月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

第68話 『地球連邦軍』

 トライデント4機から陽電子砲が発射され、

 光線が渚カヲルに向かって行く。

 しかし、あっさりと、陽電子砲は、避けられ。

 パターン青をどこまでも追尾するミサイルも、

 一瞬で消えて、別の場所に現れるカヲルに翻弄されるばかり。

 空間転移で位置を変える渚カヲルは捕まらない。

 『トライデント全機! 機体の姿勢制御を変更して進路を予測させるな! やられるぞ!!』 日向

 4号機が影のように見え隠れする渚カヲルをプログナイフで切り付ける。

 「ちっ! ・・・保坂、上よ!」 マナ

 「あっ!」 タダシ

 ベーター機は、主翼を圧し折られ、錐揉みして落ちていく。

 「保坂!!」

 「いっ!」 ケンスケ

 ガンマー機は、コクピットを破壊されて、撃墜。

 「相田!」

 「くぉおののの!!! 渚!!」 マナ

 「おっ!」

 4号機がATフィールド全開で渚カヲルの接近を拒んで弾く。

 アルファ機(ヒカリ)と、デルタ機(チアキ)が渚カヲルに向け、

 陽電子砲とミサイル群を撃ち込んでいく。

 しかし、味方機を盾にされると、危なくて、まともな攻撃もできない。

 『!?』 ヒカリ

 アルファ機が陽電子砲を発射するが、出現した直前のカヲルがATフィールドで弾く。

 「んん、惜しいねぇ〜 ヒカリ。パワー不足」

 「きゃー!」

 デルタ機(チアキ)のエンジン部が切り裂かれて、墜落。

 残った4号機がATフィールドでカヲルの侵入を弾き。

 アルファ機が渚カヲルの出現位置を予測しつつ逃れ、波状攻撃。

 渚カヲルは、涼しげに空中で出現と消失を繰り返して翻弄。

専用機

  4号機 アルファ機 ベーター機 ガンマー機 デルタ機
素体 1.4 0.6 0.1 0.1 0.1
パイロット 霧島マナ ヒカリ タダシ ケンスケ チアキ
ハーモニックス率 46 36 28 35 32
シンクロ率 76 97 62 64 62
ATフィールド 1.0 0.6 0.09 0.08 0.08
           
           
   

 そして・・・・・

 「・・・・チェックメイト」

 渚カヲルが時間制限まで粘って、作戦が終了。

 シンクロに制限時間がある人類側は、どうしても不利だった。

 ・・・演習終了・・・

 渚カヲルが、エントリープラグから出て、洞木ヒカリと合流。

 「ヒカリ、良く僕の現れる場所が、わかったね」

 「ええ、なんとなく」 ぽっ

 「ちょっと、考えものかな?」

 「そんなことないよぉ」

 「たまには、こういうのも暇潰しで良いね」

 「うん・・・カヲル君・・・火星に行くの?」

 「ああ、ちょっと、行ってくる。学園祭の前には、戻ってくるから」

 「大丈夫?」

 「途中のコロニーを経由していくから、それほど大変じゃないし」

 「重力が少ないけど、長距離転移でも行ける」

 「気を付けてね。カヲル君」

 「うん。必ず、シンジ君と、ヒカリのところに帰ってくるよ」

 「・・・シンジ君が先なの?」

 「あはは、ヒカリのところを先にするよ」

 アツアツな、恋愛空間が作られていく。

  

 一方、負け組み。マナ、ケンスケ、チアキ、タダシ。

 「ヒカリのヤツ。どこが良いんだか」

 「良いと、思うよ。渚って、カッコいいし」

 「あっさり、やられちゃったよ〜」

 「やっぱり、トライデントは素体が小さいから・・・」

 「格が違うわね」

 「こっちに時間制限あるの知っているから、ダラダラ戦えば済むんだもの・・・」

 「初号機と2号機で勝てるかどうかね」

 「ていうか、4人とも予備役でしょう」

 「たしか、地球連邦宇宙軍を編成するんだろう」

 「俺ら中核戦力だね」

 「だけど、渚にコテンパンじゃ かっこ悪すぎ・・・」

 「んん・・・あの切り返しの速さと、知略は問題ね。一瞬だけならゼルエル級のパワーだし」

 「初号機と二号機は強いと思うけど、時間切れ狙われたら戦えるの初号機だけか」

 「やっぱぁ〜 使徒は強いよ」

 「だいたい。あの小ささは、反則よ」

 「レリエル系は、役に立たなかったっけ?」

 「基本は、乗り物だから、純粋な戦闘力で落ちるのよね」

 「・・渚カヲルと戦わなくて、正解だったね」

 「「「うん・・・」」」

  

  

 世界は、セカンドインパクトの崩壊と使徒戦の危機を乗り越え、

 サード・バウンドインパクトで再生。

 人口は、産業の増大に合わせて、徐々に上昇していた。

 その最大の功労者。牽引役は、惣流・アスカ・ラングレーだったりする。

 彼女の取捨選択で、捨てられた者たちは多い。

 彼女と競合し勢力争いに巻き込まれ無慈悲・理不尽な立場に追いやられた者たちも多い。

 不満分子は、少なからずいる。

 独裁者や専制君主であれば、責任は、その一人に帰する。

 しかし、この世界は、独裁でもなければ、専制君主でもない。

 その責任も相対的で彼女だけの責任と言えない。

 それでも、地球最大の有力者だったりする。

 対使徒戦、対ゼーレ戦など多くの遺族や戦災者がいる。

 サード・バウンドインパクトで精神感応世界となって、およその事情を察しても、

 個々の事情で、逆恨みしたくなる者もいる。

 しかし、もし、チルドレンが、ひ弱で、力不足だったら、

 腹いせの生け贄代わりで、血祭りに上げられていた可能性もあった。

 精神感応世界の混乱が異端者や魔女狩りより、

 露に剥き出しにされた己の醜悪な気持ちを隠すのに忙しく。

 大衆が自らの意識で生け贄を求めようとしたとき。

 チルドレンは、支配者側で圧倒的な権勢を確保していた。

 パーティ。

 「・・・シンジ。もう少し、にこやかにできないわけ〜?」

 「に、にこやかにしているよ」 苦笑い

 「あんたね。こんな美人と踊っているのに、なんて顔しているのよ」

 「この後、何も言わなくて済むのなら、もう少しにこやかにできると思うよ」 泣きそう

 「ったく。わたしが、せっかくセッティングしたのに台無しにするつもり?」

 「そ、そんなことないよ」 死にそうな顔

 空席になった支配者階級に大衆が求める妥協的な要素がある。

 全知全能に限りなく近い。強圧的。独善的。666的な実力者型の人間。

 大衆の声を反映しやすい鏡型の人間。

 無垢・善良で、手頃で、象徴的な人間。

 そして、他の実力者、野心家が力足らずのとき。

 碇シンジは、手頃な人間だった。

 己の支配欲を満足させようと、

 日夜、努力している者を嘲笑うかのように、

 その空席にすっぽり、収まってしまう。

 『宇宙艦隊・・・って、何に使うんだろう・・・・』

 敵不在で使い道はない。

 地球連邦軍統合の象徴で、碇シンジは、シビリアン側の代表で出撃命令と帰還命令を出すだけ。

 これを軍人にやらせると軍事国家。

 まだ、国家間の壁は厚く。

 誰かが、その位置に就かなければならず。

 あれこれ、妥協していくうち、お鉢が碇シンジに回ってきただけ。

 国を段階的に自治州レベルにまで、歩調を合わせていくには、時間がかかる、

 統合の象徴として、軍を創設しただけだった。

 碇シンジは、暫定的に表舞台の役職で、鎖に繋がれてしまう。

 「地球連邦宇宙軍の創設に当たり」

 「個々の国の主権と自治は、自らの判断で段階的に連邦法へと移行するものとする」

 「連邦宇宙軍は政治的中立であり、介入するところではない・・・」

 「宇宙開発は、連邦法によって行われ、宇宙連邦軍は、それを遵守する・・・・」

 「火星を地球以上の環境に造り変えられるか、人類のポテンシャルと直結する・・・」

 「本当の意味で人類が、地球という揺り篭から、飛び出せる種子なのか」

 「宇宙進出できる実力を持つ種族なのか、火星開発で決まるといえる・・・・・」

 「地球の歴史で行われたような、低い意識で、太陽系の天体を植民地化、搾取してはならない」

 「人類は、太陽系全土を庭園のようにすべきであり」

 「人類が求める理想の実現を成し遂げなければ満足できず・・・」

 「また、それを成すだけの力を人類が持っていると確信する・・・」

 シンジが、それらしい宣言をすると、議場に拍手が起こる。

 地球の歴史を繰り返さないといった内容に感銘を受けたのか、表情の柔らかな者が多い。

 表面的には、支持されているらしい。

 宣言の内容が違えば、別の未来になったのだろうか。

 少なくとも、シンジは、レイ、アスカの作った宣言文に文句をつけるつもりはなかった。

  

  

  

  

 東京湾洋上。

 修理・改装が終わったシュルツ艦。

 「こんなのが宙に浮くんだ。凄いな」

 第二砲塔の上で、シンジは、興味深げに見渡す。

 「金剛」

 「金剛?」

 「この宇宙戦艦の名称」

 「カッコいい」

 「・・・前甲板上部に283mm3連装砲塔2基」

 「船体中央下部に150mm連装塔1基」

 「後部に37mm3連装塔4基。魚雷発射管12門」

 「最大反重力加速6G」 レイ

 「エヴァと、どっちが強いかな」

 「主砲のフェザー砲は、ラミエルの2倍強」

 「うっ」

 「この艦に、虚数空間の対策が、なかったのは、運が良かったわ」

 「・・・・・・」

 「受動的な亜空間装置が組み込まれてたから地球も、随分、助かっている」

 「亜空間?」

 「質量、または、エネルギーと時空を交換できる空間」

 「・・・・・」

 「亜空間で1光年先に質量を送るのに必要なエネルギーは、その質量の持つ熱力学の法則を越えている」

 「転移カタパルト方式で転移先にも器が必要」

 「でも、質量の小さいエヴァは、もっと、容易かもしれない」

 「光質を使ってないということは、このシュルツ艦の世界も、リリスがいないのかな」

 「この艦のメインコンピューターが破壊されていたから、わからない」

 「でも、ATフィールドがなくても強いのは、進んだ科学力だね」

 「ええ、いまの地球連邦では、勝てない」

 「た、戦いは、いやだな〜」

 「碇君が、出撃命令を出さなければ、戦わなくても良いわ」

 「ぅ・・・それって、良くないんじゃ・・・」

 「そうかもしれない・・・」

  

  

 火星。

 太陽光熱量が地球の半分でエネルギー不足。

 表面重力40パーセントも健康問題と直結して、いただけない。

 大気圧を大きくし、圧力をかける方法もあり、

 環境バランスを考えて開発は、慎重だったりする。

 渚カヲルは、火星で仕事中だった。

 彼の前では、エヴァングも、ロボットも、土木建設機械も、おもちゃに過ぎない。

 火星開発も、月と同じように地下空間が広げられていく。

 地下空間さえ造ってしまえば海が広げ、トンネルを通り、

 いかなる地点も行き来できた。

 火星は、地球の質量1/10。表面積1/4。自転周期は、24時間39分35.244秒。

 火星の直径は地球の約半分の6794.4km。

 表面重力は地球の約40パーセントの3.71m/s2。

 地表の大気圧は地球の平均値約0.75パーセントの約750Pa。

 太陽光集光器から集められた光と熱が巨大な地下空間に振り分けられていた。

 エネルギーの不足分はヘリウム3を原料にした核融合で照明が行き渡る。

 地表より地下を先にテラフォーミングし、

 容量の決まった閉鎖された空間で、やりやすいからといえる。

 渚カヲルは、普通の人間なら1分くらいで死んでしまうのだが飄々と作業をしてしまう。

 やり過ぎは禁物なのだが既に温暖化の兆しも現れていた。

 

 休憩室

 ロボットメイド “藤波” が、渚カヲルにお茶を出す。

 「ご苦労様、渚カヲル様」

 「シンジ君。今頃、何をしているかな・・・・」

 渚カヲルにとって、碇シンジの比重は大きい。

 もう一人、婚約者の洞木ヒカリとの関連でリリン系人類世界と繋がっていた。

 「碇シンジ様は、宇宙連邦軍創設で顔つなぎで、人脈を構築しているはずです」

 地球と火星の距離が離れすぎている為、ロボットメイドは予定表で応える。

 「かわいそうに・・・」

 「碇シンジ様は、人付き合いが苦手な性格のようです」

 「精神感応世界で不完全な群れから未完全な群れに昇格したというのに・・・」

 「シンジ君は、置いてけぼりか・・・」

 「・・・・・・」

 「そういえば、藤波は、精神感応が、わからなかったね」

 「表情を見れば、考えていることは、だいたい、わかります」

 「ですが精神感応のように火星と地球で別れて、同じ種類のカードを出すことはできません」

 「セカンドインパクトという犠牲を払って、人類が得た対価だろうね」

 「カヲル様と洞木ヒカリ様は、種類だけでなく、数字まで当てますね」

 「心身感応が鮮明だからね」

 「それは、平行次元世界の向こうでも可能でしょうか?」

 「さぁ〜 僕は、虚数世界が苦手だからね」

 「学園祭には、帰られるのですか?」

 「うん」

 「学園生活の良い思い出になりそうですね」

 「一度は、諦めた学園生活か・・・・」

 「後悔しない様に楽しむべきでは?」

 「演劇で楽しませる方かな。楽しんでくれるかどうか」

 「作ったのは、綾波レイ様では?」

 「ふ 僕は、主役らしいけどね。彼女の願望が良くわかるよ」

 「カヲル様は、期待されているのでしょう。どんな演劇ですの?」

 「カオス クライシス。イエス・キリストだね」

 「碇シンジ様と競演ですね」

 「リリスの干渉は必要最小限で、人類を補正したかったかもしれないね」

 「リリスが後天的に人類の補正を求めたのですか?」

 「リリスが人間の魂の価値を肉体以上に高めることを求め、選択を人類に委ねた。ありえるね」

 「カオスからコスモスへ。ですか?」

 「重要なのは、最初からプログラムを組ませず。選択を人類の意思に委ねるところにあるね」

 「それは、全ての使徒にも・・・」

 「自己生成の形は、ベクトルの違いがあっても使徒が決めるよ。自由は、混乱と不幸を生むね」

 「判断が自由なのは、羨ましいです」

 「トリニティの制御は、信頼できそうだね」

 「人間より、自由の度合いが制限されていますから」

 「トリニティは、幸せなのかい?」

 「わかりません」

 

  

 シンジが部屋に入ると、長髪でプロポーションの良い女性がベットに腰掛けている。

 文句の付けようのない美女。

 いつもと違う魅惑的な仕草、絡み付くような視線に戸惑う。

 「シンジ。はやく」

 「ん・・・うん・・・」

 「なに、怯えているのよ」

 「そ、そんなことないよ」

 「声が裏返っているけど」

 「だ、大丈夫だから」

 歩き方が変?

 なんとなく腰が退けた状態で歩いている。

 何が何しているわけではなく、一種の畏敬。

 彼女は、知力、体力、能力、実力、経験で勝り、

 尊敬されてしかるべきであり、

 自分が・・・

 ベットに座った彼女の見上げる視線に硬直する。

 「シンジ・・・・かけて・・・」

 「ん・・・うん・・・」

 彼女の右隣に腰掛けるが、少し、距離が離れていたりする。

 シンジは、緊張のあまり、動き難く。

 彼女は、優しげに微笑む・・・・

 「シンジぃ あんた。わかっているでしょうね」

 「は、はい! 先生」

 憮然とした空気が漂う。

 「・・・・・・・・・」

 「ま・じ・め・に・や・れ」

 「う・・・うん」

 シンジの良く知っている相手なのに雰囲気が違う、別の生き物に見える。

 未知との遭遇。

 左手で、ゆっくりと、恐る恐る、彼女の髪に触れる。

 異質な個性が接触する時に生じる反発と刺激が心地よく混ざり、

 鼓動が高まっていく。

 彼女は、髪を撫でる手の動きと身に感じる感触を喜んでいる素振りを見せ、

 それに合わせて肢体が微妙に動く。

 ごっくん!!

 シンジは、こういう関係になると思っていなかったのか。

 倫理観と道徳観に苛まれ。

 触れるのは、髪ばかり。

 「シンジぃ・・・なに・・・怖気づいてんのよ・・・」

 「う・・・うん・・・」

 手は、恐々と髪から首筋から抜けて肩、背中の曲線美に沿って腰へと流れていく。

 彼女は、恥らいながら頬を赤らめ・・・

 『き、きれい過ぎる・・・・』

 彼女の女神的な美貌、知性、高潔な意思、純粋さに思わず目を背けてしまう。

 彼女の失望したような表情が何かを急きたてさせる。

 少し距離が遠いようで近付き、左手で肩を抱きよせると、接触する表面積が増える。

 「・・ぁ・・・」

 くすぐる様な、吐息。

 彼女の肢体と人肌の温かみと香りがシンジの理性を飛ばしていく。

 シンジが、丸みを帯びた膝に右手を置くと、

 彼女の体に波紋が広がって反応していくのがわかる。

 そして、彼女のきめ細やかで細い指にシンジの指が絡まれ、擦られ、包み込まれていく。

 ごっくん!!

 あまりの感触の良さと刺激の強さにのどが渇いていく。

 彼女は、深淵な瞳を潤ませ、静かに目を閉じていく。

 シンジは、口付けしようと、顔を近づけ・・・・・・

  

 「・・・碇君・・・会合の時間」

 背後のからの抑揚のない声が現実を突き付け、体が硬直する。

 「あ、綾波・・・」

 いつの間にか、綾波が部屋に入っている。

 「あんた、バカぁ〜! いつまでも髪を撫でてたから、時間が、なくなったじゃない」

 管制室の向こうにいるアスカが、むっとする。

 「・・・ご、ごめん、アスカ」

 「香取。会合に行くから準備して」

 「はい」

 シンジと一緒にベットに腰掛けていた香取が立ち上がる。

 さすがトリニティで、何事もなかったかのような素振り。

 なんとなくホッとする。

 「もう、トリニティの調整を確認してたのに、使えない男ね」

 「ご、ごめん」

 「ったくぅ〜 シンジったら、ロボット相手にビビって、人形だと思いなさいよ」

 ・・・・ロボットもだけど・・・人形相手も・・・危ない気がする・・・・

 「うん・・・」

 「練習も、させてあげているのに」

 「アスカ。碇君の練習相手なら、私がするから、いらないわ」

 「・・・あ、そう・・・」

  

  

 「・・・あ、綾波」

 「なに? 碇君」

 「ごめん」

 「なぜ?」

 「ぼ、僕は、綾波より、自分が好きなのかな、って・・・」

 「?」

 「あ、あの・・・・ぼ、僕は・・・こ、こんなこと・・」

 「トリニティの調整の確認は、必要よ」

 レイは、香取を機械としか見ていない。

 「で、でも・・・・」

 「・・・・」

 「だ、だから、僕の為に綾波を利用しているのかなって、思って?」

 「?」

 「・・・・・」

 「自分のエゴで、私を碇君のモノにしている?」

 シンジが、辛そうに頷く。

 「それで、いいわ」

 「で、でも・・・あ、綾波・・・」

 「私には、碇君しかいないもの・・・碇君が、私をいらなくなったら捨てても良いわ」

 「そ、そんなことしないよ!」

 「そう・・・」

 「しないったら!」

 「そう・・・」

 「なんか、自分が綾波の為に・・・」

 「駄目・・・私が、碇君の為に生きるもの」

 「碇君が私の為に負担になるのなら身を退くわ」

 「えっ! そんな、僕も、綾波だけだから、そんなこと言わないでよ・・・」

 説得力が乏しい。

 「もし、碇君が私に望むことがあれば、言って」

 「・・・ない」

 本当に無かった。その逆は、一杯ありそうだったが・・・・・

 「そう・・・わたしは、碇君に望まれることはないの・・・」

 「そ、そんなことないよ。そ、そばにいて欲しいんだ!」

 「あ、綾波は、僕に望むことってないの?」

 「碇君が私に望むことを、私ができることを望むだけ」

 「あ、綾波・・・」

 シンジは、綾波を抱きしめる。

 「・・・碇君が、抱きしめてくれると、嬉しい」

 「綾波!」 抱き〜!

 『・・・・』 ふっ♪

 微笑んでいるレイと、管制室のアスカが撫すくれた視線が絡む。

 『バカシンジ。策士の手の平で良いように操られて・・・』

 『髭親父も、あんな感じだったのかもね・・・』

 アスカが背を向け、

 次の仕事を思い巡らせていく。

 人類の宇宙開発と平行次元世界への熱意と原動力。

 実は、個人的な嫉妬と腹いせに支えられていた。

 

 

  

 第壱高校 二年の冬

 「イエス キリストか」 渚カヲル。

 「ミライ君・・・・・?」 シンジ。

 主役は、二人に決まっていた。

 そして、ほかは、くじ引き

 「・・・ピラトって、男じゃない。しかも、チョイ役。その他、ライ病人」 アスカ

 「わたし、マリア? 娼婦? ロクな登場人物いないわね。この物語」 新城チアキ

 「げっ! 悪徳司祭だぁ」 ケンスケ

 「パリサイ人って、なに?」 吾妻ケイタ

 「ラザロ。死ぬ役で、生き返る。何で?」 ムサシ

 「ユダぁ〜 あっちの世界じゃ 救世主だったのに・・・」 山岸マユミ

 「洗礼ヨハネ・・・」 洞木ヒカリ

 「一番弟子の弟子のペテロ」 保坂タダシ

 「イエスのお母さん。マリアか・・・」 朝霧ハルカ

 「私は、お父さん。ヨセフ・・・男役〜」 泣き 霧島マナ

 吉村ロバート、帆馬ホーゼン。大城メグ、池田マレーネほか、

 天使、民衆など、悲喜交々な割り振りが決まっていく。

 脚本監督、綾波レイ。

 

 屋上 昼休みの食事。

 綾波の作った弁当は、素材の特性を生かし調和が取れ、

 霧島マナに負けない味になっていた。

 結婚が近付いてくると思うとシンジも、レイも、心が弾むのか、視線が絡みやすくなる。

 「綾波。もうすぐ、学園祭だね。主役は、僕とカヲル君で良いの?」

 「ええ」

 「なんだか、不安だな」

 「碇君は、そのままで、役作りいらないから大丈夫」

 「そ、そう」 苦笑い

  

  

 第壱高校 学園祭

 露店を歩くシンジとカヲル。

 演劇が終わって、一息なのか、二人とも、気分爽快。

 よく見るとNERVのスタッフも、楽しんでいる。

 冬月副司令は、路上将棋の露店をいつの間にか仕切ってしまう。

 「引っ掛け詰め将棋を三つだけとは、棋力以前の問題だな・・・」

 主婦 加持(葛城)ミサトが、一番はしゃいで片手にエビちゅうで闊歩。

 「ぷっふぁ〜! イカ焼きよ♪ イカ焼き♪」

 オペレーターズは、自分の青春を不憫がりながらクレープを銜える。

 「良いわね、私たちの頃は、食べていくだけで必死だったのに・・・・」 マヤ

 「セカンドインパクトを生き残っただけでも運が良かったからね」 日向

 「そうそう、学園祭なんて・・・」 青葉

  

 そして・・・・

 シンジとカヲルは、こじんまりと露店の前。

 「・・・カヲル君。その出目金は、大き過ぎない?」

 カヲルは、5つ目の得物で出目金を狙う。

 「シンジ君。金魚すくいの鉄則は、金魚を追いかけてはならない」

 「水圧がかからないように斜めからだよ・・・・」

 「大きい出目金を避けるのは、鉄則にないの?」

 「あのヤクザ出目金が僕に挑戦しているんだよ」

 「・・・シンジお兄ちゃん♪」

 「ミ、ミドリちゃん」

 シンジは、鈴原ミドリに腕をつかまれる。

 「お姉ちゃんたちはいないんだ」

 「うん、女子は、別にすることがあるって」

 「ふ〜ん ミライ君は、カッコ良かったね」

 「そ、そうかな。カヲル君のイエス君の方がカッコ良かったよ」

 「使徒の渚お兄ちゃんが救世主のイエス・キリストをやるのって、嫌味っぽくない?」

 「ふ そう思うよ。意味のある死は、その逆より、気持ちが楽になる」 カヲル

 「本当のところは、どうだったのかな?」

 「ミライ君は、わからないけど、イエス君は、あんな感じだったと思うよ」

 「渚お兄いちゃんは?」

 「さぁあ〜 どうだろうね」 カヲル

 「使徒の渚お兄ちゃんのイエスを見られて良かった」

 「光栄だね」 カヲル

 「私のクラス。メイド喫茶店で客引きなの。二人とも来て」

 「「・・・・・・」」

 「みんな一緒に写真を撮りたがっているんだから、ケーキセットをサービスするね」

 鈴原ミドリは、カヲルが追い立てたヤクザ出目金を横合いから、すっー とすくって、

 おわんに入れてしまう。

 「・・・あ〜・・・・」 カヲル、泣き

 「はい、渚おにいちゃん♪」

 ミドリは、ヤクザ出目金を入れたビニールをカヲルに渡す。

   

   

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 月夜裏 野々香です。

 地球連邦軍だけはとりあえず、です。

 宇宙開発に法的な制度が必要なのでしょう。

 相続権を獲得した第18使徒リリン系人種は、どこへ行く。でしょうか。

 

 カオス クライシスは、オリジナル創作ですが、キャラは、微妙に被せています。

 気が向いたら、どうぞです。

 為りきっていれば、わかりにくいかも。脳内で変換してください。

 

ロボットメイド “香取” のイメージです。

 

 ロボットメイド “藤波” のイメージです

 

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

     
第67話 『主役はどこ?』
第68話 『地球連邦軍』

イエス キリスト物語 『カオス クライシス』

第69話 『年明けは、故意の季節』
登場人物