程度、時間を稼げる?』
『何もしなければ、3ヶ月後の予算委員会で・・・・』
『伊予議員、美杉研究財団、技術省ね。彼の後援会は押さえられる?』
『予算次第です』
『・・・それは不味いわね。トリニティの目は、誤魔化せない』
『では?』
『たぶん、向こうが票固めで金を動かすから、証拠を押さえるだけでいいわ』 にやり
『わかりました』
『アスカ。敵対している新興企業のMGSネット、ムラサメ建設と伊予議員を橋渡ししてあげたら』
『後は、勝手に金を受け渡して癒着してくれるわ。ついでにリクルーア社も・・・』 マナ
『それで、行きましょう。目障りだったから丁度いいわ』
『・・・証拠さえ押さえれば、障害は、取り除けそうですね』
『マナ。いけそう?』
『もちろん』
『アスカ・・・相手の株も釣り上げて・・・こっちが、弱った振りをしたら・・・』 レイ
『『くすっ!』』
『吸収合併までのプログラムを作っておくわ・・・』
『レイ。リクルーア社は、いらないからね』
『ええ、わかっているわ』
そして、そういう世界を面白いと思っているのだから、
惣流アスカ、霧島マナも、悪党に分類できるかもしれない。
二人とも、正気、健全な部分、庶民的な感覚をシンジに委ねている点でゲンドウに近く。
綾波レイは、与えられた命題を巧妙に解く創造系で少しタイプが違う。
シンジは、腕組をして物思いの中にいた。
「シンジ。決めた?」
「・・・んん・・・」 シンジ
「・・・・・・・・」 レイ
「・・・・・・・・」 マナ
結局、ぼんやりしているシンジとレイに代わって、
「もう! わたしが決めるからね!」
キレたアスカが選ぶ。
人間、関心がないことには人形と化してしまう。
シンジも、レイも、アスカにコーディネートされてしまう。
宝石店の隣 喫茶店
「加持。あの三人、ますます綺麗になっていくな」 鞍馬ジン
「俺には学生服を着た化物にも見えるよ」
「あはは、違いない。並の人間は、それで騙される」
「アスカは、碇・惣流・伊吹財閥を核に勢力を拡大している」
「むかしのゼーレ並みになるだろう」
「加持。シンジ君は、入っていないのだろう」
「実質、飾りで実権のアスカ、実務のレイ、実行のマナだな」
「シンジ君は、相変わらずか」
「もとより、世界に対する戦略もない上に父ゲンドウの資産で、使いたくないのだろうな」
「アスカの方は、それがあると?」
「蓄積されたノウハウは持っていないから、試行錯誤しながらだ」
「しかし、動機もある、意欲もある。筋も悪くない。宇宙開発と南半球開発など、有望株を握っている」
「邪魔も、少ないか」
「キール議長ほどではないが、キール議長並のライバルは、根こそぎ、ゼーレ球の中だろう」
「まさか、シンジ君が資産をアスカに任せてしまうとはな・・・」
「あの3人は、世界を救っただけでなく」
「世界を創る方でも名を連ねることになる。この組み合わせ以外に起こりえない」
「ふっ しかし、アスカの野望の動機がシンジ君とはね。実に個人的で笑える話しだ」
「いや、鞍馬。フラレた傷心の矛先が世界制覇。世界が納得しなくても、俺は納得したいね」
「日本政府の碇財閥の解体計画も完全に御破算か」
「シンジ君は、能力的に秘めたものを感じる」
「しかし、動機と意欲で、無気力、無欲に近い」
「戦略的な支配欲も小さい。いくら資産があってもな・・・」
「仲間割れの可能性も小さいか」
「鞍馬。伊吹マヤの方は?」
「純粋にエヴァの民間移転技術で収益を上げている。王道だから手を出しにくい」
「三者三様で組んで鉄壁の布陣か・・・・」
「名実とも、味方も、多い」
「ゼーレ球に動きは?」
「今のところないな」
「しかし、ゼーレ球入りを望む人間も、少なくない。今のところ年寄りだがね」
「あれも、NERVのバックボーンになってしまったからな」
「ゼーレ球も、NERVも互いに利用しあっているのさ」
「人類補完計画ゼーレ案も深く静かに進行中か」
「人口増加の上澄み分がゼーレ球に流れるなら悪くないさ。お互い様というところだよ」
「しかし、LCLに解けてしまうのも、どうもな・・・・」
「溶けた時の感覚を覚えているよ」
「馴染むまで時間がかかる。昇華するには、もっとだ」
「ゼーレの遠大な計画には呆れるよ」
「どっちが主流なのかは、外宇宙に出てからのお楽しみだな」
「俺たちは、それを見ることはないさ。ゼーレ球に入れば別だが・・・」
「そうだな。だが子孫は見る・・・・加持。元気に育っているようだな」
「ああ、こんな俺でも、父親になってしまったよ」
「奪った分だけ、育むんだな」 にやり
「・・・・」 苦笑い
「別に珍しいことじゃない。生きているやつが歴史を作っていく」
「忌まわしい歪な歴史だな」
「そう、卑下することもないだろう。独り善がりな正義の歴史だ。堪能しようじゃないか」
「じゃ アスカが、どういう歴史を意図しているか、堪能してくるか」
「うまく独占をけん制して、調整してくれ」
「政府との紡ぎ方を間違えると、後々面倒になる」
「そうだな・・・」
アラエル基地
シンジ、レイ、アスカ、マナが財閥に移動し、予備役扱いで抜けてしまうと。
NERVで、純粋な実戦部隊は、相田ケンスケ、保坂タダシ、新城チアキ、洞木ヒカリの四人になる。
そして、任務は戦闘より、警戒・待機・開発に近い。
射撃場
的が撃ち抜かれていく。
四人とも射撃は、アスカ、レイに劣り、シンジを上回る。
体術の訓練もキチンと行われ、かなり強くなっていた。
「タダシ・・・・なんか、NERVも寂れてしまったな」
「使徒が来なくなって、保守と管理と維持に回ったからだろう」
「第一線から退いた大きいだけの縁側組織は辛いな」
「規制が緩和されたら、もっと日陰者だよ」
「はぁ〜 碇・惣流・伊吹財閥の独占も長くないか・・・・」
「日向作戦部長もヒマしているし」
「それでも、無駄に脅威を煽って敵を作るよりはマシだよ。昼行灯万歳」
「確かに危機管理で怪しいけど、出世欲や予算欲しさで、カヲルと戦いたくないからね」
「・・・・・・」 ヒカリ
「まぁ 精神感応世界じゃ 動機なんてバレバレだからね」
「国益より、保身や出世欲や予算欲しさで動いたら即バレで下手したら飛ばされるよ」
「ミサトさん。もう、戻って来ないかな・・・」
「主婦だから・・・いまごろ、環境の変化に堪えられなかったりして」
「そりゃあ、NERV作戦部長から、一介の主婦だとな」
「でも、天城(赤木)博士は、産後も第一線だぞ」
「使っているのは、頭だし。端末があれば、ほとんどの仕事ができるし」
「でも、子煩悩なのは驚きだね」
「んん・・・むかしは、ミサトさんだったけど。やっぱり、女性としては、リツコさんだよな」
「うんうん」
「だけど、晩婚化もわかる気がするね」
「でも、主婦能力の低い30過ぎの相手と結婚というのも・・・・」
「うん、うん、若い方が良いに決まってる・・・料理を失敗しても、まだ許せるし」
「そうそう。若い、若い、とか油断していると、すぐに適齢期過ぎて慌てて・・・入れ食い」
「あはは・・・」
「お、おまえら・・・・二人とも、的にしてやろうか?」 チアキ
闇討訓練
暗闇の中で、ヒカリとチアキが対峙。
基本的な型こそ教わるが応用になると、
個性を重視するため、少しばかり戦い方も違ってくる。
ヒカリが変わっているのは、闇討独特の戦法で剣術という概念から抜けたことだろうか。
竹刀の両端を持って、正対するのは、独特で、
一見すると正面から打ち下ろされて、一巻の終わり。
しかし、暗闇の中では、距離感が狂わされる。
竹刀で討ち合いを前提にしていたら距離が遠いはず。
ところが、ヒカリが相手だと竹刀同士がぶつかった時の距離が体術の射程内。
竹刀でどうにかするよりも徒手の方が有利。
最初から徒手による攻めを考えているのであれば、さらに有利な条件になってしまう。
そして、精神統一しやすいのか、
・・・・バシンッン・・・・
受けてしまう。
これは、4人の中で一番早い。
そして、竹刀同士が当たる感覚で相手の状態を察知。
相手にすれば、暗闇で、いきなり掴まれ。大混乱。
「・・・きゃっ!」
懐に飛び込まれて、落とされる。
背負い投げ。
点灯。
他の三人が真似しようとしても出来ないのだから、気質的なものだろう。
「ぅうう、また、負けた。闇討訓練だと、ヒカリが一番強いわね」
「闇討訓練だけね」
「愛の力は偉大ね」
「渚君に嫌われたくないから。ちょっと、必死かな」
「渚君、相変わらず、モテルから」
「そうなの、婚約って安心できないのよね。破棄されるとか考えると、泣きたくなるし」
「あはは」
「おかしくないわよ」
「いい男を捕まえると、そうなるのよ」
「だってぇ」
「ヒカリ・・・・次は、勝つからね・・・・・」
「・・・どうぞ」
暗闇
アメリカ合衆国
ゼーレの中核を失った混乱がアメリカの再建の政治、経済、官僚を混乱させていた。
利権抗争は数十の巨大なピラミッド構造は、数万の小さなピラミッド構造に分裂。
戦国乱世と思えるほどの血生臭い離合集散が繰り返され、
統廃合が行われ、新しい権力体制が構築されていく途上だった。
ワシントンDC 迎賓館
惣流・アスカ・ラングレーは、窓辺から外を見ていた。
窓から見ても、社会整備が整いつつあるのがわかる。
日本とアメリカで、いくつかの政府間協定が結ばれ、
碇・惣流・伊吹財閥は、仲介を頼まれていた。
バウンドインパクトで、アメリカ合衆国は、権力と富が再分配されつつあり。
アメリカ国民にすれば、機会を与えられ、救われたといえなくもない。
彼ら自身が、そう思えないとすれば、国力の再建で日本より遅れていることにある。
アメリカ人は、フロンティアスピリットを失いつつあり、
南アメリカへの移民は遅れていた。
一方、碇・惣流・伊吹財閥は、親方日の丸式で、南半球移民経済を誘導。成功している。
両者の違いは、国と国民の力関係。国民性の差。制度の差と言える。
豊かで利便性のいい生活を捨てられるかなど、
いくつものパラメーターが複雑に絡み合い、結果として差が現れた。
アメリカ、欧州連合は、トリニティーの介在を嫌うためマン・トゥー・マン効果が大きく。
碇・惣流・伊吹財閥は、日本政府とアメリカ政府の仲介に入るだけで利権が転がり込んだ。
窓ガラスに映る碇財閥当主シンジは、ソファで原稿を見ている。
演説に慣れたのか、トイレで、もどす事もなくなり。
日常会話もできるようになって少しばかり、余裕の表情。
レイとマナは、あと、2時間もすれば戻ってくる。
・・・・空いた時間、不意に思うことがある。
この引き締まった体と大きく形の良い胸。
本来の女としての使い方があるのではないかと・・・・
強靭な肉体から溢れる過剰なエネルギーを対外的な頭脳戦。
激しい運動で消耗している。
それでも、モヤモヤとしたものが残る。
適当な場所に適当な男がいる・・・・・
ちょっと華奢で、精神的に弱いが、こっちが有り余っているので気にならない。
いや、思い通りにできて、好都合。さらに恩人。
障害はあるのだが、惹かれてしまうのは、どうしようもない・・・・
少しばかり色っぽく近付いてみる・・・・・
「・・・・シンジ・・・」
「・・・な・・・・に・・・」
シンジは驚きの表情で仰け反る。
刺激のある良い表情で、なんとなくそそる。
逃げられないようにソファに押し付けて、
薄目で、ゆっくりと唇に近付く。
シンジは、驚きのあまり動けない。
唇と唇が触れ・・・
耳元へ吐息と一緒に甘く囁く。
「・・・シンジ・・・・しよう・・・」
「・・え・・な、なに・・・」
手を頬に添えると、
瞳孔が開いて、怖気づいて、少し震えているのがわかる。
・・・かわいい・・・
「・・・3Dゲーム」
シンジは、一気に脱力。
そして、契約成立後の祝勝。
酒場のラウンジ
ドレスアップされ。宝飾品に身を固めたレイ、アスカ、マナは、カクテルを楽しむ。
彼女たちは、酒場を支配する女帝にも思える。
※ 酒は二十歳からです。
シンジは、レイとマナに挟まれ。マナの向こうにアスカ。
レイ、アスカ、マナは、口紅をつけて、いつもと違う雰囲気で、
シンジは、緊張しっぱなし。
「シンジ。日常会話だけじゃなくて、冗談がわかるように勉強しないとね」
「はい」
まだ、ちょっと、情けない。
『シンジ君・・・ほら、あそこの金髪娘がシンジ君のこと見てるよ』 マナ
『え、いや・・・』 ドキドキ。
『今なら落とせるかも・・・』
『そ、そんなぁ』
なぜか、余裕をみせる。
見るだけで過食気味のシンジは、目のやり場にも困り “もう、良い” という雰囲気。
「シンジお兄ちゃん」
「ミ・・・・ミドリ・・・・ちゃん」
シンジの心臓が破裂しそうになる。
「へへへ」
「ど、どうして・・・」
「おじいちゃんの国際技術協力でついてきたの」
「そ、そうなんだ」
「おねぇちゃんたち、綺麗〜」
本当なら、中学二年。
しかし、鈴原ミドリは、教室は違っても、第一高校の同級生にまで飛び級し、
お兄ちゃん、お姉ちゃんと呼んでいた。
鈴原ミドリは、無敵の女帝三人にとって、唯一の鬼門。
レイも不安気味になり。
アスカとマナも警戒気味。
そして、ちゃっかりと、レイの隣に座る。
「ミドリちゃん・・・ジュースにしなさい」 レイ
「うぅぅぅ シンジお兄ちゃん・・・駄目?」
「えっ す、少しだけなら・・・いいんじゃないかな・・・」
「・・・・・」 レイ
「ぅぅぅ えへへ〜 シンジお兄ちゃん、女の嘘泣きには気をつけてね」
「う、うそ泣きなの?」
「アメリカン・レモネードね」
「う、慣れてる」
「シンジお兄ちゃん。女は、欲張りで弱い生き物だから、いつも嘘を付くの」
「そ、そうなんだ・・・」
「騙されないで、騙された振りをするのが、大人の度量よ」
「そ、そうなんだ・・・」
「シンジお兄ちゃん。わたしに騙されてみる?」
「え!」
「ガキは、10年早いわ」 マナ
「同級生だもの、早いかどうか、試してみたいな〜」
「無理、無理」
「マナおねえちゃんの先生には、なれそうだけど」
コーネル大学の在学証明書を見せる。
「ぅぅぅ なんか、癪に障ると思ったら、アスカと似てる・・・シンジ君〜・・・」
マナは、シンジの腕を掴んで泣き真似。
「な、泣き真似だったんだ・・・・」 ちょっとショック。
「そんな簡単なにフェイクに引っ掛かっちゃ駄目よ。シンジお兄ちゃん」
「そうなの?」
「女は感情移入から入るから、本当に見えるだけ」
「ミ、ミドリちゃん。いい根性しているわね」
「え〜ん シンジお兄ちゃん」
「ミドリ。アメリカで、一人寂しくしているのにマナおねえちゃんが、疎外する・・・」
「うぅぅぅ こいつ・・・」
「ぅぅぅ これが、ジャブかな」
「本当に聞こえた」
「半分、本当だから。マナおねえちゃんの部屋に泊めて」
「誰が・・」
「じゃ シンジお兄ち・・」
「泊めるわ!!」
「くすっ♪」
「あんたねぇ〜 婚約者の前で何てこと言うのよ」 マナ
「もう・・・おにいちゃんに甘えられなくなったから・・・・」
「・・・・・」 シンジ
「・・・・・」 レイ
「・・・・・」 マナ
「・・・・・」 アスカ
「でも、マナおねえちゃんは、婚約者を差し置いて、どうして?」
「わ、わたしは、仕事よ」
「わたしも・・・仕事・・・・・」
マラジョ島軌道エレベーター建設計画書を見せる。
「あぁぁああ!!・・・そ、それ!」
「アルバイトかな・・・別に碇・惣流・伊吹財閥に拘らなくてもいいけど・・・」 にや〜
「「「・・・・・・」」」 レイ、アスカ、マナ。
赤道直下に建設される軌道エレベーターは、南半球移民推進の起爆剤でもあった。
アメリカの人種、国境に囚われない度量の大きさは、健在。
相手が鈴原ミドリだと、あこぎな手は使い難くかった。
NERV 開発局
天城(赤木)リツコ、朝霧ハルカ
多種多様な研究がされていた。
第12使徒レリエルは、基礎研究が進んで次の段階に移行しつつあり。
第11使徒イロウル。
第13使徒バルディエル。
第16使徒アルミサエルは、生きた種子とコアがあるため、擬人化も視野に入る。
もっとも予算不足で、肝心のリリスのコアがない事から、現状は不可。
次期トリニティで期待される。
「・・・ハルカ。レリエルシステムの概念は、いいとして、パイロットは?」
「都合は、付いているわ。リツコちゃん」
「どこで見つけたのかしら?」
「碇財閥」
「はぁ〜 種明かしは無し?」
「・・・虚数潜空艦レリアース。しびれるわね」
「そりゃ しびれるでしょうね」
「あなたにとっては、エヴァシステムに続いて、第2弾ですもの」
「虚数空間の探検。何があるかしら」
「微細加工で、イロウルの方が需要が大きいはずだけど」
「次期トリニティ開発では、イロウルは欲しいわ」
「・・・生きたコアの基礎研究でレリエルが早かったから」
「それにリツコちゃんがコアに入ると困るもの」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「人としてのケジメというのがあるわ」
「リツコちゃん。罪悪感に浸って生きるのも悪くないわ」
「人類は、十分に軌道に乗りつつある」
「わたし個人より、イロウルによる波及効果の方が大きいのよ」
「生憎、セカンドインパクト直後の空気じゃないの」
「余裕があるから、寝覚めの悪いことをして欲しくないわね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
第壱高校
渚カヲル、山岸マユミ
昼下がりの教室。
渚カヲルは、窓辺に座って、ぼんやり。
山岸マユミは、空席を一つ空けた後ろの席で本を読んでいる。
表向き一般生徒は、徒然なるまま、陽だまりを過ごしていた。
「暇だね」
「少しね・・・」
「君たちの仲間は、半分が亡くなっている。数人が、まだ、行方知れずだけどね」
「そう・・・」
「顔とか忘れちゃったから、ATフィールドを使わない限り。もう、探せないよ」
「そう・・・」
「レリエルの種子は、まだ行方知れずだね」
「・・・たぶん、表に出てこないと思うわ」
「自分の意思で?」
「ええ、ロンギヌスの槍は怖いもの」
「たしかに、あれは怖いね。お手上げだよ」
「・・・渚君・・・・リリスを失った気分は?」
「さぁ〜 どうなんだろう。リリスが消えてから、タブリスは、引っ込んでしまっているし」
「拗ねているんだ〜」
「ふっ 不貞寝に近い、かな」
「リリスが残っていたら、シンジ君と・・・・」
「・・・戦っていただろうね」
「後悔している? 戦わなかったこと?」
「戦わなかったことは、後悔していないよ。戦いたくなかったからね」
「後悔しているのは、サードインパクトを起こせなかったことね」
「そうだね。僕が消えてもエヴァに乗っていれば、シンジ君たちは生き残るからね」
「リリスの故郷。行って見たいわね」
「そうだね・・・」
校庭を見ると、トリニティ制御のロボットが生徒とバレーボールをしていた。
駆動系以外を全て、遠隔操作に頼ったタイプで軽量で人間以上に動ける。
下手な先生より優れていることから、今後、公正を期したい職種に進出していく。
碇・惣流・伊吹財閥で開発したもので。
将来、ニューロン・シナプスマップを焼き写した自律タイプロボットが人権を持つか、
試金石にもなっていた。
そして、ゼーレ球入りだけが不死性の追求でない、というアンチテーゼでもある。
もう一つ、ゼーレ球の制御系タイプまで、検討されている。
こちらも、可能というだけで、実行されるかは、別の話しになる。
怖い話しなのだが、トリニティ系ロボットだけに依存するより。
自律系、ゼーレ系と分散した方が、保障の面で良いのか、悪いのかなど。
巷での議論は、続いている。
月基地
トリニティが進捗を3Dで流していた。
伊吹マヤ
カヲルとエヴァによって造られた広大な地下空間が造られていた。
太陽光熱集束塔によって、熱と光が地下まで送り込まれ。
光合成で自然環境が広げられていく。
トリニティ制御下のエヴァングが施工していた。
月開発は、地下開発といえる。
引力が6分の1(表面重力 1.622 m/s2,または 0.165 G。大気圧 3 × 10-13 kPa)でも、
居住区を地球の標準大気圧(表面重力 9.78 m/s2 大気圧 1013.25hPa)並みに上げていけば、変わってくる。
気圧は、単位面積に対して垂直な向きに働く。
地下空間を空気の重みで押さえつけてしてしまえば、地球並みの圧力になった。
居住区は、地表の重みで空気が吹き飛ばない程度の地下空間で、副作用や障害も、あったりする、
増圧、減圧も段階的に行い。
大気成分の調整が行われ。肉体に対する悪影響は押さえられる。
「伊吹社長・・・だいたい、これくらいになりそうです」
「酸素は、もう少し減らすべきかしら・・・・」
「そうですねぇ・・・これくらいの比率なら火災は、起き難いと思いますが・・・」
「トリニティの下限まで下げてみて・・・」
「はい」
「高気圧室か。採算が問題ね」
「月は、居住区として、あまり、あてになりませんね」
「今のところ、大規模には、造れないわね。割り切って資源衛星とすべきね」
「軌道ステーションや小惑星を工場にするほうが物質を均一化させるのに有利だから」
「太陽熱は、127度からマイナス173度、意外とエネルギーに困りませんね」
「それだけ太陽エネルギーが大きいということね」
「その気になれば、地核からも熱を取れそうだし」
「月の地核1600度というのは、手頃ですね。マントルの動きも大人しいですし」
「資源も使えるし、月は、人類にとって好都合な衛星ね」
「人類にとって、宇宙は、意外とやさしいかもしれないですね」
「渚君とエヴァのおかげね。そうでなければ、何人死んだか・・・」
「将来的には、不利益になると」
「・・・トリニティの計算ね」
「代価を払っていない貰いものだから、簡単に身に付かないでしょうね・・・」
「未経験者が住むようになれば、重大な事故も起こるでしょうか?」
「人間に蓄積された技能がないもの。権利を主張するには労働か、犠牲がないとね・・・・」
「宇宙が認めない?」
「法則が、でしょうね。全てエヴァング任せなら、別でしょうけど・・・」
「あとは、パワードスーツも含めた。サイボーグ化ですか?」
「ゼーレのおかげで、それなり進んでいたものね」
「バイオ技術はアメリカの方が先行しているようですが」
「好みによって、予算の比重が変わってくるから、全部で勝つのは無理ね」
HONなびランキング に参加しています。よろしくです。
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月夜裏 野々香です。
今回のアスカは、少しばかり、内向きになってしまいました。
地球の引力圏は、それだけ強いということでしょうか。
虚数潜空艦レリアースの建造は、ボチボチというところです。
虚数空間の向こう側、何があるでしょうか、
山岸マユミは、準主役 (短編) になれるでしょうか、
平行次元の異世界も悪くないです。
バウンドインパクト後
精神感応世界となって、内側に対して、ATフィールドが弱くなりつつある世界。
エヴァングで、ガンダム風かと思いきや・・・・・・
外世界へ向かうことによるATフィールド強化 & トリニティー制御の補完で、
もう少しATフィールドの寿命が延びるかもです。
第60話 『幸せは、勝ち取るもの』 |
第61話 『暇潰し』 |
第62話 『トリニティの憂鬱』 |
登場人物 | |||