山岸マユミ物語
第06話 『幻想少女 マユミ』
虚数艦レリアース
少しばかり火傷を負ったマユミがぶすくれる。
「もう、髪が縮れちゃったわ」
「上手くいきましたね。マユミ」
「もう、シナリオB22なんて、最低ぇ〜」
「でも、マユミ。この世界では、永遠のヒロインですよ」
「槍と炎を虚数空間に通したけど、ああいう芸当は、金輪際やりたくないわね」
「レリエル系ならではの技ですよ。でも、まともに受けても再生するんじゃないですか?」
「まさか、渚カヲルレベルの化物ならともかく。いやよ」
「ですが、ラッキーです」
「あの白銀ドラゴン。あなたへの想念が強くて、インターフェースにぴったりです」
「足も付かないはずです」
「怪我の巧妙ね。民衆の想念。恐るべしね」
「力も強く、やさしいので、使徒戦で、役に立つかも知れませんね」
「使徒戦に勝てそう?」
「勝てるとは思えませんが総合力ですよ」
「・・・なんか、使徒戦で殺されたりしたら、かわいそう」
「ですが、あれほど、純粋に正のエネルギーで創造されたドラゴンは、この世界にありません」
「今後も、出てこないかもしれませんね」
「できれば、観戦したいわね。使徒戦」
「あれほどのエネルギーでしたら、インターフェースを通じ」
「虚数空間へ微弱な発信を感知できるかもしれません」
「少なくとも、わたしが生きている間は、ないわね」
「マユミ。例の物ができていますよ」
「そう、良かった。御神木と、どっちが上かしら」
「それは、使ってのお楽しみですよ。マユミ」
ウェルブ公国
ソイルド王子の部屋。
「だれだ・・・」
「ソイルド王子。約束の薬草。エゾウコギです」
「い、いつの間に・・・ここは、魔法障壁が、かかっているはずだ」
マユミは微笑む。
「くすっ♪ 約束の物を頂いていきます」
御神木でできた魔法の杖。
そして、巨大な水晶球。
「あ、ああ・・・それは構わんが・・・」
「ソイルド王子。良い公国を作ってください」
「ああ・・・そのつもりだ」
「約束ですよ。ソイルド王子」
「わ、わかった」
アスラエル王国 王都ハルナハス
郊外の墓地
マユミが眠っている。
死体も確認した。
あれでは、生き残る術はない。
噂を聞きつけた民衆も集まっていた。
「ラミネーヌ・・・」 オーヴラエン
「オーヴラエン・・・今日で、3日目・・・いさせて・・・・」
「あれは?」 ジャン
民衆の悲しみの想念を秘めた白銀の巨大ドラゴン。
マユミの伝説を証明するかのように生き続けるドラゴンがマユミの墓地の前に降り立った。
そして、墓地が開かれ。マユミが現れる。
「マユミ!」
「マユミ」
「マユミ」
ラミネーヌ、オーヴラエン、ジャンが、近寄ると、
マユミが微笑む。
「ラミネーヌ、オーヴラエン、ジャン。お別れを言いに来たの・・・・」
「そんな。マユミ」 オーヴラエン
「行きましょう」
「ど、どこに?」 ラミネーヌ、
「この王国の指導者にも、お別れを言いにね」
「で、でも、マユミ・・・・」
「ただのお別れよ。この世界を良くして欲しいって、言いに行く・・・それだけ・・・」
今なら、王国も、教会も、滅ぼせる。
それだけの民衆が集まろうとしていた。
マユミを先頭に民衆の数が急速に増えていく。
それは、王国の軍隊を退かせるだけの巨大な群集。
マユミが処刑台に登り。手を振ると大歓声。
王宮の前を通過し。
教会の前に来た時、全ての民衆がマユミの側に付いた。
兵隊は、戦意喪失。
指導者層も真っ青で待つしかない。
マユミは、死刑宣告を受けた場所に立った。
「民衆の皆さん。ここで、刑に処せられる前と似たようなことを言いましょう」
「王国、教会。そして、みなさん」
「わたしは、誰も、恨みません。だから、あなた達も、恨まないようにしてください」
「あなたたちは、いまよりも素晴らしい。世界を作れるでしょう」
「そして、この世界を相続してください」
「もし、あなた方に忍耐がなく。世界に混乱を招いた時のために」
「大きな精霊と、人の精霊を隠しておきます」
「そして、わたしがいた証として、この世界に三種の神器を贈りましょう」
「これらの神器は、あなたたちの助けになって」
「あなたたち自身が、打ち勝つ原動力になるはずです・・・」
「ラミネーヌ」
ラミネーヌが近付くと白銀の杖が与えられる。
「オーヴラエン」
オーヴラエンが近付くと白銀の剣が与えられる。
「ジャン」
ジャンが近付くと白銀の弓が与えられる。
「わたしは、この三人が好きだったので、世界が好きでした」
「ですから、素晴らしい世界を造ってください。もう会うことはないでしょう。お別れです」
マユミは、そういうと大聖堂を出て行く。
白銀のドラゴンが正面玄関で待っていた。
「乗せて貰える? ドラゴン君」
かしずいた白銀のドラゴンにマユミが乗る。
「マユミ!」 ラミネーヌ
「マユミ!」 オーヴラエン
「マユミ!」 ジャン
マユミが手を振ると、
「北へ向かって」
白銀のドラゴンが飛び立っていく。
北極圏
虚数空間の移動は、ATフィールドの増大を伴うことから南極圏から最も遠い北極圏が選択される。
トリニティの管制で虚数空間のルートが確保されていく。
「トリニティ。どう、御神木の杖と水晶は?」
「意識増幅ウィルス。地球の自然環境では、増殖できません、今後、重要なアイテムになりそうです」
「あと、こっちが与えた物の方が強力ですが、お土産にはなるでしょう。」
「善悪含めてね」
「トリニティ用の制御プログラムをつければ、違法な意識は制限できますよ」
「それは、地球で決める事になるでしょうね」
「ええ」
「トリニティ。地球に帰還できそう?」
「成功確率88パーセントです」
「そう・・・・・・」
空間にできた黒い染みに向かって浮上して行く虚数艦レリアース。
インターフェースを付けた白銀のドラゴンが見送る。
トリニティの管制が続く中。レリアースが虚数空間へと突入していく。
そして、感慨無量のマユミがモニターから白銀のドラゴンに手を振る。
「さらば・・・地球よ・・・・旅だ〜つ・・船は・・・・」
ガタン!!
「えっ! な、なに?」
「失敗です」
「ど、どういうことよ! トリニティ」
「地球に戻るのに “さらば、地球よ” なんて、歌うから勘違いしたんですよ」
「な・・・」
ガタン!!
「別の平行次元世界に不時着してしまいました」
「な! 信じられない。どれだけ苦労したと思っているのよ。このバカ!」
「バカ・・・わたしにバカと言った人間は、あなたが、初めてです。マユミ」
「う、五月蠅い! このバカ!!!」
ラミエル系 いわゆる、こういう世界ですか・・・・
リリン系の世界と、どっちがいいでしょうか
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月夜裏 野々香です
山岸マユミ物語 30万HIT記念で、完結しました。
「・・・連載が終わっていないのに・・・」
よぉおおお〜く。わかっていますが。
スランプです。
これで勘弁してください。
※杖・剣・弓の神器は、アダム・レリエル系の光質と
この地の意識増幅ウィルスを高純度に結晶化させて合成させたものです。
もう少し、平行次元宇宙を旅させてみたかったのですが、限界で帰還編です。
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