月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

   

山岸マユミ物語

   

   

第02話 『いざ! 出発』

 ロトの村は、平穏すぎた。

 そこに現れた異国人のマユミの噂は、波紋となって広がっていく。

 彼女が気にならない者はいない。

 黒髪は、珍しい。

 「じゃ これから城に向かうわ。オーヴラエンは、護衛をやってもらおうかしら」

 「うん」

 薬屋家業で貯まったお金の一部を宿泊代として、オーヴラエンの父ハーディイサスを払うと。

 武器の店に入る。

 なんとなく、ロールプレーイングと似て楽しくなる。

 長剣・・・ん・・・・ボトッ!・・・

 重過ぎて持てず。

 「マユミ。自分の体力。わかっている?」

 「全部で15キロ以下にしなさい」

 「はぁ〜い♪」

 「せいぜい。短剣だね」

 「魔法に集中するなら、榊の杖。楠の杖。桃の杖を持つと集中しやすいんだ」

 マユミが杖を持つと確かに集中しやすく。力を発揮しやすいように思えた。

 「桃の杖があっているみたい・・・」

 「霊石と比べてみて」 ラミネーヌ

 石が置いてある。宝石まであって、値段もピンからキリまで・・・

 「マユミ。魔術が使えない人間にとっては、ただの石だけど」

 「魔術が使えると。宝石に魔力を溜める事ができる」

 「木は、魔力を溜めやすいけど放出にまで時間がかかるの、だから、回復呪文とかに使いやすいわ」

 「石は、漏れやすいけど、放出しやすく、即効性があって、攻撃的なの、だから、攻撃の時に使う」

 「・・・・・・・」

 「だから、両方の特性を持つ石の付いた杖を選ぶこともできる」

 持っているお金と、杖と石をあれこれ組み合わせていく。

 「ラミネーヌは? 何を使っているの」

 ラミネーヌは、宝石が埋め込まれた短剣を見せた。いわゆる魔法剣

 服が重そうなことから、かさばらず、適当に思える。

 マユミが選んだのは、魔術師らしく黒いポンチョ。水晶の付いた桃の杖。

 少し寂しいが実際に持ち運ぶのは、水晶・桃の杖より。

 生きていくための食料や生活用品。

 生活必需品が多くを占める。

   

  マユミ ラミネーヌ オーヴラエン
攻撃 水晶・桃の杖 魔法剣 長剣
防御 エヴァ光質服+ポンチョ 重層皮服+ポンチョ 皮服+ポンチョ
  薬剤師 魔術師 剣士

  

 なんとなくマユミはウキウキ。

 城に向かう隊商と同行。荷馬車に乗せてもらうことになる。

 確かにその方が楽なのだが・・・・・

 休憩中は、林の中で薬草を採取したりする。

 紛らわしい毒草と薬草の違いも覚えていく。

 他にも、ケシからアヘンをつくり、モルヒネを抽出。

 大麻からマリファナを抽出。

 有害でも、有用という、二律背反。

 健康な人間に無用でも、痛み止めの一種で意外と必要だったりする。

 「オーヴラエン。スライムとか、出てこないの?」

 「街道を外れるとね。出て来やすいけど。もっと奥に行かないと・・・・」

 「ふ〜ん」

 ・・・・・・・

 「・・・あっ! 蛇・・・」

 「毒蛇だ」

 「・・・・捕まえられる?」

 「えっ!」

 「駄目・・・ならいいけど・・・」

 「そ、そんなことないよ」

 「良かった」

 「で、でもなんで?」

 「毒と薬って、似ているの・・・使い方次第ね」

 「・・・そ、それは・・・き、聞いたことあるけど・・・・」

 というわけで、蛇の捕獲。

  

 そして・・・・・・

 「・・・・いゃあ〜ん 太い〜」

 「・・・・・・・」 ラミネーヌ

 「きゃぁ〜 動いてる〜」

 「・・・・・・・」 オーヴラエン

 「な、なんで、こんなに、な、長いのぉ〜 いゃあああ〜ん」

 「・・・・・・・」 ジャン

 「そ、そんなに・・・う、うごいちゃぁ だ、だめぇ〜」

 「・・・・・・・」 ラミネーヌ

 「あ・・・あ・・・・で、・・・・・で・・・出てきた〜 あ〜ん」

 「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 き、気持ち悪い・・・・・とか思いながら、

 蛇を棒に蒔きつけて固定。毒をガラス瓶に入れていく。

 「・・・マユミ。あんた怖がって・・・・いるのに・・・・良く・・・やるわね」

 ラミネーヌが腕組して面白がる。

 「だ、だって、血清が作れるもの」

 「か、金にはなるわね」

 「魔術でも、できるの?」

 「治癒はできるけど、血清がある方が楽ね。直りも早い」

 「そう」

 「どうやって造るの?」

 「ウサギとか馬に少しずつ。打っていくの」

 「血に毒に対する抗体ができたら」

 「血を抜いて、分離して、有効な成分を乾燥させると出来上がり」

 トリニティに教わった知識を披露する。

 「・・・ひょっとして、人間にも少しずつ、打っていけば、抗体ができるの?」

 「できるでしょうね」

 思わず毒蛇を見詰める

 「「・・・・・・・・・・・・・」」

 「・・・・なんかいやね」

 「そうね」

  

  

 RPGと違って日常生活が99.9パーセントを占める。

 魔物も警戒している隊商を襲うほど、命知らずでなく。

 なんとなく。リリスを守っている魔物たちに興味が行く。

 人類は、いずれ、魔物を退治しながらリリスに到達するだろう。

 使徒の攻撃からリリスを守り切って、相続権を確保できるだろうか。

 ラミエル系人類を応援したくなっているマユミがいる。

 薬を調合していくと、噂を聞きつけた隊商の剣士たちが買っていく。

  

  

 近くの村が、魔物に襲われて、壊滅していた。

 累々と転がる、村人たちと、魔物。

 げっ!

 ・・・・トロールだ・・・・・。

 思わず。棒で、つん! つん!

 生き残っている村人は、3分の1にも満たないらしい。

 「マユミ。なにやっているの?」 ラミネーヌ

 「えっ! いや・・・」

 「割のいい仕事よ」

 少年が死線をさまよっている。

 ラミネーヌが治癒の魔術を行なっている間。

 マユミも、トリニティから教わった医学知識を使うことになる。

 一番大切なのは薬ではないらしい。

 傷の深さで、神経を切ってしまう可能性もあるのだが傷口を思いっきり開いて洗浄。

 顔をしかめたくなる様な話しなのだが汚れや膿んだ肉を削ぎ落として。

 汚れた血も抜き取って、殺菌、消毒、包帯が基本。

 薬は、二の次だったりする。

 当然・・・・

 「・・・いつっっっ!」

 「これを吸って」

 マリファナをかがせる。

 ここで、痛みを紛らわせるモルヒネ、マリファナ、アルコールが必要になってくる。

 薬や手術は、次のレベル。

 負傷者多数で忙しいと、そこまでやって生かす人間は限られてくる。

 有力者。お金持ちの息子など。である。

 「ぅぅぅ 吐きそう・・・・」

 マユミがケンスケに似た少年の治療を終わらせ、

 ふらりと外に出かけるが負傷者は、まだ並んでいる。

 あちらこちらで、啜り泣き、泣き声が聞こえる。女子供は、ほとんど残っていない。

 屈強な男たちでさえ、半分以上が死んでいる。

 「大丈夫? マユミ」 オーヴラエン

 「ええ、大丈夫じゃない、けど・・・」

 とはいえ、放って、おくこともできない。

 村の薬は、まだ残っていて、手持ちの薬もある。

 生き残って、動ける男たちに薬の採取を頼んでいた。

 「マユミ。ラミネーヌが魔法力を使い切って、回復して欲しいんだって」

 「え! あ、行くわ」

 杖にも、水晶にも、まだ、魔力が残っている。

 ラミネーヌは、長椅子でへばっていて、

 回復系の呪文で便利なのは、ゆっくりと調整しながら放出できる杖だ。

 「今、やるわ」

 杖に精神を集中していく。呪文はまだできず。

 回復の念を杖からラミネーヌに送り出しているに過ぎない。

 「マユミ・・・今度、まともな呪文を教えてあげないとね」

 「呪文か・・・」

 「鍵みたいなものよ。決まった鍵で決まった箱を開けると、決まった物が出てくる」

 「今のマユミのやり方だと、ずっと意識を集中していないといけないから、敵が来たらやられるわ」

 思わず納得するマユミ。

 性格は違うのだが、なんとなくアスカに似たラミネーヌに好感をもったりもする。

 「ラミネーヌ。ひょっとして、オーヴラエンのこと好き?」

 「はぁ〜 なんで、あんな、根性なし。冗談じゃないわ」

 「そ、そうなんだ・・・・」

 「なに? オーヴラエンのこと。気になるの?」

 「まぁ 最初に拾ってくれたの。オーヴラエンだから」

 「それは、ご愁傷様。もっと、根性のある男の子に拾われたら良かったのにね」

 「剣術は、良いと思うけど」

 「そりゃあ、剣術だけに集中すればね。でも、限界があるの」

 「最初は、有利でも、必ず魔法剣士に負けてしまう」

 「そ、そうなんだ・・・」

  

  

 魔物のおかげで城行きが遅れる。

 こういう場合。助けるのが公国の決まりごとらしい。

 ウェルブ公国のモチベーションを保つ上で必要な決まりごとなのだろう。

 近くの町からも助けがやってくる。

 魔物は、ほとんど撃退したらしいが深夜の襲撃で酷いものだ。

 不幸なことといえ、一家全滅も珍しくなく。

 使える空き家もある。

 遺体を片付けて生き残った者で分け合うらしい。

 財産が増えて再婚できると、ほくそえんでいる者もいる。

 人間の本質は、地球と変わらない。

 マユミは、セカンドインパクトからの経験から、そういった事が普通に思える。

 少なくとも天災や魔物のせいにできれば、そこで人間同士の愛憎も断ち切られる。

 人が人を、でないのが、むしろ救い。

 とはいえ、人間同士のイザコザも少なくない。

 しかし、魔物の存在のため。国同士の戦争は、あまり行なわれないという。

 ラミエル世界の考え方が良いかどうか・・・・・

  

  

 夜

 マユミ。

 『ウェルブ城か・・・・どんなところだろう・・・・素敵な王子様がいたりして・・・』

 むふっ!

 『そして、素敵な王子様と・・・・・きゃっ! いやぁん』

 むふふ〜

 『どうしよう・・・“マユミ、僕には、君が必要なんだよ”・・・』

 『むふっ・・・そうなったら、どうしよう♪ やだ〜』

 むふふふ〜 目がランラン。

 『駄目ぇ〜 だって、わたしは、帰らないと・・・かぐや姫みたいに・・・』

 『やだ〜 かぐや姫だって・・・むふふ』

 身もだえ。

 『それから、それから。いやぁん〜』

 携帯が震動する。

 『マユミ、大丈夫ですか?』

 「ええ、トリニティ。どう?」

 『予定通りの充電です』

 「そう・・・リリスと接触した方が良いのかしら」

 『その方が技術的革新が得られると思われますが・・・』

 「お土産にはなるわね」

 『どうでしょう・・・わたしたちの世界のリリスと違うものですから』

 『それと、リリスのそばに使徒が眠ってるはずです』

 『我々を異端者として攻撃してくる可能性があります』

 「そ、それはイヤよ・・・でも、秘密を知る者は、どうすべきかしら」

 『干渉せず。が、良いかと・・・』

 「なんとなく今の、住民を助けたくなるけど・・・」

 『今生きている者が、100年以内に南極に到達できる可能性は、0.009以下です』

 「そう・・・百年以上先か・・・」

 『ロンギヌスの槍を培養して造った闇質の剣でも、置いていきましょうか』

 『南極行きが近付きますよ』

 「・・・やっぱ、やめとく。何か動きは?」

 『近くに強い魔物はいないようです』

 「今のところ、インターフェースでシンクロできるような人間はいないわね」

 『残念です』

 「トリニティ。ドラゴンとか、いるの?」

 『南半球を飛んでいるのを確認しました』

 「げっ!」

 『例の媒体ウィルスが人間社会の負の感情エネルギーを集めて増幅いるようです』

 『この世界の人間社会の軋轢が小さいのは、このウィルスを媒体に魔物を創造しているためです』

 「人間の悪意が、直接、人間に向かわないのね」

 『間接的なので、直接、向かいにくいといえます』

 『発作的な場合。向かうことがありますが普通はタイムラグがあり “思い” として蓄積されてしまいます』

 『それがガス抜きという形で魔物になるかと』

 「なるほど、隣人を憎んだ意識が魔物になって、隣人を襲ってくるわけね」

 『人を呪わば穴二つというところです。集合体で、制御不能です』

 『しかし、制御できる魔術師も、いるようですが・・・』

 「精霊使い?」

 『そう呼びたければ・・・・』

 「争いのない社会と言うのは、できないのかしら」

 『人間に富、性、支配欲を求めさせないで。間引きして人口を抑制できれば・・・』

 「げっ!」

 『ラミエルの世界は、弱者の間引き分を魔物にさせ、精強さを向上させているので、理屈としては便利です』

 「魔物が勝ってしまうということは?」

 『人間が減ると、負のマイナスエネルギーも減るので魔物も弱体化します』

 『交換比率は、人間のマイナスエネルギーで、多少、増減します』

 『勢力比で、人間10対魔物1で、安定しているようです』

 「じゃ 人間が勝てば・・・・」

 『別の場所に魔物が、現れるだけです』

 『魔物が勝っても、勝ち過ぎれば、個体を維持できなくなって、胡散霧消です』

 「なるほど・・・・」

 『それと、拳銃ですが公になると問題になるかもしれません。気をつけてください』

 「わかっているわ」

 4次元ポケットの如く、虚数空間に隠す方法もある。

 とはいえ、ATフィールド。

 あまり使うと、使徒が起きてくる可能性が高く気が進まない。

 この世界が準備不足のまま、自分のせいで、インパクトでは、やりきれない。

  

  

 「僕も、一緒に行くよ!」

 とケンスケに似た少年。ジャン。

 「命の恩人のマユミを守ってあげるよ」

 『なんか、こいつには、マユミと呼んで欲しくないな・・・』

 なんとなく苦手意識のある少年は、ナイト気取りで真剣らしい。

 やれやれ。

 しかし、お金持ちの少年がいると便利で馬車が付いて来る。

 隊商と違って、身動きがとりやすい。

  

  マユミ ラミネーヌ オーヴラエン ジャン
攻撃 水晶・桃の杖 魔法剣 長剣 鋼・長剣
防御 エヴァ光質服+ポンチョ 重層皮服+ポンチョ 皮服+ポンチョ 皮服+ポンチョ
  薬剤師 魔術師 剣士 剣士

  

 旅生活は、質素堅実。切り詰められる。

 若い男女で、馬車の旅。暇になると、なんとなく快楽など求めてしまいやすくなる。

 意識したりもするのだが誤魔化すため仕事をする。

 マユミは、薬草の採取と調合。

 ラミネーヌは、マユミに呪文を教えるため、一緒にいる事が多い。

 オーヴラエンとジャンは、棒で剣術の練習。

 どっちが強いかというと、オーヴラエンが強いように思えた。

 しかし、実戦になると、鋼の剣を持つジャンが優位になるようだ。

 その程度の違いといえる。

 さらにジャンは、「本当は、剣より、弓の方が得意なんだ」 という。

 なぜ、弓を使わないのかというと。

 表情が曇っていく。

 聞かなくても、だいたい、見当が付いたりもする。

  

 ウェルブ城

 『どこかで見たような・・・・・』 マユミ

 近付くにつれて、現実が大きくなり、妄想が薄れ、色褪せていく。

 城内で、ありきたりの質問をされるが、ほとんどを記憶喪失で乗り切る。

 もっとも、ありきたりな質問というのは、基本的な事柄。

 誰?

 どこから来たのか?

 目的は?

 などなど。

 きちんとした回答がなければ、終わらない。

 ウェルブ公爵は、普通のおじさん。

 長男は、まあ、普通。

 しかし、次男は、いただけない。

 いやらしい表情でコソコソと迫ってくる。

 なんとなく、現実に失望してしまう。

 「なぁ いいだろう。マユミ。減るもんじゃあるまいし。楽しませてやるぜ。得意なんだ俺」

 ミステリアスな黒い長髪が、そそるのだろう。迫ってくる。

 衛兵も見て見ぬ振り、なんとなく鼻つまみ者だとわかる。

 「いやです。オルベンス様。他をお探しください」

 「そういうなよ。なぁ・・・」

 腕を握られる。

 『なんか、貞操の危機だわ。どうしましょう』

 「いいだろう・・・なぁ」

 『ぅぅ 積極的なのは、評価できるけど。もっと、カッコよければ、考えても良いのに・・・・』

 「・・・いや!」

 「おい!」

 強引にマユミを掴もうとする。

 「うぁあ!」

 オルベンスの腕を捻り上げて、そのまま倒してしまう。

 ゼーレやNERVで教わった格闘術は、伊達ではない。

 マナ、アスカ、レイには及ばなくても、ヒカリに少し負けても、

 新城チアキといい勝負で、

 体格差があっても、公爵家のバカ息子など、どうにかなる。

 「もう、近付かないで!」

 逃げるマユミ。

 楽勝なのだが城中を敵に回すのも気が引ける。

 実は、それでも楽勝なのだがインターフェースとのシンクロを考えると、協力者は必要だった。

 追いかけてくるオルベンス。

 「げっ!」

 向こうの方が早い。

 しばらく走りこんでいないため、弛んでいるのがわかる。

 「おい! 待てよ。待て!」

 肩を握られる。

 「いてぇ!」

 瞬間的に腕を捻り上げて、倒してしまう。

 「くっ! くそぉ。貴様!」

 同じ手に引っ掛かるとは、違う意味で失望する。

 オルベンスが、剣を抜く。

 『う、最悪・・・・』

 対峙するオルベンスとマユミ。

 剣を向けているオルベンスより。

 自然体で落ち着いているマユミのほうが、貫禄がある。

 『どうしよう・・・いろんな、方法が思い浮かぶわ』

 余裕綽々 “ネズミが猫に向かってくる” に近い。

 その気になれば、城ごと破壊できるのだから、蟷螂の鎌。

 「マユミ!」 ジャン

 ジャンが近付いてきて、マユミを庇う。

 「オルベンス様、おやめください。これ以上は・・・」

 「っく!」

 城の執事ブールトが諌めると、オルベンスは、剣を引いて去っていく。

 「申し訳ございません。マユミ殿。オルベンス様になり代わって、お詫びいたします」

 「・・・・・」

 この日を境にマユミを見る目が変わる。

 少女が大の男を二度も、捻り上げて倒してしまうなど、聞いた事がないらしい。

 この世界では、人間VS人間というのが少なく、体術の分野が遅れていた。

  

 城での質疑は、続けられる。

 記憶喪失ということで知らぬ存ぜぬで通している。

 “こっちも、仕事がある” といえば、護衛付きで外に出て薬草を集めたりもする。

 この時代、地球なら魔女扱いで火あぶりが普通なのだが、この世界では、魔術が珍しくない。

 おかげで、特殊能力があっても不思議ではないと認識されている。

  

 城の中庭、ジャンと談笑。

 ジャンは、公爵家のオルベンスの前に出て助けようとした。

 封建社会では、命がけに近い行為だった。

 少なくとも、オルベンスよりマシで、なんとなく、好感を持ってしまう。

 意外と、この世界に居つくのも悪くないかも、と。

 一軒家でジャンと生活している自分を想像してしまう。

 『・・・やっぱり、女の幸せを求めるものよね。わたしだって幸せになりたいもの』

 と、目の前にオルベンスが現れる。

 げっ!

 どうやら、酔っている様だ。

 「・・・この前は、失礼した。マユミ殿。一つお手合わせ願いたいな・・・」

 そういうと棒をマユミに差し出す。

 ジャンが前に出る。

 「駄目だ」

 「うるせぇ!」

 オルベンスが棒を振ると、ジャンが肩を抑えて転がる。

 「やめてください! オルベンス様」

 「さぁ〜 受け取れ。そして、戦って正体を見せろ!」

 「オルベンス様、わたしは、薬を作っています。多くの人の役に立っているはず」

 「オルベンス様が怪我や病気になったとき。どうするつもりです」

 「図に乗るな! おまえだけが薬を作れるわけではないわ」

 「・・・・・」 むすぅ〜

 「さぁ 受け取れ」

 棒が放られ。マユミが受け取る。

 オルベンスの顔が歪む。

 棒でも、当たり所で人を殺せる。

 棒が振り下ろされ。勢いで判断すれば、十分に致命的。

 すぐに下がって、間合いを取る。

 闇打ちの訓練で感覚が研ぎ澄まされ、そういった間合いだけは肌で感じる。

 後ろから打ち下ろされても気配で、避けられるような訓練を受けている。

 常人には、紙一重の様に見え、

 それが、良いというわけではない。

 しかし、余計な動作がない分だけ、体勢を安定させられる。

 恐怖感の軽減で対応も柔軟。

 さらに目を別の事柄、

 つまり、反撃の機会を得やすい。

 しかも、相手は、酒を飲んでいる。

 それほど飲んでいなくても、感覚と反応速度は、鈍る。

 そして、振りが大きくなった時。一気に内側に入り込む。

 足を引っ掛けて、胸を押すだけで、バランスが狂い。

 簡単に倒れてしまう。

 結局、棒は、使わずじまいで。見回すと、観衆も増えている。

 「大丈夫。ジャン」

 「あ・・・・うん」

 「くっ! くそぉ〜」

 剣を抜こうとするオルベンスに杖を突きつける。

 「欲望のまま、他者を虐げようとするのは、もう、やめてください」

 「人を治すこともできれば、呪うことも、できるんですよ」

 これは、張ったり。

 人を呪うなんて、そこまで、自分を落としたくない。

 「・・・・・・・・」

 オルベンスは、悔しげだったが去っていく。

 そう、彼のような存在が負のエネルギーを増大させ、

 魔物を強くし、人間社会に害を及ぼしていく。

 邪な人間を力で押さえつけても、善良になることはない。

 腐り過ぎてしまうと、手の施しようもない。

 オルベンスは、そういう、タイプの人間だった。

  

  

         

ラミエル系 いわゆる、こういう世界ですか・・・・

リリン系の世界と、どっちがいいでしょうか

 

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 月夜裏 野々香です

 エヴァンゲリオンの世界と魔法と剣のラミエル系世界。

 馴染んでないようで、馴染んで、

 文学少女(妄想少女)川岸マユミは、どこへ・・・・

 学校は、どうするんだろう。いや、年齢設定は・・・・

 本編次第・・・

 

 

 

  

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第01話 『迷窮少女 マユミ』
第02話 『いざ! 出発』
第03話 『妄想少女 マユミ』
登場人物