月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

   

 

山岸マユミ物語

第11話 『赤い世界』

 荒れ果て赤みがかった世界が広がっていた。

 「火星なの?・・・・トリニティ。ここはどこ?」

 「虚数空間座標で知りたいですか? マユミ」

 「いいわよ・・・」

 「地表は、低レベルの放射能に汚染されている模様」

 「げっ!」

 「高感度、探知レーザーを感知。ステルス機能最大」

 「何よ。こんな世界に誰かいるの?」

 「軌道衛星上からです。どうします?」

 「虚数空間に潜航するわ」

 「低層度になります、強いエネルギーを受けると実体化します」

 「とりあえず、それでも、いいわ」

 レリアースが赤みかかった地表から消える。

 

 トリニティの情報集能力は高い。

 数時間で、この世界の状況が、見えてくる。

 「マユミ。土壌調査の結果。サハクィエル系の世界の模様です」

 「なんで、サハクィエル系の世界がこうなっているわけ?」

 「宇宙から攻撃を受けている模様です」

 「宇宙戦争?」

 「そのようです」

 「ったく。ロクな人種じゃないわね。サハクィエル系って」

 「どうやら、異星人に攻撃されているようです」

 「うっ! そうぉおおおお!!」

 「宇宙戦闘の様子をキャッチしました」

 小惑星が攻撃され、小爆発を起こしていた。

 どう見ても、戦闘シーンに見える。

 「宇宙人なんて、いるの?」

 「マユミ。それは、リリスは、いるの? と同意語に近いような・・・」

 「平行世界の地球は、大丈夫だったのに」

 「どうでしょう。平行世界とっても、多少、時間軸に違いがあるようですし」

 「でっ 当然、ここでも、充電が必要で灯台になるような人間が必要なんでしょう」

 「まともに地球に向けて帰還しようと思えば、そういうことになりますね」

 「どこにいるのよ。人間」

 「地下です」

 「地下ぁ〜」

 「地表にエネルギー源を感知。大型10。小型40です。成層圏に向かっています・・・・」

 「成層圏突破。大気圏外へ、衛星軌道に乗りました」

 「な、なに? 攻撃してくるの?」

 「いえ。静止軌道から、月へと向かっている模様」

 「どうしよう」

 「地下に行かないのですか?」

 「ほ、放射能があるでしょ」

 「マユミなら素でも大丈夫ですよ。ATフィールドもありますし」

 「・・・んんん・・・・」

 「ロボットを連れて行きますか、足手まといになりそうですが・・・」

 「行って来るわ。科学レベルは、どの程度かしら?」

 「地球の既存技術以上。エヴァ技術以下です」

 「んん・・・少しばかり身の危険を感じるわね・・・・リリスは?」

 「南極に反応があります」

 「どうやら、まだ、発見されていないか」

 「発見されていてもスイッチを入れなかったか、でしょう」

  

  

 例の黒いポンチョと黒い帽子。

 そして、杖。

 荒涼と赤みがかった地表。

 ガイガーカウンターは、致死量を越えている。

 とはいえ、エヴァ光質の服は、不透過。

 さらにATフィールドのおかげで、この星の探知機にも引っ掛からず。被爆もしない。

 そして、地下へと潜り込んで行く。

 近代的な建築構造物が放射能に覆われ、死の世界のまま取り残されている。

 放射能は、地下世界にも沈みつつあり。滅びつつあるサハクィエル系の世界。

 「ひぇぇぇえええ〜」 ドタ、ドタ、ドタ!

 奇形ネズミの大群に襲われたり。

 「ひゃゃあああ〜」 バタ、バタ、バタ!

 奇形ゴキブリに襲われたり。

 生理的嫌悪感だけは、ATフィールドを通過してしまうらしい。

 「ぅぅぅぅ うぐっ・・・・ひっくっ もう〜 インパクトを起こして、やり直しよ。こんな世界・・・」

   

   

 地表に近い居住区は、貧民階級で取り残されているらしい。

 黄色い髪と緑の目をした人間たちがいる。

 『ふ〜ん サハクィエル系の人間か・・・』

 黒髪黒目は、珍しいらしく。注目を浴びるが五体満足な人間は少ないらしい。

 『これなら、突然変異のアルピノで通用するかも・・・』

 さらに地下居住区へ向かおうとすると・・・・兵士が銃を向ける。

 「だれだ、貴様。この先へ行くには、許可書がいる」

 『むふっ♪ 日本語でよかった』

 「わたしは、地球から来ました。外交使節です」

 『ふっ うそばっか・・・』

 しかし、兵士たちは、マユミの黒髪黒目と服装を見て躊躇する。

 「・・・そ、そこで待て、聞いてみる」

 どうやら、普通じゃないのは、理解されたようだ。

 こういった作戦は、環境から、およその社会構造が予測できるトリニティ任せ。

 状況に合わせて、いくつかの選択から一つ選ぶ。

 選択枝を一つ決めるたびに元に戻れない橋を渡っているので、冷や汗もの。

 こういった状況では、独裁中央集権に近い状況になりやすい。

 『ますます。インパクトを起こしたくなるわね』

 「おい、貴様。名前は?」

 「山岸マユミ」

 「案内の者が来る。待っていろ」

  

 地下世界は、生存のため掘り進められている。

 採算を度外視しても地下へ向かうため資源自体は、あるらしい。

 しかし、地下へ掘り進むにも限界があり。放射能が沈下する速度にも負けている。

 迎賓館らしいところに通される。

 少なくとも他国の使者に対しての礼儀は、あるらしい。

 背広を着た者が2人と制服を着た者が2人。

 国家を代理している比率で国家の体質がわかる。

 「地球から来たと?」 制服組

 どっちが先に話すかで優先権がわかる。

 『軍人が主導権ね・・・言葉使いも悪いわ・・・』

 「ええ、これが親書」

 トリニティが準備した親書を渡す。

 トリニティの識別サインがあれば、後々、正式な公文として追認される可能性もある。

 「貴様、ガミラスのスパイだな」

 「!?」

 「「「「・・・・・・・・」」」」

 「地球よ・・・」

 親書を見た4人が顔を見合わせる。

 「ちょっと、お待ちを・・・し、親書は、御預かりいたしますので・・・」 背広組

 4人が出て行く。

 内容が問題ではなく。エヴァ光質の紙質が問題だったのだろう。

 『ガミラスって・・・う、宇宙戦艦ヤマトよ〜・・・古代君〜』

 くねくね

 『やだぁ〜 古代君たら・・・むふ・・・むふふふ・・・』

 フリフリ

 『もう〜 一緒に暮らそうだなんて、マユミ。困っちゃうぅ・・・・古代君ったら・・・・』

 うねうね

  

  

 次に入ってきた者たちは、この世界の主導者だった。

 「ああ・・大変、失礼した。山岸マユミ殿」

 「現在、サハエルは、異星人と交戦状態にあって」

 「我が国との国交は、貴国にとって不利益にもなりかねない・・・」

 「本国は、ご存知なのでしょうか?」

 「わたし、こう見えましても、一定の権限を持っていますの・・・」

 『うそだけど』

 「ああ・・・しかし、山岸マユミ殿。地球というのは、どこに存在するのですかな?」

 「親書にある通りです」

 「・・・つまり、我が国に国交に足る資質がこちらにあると認められた時に。ということですかな」

 「そういうことです」

 「そちらには、都合がいいようですな」

 「そちら側に、地球に来る力がないのであれば、場所を教えても仕方がないでしょう」

 「交戦中のようですし・・・」

 「なるほど・・・わかりました・・・山岸マユミ殿。あなたを受け入れましょう」

 一方的なのだが、日本も、むかし、ペリー艦隊にやられた手なのだから、

 それほど、おかしいわけではない。

  

  

 この世界の状況は、少しずつわかってくる。

 ハイエルは、それなりに平和と戦争を繰り返していた。

 そして、第1次世界大戦後、最大最強の国家を核にした地球規模で緩やかな国家連合を構築。

 その後、国家間の危機を紆余曲折の戦争未満で乗り越える。

 『地球で言うと・・・アメリカも国際連盟に加盟したわけか・・・優秀ね・・・』

 科学技術が向上。

 経済的な理由で、国際協調? 妥協? 恫喝? が進んでいく。

 そして、外向きのフロンティアスピリットが功を奏し。

 太陽系探査は、冥王星にまで到達。

 さらにエッジワース・カイパーベルト天体の外側。オールトの雲の探査を行なう。

 目を付けたのが矮惑星セドナ(直径1500km)。

 近日点76AUで、基地を建設すれば、そのまま、遠日点 850 AUまで、探索ができる事になる。

 長半径 480 ± 40 AU 離心率 0.84 ± 0.01 自転周期 約10時間 表面温度 < -240 ℃

 オールトの雲まで、まだ足りないが、それでも太陽系の最外縁部にまで到達できる。

 公転周期10500年という気の長い話しだがロボットなら、何とかなる。

 そして、探査機をセドナに送った矢先、冥王星が謎の宇宙艦隊に占領される。

  

  

 冥王星から撃ち出される遊星爆弾。

 地球は、壊滅的な打撃を受けて、瀕死の状態。

 それぞれの大陸ブロックで、宇宙艦隊が準備され、月軌道上に集結。

 整備、編成、訓練が終われば、冥王星のガミラス基地に向かって攻撃するらしい。

 『マユミ。インパクトを起こせば、地球は、再生します』

 『しかし、文明がある程度の水準に達するまで、無防備です』

 『簡単に占領されてしまいます』

 「リリスは、異星人の支配を受け入れるかしら」

 『使徒を出撃させる可能性はありますが』

 『サハクィエル系人類が生き残っている間は、大丈夫だと推測できます・・・』

 「継承権の争奪戦に他人が紛れ込んだということね」

 『マユミ。それは “わたしたちも” です。不可抗力ですが』

 「どうも、この世界は、いけ好かないわね』

 「異星人に占領されなければ、という条件付なら。インパクトを起こしたいわね」

 『それは、無理かと。それに地球資源の枯渇を防ぎ、インパクト抜きで太陽系まで人類を進出』

 『サハクィエル系人種は、優良優秀人種と思えます』

 「そ、それも、そうね」

 『人類補完計画をしていませんが、リリン世界より成功していた。と思われます』

 「じゃ イスカンダルのサーシャが来るまで待つの?」

 『マユミ。アニメじゃないのですから。そう都合よく行きませんよ』

 「じゃ 助ける方が良いのかな」

 『サハクィエル系人類が絶滅した後。使徒で異星人を撃退する可能性はありますが』

 「できそう?」

 『1体では困難かと・・・』

 「まず、ガミラスの正体と力を知るべきね」

 『ガミラスの前線基地は、冥王星かもしれませんが本拠地は、セドナかもしれません』

 「遠すぎるわね」

  

  

 地球連邦軍総司令部

 この基地に魔法使い風の少女が入り込むのは、初めてのことだろうか。

 やたら、ジロジロ見られる。

 サハエル艦隊とガミラス艦隊の宇宙海戦記録。

 どこかで見た事があるような艦隊とやはり、どこかでみた事がある艦隊が、撃ち合い。

 サハエル艦隊は、ボロボロに負けてしまう。

 ガミラス艦隊は、木星圏にまで近付き。

 サハエル軍は、アステロイドベルト(小惑星帯)にまで後退。

 どうやら、惑星同士が接近した時にガミラス艦隊が侵攻して占領するというものだった。

 補給の関係でそうなってしまうのだろうか。

 恒星間を押し渡って来て、恒星間内で補給も変な話しだ。

 しかし、現実に、ハイエルに直接侵攻する余力はないようだ。

 「我が地球連邦は、太陽系を全て支配していました」

 「しかし、5年前突如として現れたガミラス艦隊の攻撃を受けて、大損害を受けました」

 「ガミラスという名称は?」

 「ああ・・・むかしのアニメで、このガミラス艦に似たデザインの敵性宇宙人があったので、そのまま、ガミラスと・・・」

 『あはは・・・・』

 「現在は、アステロイドベルトの小惑星270ヵ所を要塞化して、防衛線を構築しています」

 「それで・・・防衛できそうなのですか?」

 「いえ、ガミラス艦は、容積比で言うと・・・1対3」

 「つまり、地球艦は、3分の1の大きさのガミラス艦と互角というところです」

 「・・・・もし、仮に地球がサハエルの味方をした場合」

 「地球が得られるものは、どのようなものがあるの?」

 「もし、ガミラスを撃退できるとすれば、たいていの要求なら飲みます」

 「サハエルは、壊滅的な状態ですから」

 「ガミラス側の資料を頂きたいですね。本国と交渉してみましょう」

 「失礼だがマユミ殿。本国へは、どのように帰還されるので?」

 「ここに来たのと同じように・・・・」

 「た、確かにマユミ殿の侵入を探知できなかったのは、事実ですが・・・・」

 「信用できませんか?」

 「い、いえ・・・・」

 「試しに、その銃で、わたしを撃ってみたらどうです」

 「・・・・・」

 「どうぞ」

 「こ、これは、レーザー銃ですよ。しかも、最新型で、15mm装甲版を撃ち抜ける」

 「そう思っていました」

 「・・・・・」

 制服組の男がホルスターから銃を抜く。

 管制室の職員がマユミを見守る。

 「・・・よろしいので?」

 「ええ、信用されたいものです」

 「わたしが、この管制室を全滅させないことで、敵でないことを・・・」

 「・・・・」

 ビームが撃たれると、マユミに当たる直前に消えてしまう。

 何度、撃たれても同じ事が繰り返される。

 管制室の職員は驚愕する

 「どうやら、あなたを信用するしかなさそうだ・・・・」

 「共同戦線で戦う可能性もありますが、こちらの要求は、ガミラスより。小さいものになると思います・・・」

 「どのような・・・」

 「本国次第です」

 「地球は、ガミラスに勝てるのですか?」

 「いえ、ガミラスに勝つのは、あなた方、サハエルです」

 「自国を守れないような国は、どこからも相手にされませんよ」

 「助けるとすれば、勝つための切っ掛けを与えるだけです」

 「そ、それは、どのように・・・」

 「ふっ それも、本国と協議してからです」

 素の状態で地表に出られるマユミと、宇宙服を着ないと外へ出られないサハクィエル系人類。

 彼らを助ける義理があるとすれば、彼らの中に座標を認識できるような味方を確保したいからに他ならない。

 出たとこ勝負で虚数空間に飛び込んでも、不時着が待っているだけだ。

 地表。

 生身で虚数空間へ行ける人間は、そういない。

 そして、マユミは、前触れもなく消え、周りを警護していた将兵を驚かせる。

 

   

  

 虚数空間に漂う。虚空潜航艦レリアース。

 山岸マユミは、虚数空間をゆっくり移動しながらレリアースに乗艦する。

 「ご無事で、安心しました」

 「あのレーザー銃は、なかなか強いエネルギーね」

 「虚数空間が少しばかり乱れたわ。光質の服でなければ火傷していたわね」

 「ガミラス相手には、やらないほうが、賢明ですね」

 「ATフィールドを外向きに使うと、南極のリリスがどう動くか、わかりません」

 「どう? トリニティ。ガミラスの科学技術レベル」

 「虚数空間に対する変動は見受けられませんが相当なレベルです」

 「ガミラス艦の残骸を見た限りでは、空間転移に必要な装置は、見受けられませんでした」

 「しかし、空間転移航法が確立されていると考えられます」

 「タブリス系人類が得やすい能力です」

 「わたしたちの地球へのお土産としては、最高レベルかと・・・」

 「お土産ねぇ〜 勝てそう? レリアースで」

 「こちらのATフィールド技術体系の存在をガミラス側が知らないのが強みになりそうです」

 「問題は、彼らが虚数空間に対して、どの程度、認識できるかです」

 「低レベルの虚数空間潜航しかできないのは、問題ね」

 「強力なエネルギーに引き寄せられてしまうもの」

 「ガミラスの正体。タブリス系なの?」

 「可能性は否定しません」

 「ですが、リリスが、どの程度の密度で銀河に広がっているのか、不明です」

 「なんか、苦手意識があるのよね・・・渚カヲル」

 「好き嫌いが極端に別れてしまうタイプのようです」

 「それで、トリニティ。どうする?」

 「帰還するためには、サハクィエル系人類と緊密な関係を築くべきでしょう」

 「マユミとの関係で灯台としての強弱が変わってしまいますから」

 知らない人間に声を掛けるのは、勇気がいる。

 シンジと同様、対人恐怖症を抜け切れていない山岸マユミにとって、死刑宣告に近い。

 そして、この世界は、中央集権体制で、好きになれそうになかった。

 トリニティに言わせれば、地球が同じレベルの危機に陥れば、もっと、酷くなるという。

 サハクィエル系は、リリン系人種より、温厚な気質。穏健な体制らしい。

 トリニティは、いくつもの状況を計算して、計画を立てていく。

 山岸マユミも考えてみるがトリニティの方が頭がいい。

 トリニティ任せの世界は、危険な気がする。

 地球でも反発が多い、

 しかし、トリニティ任せの企業は、実質、成功している。

 法制でトリニティに対する制限を検討して、人間の経験則を高めようとしている動きは強い。

 産業革命以来、人間の機械に対する依存は、強くなってきている。

 そして、機械部品も、電子部品も人間の手先では、修復不能な次元になっていた。

 トリニティの時代になると、想像力、判断、情報、生活すらもトリニティ任せになり。

 人間力は、危険なほど低下する。

 どうなることやら・・・・・

 「マユミ。とりあえず。いくつかのパターンで、計画を立ててみました」

 作戦計画が3D映像に流される。

 少なくとも自分が考えていたものより数段、熟慮され、洗練されている。

 「・・・・・・・」

 しかし、どれを選択するかは、マユミ次第だった。

  

  

  

  

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 月夜裏 野々香です

 宇宙戦艦ヤマトの世界に少しばかり侵食しました。

 セドナの直径、公式には、直径 1180 - 1800 kmです。

 地球の太陽系と微妙に違ってたりもするので、その辺は、勘弁です。

  

 山岸マユミ、もう少し、漂流させようかと思いましたが、一度、本編に戻すことにします。

 06から11になったのが、それ。

  

  

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第06話 『幻想少女 マユミ』
第11話 『赤い世界』
第12話 『帰 還』
登場人物