月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

 

   

   

第63話 『高校二年の春』

 この時代、電子技術、エヴァ技術系の警備は、厳重で手が出せず。

 銀行は、電子マネーが進み過ぎて、その上、準備万端、待ち構えている節もある。

 そうなると、狙い目は、絞り込まれてくる。

 現物で小物で、持ち運びが楽で、価値がある物を扱う店。

 華やかな客寄せで魅力を全面に出さなければならない店構え。

 襲撃は、費用対効果で楽といえる。

 宝石店。

  

 トリニティの管理社会と人権、プライバシーという盾。

 二つの勢力が拮抗し、適当な場所で収まると、そこに隙間が生まれる。

 二つの影が監視カメラの死角をぬっていく。

 不定期で動き回る警備ロボットは、危険な存在でも機能停止させる方法は、難しくない。

 これがなければ、無敵。

 しかし、トリニティの完全支配を恐れる人間側が意図的に弱点を作ってしまう。

 隠れた場所から、小さなスイッチに命中させれば、良かった。

 「・・・いけるか。ケイタ」

 「ああ、一発で、機能停止させてやる」

 「機能停止した瞬間、トリニティに通報される」

 「・・・通報されても、必要なものを手に入れて引き揚げるさ」

 倒されるロボット。

  

 高校二年生。

 レイ、アスカ、ハルカにとって、それなりに手間のかかる時期。

 基本的に副担任ということで、クラスは、受け持っていない。

 それでも、あれやこれや、あったりもする。

 問題児の後輩が、入ってくる。

 そして、上級生になった生徒も、家庭の事情や環境の変化で荒れたり・・・

 気分次第で、荒れられる立場は、羨ましくもある。

 

  

 屋上 アスカ、マナ

 昼下がりの午後。調書を見るアスカ。

 「・・・ふ〜ん。動機は、わかりやすいわね」

 「精神感応をボカしているのは、さすがだけど」

 「古典的なプロファイリング捜査でも、十分に容疑者になる」 マナ

 「当てにできるの? プロファイリング」

 「相手が、プロファイリングを知らなければね」

 「でも、あれだけ大規模な撹乱ができると絞り込むのは、難しくない」

 「同級生の高校生二人組の怪盗か・・・」

 「宝飾店が3つ。やられたわ。さすが元少年兵」

 「あんたの元同僚よ。それに、わたしの店よ」

 「アスカ。宝飾業なんて、資源採掘のついで、趣味でしょう」

 「はねっ返り小僧に懐の広いところを見せてあげたら」

 「あのねぇ 趣味を邪魔されて黙っていられるか」

 「ったくぅ こんな動機で、わたしたちの体制に挑もうなんて、どうかしているわ」

 「気に入らない体制を変える方法は、合法か、非合法か。どちらかでしょう」

 「二人が本気なら選択が間違っているとはいえないわね」

 「非合法でやられて、間違っていないは、ないでしょう」

 「資金を得て、力をつけたら、合法に切り替えるんじゃない。それだけの力があればだけど」

 「ふん! スキル不足ね」

 「あら、個人レベルだけなら、ムサシも、ケイタも少年兵でトップレベルよ」

 「1体1だと、わたしも勝てない」

 「しょせん、個人レベルの能力よ」

 「ムサシ・リー・ストラスバーグは、トップクラスだけど。吾妻ケイタは、そうでもなさそうね・・・」

 「あら、吾妻ケイタと組みたがる人間は多いの」

 「集中力の持続が長くて、並みの少年兵の3倍くらいね」

 「だから、組み合わせは悪くない」

 「組む相手がムサシか、ケイタか、なら、わたしは、ケイタを選ぶわね」

 アスカが、別項の特異項目資料に目を通す。

 「ふ〜ん 休息が少なくてもよく。四六時中、周囲を警戒していられる人間か・・・」

 「こっちは、監視の網を広げるしかない・・・」

 「仲間が少ない時でも、彼がいれば全滅を免れる」

 「ムサシが、どんなに強くても、気が抜ける時間帯が長ければ、それだけ、やられやすくなるわ」

 「確かに少人数なら、用心深さで吾妻ケイタと組むわね・・・直接、来るかしら」

 「まさか、そこまで、捨て鉢になっていないよ」

 「どちらにしろ、証拠がないとね・・・・」

 「反トリニティ人権派に感謝すべきか。腹を立てるべきかね」

 「脱線しなければいいわ。隙間をスレスレでやれば良いのだから」

 「あの二人が掌で暴れても、そうなるわね・・・・」

 「だいたい、恨まれること自体が、心外よ。そんな、あっちも、こっちも立てられるか」

 「どうする? アスカ」

 「ふっ 覇道というのを教えてやるわ・・・というか、教えない・・・・」

  

 惣流・アスカ・ラングレー。

 碇シンジに対する愛憎は、朝霧ハルカという存在で、抑えられ。

 社会的な支配や成功へ向けたことで焦燥感が緩和されている、といえた。

 天才の名を欲しいままにしても、格下に思える碇シンジに命を助けられ、戦果と功績で敗北。

 初愛の相手も忌々しい綾波レイに奪われている。

 社会的地位は、ともかく。まったく、かっこ悪いの一語に尽きる。

 そして、彼の資産を運用して、急速にのし上がれた事も事実。

 彼女の気持ちを一番理解しているのは、これまた、忌々しいことに綾波レイと霧島マナだろう。

 碇シンジは、視野が狭いのか、意識が低いのか。

 綾波レイと上手くやっていくことしか考えていない。

 まったくもって、あんな小男。と、思ってしまうのだが、こればかりは、どうにもならないのだろうか。

 少なくとも、その小男のおかげで、命を救われ、支配欲が満たされ、世界が救われている。

 朝霧ハルカの出現も、使徒の渚カヲルを味方にできたのも、小男の碇シンジの手柄といえる。

 忌々しい愛憎を世界の覇権、制覇に向けるのも、やるせないが健全かもしれない。

  

  

 吾妻ケイタ、ムサシ・リー・ストラスバーグは、別のクラス2年A組に通っていた。

 二人とも、人型巨大ロボット系ジェット・アローンVの元テストパイロット。

 しかし、時田産業系列は、諸事の事情から生き残るために解体分割。

 二人は、負け組に組み込まれる。

 町工場での苦しい生活。

 二人を見守っていた町工場の夫婦もムリな受注、ムダな労力、ムラの連続。

 夫が過労で亡くなり。妻が自殺。二人が愛した娘も後追う。

 実質、彼らを追い込んだのは、大まかな方針で取捨選択を決めたアスカで、I・S・I財閥。

 しかし、戦後の復興、再建の日本で身寄りのない少年達が働きながら高校に行ける。

 こういった制度を確立できたのもI・S・I財閥の躍進と経済波及効果といえる。

 恨むというのは、筋違いに近い。

 しかし、彼らにとっては、アスカは、ヘル・アスカなのだろう。

 そして、憎むべき体制側。

  

 昼休み、ムサシとケイタが、パソコンを見詰めている。

 「ムサシ・・・・・マカオの密売ルートが潰されたぞ」

 「なんでだ? 盗品は、どうするんだよ。ケイタ」

 「トリニティの巡回査察に引っ掛かったらしい」

 「しかし、ボンベイの密売ルートから、注文が来ているぜ。指名でな」

 「“深緑サファイア”か・・・・コレクター好みだな・・・」

 「美咲宝石店。惣流の系列だな」

 「・・・適当に陽動を撒いて、混乱させてからだな」

 「まぁ 盗みを予告するほど自信過剰でもないし」

 「惣流財閥に余計に経費を使わせてやれば、気分もいいさ」

  

  

 日本警察のトップ。

 阿加佐テツオ、明智ミサ

 数十枚の予告状がテーブルに並べられていた。

 「不味いですね。首脳会議に合わせて・・・・」

 「んん、しかも、惣流財閥にケンカを売るとは、小癪な」

 「不味いですね」

 「進退問題になるぞ。君は、出世に響く」

 「ったく。人間って、口実さえあれば、追い落としをかけてきますから、困ったものです」

 「ふっ 人間のしがらみより。トリニティの査定の方が公正でマシとは・・・・・くさるな」

 「トリニティの査定評価がどうあれ。感情だけは、どうにもなりませんから」

 「盗難予告されて、I・S・I財閥の財が奪われたなど、格好な餌食」

 「公正か、忌々しくもあり、頼りにもなるか」

 「公正というのは、好き嫌いで贔屓できない。とかく、不便で融通の利かないものだよ」

 「I・S・I財閥も、トリニティの査定を都合よく変えるより」

 「そのまま、利用する方に切り替えているようです」

 「長いモノには巻かれろ、か。親方日の丸で、実に日本人らしい発想だ」

 「日本人に市民革命を期待するのは、諦めた方が良いかと・・・」

 「最初から、期待していない」

 「日本固有の格闘術も、敵の力を利用する向きが強い。他国の相殺戦とは違うよ」

 「ですが危険を冒しての予告状配布。意図は、なんでしょうか?」

 「陽動だな。本当に狙うのは、一つ。後は、体制に対する挑戦だ」

 「戦後の復興と再建で、無能な既得権益者が追い落とされて、伸びたのは、簒奪者と実力者」

 「そして、ムラな既得権益者を一掃して、奇跡の復興」

 「無能な偽りの簒奪者が消えて残ったのは、実力者だろう」

 「こういったことは、第二次世界大戦後の日本でも起こった」

 「今回は、好都合な辛勝の上に、マギ、トリニティ、エヴァ、使徒。東南アジア、豪州、月開発が付いて、大躍進だよ」

 「そして、振るいに掛けられ、落とされた者たちの中には体制を憎み」

 「非合法でも這い上がろうとする、ですか?」

 端末のシグナルが光る。

 「そんなところだろう」

 「愉快犯がでてくるのは、もう少し先になる・・・ん・・・惣流財閥からメールか・・・」

  

  

 公園

 吾妻ケイタ。ムサシ・リー・ストラスバーグ。

 なぜか、回りを気にするケイタは、仕掛けた盗聴マイクを気にする。

 「・・・・どうだ? ケイタ」

 「見張られては、いないな」

 「神経過敏じゃないのか? 夜中に足跡を聞いたくらいで」

 「・・・その手の訓練を受けているやつは、足運びで、だいたい。わかる」

 「姿を見せない時は、ほとんど無音に近く。気配もない」

 「姿を見せる時は、静かで必ず死角に立つか。有利な位置に立とうとする」

 「一般人と違って、いきなり警戒範囲内に飛び込んでくる。訓練を受けた人間の習性だよ」

 「訓練を受けると条件反射で、それをするんだ」

 「そうじゃなかったのは、あの加持くらいだな」

 「んん・・・確かにあの男は、無神経で、ふてぶてしい」

 「俺たちのこと、ばれたかもな」

 「本当かよ。そんなドジは、してないはずだ。それに捕まっていない」

 「証拠がないからだろう。ムサシ。おれにも死角は、あるから、用心してくれよ」

 「ああ、気をつけるよ」

 「じゃ 俺は仕事に行くからな」

 「ああ、俺もだ」

 二人は、公園で別れて、別々の仕事をする。

 ムサシは、工事現場。ケイタは、精密機械の検査。

 トリニティ一基が個別に制御できるロボットは1000体にも及び、

 ロボットの産業進出も急速に広がっていた。

 個々のロボットは、それぞれ、知・情・意の比重が違い。

 聖人・賢人プログラムの優先順位も微妙に違う。

 別個の個性にも思えるがトリニティが全て制御していた。

 そして、人間の職場を奪っていく。

 それも、公正である事を求められる。管理側が多くなっていく。

 これでは、どっちが主人なのかわからなくなる。

 しかし、総論で反発されても、各論で公正さを求める人間側の意見が通ったりもする。

 人間社会は、ロボットとの関係を模索しており、

 いまだに理想的な関係を見出せていない。

  

  

 NERV アラエル軌道要塞

 建造が進む虚空潜航艦レリアース。

 「リツコ。どう? 調子は?」

 「ミサト。久しぶりね」

 「本当。わたしも、おばさんになっちゃったし」

 「あら、もう、おばさん宣言」

 「リツコも、いい加減に諦めたらどうなの、お・ば・さ・ん」

 「・・・今、若返りの薬を開発中なんだけど、ミサトには、あげない」 憮然

 「え! うそ、うそ、リツコ。お願い!! リツコ様!」

 「じゃ 特別に開発したばかりの薬を上げるわ」

 「ん、まさか、人体実験じゃないでしょうね?」

 「・・・・・・」

 「あんたわぁ〜」

 「主婦業には飽きた?」

 「チョッチね。レリアースについての意見は、後で、あなたの端末に送ることにするわ」

 「一応、救世の将校の意見も考慮しないとね」

 「まあ、大した意見じゃないけど、呼んでくれてありがとう」

 「ヒマしていたら、いい気晴らしになったわ」

 「随分、変わったでしょう。NERVも」

 「緊迫感がないわね・・・わたしと同じか・・・・」

 「もう、戦う部署じゃないもの」

 「リリスの相続争いに勝って、たるんだ?」

 「テラフォーミングが進めば、世界が広がって、適度な緊張感が残ると思うけどね」

 「上手くいきそうなの。テラフォーミング?」

 「上手くいくのは確かだけど。予算次第よ」

 「相変わらず予算か、シビアねぇ」

 「あまり搾り取ると、国民は生活苦になるし。国債で借金先送りにすると、経済破綻もあるし」

 「日本政府と国連の関係もあるし。地域主義と地球主義。相反するからどうしても、歪になる」

 「アメリカ主導のときは、民主主義的な要素が強かったけど」

 「日本民族だと、どうしても、民族回帰主義のドメ派に引っ張られ、囚われる」

 「ったく。いい加減に人類ごと掻き回したくなるわね」

 「本当、南半球の遅れた世界がないから、それほど、抵抗がなくてもいいのに・・・・」

 「なに、リツコも差別主義?」

 「奇麗事言って。現実を言ってるだけよ。ミサトだって、未開の土人と結婚生活は送れないでしょう」

 「まぁ・・・ねぇ」

 「セカンドインパクトで、その心配がなくなったのは、いいような、わるいような」

 「人類の業も、まだまだというところか・・・」

 「ところで、リツコ。レリアースのパイロットは?」

 「それは、教えられないわね」

 「ま、そうでしょうよ」

 「加持君は、元気?」

 「ええ、たぶんね」

 「なに・・・家に帰ってないの?」

 「いるのは、週に二日くらいね。男って、いいわね」

 「外出する理由なんて、いくらでもあるんだから」

 「ふっ」

 「リツコは、上手くいっているの?」

 「ええ」

 「いいわねぇ」

 「あら、これでも、若作りで大変なのよ」

 「美しくないと女じゃないか・・・」

 「・・・・・」

 「ねぇ リツコ。マヤのやつ。浮いた話しはないの?」

 「どうかしらねぇ 潔癖症なところがあるから・・・あれで、少女趣味だし」

 「大財閥の社長なのに白馬の王子様を待っているわけぇ〜」

 「人任せのね。基本は技術屋よ」

 「ふ〜ん・・・相変わらずか・・・・じゃ 帰るわ」

 「そう・・・そのうち、飲みに行きましょ」

 「あら、リツコから誘うなんて、珍しい」

 「独身者とは、話しが合わなくなる事があるから」

 「あはは」

  

  

 その日

 各国の閣僚が日本に集まって首脳会談。

 宇宙開発の調整は、日本が相互主義の原則を利用して、階層型を意図し。

 米欧列強は、可能な限り開発余地を残しながら細分化で自国の権益を拡大しようと模索する。

 遅れた国は、物乞い思考なのか、機会均等平等主義。

 国家間レベルで上層部同士の調整が進む中。

 

 それ以下の階層の都市ドラマも並走する。

 あちらこちらで、発炎筒による小火騒ぎ。

 市内をパトカーと消防車が駆け回り。

 無差別な飽和撹乱によって、警備は、手薄になっていく。

 「あいつら、世の中を無法地帯にする気ぃ 日本の敵、社会の敵ね。無茶苦茶して・・・」 アスカ

 「復讐するは、我にありね」 マナ

 「“復讐するな” とは言わないけど、見境がないところなんて、小物の証拠よ」

 「法も作れず。維持もすることも。守れもしないやつが、でしゃばるな」

 「小物か。シンジ君が大物だったら、アスカは、まだ中小企業の社長ね」

 「ぅぅ シンジが大物だったから、わたしに任せたのよ」

 「そういう考え方もあるわね。でも、よく惣流財閥で碇財閥の方を吸収しなかったわね」

 「そこまで欲深くないわよ」

 「・・・・・」

 「・・・マナ。ちょっと、遠すぎない。見晴らし悪い」

 長距離望遠鏡で覗くアスカ。

 「しょうがないよ。吾妻ケイタ。あいつ全周囲で用心深いから。このくらいの場所しかないもの」

 「警備状態は?」

 「それなり、よ」

 費用対効果を考えれば、過剰に警官を配備できるわけもない。

 「それなり、か。証拠を掴んで三下にしてやる。見てなさい。あのクソがきども・・・」

 「それより、アスカ。午後の会食。行かなくて良いの? 国際問題になるわよ」

 「まだ、時間はあるわよ」

 突然、市街地の一角から、迫撃砲が撃ち上げられ、美咲宝石店の上空で、爆発。

 「な! なに?」

 『やられました。電波障害です。警察と連絡不能』 通信が入る。

 「ち! そこまでやるわけぇ」

 「光学は?」

 『熱蒸気で解像度低下します』

 「ちっ! 砲弾に蒸化剤も混ぜていたわけか」

 「警備ロボットを急行させて!」

 『ロボットが機能停止させられています』

 「うそっ! 同時に二体のロボットを機能停止させないと駄目なはず」

 双子使徒イスラフェルの応用だった。

 互いの機能停止スイッチボタンを別のロボットに置き。両方、同時にスイッチを入れないと機能が停止できなくしていた。

 「やるわね。マナ。こっちの手の内が読まれていたの?」

 「んん・・・そう思わせたいのか、そう思わせたくないのか・・・・」

 「もう〜 緊急閉鎖!!」

 『了解』

 

 

 公園

 吾妻ケイタ、ムサシ・リー・ストラスバーグは、クレープを頬張る。

 「どうだ。ムサシ。上手くいっただろう」

 「まあねぇ」

 「本当に疑われていたのか。元手、掛け過ぎだろう」

 「用心に越したことはないよ」

 「まぁ、いいか・・・・ボンベイの密売ルートとの取引は?」

 「金が振り込まれたら、暗証番号を教える」

 「ざまぁ見ろだな。惣流のやつ。あんな、双子ロボットに頼るなんて、ヤキが回ってる」

 「慌てたくせに・・・」

 「ち、ちょっとな」

 即席で、狙撃銃2丁を紐で固め、隙間に木切れを挟んで調節。

 タイミングを合わせて、一度に引き金を引いただけだった。

 とはいえ、並みの判断力、狙撃能力でないのは、確かで、少年兵で、トップクラスといわれる由縁だろうか。

 

 

 海沿いの大邸宅。

 スイカ畑

 「・・・シンジお兄ちゃん。ロボットがスイカ畑をやったりするんだ」

 「トリニティ直結で、できるかどうか、試しているんだって。他にも野菜を作らせてみるらしいよ」

 「ふ〜ん。上手なの?」

 「ベテラン生産者のマニュアルで、やっているんだ。たぶん、僕より上手いんじゃないかな」

 「マメねぇ 雑草抜いたり、アブラムシ獲ったり・・・あっ! 実を取った」

 「一株辺りの実が多いとスイカが小さくなるから、実を取ったりするんだ」

 「普通、一株辺り、二つから、三つかな。でも、売るつもりはないから、四つでも良いかも」

 「あたまいい・・・でも、なんでメイド型ロボットなの? それも美人」

 「じ、需要が、あるって・・・」

 「ふ〜ん。シンジお兄ちゃんの趣味?」

 「ち、違うよ」

 「・・・でも、護衛も兼ねているんでしょ」

 「らしいけど。なんか、趣味を取られたみたいで少し寂しいかな・・・・」

 「お兄ちゃんは、綾波おねえちゃんと釣りをしたりしないの?」

 「するけど、今は、スイカを見ないと、綾波も美味しいって、言ってくれるから・・・」

 「へぇ〜 なんか、大人な感じで愛し合っているって感じぃ」

 「うん」

 「はぁ・・・・いいなぁ〜 わたしにも、いい彼氏ができないかな」

 「ミドリちゃんには、きっと、いい彼氏が見つかるよ」

 「・・・・・・」 ため息

 「あっ 香取。冬月副司令は、夕食に間に合うのかな・・・・・」

 「はい、予定通り、こちらに向かっています」

 「メイドロボットに名前があるの?」

 「アスカがストレスのはけ口で虐めるから、名前を付けたんだ」

 「あはは・・・」

 「変かな」

 「いえ、アスカおねえちゃんらしいなって」

 「アスカに会社を任せたから大変なんだと思うよ」

 「適材では、あるわね。シンジお兄ちゃんは、自分でやろうとか、思わなかったんだ」

 「ぼ、僕には無理だよ。どうやっていいか、わからなかったし」

 「ふ〜ん」

 「でも、ミドリちゃんは、凄いね。アメリカの国家事業を代理するなんて」

 「まぁ〜 おもての顔って、ところね。傀儡みたいなものだから・・・」

 「それでも凄いよ」

   

   

 大邸宅の訓練場

 人間の機動力を高めてしまうパワードスーツが、あれば、その逆のものもある。

 むかし、某アニメのアイテムなのだが、あれより進化した物があったりする。

 肌色で、ほとんど紐に近く、調整も自在で、伸縮も早く、かさばらない。

 エネルギー過剰のマナ、アスカ、レイも好んで着用し。シンジも着用させられている。

 それは、日常生活が困難になったりするほど、抵抗力がある。

 それで、人並み以上に組打ちの訓練をしたりするのだから、訓練不足の割に強かったりする。

 アスカも、マナも、むかしのような刺々しさはない。

 互いに技を確認するような立ち合いに終始していた。

 「アスカ・・・・収支は、保険金と、ボンベイルートで、プラスになったわ」

 「ふっ 世の中、お金持ちが勝つようになっているのよ」

 宇宙や海洋で採掘した宝石を市場調整しながら高値で売り。

 保険をかけて。

 マカオ密売ルートを潰し。

 ボンベイルートで、特定の宝石を定価の10分の3で購入すると闇ルートに流す。

 ケイタとムサシは、成否どちらに転んでも、利用されるだけ。

 アスカは、保険金で元金を補償され。

 さらにボンベイ密売ルートで盗品として半額で流していた。

 保険金詐欺に近いのだが、一応、法的にも善意の第三者になっており、

 マネーロンダリングも行なっている。

 これでは、トリニティも、手が出せない。

 とはいえ、惣流財閥にすれば、宝飾業そのものが海洋資源採掘のついで仕事。

 アスカの趣味でしかない。

  

 アスカとマナは、互いに隙を見せて誘う。

 「・・・大人しく、証拠を掴まされていれば、子飼いにしてやったのに、あのバカども」 アスカ

 「男って、弱みを掴まれるのが嫌いなのよ」

 「どうしようもないわね。アスカも支配欲ばかり強くなって・・・」

 「悪かったわね」

 相手のくせが分かってきているのか、フェイントをかけて、様子を見る。

 「ところで、アスカ。鈴原ミドリがシンジに近付いているみたいだけど」

 「スイカ畑を手伝っているんでしょう。あいつ、苦手なのよね」

 「アスカと同類でしょう」

 「天才か・・・・もう、どうでもいいわ」

 「むかしは、もっと誇ってたじゃない」

 「誇っていたのは、努力してきたことよ・・・」

 アスカが虎穴入らずんば式にマナの懐に入り込む。

 踏み込んだ後、フェイクと、互いの技が交差。切り替えし、そして、速攻。

 「・!?・・・」

 「・・くっ!・・」

 捻り上げられて落とされたのは、アスカだった。

 「ちっ!」

 「・・・手強くなっても、マッタリやられると、荒くなるわね。アスカ」

 「もう!! むかつくわね」

 アスカは、体格でマナに勝っていたが戦うと負ける。

 詰め将棋の要領だろうか、格闘技に関して言うと、マナが、数手先を読んでいる。

   

   

 堤防釣り

 レイ。カヲル、ヒカリ。マユミ。ほか学生たち。

 不登校や不良系の学生たちも、綾波に誘われて釣りに来ている。

 荒れている生徒も何匹か魚を釣り上げてしまうと、なんとなく雰囲気が良くなったりする。

 生徒同士で反発しても釣りで緩和されることもある。

 家庭問題で荒れても、一時的に忘れたり。

 特にレイが寄ってきて、竿に触ってすぐに釣れたりすると。

 男子ならメロメロで、女子でも、ぽっ! で、尊敬されたり。

 ムシャクシャしている生徒も釣った魚の血抜きをすると刺激があって、気が紛れるのだろう。

 「げっ! 血・・・・血だ・・・」

 で、落ち着いたりする。

 説教染みた事をほとんど言わないレイが先生、先生と慕われ。

 ファンになっている生徒やベッタリ引っ付いている生徒がいて、効果があるのだろう。

 「綾波さんのおかげで、釣りに目覚めちゃったかな」 ヒカリ。

 「そう」

 と言いながらレイに竿を触ってもらうことを前提にしている。

 おかげで、大自然との一体感がなく。

 待つという行程が省かれているので目覚めたは、かなり怪しい。

 マユミは、きゃっ! きゃっ! 状態で釣りをして

 と同時に三者間で、ATフィールド通信していたりする。

 『心の壁で、あるはずのATフィールドを通信に使うなんて』

 『リリンの文化は、偉大だね。好意に値するよ』

 『純正使徒やコアをバックにしていないから、小技でやるしかないもの』 マユミ

 『・・・・・』

 『綾波レイ。ひょっとして、この魚を釣るのもATフィールドの技かな』

 『試してみたら』

 『んん・・・無理』

 『渚君は、壁にこだわり過ぎて、反発させてしまうからよ』

 『山岸マユミは、できるのかい』

 「・・・あ、逃げた!」

 「えっ! 引いているよ。山岸さん」

 「えっ! あっ! 本当だ」

 ・・・・チヌが釣れ。

 アイスボックス一杯に魚が入っていく。

 「・・・もう、これくらいでいいんじゃない」

 「そうね」

 「でも、マユミさんも、NERVに入るなんて、びっくりしちゃった」

 「まぁ 才能かな」

 「でも、どういう人選なんだろう?」

 「変?」

 「えっ! あ、でも、わたしも、かなり、変な選出だったから・・・・」

 「わたしも、変な選出かな」

 「・・・・・・」 レイ

 そして、堤防には、吾妻ケイタ、ムサシ・リー・ストラスバーグもいたりする。

 「・・・・・・」 レイ

 「「・・・・」」ケイタ、ムサシ

 「・・無造作に殺してしまうのね」

 と、慣れた手つきで、血抜きするケイタとムサシに一言。

 「えっ でも、魚は、痛覚ないですから」 ケイタ

 「命がけで遊んでくれた魚をわかろうとしたの?」

 「「・・・・・・・・・」」

 ケイタも、ムサシも、復讐で反体制・反権力志向。

 体制側の代表格のアスカに反発していた。

 しかし、表向き、碇シンジの婚約者で秘書のレイは、論外。

 ゼーレのサードインパクトをバウンドインパクトで切り替えした綾波レイは、尊敬の的だった。

  

  

  

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 月夜裏 野々香です。

 吾妻ケイタ。ムサシ・リー・ストラスバーグを出してしまいました。

 浅井ケイタは、吾妻ケイタに改名です。なぜって、軍艦の名前が付いていないから。

 げっ! そういえば、山岸マユミにも軍艦の名前が付いていない・・・が〜ん!

 もう、手遅れ。

 

ロボットメイド “香取” のイメージです。

 

 

  

 綾波レイ。

 「・・・わかろうとしたの・・・」

 なんとなくこのセリフを出したかっただけです。

  

 

 

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第62話 『トリニティの憂鬱』
第63話 『高校二年の春』
第64話 『虚空潜航艦レリアース』
登場人物