月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

第67話 『主役はどこ?』

 リリン系人類は、宇宙開発へ向かう道と、

 虚数空間・ディラックの海の向こうにある平行次元世界への道を発見する。

 

 ゼーレ球 12個のコアがLCL液のプールに沈められていた。

 この小さい空間に数千万の人間の魂と情報が入っている。

 ゼーレ球に対する賛否はない。

 毎日のように余命の短い老人たちが、この中へ入っていく。

 ゼーレ球に入った老人が年齢を自由に変えて、

 モニターの向こうの親族(遺族)と話している。

 死生観革命といわれ、影響は、産業革命を越える

 ゼーレ球は、数千万人分の情報が蓄積され、

 人間の知識が混沌として詰まっている。

 重複した情報が整理され、人の数が増えていけば強大な能力を発揮する。

 トリニティが計算高い左脳なら、ゼーレ球は創造をつかさどる右脳といえた。

 そして、ゼーレ球の知的生産による収入と税収が大きくなると、善悪の問題ではなくなる。

     

  

 黒い墓石の3D映像。

 朝霧ハルカ、キール議長。

 「調子は、いかがです。キールローレンツ議長」

 『キョウコ君か・・・悪くない。ようやく、12個のゼーレ球の連結ができたようだ』

 「それは、良かったです」

 『娘は、元気にしているかね』

 「ええ、ゼーレの代わりに世界の富裕層を纏め上げているようですわ」

 『国家対立を富裕層の結束で防ぐのは、悪くないはずだ』

 「富裕層同士の軋轢で戦争にならなければ、ですね」

 『そういう事もあったが防いだこともある』

 「後進国だけでなく、国内の貧富の格差を大きくして弱者から搾り取った、のですよね」

 『良い方法だったよ。少しばかり、良心が痛んだがね。戦争より紛争がマシだった』

 「そうでしょうとも」

 『しかし、安心したよ。君の娘。アスカ君には済まない事をした』

 「いえ、私が原因ですから」

 『本当に、心の傷は癒えてるのかね』

 「彼女自身が体験したことは消えませんが、事情と、こちらの気持ちは、伝えています」

 『そうか、一度、彼女と話してみるのも悪くない』

 「そういえば、娘とテニスをしたとか」

 『君が行ってしまった後、気紛れでね。まさか負けるとは思わなかったがね』

 くすっ

 『・・・ところで、例の計画は?』

 「随分、野心的ですね。キール議長、時期早々では?」

 『選択の一つとして、あげただけだよ』

 「確かにコアであれば、平行次元世界の座標灯台になりえます」

 「そちらの人類補完計画が遅れるのでは?」

 『ふ、ふっ はははは 我々はね。時間を味方にしているのだよ』

 「好奇心は、相変わらずですね。議長」

 『12の世界でネットワークを作れるのであれば、楽しくてしょうがないよ。君らも、問題なかろう』

 「聖書にもありますね。12の門」

 『・・・・“これは、人間の、すなわち、御使の尺度によるのである” 』

 『あれは、祖父・祖母、父・母、夫・妻、兄・弟、姉・妹、孫息子・孫娘のことだろうな』

 『物理的な門ではない』

 「ゼーレは、それを捨てたのでは?」

 『“都は、日や月がそれを照す必要がない”』

 『“神の栄光が都を明るくし、小羊が都の明かりだからである”』

 『“諸国民は都の光の中を歩き、地の王たちは、自分たちの栄光をそこに携えて来る”』

 『“都の門は、終日、閉ざされることはない。そこには夜がないからである”』

 『都がコアなら、我々は、老若男女、全ての門を通ることができる』

 『我々が “オメガであり、アルパ” なのだよ』

 「・・・まず、安全を確認しなければ」

 『無論だとも、それには異論がないよ』

  

  

 物理学的な法則だと、宇宙戦艦は大きい方が強い。

 しかし、生体を利用したエヴァシステムだと、そうとばかり言えなくなる。

 光質の容量と人間のハーモニックス率・シンクロ率のバランスで、ATフィールドの強弱が変わる。

 そして、両方の特性を要領よく、取り入れようとすると。

 器の艦体

 レリアース2番艦 「飛龍」 全長222m、全幅22.32m。全高24mと、

 戦闘力の高い艦載機

 エヴァンゲリオン1機、エヴァング8機、ロボット40体の組み合わせになっていく、

 某アニメ系のような・・・・・・・

 

 ハーモニックステスト

 山岸マユミは、人身御供なNERV方式、ゼーレ方式と違っていた。

 改造されたレリエル種子を体内に投与させられ、

 バウンドインパクトで、再構成されたクムラン方式とでもいうべきか。

 人間を使徒に近付けている。

 当然、ハーモニックス・シンクロ調整もエヴァと変わってくる。

 飛龍からATフィールドの触手が伸び、

 マニピュレータのような作業ができるのも、山岸マユミ以降の特性だった。

 もっとも、アルサミエルのような攻撃性はなく、作業用。

 『マユミ。調子は、どう?』

 「トリニティ。一号艦より、体感が大雑把ね」

 『大型になったので、こちらで負担する範囲が増えました』

 「反重力装置は、大丈夫? 問題ない?」

 『マユミに合わせられますよ。ハーモニックスと、シンクロ率でも判断できますし』

 「心、意識、体で、まだ、ファジーなのは調整が足りないから?」

 『ええ、元々、曖昧で掴み所のない分野ですから」

 「でも、ここからエヴァングやロボットを操作するのは、できないことはないけど、辛いわね」

 『やはり、操作は、こっちで行って、ATフィールドだけを張れれば良いでしょう』

 「この飛龍が大き過ぎて、エヴァングやロボットまでATフィールドの力場が回らない」

 『飛龍を虚数空間に隠せば、集中できますよ』

 『イロウル、バルディエル、アルミサエルが使った手です』

 「確かにそれなら、いけそうね」

 『わざわざ自分で出向かなくても良いですよ』

 「えぇ〜 なんか、それ、いやだな」

 『安全性を考えると、そうなるんですがね』

 「んん・・・・」

 理屈でわかっていても人間は、合理的な生き物ではなかった。

 

 

 朝霧ハルカ、伊吹マヤ

 マヤは、外見上の年齢で、ハルカより一回り上、

 しかし、態度は、引っくり返っていた。

 「マヤ。反応速度のロスを3分の2にしてみて」

 「はい」

 ゲージのメーターが動き、数値が変化していく、

 「何度、調整しても、ノイズを拾ってしまうわ」

 「心でモノを動かすと、不確定が大きくなりますね」

 「でも、いい感じに仕上がってる」

 「あれな形は、どうか、と思うけど性能は素敵ですね」

 「確証のある現物を模倣するのは早道よ」

 「エヴァやエヴァングの搭載能力があるから揚陸艦に近いかも」

 「随分、大きくなりましたけど」

 「大きくするとハーモニックス率と、シンクロ率が低下して、ATフィールドと機動性が落ちる」

 「代わりに反重力装置。居住性と探索機器と搭載機の比重が大きくなるわ」

 「反重力装置は、トリニティ制御でパイロットの負担を小さくできるわ」

 「侵攻作戦でもするの?」

 「それは、状況しだいじゃない? やぶ蛇になるかもしれないけど」

 「さ、先に言われると、言い返しにくいですね」

 「当面は、通常の探索よ。この虚数潜航艦の建造費ときたら国潰しね」

 「行くのは、ハルカと山岸マユミの二人?」

 「ATフィールド維持ならレリエル系のダブルエントリーが良いみたいだけど知的水準がね・・・」

 「もう一つ、エヴァンゲリオンの戦闘力が強いからアダム系も乗らないと・・・」

 「遠いのに大丈夫?」

 「平行異次元の向こうは、遠いという概念じゃないもの」

 「それに座標を特定できないと、探索じゃなくて、放浪しないといけないから」

 「汎用の4号機じゃ無理ですね」

 「ええ、それとも、キール議長のお勧めのゼーレ球を一個載せて行くかね。こっちの方が確実」

 「12個あるから、近場の平行次元世界に11個置いていけば、自由に行ったり来たりできる」

 「キール議長は自由に動ける。船が欲しいのかもしれませんね。でも、素敵。大冒険ね」

 「したい? マヤちゃんの大冒険」

 うなずく、マヤ。期待、期待。

 「でも、マヤちゃん。用心しないと、その世界のリリスに殲滅されるかもしれないし」

 「向こうの世界からみたら、使徒に見えたりして」

 「その逆もありね。地球に来るかも・・・」

 「それは・・・・困りますね」

 「でも、キール議長のおかげでリリスが平行次元世界のネットワークも兼ねている可能性に気付いたわ」

 「・・・それって・・・」

 「この世界のネットワークを破壊した第18使徒系リリンは、無礼千万な、輩ね」

 「攻撃される?」

 「さぁ〜 私たちは、創造者じゃない。資質は受け継いでいるけど被造物よ」

 「でも、当然、ネットワークを再構築しに来るでしょうね」

 「じゃ 私たちは、リリスと同じようなことをしようとしていたの?」

 「探索の結果次第で、そういうことになるかも・・・・・」

 「じゃ いずれは、創造主に、お目見え?」

 「さぁ〜」

 「リリスの世界からは、どう見えるのかしら・・・私たち」

 「無礼千万な輩・・・・生意気なガキ・・・・」

  

  

 高校2年

 シンジは、その社会的立場にふさわしく、自由のない歪な青春を送っている。

 アスカの陰謀だろうか。

 常にスケジュールが組まれ、レイと二人っきりで過ごす時間も少ない。

 I・S・I財団総本部 社長室

 シンジは、どんよりとスケジュール管理表を見て呻き、

 不敵な薄笑いを浮かべているアスカを盗み見る。

 運動不足だろうと、アスカに押し付けられた装甲服(150kg)が、さらに重く圧し掛かる。

 薄い生地で、この重さは、工学技術の粋だろうか。

 「・・・社会的立場のある人物が自由にすると不自由な人間が増えてしまうわ」

 「でも、碇君が望むのなら、好きなだけ調整できる」

 綾波に、そういわれると、アスカのスケジュールにケチを付ける気力が萎えていく。

 普通の権力者なら割り切ってしまう。

 しかし、シンジは、流されやすい性格で、傀儡というより、

 奴隷化されているような気がしないでもない。

 支配、権力、自己主張で、積極的な人間は、生き甲斐を見出し嬉々として燃えるだろう。

 そうでない者、受身で、消極的で、怠惰な人間は、苦痛以外の何者でもない。

 やっていることが同じでも意欲の違いで天国と地獄。

 シンジは、たとえ、そうなるように仕向けられ、育てられていたとしても後者の人間。

 こんなヤツが人類の存亡と形態を賭けた戦いでエースパイロットだったのだから、呆れ返ってしまう。

 だからこそ、脅威のATフィールドが・・・・

 だからこそ、渚カヲルとの友情が・・・・・・

 だからこそ、I・S・I財閥が・・・・・・・・・・・・

 という、プラス分を引いてもアスカの傀儡。

 使徒級の力を持っていたとしても人間的に意思薄弱で “エゴを通せよ” と、誰かが言う。

 しかし、いまだに父親のトラウマが抜けず。強い自己主張ができずにいる。

 「あ・・・綾波。この日、空いてるから、二人で沖縄に行ってみない?」

 「中学の修学旅行で、行けなかっただろう」

 「・・・その日の午前中は、国連で、地球連邦及び地球連邦軍草案の打ち合わせが入っているわ」

 「翌日に会議があるから、事前の打ち合わせ」

 「・・・・・」

 「碇君の命令なら、打ち合わせと、会議を遅らせるわ」

 「め、命令って・・・」

 レイとアスカが興味津々で、シンジを見詰める。

 「そ・・・・それなら・・・・いいよ・・・・・・じゃ・・・」

 なんとなく、シンジとアスカの目が合ってしまう。

 「なに? シンジ。私のスケジュールに文句があるの?」

 「あ・・・い・・・いや・・・な、ないけど・・・」

 シンジは、しょんぼり、回れ右。香取が付いて行く。

 アスカも、レイも、似たような表情。失望したような、それでいて、やさしげな視線で見送る。

 シンジの自己主張を見たい。

 それでいて、自己主張を見れば、少しばかり寂しいといった感じだろうか。

 自己主張すれば、押したり、引いたりで別の楽しみに繋がる。

 彼自身が積極的に支配や権勢を求めるようになるまで先は長いかもしれない。

 そういった事柄を面白いと思うまで・・・

 とはいえ、彼の気質が招いたプラスも大きく、積極的な性格改造は、気が引ける。

 また、トップが善良である方が、やりやすい事もある。

 アスカは、えげつなくても、

 シンジならば組んでも良いと・・・・

 「シンジも相変わらずね。命令すれば、なんでも、ありなのに・・・・」

 「・・・アスカも、よく、これだけの仕事を作るわ」

 「あら、重要な仕事だわ」

 「アスカなら公園にシーソーを作るのだって、国家存亡の重要な仕事にしてしまうわ」

 「あはははは・・・仕事なんて、いくらでも、転がっているもの」

 「要は、一つ一つ、人心を掌握しながら。情報、物、金を積み上げていく意欲ね」

 レイ、アスカ、マナの3人の中で、この意欲があるのは、アスカだけ。

 「・・・我を通せば、無理も通るのね」

 「人間には、階層があるのよ」

 「親に養われる階層。学んでいる階層。自立している階層」

 「配偶者と生きていける階層。子供を養える階層。親を養える階層」

 「他人を養える階層。教える階層。地域を養える階層」

 「民族を養える階層。国を養える階層。世界を養える階層」

 「シンジなんて、口実さえあれば、ちょろいものよ」

 「碇君は、善良さだけで、全てに通じそうだわ」

 「私の使える駒も、それだけ、多いということね」

 「大義名分には、事欠かないわね」

 「階層ごとに衝突するのも、道理ね」

 「アスカ。碇君の人の良さに付け込まない方が良いわ」

 「・・・刺激が少ないから、シンジに強気になるように言ってあげたら」

 「・・・碇君は、あなたが、苦労して積み上げた事を壊したくないだけよ」

 「くすっ 片手間にやっていることなのに」

 「でも、レイ。・・・・シンジには、失望させられるわね」

 「フィアンセは、他の男の子にしたら」

 「私には、碇君しかいないもの」

 「・・・あんたたち、相変わらず、視野が狭いわね」

 「アスカも、どうして、男の子と付き合おうとしないの?」

 「・・・忙しいからよ。そんな暇ないもの」

 「そう・・・」

  

 霧島マナは、忌々しげにカレンダーに×印をつける。

 高校卒業後、シンジとレイの挙式が迫っている。

 ソフト路線系の略奪作戦を試みたが、全て、失敗。

 憮然としつつ、モニターを覗き見る。

 地球連邦創設の水面下で、数カ国が対日制限をかける動きを掴む。

 おもむろに受話器をとる。

 「・・・加持さん・・・・アメリカとドイツの離反工作は、進んでいるのかしら」

 『・・・いま、やっているよ “政府” の予算でね』

 「いくつか、情報を提供するわ “I・S・I財閥” の予算で得た情報だけど、格安で」

 『ふっ それは、ありがたいね』

 『しかし、政府は、君たちISI財閥も守っているんだがね』

 「ええ、ありがたいわ。でも、国内の反I・S・I財閥の結集を止めて欲しいんだけど」

 『あれは、こっちの、というより』

 『そっちの態度で、自然発生したものだろう』

 「不自然な部分も公開しようかしら」

 『まぁ お互いに妥協すべき面があるかもしれないな。シンジ君と、交渉してみるかな』

 「あら、委任状は、アスカが、持っているのよ」

 『酷いな。飼い殺しは、かわいそうだぞ』

 「そんなことしてないわ。シンジ君の口座は、とんでもない額が振り込まれているもの」

 『そして、常にI・S・Iに投資されている』

 「シンジ君が自分の意思で振り込んでいるのよ」

 「そして、雪達磨式に増えている」

 『お金を作る才能も低いが使う才能も低いのかな』

 「あら、I・S・Iは、最良の投機よ。でも、お金を使う暇は、ないかも」

 『準禁治産者で、奴隷並みの生活だな』

 「シンジ君の支配圏は、広がっているもの、本人の気持ちしだいよ」

 「それにあなたたちの毒牙にかかったら、もっと、かわいそうだわ」

 『おいおい、こっちは、飼い殺しにはしないぞ』

 「あら、散々利用して断崖からボロクズの様に捨てるのね」

 『まさか、救世の英雄にそんなことをするわけがないだろう』

 「じゃ 私たちと、同じ?」

 「・・・・・」

 「こっちも、飼い殺しになんか、してないわ・・・で、どうする? 加持さん」

 『まぁ 政府には政府の立場というのがあるから・・・もう、少しは、自重しても良いがね』

 「そう・・・・じゃ 送るわ・・・」

 『どうも』

 ピッ!

 新しいメールが届くと、某国がシンジを篭絡する計画を立てていることがわかる。

 ハード路線だ♪

 敵を利用して、ギリギリのところで横から掻っ攫って、恩着せがましく、ソフト路線で・・・・・・・・

 合法的にシンジ略奪を夢想・妄想する。

   色っぽい金髪女スパイと、囚われのシンジ。

   「・・・碇シンジ君。これ、私が作ったの」

   「あ、ありがとう」

   薬を盛られたシンジは、女が欲しくなって、エージェントの女に熱い視線を向ける。

   そこにマナが拳銃でスパイ集団を撃退。

   エージェントの女を眠らせて、シンジを救出。

   肩を撃たれ、命懸けでシンジを守ったマナは、シンジの腕の中・・・・・

   薬の利いているシンジは・・・

   「マナ・・・ありがとう・・・・マナ・・・僕のため・・・こんな怪我までして・・・・」

   「大丈夫・・・だから・・・・私の命は、シンジ君を守るために・・・」

   「・・・・マナ・・・」

   マナは、シンジにぎゅっと、抱きしめられる。

   「・・・マナ・・・僕のために・・・・」

   「・・・・シンジ君・・・」

   「・・・・マナ・・・」

   「あ・・・いけない・・・シンジ君には、綾波さんが・・・」

   「マナ・・・ぼ、僕は、もう・・・・」

   マナは、負傷して、抵抗できない・・・・

   「・・・マナ・・・」

   「・・ああ・・・・シンジ君」

   あんなことや・・・・

   「・・マ・・・マナ」

   「・・あっ・・・・シンジ君」

   こんなこと・・・・・・

   「・・ぅ・・・・・マナ・・・」

   「・・あぁああ〜・・・・シンジ君〜・・・・」

 『いやあん いやあん むっふぅ♪』 頬が紅い

 映画のワンシーンが脳裏によぎって、ほくそえむ。

 前回、前々回とも、トリニティに邪魔されたが、今度こそは、と、敵を応援。期待する。

 『あのロボットメイドの香取が邪魔だわ』

 『だいたい、ロボットの分際で人相が見れるなんて、生意気よ』

 マナは、鼻歌交じりにシナリオを書き始める。

 特に濡場は、そっち系の小説を探って、融合・昇華させつつ、

 緻密で、詳細。官能的な文体になっていく。

 

 

 火星は、テラフォーミングしやすく。

 渚カヲルは、夏休みを利用して火星に地下空間を造った。

 そのあとは、宇宙開発空母“いざなみ”、“いざなぎ” が火星軌道を回って

 トリニティに制御されたエヴァングとロボットだけで、

 地下世界に人間の住める生活圏を施工していく。

 聖人君主なプログラムと

 微妙にパラメーターを変えられたエヴァングとロボットで創られていく滅私奉公な創世の世界。

 理想郷のように見える。

 神と天使たちが7つの段階を経て天と地を創造し、

 エデンを人間に明け渡す前段階の世界。

 それが、火星の地下にあった。

 火星を地球に・・・いや、地球以上の世界にしていく。

 “海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物を・・・” 準備。

 そして、この新エデンから追い出されるのは、地球と同じ、人間ではなく神。

 エデンを地獄に変えた人間世界は、この火星でも

 “産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。

 海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ”

 という祝福を与えられる。

 『火星の全天球、北極と南極。赤道に4基のトリニティを配置した』 いざなみトリニティ

 『エネルギープラントの設置も問題ない』 いざなぎトリニティ

 『後は、地球からの資材を待って、建設プラントの構築・・・・・』 いざなみトリニティ

 

 

 

  

  

 国際連合

 地球連邦及び地球連邦軍草案

 プロジェクターに映し出される。

 大小の宇宙戦艦は、どこかで見たことがあるような。軍艦だった。

 アスカが、ボンヤリと見上げ。リツコが覚めた目で見詰める。

 「リツコ・・・・何で、これなの?」

 「現物があるから。山岸マユミが、ハイエルからデーターも持ってきたし」

 「創造性って、大事じゃない」

 「独自性は、確実に模倣ができてからでしょう。ガミラス優勢も確かだし」

 「はぁ〜」

 「私たちは、試行錯誤しながら組み立てていく余力も、時間も、予算もないのよ」

 「コアを内部に置いて、未知の構成物質は、エヴァ光質で代用できるの?」

 「設計も性能も微妙に変わるけどね」

 「パイロットさえいれば、アダム・レリエル系融合で、宇宙・虚数世界両用ね」

 「レリエル系コアの取り込みも行われているの?」

 「アラエルと同じ。オリジナルの種子がないと、調整が厳しいのよ」

 「トリニティの次世代型で、期待しているけど」

 「じゃ 虚数空間で使えるパイロットは、あの5人だけ?」

 「あら、エヴァだって、4体のうち3体が専用機。トライデント型3機も専用機だから、それほど変わらないでしょ」

 「汎用の4号機は、10人ほどパイロットが見つかったけど」

 「やっぱり、汎用型が使いやすいわね」

 「取り込むとすれば、種子を不活性化させている第11使徒イロウル、第13使徒バルディエル、第16使徒アルミサエルが早い」

 「特性だと・・・・イロウルは、楽しみね」

 「そうね・・・・」

  

  

 I・S・I財閥開発局

 伊吹マヤは、トリニティが算出する人類の未来像を眺める。

 エヴァ光質は、人類に更なる福音をもたらしそうだった。

 「・・・旧ゲヒルン系が無難といえば、無難ね」 マヤ

 「エヴァ発見以前の人口進化でしたからね」

 「進化というより、アンドロイド化ね」

 「子供は生まれず。高齢年齢層の労働力を増大させることができる」

 「結果的に宇宙開発が間に合う、かもしれなかった。ですか?」

 「計算上は、間に合わない。だからセカンドインパクト」

 「本当は、もう少し制御したかった、みたいだけどね」

 ロボットの頭脳の部分に人間の脳を保存。

 心と頭脳を補正。脳内物質の伝達をロボット側と双方向で伝達できれば、体を動かせる。

 香取の頭部に人間の脳を入れるようなもので、さしずめ動く家。

 いや、家すらも必要としない。

 カーボンナノチューブを利用した体は、人間以上で、脳が生きていられる限り、生きていける。

 多少の違和感があっても、疲労も、苦痛も、快楽も、調整できた。

 ある程度、年齢がいってしまえば、こちらの方がマシと言う者も出てくる。

 ロボット技術は、さらに進化して、

 エヴァ光質の比率を増やせば、人間サイズの機動要塞になって、使徒みたいなものになっていく、

 

 「・・・ゼーレ・クムラン派は、冒険的ですね」

 山岸マユミなど、レリエル系種子を投与された者たち。

 「人間の体内にエヴァ光質を取り込みながら融合・昇華させる研究は、人間性、そのものを変革させているわね」 マヤ

 「個別人口進化系の一つのかたち。でしょうか?」

 「マッドサイエンティストか・・・・」

 「わかるんですけどね。山岸マユミは、成功例だとしても、犠牲者が多いです」

 「その犠牲者のおかげで、虚数世界、平行次元世界の扉を開けたのだから批判ばかりもできないわね」

 「この系列が対使徒戦の主力になる可能性も、あったのですよね」

 「ええ、碇司令が南極から現物を持ち帰れなければ、予算が投じられて、こっちになっていたかも」

 

 「でも、究極は、ゼーレの人類補完計画ね」 マヤ

 「LCLの群集意識体で数万年後、さらに進化した姿を推測させますね」

 「精神体の混乱は続いているけど、少しずつ整理されている」

 「整理された区画が大きくなれば、飛躍的に早まるから、時間を味方にしているわね」

 「多重的な、未来像が選択できるのは、幸福ですかね」

 「そういう点では、ゼーレの人類補完計画で一元化しなくて良かったかも」

 「でも、どの道を選択するか、予算しだいよ」

 「人の趣向にも、よりますね」

 「ええ」

 自然死が好きならそうすれば良く。

 あとは、個人の趣向でしかない。

 保守的な人間は、未知への不安の為、拒みやすく。

 革新的な人間は、未知への好奇心で前向き。

 8割以上の大衆は、その時々の情勢や利益で意見を変えるファジーな傍観者だったりする。

 そして、伊吹マヤも己の趣向に気持ちが向かい始める。

  

  

 第壱高校

 教壇に立っているのは、綾波レイ。

 シンジは、頬を染めながら、教壇に立つ婚約者の一挙手一投足を惚れ惚れと見詰める。

 『綾波・・・あやなみ・・・アヤナミ・・・』

 『綾波・・・あやなみ・・・アヤナミ・・・』

 『綾波・・・あやなみ・・・アヤナミ・・・ はぁ〜』

 同級生も羨望の眼差しで授業の内容を端末で、確認していく。

 違うのは、非番のアスカ。

 意識の片隅でシンジとレイの様子を見るだけで授業そっちのけ。

 権謀術数、我田引水の限りを尽くして新規事業の利幅を増やそうと、システムを構築中。

 『火星の区分けと、利権の振り分け・・・・・・』

 

 霧島マナも、授業そっちのけ、目にクマを作りながら、

 ニヤニヤと、略奪愛シナリオを増やしていく。

    日本海の海岸、寄せて返す白波に、二つの影が揺れる。

    「・・・・ぼ、ぼくは、なんて、事をしたんだ・・・」

    「わ、わたし、もう、シンジ君だけしか、見えない・・・」

    「・・・マナ・・・・ばくは・・・マナと、結婚するよ」

    「・・・シンジ君」

    「マナ」

    「・・・で、でも・・・」

    「いいんだ・・・ぼ、僕も、マナしか、見えない」

    マナが、頷く。    

    「・・・シンジ君」

    「マナ」

    熱い口付け & 抱擁。

 むっふぅ♪

 『恋愛は下克上よ・・・』

 くっ くっ くっ

 『もう・・・・なにやっているのかしら。使えないスパイ集団ね』

  

  

 その頃、スパイ集団は、加持の公安組織によってズタズタにされていた。

 因みに情報は、マナからリークされたもの・・・・・

  

   

    

     

   

  

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 月夜裏 野々香です。

 やっぱり、ガミラス艦のあの形は、良いです。

 艦隊を組んでの砲雷撃戦で、ヤマトを血祭り・・・・・・

 あ、いけない、いけない。ヤマトファンでした。

 

聖書 

 聖書が良いのは、内容と容量があって、使うと、おお〜 という感じでしょうか。

 作家必須のアイテムで、プラス100くらい引き揚げてくれます。

 他にも、共産、仏典などあります。

 コーランは、下手をすると殺されるので止めた方が無難かもです。

  

  

  

  

地球連邦 初代宇宙艦隊?

 

 

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第66話 『望んだ夢』
第67話 『主役はどこ?』
第68話 『地球連邦軍』
登場人物