第01話 1893年 『戦えないよ』
欧米列強の貪欲な征服欲と支配欲が清国と東アジアを包み込もうとしていた。
明治政府は、封建的な幕藩体制と世襲された武士階級の反発を押さえ、
天皇を中心とした近代的な中央集権国家を構築していく、
年貢米の物納から税金を取る金納に切り替え、
石高から貨幣へと国内経済を移行させていた。
急速な近代化は、混乱を生みつつも時代を変革させ、貧富の格差を広げていく、
政府は列強の軍艦に恐怖し、不安に苛まれていた。
それは、外国勢力と結託し、新体制を害する勢力の出現であり、
新政府を仇名す不満分子勢力が国内で増える恐怖だった。
維新後の日本民族と明治政府が列強に対し求めたのは民族独立だった。
そのため、庶民が実力と能力を発揮できる社会制度が不可欠だった。
幕府が倒れ、封建社会が崩れると清国と朝鮮が躊躇した西洋近代技術を習得しつつ、
積極的に文明開化を推し進めていく。
官業払い下げの殖産産業を進めたのも国益と同時に
庶民から実力と能力のある人材を求める為だった。
明治政府は、中央集権を保ちつつ、
それまでなかった近代化の土壌を育てていく。
欧米列強の軍艦は、圧倒的な軍事力を誇りながら日本の沖合を遊弋していた。
明治政府と日本人は、自力で建造不可能な欧米の軍艦に萎縮していく、
一方、清国は、東アジアの盟主ならんと、豊富な国家予算で欧米諸国から軍艦を購入していた。
そして、明治政府は、砲艦外交を試みる清国の脅威にも晒されることになった。
清国
定遠、鎮遠 (7335トン 305mm連装×1基 14・5ノット)
鎮遠
日本は、軍艦を建造する技術を持たず。
外国から購入した軍艦を運用するしかなかった。
松島、厳島、橋立 (4278トン、320mm×1、16ノット)
扶桑(鉄) (3777トン、240mm×4 、13ノット)
千代田 (2440トン、120mm×10、19ノット)
吉野 (4216トン、150mm×4、23ノット)
浪速、高千穂、秋津洲 (3709トン、260m×2、18ノット)
これが小国日本がなけなしの予算で外国から購入した軍艦であり、
このとき、定遠、鎮遠に勝てる艦艇は、日本になかった。
歴史変革は、財界の圧力で殖産産業への予算が軍事費を上回っただけだった。
海軍が購入を予定していた(富士、八島)は、議会で否決され。
主要な予算は、炭鉱採掘の拡大。
八幡製鉄所、造船所、水力発電所、海軍工廠の建設。
広軌(1676mm)鉄道へと流れてしまう。
一度予算がつくと利権構造が構築され、政官財で癒着が進み、
国内政策勢力が決まってしまう。
さらに閨閥が作られると安定する。
日本海軍は、予算不足で新造艦の購入と建造が遅れ、
さらに訓練の結果、
松島、厳島、橋立 (4278トン、320mm×1、16ノット)に支障があることが判明。
320mm砲を150mm4門に換装してしまう。
パークナム事件
フランス軍艦2隻がチャオプラヤー川を遡上、ラオスの領有を迫る。
赤レンガの住人たち
「富士と八島の購入が失敗した」
「もう、制海権はないな」
「もとより、大日本帝国の名称すら、おこがましい」
「日本は小国、当然の帰結だ」
「学者の言い分を真に受けるからだ」
「数学は白人も日本人も差別しない平等だよ」
「まぁ 国内産業を育てるのを反対するつもりはないがね」
「反対はしないよ。不満があるだけだ」
「清国に台湾と沖縄のことで難癖付けられると面倒だぞ」
「だからといって、欧米諸国の圧力があるのに日清で戦争は不味かろう」
「それは清国しだいだ。沖縄と台湾の守備隊を強化している」
「定遠、鎮遠は、脅威だ」
「定遠、鎮遠を見てる日本国民は、少数派で脅威なんて感じてないよ」
「有力者に見せて、もっと、危機感を煽ればいいんだ」
「陸軍は、違う意見を持っている。広軌への切換は大丈夫なのか?」
「早いうちにやってしまおうということだ。間違いは早めに是正すべきだ」
「大砲を積んだ陸蒸気がそんなに良いかね」
「陸さんにとって良いだけだ。戦力を早く移動させ集中しやすいからな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です。
日清戦争前からの仮想戦記です。
伊藤博文は、板垣退助、大隈重信の自由民権運動の圧力を押さえ込むため、
財界と仲良くなりました。
藩閥薩長政府が財界の要求で国家予算を公共投資と、
設備投資に使いすぎたことから変革が起こります。
予算にしたがって産業が大きくなり、
その関係者が肥え太り始めます。
この頃の北前船
第01話 1893年 『戦えないよ』 |
|
|
||