月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

 

第49話  1941 『暗雲の向こうには・・・・』

 華北連邦

 華北軍10万が延安・西安の共産軍に対して攻撃。

 しかし、共産軍側にBT戦車が配備されていたため頓挫。

 華北・インド軍が連合軍を編成。

 第二次攻撃を開始する。

 インド砲兵部隊が共産軍陣地に対して砲撃。

 97式戦車85両  VS  BT戦車54両の戦車戦が始まろうとしていた。

 

 高台

 カメラ数台が回り、

 数十人の色違いの武官が双眼鏡を覗いていた。

 「いや〜 戦車戦は、いいねぇ〜」

 「カタログだと97式が強いと思うけど、良い勝負だな」

 戦車のカタログを見て呟く

 「BT戦車を稜線に隠して狙い撃ちしている」

 「数で勝っても攻撃側が不利だな」

 「それに、こんな山奥にまで持って来れるのは、軽量で大砲が大きいのも悪くない」

 「それを言うなら兵員装甲車だな」

 「大量の物資をここまで引っ張ってこれる」

 「こんな場所でまともな軍事作戦を出来るのは」

 「兵員装甲車両のおかげだな」

戦車

重量

(t)

馬力

ディーゼル(D)

最大速度

(km/h)

航続力

(km)

武装

乗員

全長×全幅×車高

(m)

装甲

(m)

日本

97式

17

(D) 200

42

240

50口径40mm砲×1

4

5.60×2.60×2.40

20〜30

6.5mm機銃×2

聖ロシア

ベルヌィ

36

20

300

48

260

50口径40mm砲×1

4

6.64×2.57×2.45

30〜40

6.5mm機銃×2

ソビエト

BT

13.8

450

50

500

46口径45mm砲×1

3

5.66×2.29×2.42

6〜22

7.62mm機銃×1

ソビエト

T34

32.0

500

55

500

30.5口径76.2mm×1

4

5.90×3.00×2.72

〜45

7.62mm機銃×1

 

 「ベルヌィ36も見たかったな」

 「97式戦車より馬力と装甲が良いだけだろう」

 97式戦車がBT戦車を撃破する。

 「現場は、その差で生死が決まるんだ」

 「T34戦車は、もって来てないみたいだな」

 「スターリンには言ったんだろう」

 「新型だから出したくないんじゃないか」

 BT戦車が97式戦車を撃破する。

 「チッ! ケチめ」

 「・・・あ・あっちの高台で手を振っているのは、赤軍の将校じゃないか」

 「あ・・・ああ、そうだな」

 何人かが手を振って応える。

 急に砲撃と銃撃が増える。

 「んん・・・・なんだ〜」

 「突撃しているじゃないか」

 「あぁらら。華北軍か。無理しなくていいのに」

 「歩兵同士の戦闘なんか見たくないよ」

 「いや、戦車と歩兵の連携は、重要な要素だ。カメラは回っているだろうな」

 「ああ、回っている」

 双方で数両のBT戦車、97式戦車が破壊されていく。

 「「「「おぉおおお〜!!!」」」」

 「ん・・・・適当なところで終わって欲しいな。戦訓がなくなると辛い」

 「スペイン内戦が終わってから」

 「戦場らしい戦場は、ここしかないからな」

 「インド軍は統制下だけど、華北軍は無茶しないだろうか」

 「中国人の性格は、だいたいわかるよ」

 「戦力差が拮抗状態で被害が大きければ退くだろう」

 「華北軍が多いぞ」

 「地の利で共産軍が有利だから、それほど酷くないさ」

 「ところで、アメリカの研究している」

 「華・共の配分制御案は、どこまで信憑性があるんだ?」

 「人口に占める賃金格差と就業率で共産軍の勢力を制御する発案だろう」

 「さすがアメリカ人。学者の人で無しの度合いが違うね」

 「・・・・・」

 「合理的過ぎて人間性を失っていないか?」

 「・・・・・」

 「あれを最初見たとき」

 「悪魔に魂を売ったやつがいるのかと思ったよ」

 「・・・・・」

 「んん・・・どうかな・・・」

 「フランス人は所得がイギリスより大きくてもフランス革命だろう」

 「イギリス人は所得が低かったのに名誉革命だ」

 「国民性もあるんじゃないか」

 「一応、漢民族の民族性も加味されているぞ」

 「パラメーターの信憑性は、どうかと思うが・・・」

 「だが、上手くいけば、中国に一定の戦場を維持して戦訓を得られ続ける」

 「そして、華北合衆国を弱体化させ、列強に対する依存は強くなり」

 「揚子江の維持が容易になる」

 「それと、何より数字的に共産主義を封じ込めることが出来る」

 「机上の空論でなければいいがね・・・・」

 共産軍陣地の一角が崩れる。

 「・・・あ・・・やっちゃったよ」

 「げっ!」

 「しかし、戦術的勝利を収める戦術家は、こういう時、邪魔だな」

 「ああぁあ。しょうがないな・・・」

 「インド砲兵部隊にティー・タイムでも取らせるか」

 「それは、不味いだろう」

 「全軍の士気に関わるし。華北との支援協定にも引っ掛かる」

 「・・・勝っちゃうよ〜」

 その時、97式戦車が撃破された。

 「おっ! T34戦車だ」

 「「「おおぉぉおお!! カッコ良いな〜」」」

 「何両だ?」

 「・・・1両・・・かな」

 「「ケ、ケチだな〜」」

 「おっ!! T34戦車の突撃だ」

 「「「「おおお〜」」」」

 「やっぱり、戦車は、動いてないとな〜」

 「稜線に隠れて撃ち合うなんて、陰気臭いよ」

 「「そうそう」」

 T34戦車は、97式戦車を次々に撃破。

 そして、インド砲兵部隊の集中砲撃で、

 撃破されるまで動き回って、失地を回復する。

 「「「「「良い〜!」」」」」

  

 

 

  

 梅の花が咲き乱れていた。

 欧州貴族と関係が増えていくと。

 貴族に近い公家好みの梅が勢力を回復。

 人気で桜と並ぶ。

 日本で花見といえば、梅か、桜になる、

 しかし、最近は、南米産イペも増え、

 日本人の花見も多様になっていた。

 3大陸搾取鉄道の関係国で親睦会が行われたりする。

 アナスタシア皇后は40歳になっていた、

 老獪さで、美を補っていた。

 国家間の付き合いで、天性のバランス感覚があるのか、

 巧妙に自然に日本贔屓を増やしていく。

 当然、金髪だったり、黒髪だったりのハーフの皇太子と皇女たちも、

 そういったセンスを受け継いでいる。

 聖ロシア皇族。イギリス貴族。ドイツ貴族。ドナウ貴族。

 ブルガリア王族。オランダ貴族。北欧貴族。

 さらにタイ王族。エチオピア皇族が参席すると華やかさが増していく。

  

  

 アメリカ合衆国

 数十万人規模の失業者がデモを起こし、

 そして、ほぼ同数の労働者がストライキを起こす。

 高層ホテルのテラス

 「いや〜 一方で失業者のデモで」

 「もう一方で、賃金交渉でストライキとはね〜」

 「権利の国。自由の国。アメリカ。万歳〜」

 「・・・ねえぇ〜 何やっているの?」

 「ん・・・アメリカの風景を撮っているのさ」

 「ふ〜ん。日本製なの? そのカメラ」

 「そう。日本製〜」

 腕を組んだ金髪美人をファインダーに入れる。

 「もう〜 あとで見せてね」

 「“のらくろ” の漫画を?」

 「違うわよ。いま撮っているものよ」

 『どうやら “のらくろ” は、アメリカに根付かないかも知れない』

 『まぁ〜 それらしい理由があれば、疑われることもなかろう』

 「うん、良いよ・・・あっ! そうだ」

 「やっているところを撮らせてくれたら。お小遣い出すよ」

 指を数本立てる。

 闇市場に流せば、それなりに実入りがある。

 いわゆる国民総生産など表に出てこない闇経済。

 これは日米どころか世界中にある。

 「べぇ〜 いやよ」

 「んんん・・・・じゃ・・・」

 さらに指を増やす

 「・・・絶対にイヤ!」

 さらに指を増やす

 「・・・・・・・イヤ!」

 「」

 「」

  

  

 南鳥島沖

 アメリカ太平洋艦隊

 ワシントン、ノースカロライナ、コネチカット、ルイジアナ。

 巡洋艦6隻。駆逐艦15隻。給油艦6隻

 「・・・ハルゼー提督。そろそろ。進路を変えないと」

 「南鳥島の領海内に入りそうです」

 「・・・・」

 「ハルゼー提督。日本の飛行船です」

 水平線の向こうに飛行船が浮かんでいた。

 「・・・月光か・・・月影だな」

 「・・・月影ですね」

 「くっそぉ〜 黄色いサルどもが太平洋でデカイ顔をしやがって」

 「日本は、扶桑型8隻ですからね」

 「ふん! こっちは、ワシントン級4隻だ。負けんよ」

 「逃げ回られると厄介ですよ」

 「んん。あと2隻追加できれば・・・」

 「無理ですよ」

 「大西洋に8隻配備は、決まってますから」

 「日本は、代艦を建造するそうだ」

 「本当ですか?」

 「いまわかっているのは、50000トン級を4隻だそうだ」

 「たぶん、40cmか、42cmだな・・・・・」

 「出所は、日本の国防省より」

 「運輸省の情報の方が信憑性が高いそうですよ」

 「運輸省だそうだ」

 「定数からすると、4隻足りませんね」

 「予算不足なんだろう」

 「それで、トン数を大きくして、隻数を減らした」

 「というより扶桑型8隻を延命させながら」

 「次々世代でさらに4隻建造だろうな」

 「貧乏ですね」

 「そんなわけがないだろう」

 「日本の国民総生産は、右上がりに上がっている」

 「どうせ、国防費をケチってトンネル掘っているだけだ」

 「もし、日本が新型戦艦建造なら、アメリカも新型戦艦を建造ですね」

 「んん・・・たぶん、同クラスの戦艦を6隻程度は検討しているらしいが・・・」

 「難しそうですか?」

 「欧州が建造しないとしたら・・・日本しだいか・・・難しいな」

 「本当は、大型空母の方が良いのだが・・・」

 「大型空母ですか?」

 「・・・そうだ」

 「なおさら、予算が付きそうもないですね」

 「ハルゼー提督。南鳥島の領海に近付き過ぎています」

 「本国は、失業者で溢れかえっている」

 「白人が食べられなくて犯罪まがいか、自殺しているのに」

 「揚子江では、黒人が、ビール片手にビフテキを頬張っているそうです」

 「フルーツにライチもつけて・・・」

 「むかつく連中だ」

 「ますます。予算が付きませんね」

 「良くビンソン案が通りましたね」

 「ふん!」

 「中型や小型艦が50隻程度増えたからといって、圧倒的といえんよ」

 「日本は、宗谷海峡トンネルと津軽海峡トンネルを建設しているそうです」

 「完成すれば日本の国防能力は跳ね上がるのでは?」

 「日本の運輸省が軍事費をケチる口実だな」

 「おかげで、アメリカ海軍まで迷惑している」

 「張り合いが、ないからですか」

 「軍事費というのは、相対的なものだよ」

 「相手が軍事的に脅威であれば、対抗手段をとれるが・・・」

 「日本も、せめて巡洋艦ぐらい建造すればいいのに・・・」

 「あんな、飛行船ではな・・・」

 「役に立っているのでは?」

 「ああ、巡洋艦よりも役に立っている」

 「見掛けが弱そうだから、対抗手段で予算が降りにくいんだ」

 「大砲ぐらいつければいいんだ」

 「モノコック構造に沿って電探が張り巡らされているんですよね」

 「あいつに見つかったら。どうにもならんよ。どうしても空母がいる」

 「確かに」

 「撃ち落としたいな・・・」

 「それは、不味いでしょう」

 「くそぉおお〜」

 「有色人種のくせに。木造帆船でも作ってたらいいんだ」

 「そういえば、ドナウ連邦が」

 「日本に12000トン級2隻、4000トン級6隻を発注したようです」

 「っぐ・・・んんん・・・・・日本人め・・・」

 「無節操に軍艦を建造しやがって」

 「アメリカに発注すればいいんだ」

 「オランダ、北欧、トルコ、ドナウ、チリ海軍が」

 「日本の軍艦の優秀性を認めましたからね」

 「もちろん費用対効果という点でしょうけど」

 「どいつも、こいつも、グルになりやがって腹が立つ〜」

 「ハルゼー提督。進路を変えないと。領海内に入ります」

 「・・・・・・・・」

 「・・・ハルゼー提督」

 「・・・全艦隊に取り舵40と伝えろ」

  

  

 某大臣宅

 数人の男たちが酒を酌み交わしていた。

 「くっそぉ〜 運輸省の連中。毎度毎度、きたねぇ真似しやがって」

 「トンネルを掘っているから。待ってくれだと〜」

 「国民の要望だと〜」

 「散々甘い汁を吸って、善人ぶりやがって」

 「国防という観点からすれば、海峡トンネルは悪くないが・・・・」

 「だからと言って、新造の戦艦を減らしてまで建設することはないだろう」

 「戦艦と海峡トンネルとどっちが大切だ!!」

 数人がため息

 「3大陸鉄道と連結するというのがなければな〜」

 「これほどの説得力は、なかったはずだがな」

 「ふっ ゲージが違うだろう。ゲージが・・・」

 「欧州から揚子江まで1435mm。聖ロシアは1520mm。日本は1676mm」

 「国民全体が金に目が眩んでいるんだよ」

 「日本から質実剛健がなくなってしまって、嘆かわしいな〜」

 「聖ロシアは、1435mmか、日本と同じ1676mmに変えるとか言ってなかったか」

 「ソビエトと同じゲージのままだと不味いとかだろう」

 「しかし、予算がなくて、そのままだったんじゃないか」

 「場所柄、他の国と違うゲージを使いたいよな」

 「ん・・・そんなに聖ロシアの地政学は、不利だったか?」

 「そりゃあ 国土こそ広いがソビエト、華北連邦、モンゴル、日本、小ドイツに囲まれている」

 「気持ちのいいものじゃないさ」

 「そのくせ、ロシア貴族は民衆を怖がってスターリンのような圧政は出来ない」

 「貴族社会の割に貧富の格差が小さく、強制的な近代化もできそうにない」

 「そして、貴族様だから市場経済に暗く」

 「自由資本主義は段階的に、だな」

 「まぁ〜 そうだろうが」

 「運輸省は、鉄道をどうするんだ?」

 「ロシア次第だろう」

 「広軌を狭くする方は車両だけの問題だから」

 「大きくするよりは難しくないさ」

 「しかし、鉄道は、日本の大動脈だから運輸省も簡単に換えないだろうね」

 「換えるから、もっと予算が欲しいとか言われたら、かなわんな」

 「そ、そりゃそうだよ」

 「シワ寄せが国防予算じゃな〜」

 「運輸省は、日本、イギリス、ドイツ、オランダ、聖ロシアで同盟を結ぶ方針があるようだ」

 「たぶん、3大陸の利益還元国全体に広がりそうだがね」

 「て、敵はどこだよ」

 「アメリカか、ソビエトしかないだろう」

 「ソビエトはともかく。アメリカと事を構えるのは不味いだろう」

 「世界中の国がそう思っているさ」

 「しかし、アメリカが不利な要求をしてきた場合」

 「そういう同盟関係になる可能性も高い」

  

  

 荒涼とした大地

 吹き上がった黒い液体が雨となって降り注ぐ。

 アメリカ系某石油掘削会社が聖ロシアで石油を掘り当ててしまう。

 「あらぁ〜」

 「ないんじゃ・・・なかったのか?」

 「泥水・・・じゃないよな」

 「あぁあぁ・・・」

 聖ロシア帝国で油田発見〜!!!

 まったく期待していなかった聖ロシアの油田発見に世界各国が慌てる、

 当事国の聖ロシア帝国も、山師の石油掘削会社も慌てる。

 極東のパワーバランスが狂った瞬間。

 そして、国際緊張が高まっていく。

  

  

 ハルピニスク宮殿

 聖ロシア皇帝ニコライ二世は侍従の報告に顔を曇らせる。

 「ソビエトの動きは?」

 「国境は、まだ静かですが」

 「まだか・・」

 聖ロシアで油田が採掘された。

 5分の4が聖ロシア、5分の1が掘り当てた石油掘削会社の利益になる。

 アメリカ系資本にすれば、大儲け。

 アメリカ資本は大恐慌で欧州やフランス領から退いていた。

 しかし、聖ロシアや揚子江のアメリカ資本は、人権を無視できた。

 安くて膨大な労働力と市場に引き摺られ、

 アメリカ海外資本の半分が揚子江と聖ロシアに集中していた。

 そして、アメリカ資本を守る経済的な理由だけでなく。

 政治外交的な理由でも一致。

 聖ロシアは、極東における対ソ、対日、対中、対独に対する。

 アメリカの拠点のひとつになっていた。

 猿が木の穴にある実を取ろうとしてもがいている。

 それがアメリカ合衆国の聖ロシアに対する姿であり、

 油田の発見で、その実がさらに膨らんだといえた。

 

 

 そして、日本と東洋の小ドイツは・・・

 青島

 迎賓館

 山東半島を小ドイツ帝国と良く言ったものでドイツ風の町並みが連なる。

 元住民の中国系は、

 ほとんどが揚子江に出稼ぎに行くと、そのまま居ついてしまう。

 そして、ドイツ系が、8割を超えて主流の民族になっていた。

 搾取経済はドイツの民族性に弊害を与える。

 代々のドイツ総督が考え、

 中国系を磨り潰しながら揚子江に追い立てた成果といえる。

 おかげで、九州程度の広さだったが、

 近代化に成功し、国家然とした風格もある。

 経済力も大きく。

 ニューギニア島北東部・ビスマルク・ミクロネシアを支えていた。

 白人と黄色人がテラスでくつろいでいる。

 地ビールが美味しいと誘われても飲む方は進まない。

 「油田の発見か・・・」

 白人が新聞を見て呟いた。

 「パワーバランスが狂う」

 「ソビエトがどう出るかな」

 「日本は、嬉しい話しじゃないかね」

 「小ドイツにとっても、ですよね・・・」

 「問題は、ソビエトが動くかどうかだ」

 「本当にパワーバランスが狂うかは、油田の性質と総量がわからないと・・・」

 「それ以前に・・・ソビエトは崩壊しつつある」

 「アメリカも失業者で溢れんばかり」

 「戦争を待ち望んでいる」

 「というより心から、どこかの国から、侵攻されたいと願っているだろうな」

 「アメリカ人は贅沢ですよ。労働以上の糧を求めている」

 「正確には生産力以上の消費だな」

 「アメリカ人が揚子江に入植し」

 「始めてアメリカ本土の就業率が少し良くなったそうですよ」

 「足りないな。抜本的な解決案は戦争しかないよ」

 「互いに戦争を求めているソ連と」

 「アメリカが戦えば良いのでしょうが・・・」

 「アメリカも、ソ連も、それが、日本、ドイツ、イギリスを肥え太らせると分かっている」

 「たぶん、最悪のシナリオとして検討しているだろうな」

 「問題は、どちらも相手に侵攻して欲しいということですよね」

 「自国民を糾合させて需要を生み出せるだけのエネルギー・・・」

 「憎しみのエネルギーか・・・ありえんな」

 「確かに」

 「ドイツ情報局は、どういう状況になっても」

 「アメリカがソビエト領土に侵攻することはないと判定されたよ」

 「もちろん、その逆もない」

 「ソビエトが聖ロシアに侵攻しても・・・」

 「侵攻したくてもできないだろうよ」

 「ソビエトが。いや、スターリンが望んでいるのは」

 「自分以上にロシア民族を殺してくれる悪魔だ」

 「そんな人物はいないだろうよ」

 「アメリカが行くと本当に解放者になり」

 「アメリカは、無用なものまで抱え込んでしまう」

 「それにソ連軍が聖ロシアに侵攻すれば」

 「そのまま、侵攻軍が降伏してしまう可能性すらある」

 「では、ムッソリーニくらいでしょうか」

 「実力不足だな」

 「ドイツは?」

 「まさか・・・」

 「放って置けばソビエト体制が自滅崩壊するのに?」

 「手を出して、ロシア民族と共産主義を結束させてしまうバカは、ドイツに一人も・・・」

 「一人くらいいるな・・・」

 「アメリカが共産化してしまう可能性は?」

 「ないな」

 「アメリカ合衆国とソビエト連邦は、その体制で水と油だよ」

 「言うなれば、キリスト教国家と反キリスト教国家だな」

 「ソビエトは、反キリストですか?」

 「サタンは、ゴク、マゴクを惑わし、彼らを戦いのために召集する」

 「その数は、海の砂のように多い」

 「海の砂の様に多い諸国民は限られている」

 「中国。インド。ソ連。アメリカ?」

 「その中で神を否定しているのはソ連と中国だろうな」

 「中国は、共産主義といえませんが」

 「唯物主義、拝金主義ではあるな」

 「日本のキリスト教人口は、それほど多くありませんから」

 「似たようなものです」

 「聖書でキリストが死んだ後、すぐに来ると嘘付いてから」

 「どうも眉唾が多いですが」

 「ふっ ファチマ予言の目撃者としては、キリスト教圏の味方をしたいがね」

 「・・・あれは、本当に・・・・」

 「人によって食い違いがあるようだが」

 「遠くから見た限りだと白銀色の光が登っていくのが見えたよ」

 「不思議ですな」

 「奇跡を見てさえも、国と国が利権を争い。人と人が騙しあう」

 「聖職者でもキリストが雲に乗って来られたら困る者が多いだろう」

 「人間は、罪深い存在だよ」

 「雲に乗ってくるのが黄色人だと」

 「もっと困るのでは?」

 「ははは、日本人ならフランス人、ユダヤ人、イタリア人よりマシだがね」

 「・・は・・はは・・・」

 「欧米諸国は、東を目指すよ・・・」

 「それは、東に光があり、希望があるからだ」

 「例え既存の価値観を全て破壊してしまう事でも当事者として関わっていたい」

 「そういう欲望があるからだ」

 「ファチマ予言の内容は、公開されていないので?」

 「バチカンの権力構造・・・」

 「いや、キリスト教を破壊されかねない内容であれば、公表されまい」

 「少し・・・興味がでてきましたな」

 『光の源が日本だとしたら・・・公表できないだろうな・・・』

 「山東半島のドイツ領だがゲルマニアと改称されることになりそうです」

 「ゲルマニアですか、良い名です」

 「日本人にそういっていただければ嬉しいですな」

  

  

 フランス・アフリカ領

 フランス人のアフリカ移民が1000万に達した。

 この頃からヌーボ・ガリアと呼ぶようになっていた。

 血が染み込んだ大地。

 耕作地は、それほど多くない。

 しかし、鉱物資源は期待できた。

 租借地を購入したアメリカ、ソビエト、イタリア、イギリスは、

 大恐慌の損失を穴埋めようと、

 フランス軍や傭兵部隊を使い、

 文字通りアラブ人、ベルベル人、黒人、先住民族を磨り潰していく。

 モロッコ

 イギリス租借地に出雲の水産加工業者が入っていた。

 日英同盟のおかげなのか、大恐慌の負担減なのか、

 好都合なほど安上がりに間借りしている。

 日差しは強いのに乾燥しており、大西洋の寒流のおかげで涼しい風が吹く。

 気候は素晴らしく良いように思える。

 タコ、タイ、ヒラメ、スズキ、タラ、アンコウが獲れやすく。

 出雲からも大型漁船団が出ていた。

 魚介類の缶詰工場もあって儲かっている。

 もう少し冷凍技術が上がれば、日本まで送れるかもしれない、

 いまのところ欧州、アフリカ、アメリカ、南米で消費される。

 モロッコの事務所

 「日本人は、何ヶ月も家族を放ったらかしにしても大丈夫なのかね・・・」 イギリス人

 「遠洋漁業は、それなりに金になるからね」

 理解できないという素振り。

 イギリス人の気質も少しずつ変わってきたらしい、

 忘れているだけで人のことは、いえないだろう。

 帆船時代から七つの海を支配してきたイギリス人は、

 日本人より、もっとタフなのだから・・・

 このヌーボ・ガリアにイギリス資本が拠点を作ったのは

 フランス植民地の監視が目的だった。

 「フランスは、目的を達しつつあるようだ」

 「フランス人がアフリカに住む気になったのは、意外ですね」

 日本人が列強の世界戦略で、

 それらしい表現が出来るようになったのは最近らしい。

 自らの確固たる戦略に基づいて考え始め、

 列強の基本戦略が読める感性が育っている。

 チェスで自らの戦略を構築できず、

 相手の基本戦略が見えなければ、後手に回り、

 対応に追われるだけでボロ負けになる。

 日本人は、個々の列強の基本戦略を肌身に感じ始めていた。

 「フランス本土に近いからだろうな」

 「それとフランスの兵員装甲車。悪くない性能だ」

 「ソビエト軍事顧問軍とソビエト製の武器弾薬が大量に入っているのは」

 「何か裏があるのでしょうか」

 「アメリカの船で持ってきたというのは、怪しいな」

 「アメリカか、ソビエトが、フランスに対して行動を起こす可能性があると?」

 「まだわからんな」

 「ドイツもアメリカ、ソビエト、フランスの動きを警戒している」

 「アメリカとフランスが揚子江の権益を捨てるとは思えないが・・・」

 「そういえば、アメリカ、ソビエトは、フランス領の先住民淘汰に熱心だった」

 「ということは、米ソでフランスを助けているということでは?」

 「ヌーボ・ガリアでの租借地拡大で密約でもあるのだろう」

 「呉越同舟で気持ち悪いですね」

 「フランスが仲立ちしていなければ米ソで組むなどありえないがね」

  

  

 1941年11月27日

 国際連盟

 アメリカ(オブザーバー)、ソビエト、フランスは、

 アフリカ、南アジア、東南アジアの民族自決権の容認。

 民族独立後の不可侵条約締結。

 独立後、宗主国軍の全面撤退。

 人種差別の撤廃を提訴。

 イギリス、ドイツ、日本、オランダ、聖ロシアなどなど、

 連盟各国とも “開いた口が塞がらない” “呆れてものが言えない”

 当然、廃案。

  

 イギリス植民地へ武器弾薬、戦略物資が流れ込んでいた。

 先住民族の反乱と鎮圧。

 ヌーボ・ガリアで国民投票でフランス帰属が決まる。

 ジュネーブ

 某各国事務次官がチーズフォンデューを囲む

 「「「「「「・・・・・・・」」」」」」

 ため息しか出ない。

 少なくとも善人側はアメリカ、ソビエト、フランスだった。

 そして、弱い者いじめの悪党側、

 イギリス、ドイツ、ドナウ、トルコ、

 日本、聖ロシア、オランダ・・・・・

 「・・・植民地防衛は」

 「いまのところは、植民地軍で鎮圧しているがね・・・・」

 「費用が、かさむな・・・」

 「あいつら。きたねぇ〜」

 「散々、先住民を殺しまくっておいて、いまさら偽善者かよ・・・どうする?」

 「アメリカ資本の凍結?」

 「無理。こっちの損失が大きい」

 「・・・輸出禁輸?」

 「そっちも困る・・・お互い様だがね」

 「くそぉ〜 搦め手かよ」

 「生皮で絞めるような真似をしやがって」

 「向こうが嫌がらせしてきても」

 「こっちが仕返しできないことを知っているよな」

 「ふっ 顔で笑って、心で泣きながら握手するのかよ」

 「だがアメリカとソビエトには、そっちが堪えるって」

 「俺らに攻めて来いって言っているわけか・・・」

 「冗談。ワシントン型12隻も持っている国と事を構えたくないよ」

 「そうそう、ソビエトのT34戦車。あれも強過ぎるよ」

 「そういえば、ワシントン型を追加で2隻建造するって?」

 「ビンソン案に入っていたよな」

 「じゃ ワシントン級が14隻〜」

 「華北連邦と華南合衆国の動きは?」

 「さぁ〜 一応、独立国だし。中立だろう」

 「そういえば華北も、華南も、傭兵なら輸出するとか言ってたぞ」

 「弾薬も作れるそうだ」

 華北・華南とも一応独立国家でありながら。

 日本よりも過酷な不平等条約を結ばされて、独立すれど主権なし。

 「くそぉ〜」

 「国家が傭兵の売買かよ」

 「「きたねぇ〜」」

 「3大陸搾取鉄道・・・高くつきそうだな」

 「しかし、ヌーボ・ガリアのフランス帰属が決まったとしたら・・・」

 「あいつら何人殺したんだ?」

 「そういえば、ダカールからアルジェまでのヌーボ・ガリア鉄道」

 「強行軍だったからな・・・」

 「お化けが出そうだな」

 「口に出したくない数字だな」

 「スペイン風邪ぐらいじゃないのか」

 「そりゃあ。フランス風邪だな」

 「表向き、干ばつのせいだって言ってたぞ」

 「じゃ フランス干ばつ?」

 「いや、フランス・イナゴ」

 「「「「「あははは」」」」」

 「でっ 日本は、どうするんだ?」

 「・・・へっ・・・」

 「人種差別撤廃」

 「他はともかく、人種差別だけは、撤廃して欲しいですが・・・」

 「あとでな」

 「それは、助かります」

 「だいたい、我々は、日本人の人権を認めている」

 「だから人種差別主義者ではない、ということなんだがな」

 「そうそう。アメリカ、フランス、ソビエトの言い掛かりは、はなはだしいよ」

 「・・・・・・・」 苦笑い。

 「じゃ 日本の提案を承認ということで・・・」

 「では、対抗上。戦艦の建造を決めとくか」

 「イギリスは、50000トン級2隻」

 「ドイツも、50000トン級2隻」

 「日本は、50000トン級4隻」

 「おい、日本! そりゃ 新規大綱だろう。上乗せ分だよ」

 「そう。追加分だよ」

 「い・・いや、わたしの一存では・・・・」

 「ったく! トンネルばっか、掘っているんじゃねぇ〜よ」

 「しかし、ドーバー海峡トンネルは有用だぞ」

 「そ、そりゃあ。そうだが・・・」

 「まぁ〜 経済力からして、2隻か、3隻は、順当だよな」

 「そうそう」

 「ほ、本国に伝えておきます」 真っ青。

 「揚子江は、どうする?」

 「んんん・・・・・・中立」

 「ドナウとトルコは?」

 「武器弾薬の拠出を・・・・」

 「燃料の拠出を・・・・・」

 「「「・・・・・・・・」」」

 「オランダは?」

 「燃料と希少金属の拠出」

 「「「・・・・・・・」」」

 「軍艦は?」

 「・・・・駆逐艦を購入させていただきます」

 「・・・兵員装甲車を購入させていただきます」

 「」

 「」

  

  

 ワシントン

 アメリカ国内の列強資本がカナダへと移転の準備をしていた。

 当然、ベルバームもその一社。

 英米が戦争状態になれば、アメリカ・カナダ国境が戦場となる。

 もちろん、イギリスも、カナダも、望んでおらず。

 アメリカ国民も戦争など望んでいなかった。

 それでも、アメリカ国内の失業者は、巷に溢れ治安を悪化させている。

 「んん・・・ルーズベルトのバカが・・・・」

 「どうしますか?」

 「生産の拠点をカナダ側に移すしかなかろう」

 「本気なのでしょうか?」

 「戦争をする振りをして、株で儲けようとしているのかもしれないな」

 外資系ベルバームの株価が落ちていた。

 「なるほど」

 「戦争をすると見せかけて、外資系株価を落として、買い占める。ですか?」

 「んんん・・・・本気とも・・・・フェイクとも付かんな。詐欺師が・・・・」

   

   

 白い家

 ルーズベルト大統領と握手をしたチャンドラ・ボースが部屋から出て行く。

 「イギリスとドイツの反応は?」

 「不戦を決めているようですが準備だけは、始めているようです」

 「小火器を中心にイギリス殖民地へ投下する」

 「それで、戦争になると?」

 「戦争しなければ民族独立紛争で、3大陸搾取鉄道が廃止に追い込まれる」

 「攻めてくるのではないか」

 「だと良いのですが・・・・」

 「ふっ イギリスは中小藩王国への技術援助で」

 「インドの支配権を確保しようとしている」

 「それなら、大藩主へ武器弾薬を供給して転覆させることが出来るだろう」

 「ほかにアフリカ大陸だけでなく」

 「パキスタンの分離独立やイランなどアラブ系の独立も支援すればいい」

 「彼らも攻撃的になるはずだ」

 「大統領。もうすぐ財団との懇談です」

 「ああ・・・なんと言ってる」

 「財団は、攻撃されれば、すぐに増産に入れると・・・・」

 「揚子江で、私利私欲に走る彼らを説き伏せるのは骨がいる」

 「ええ」

 「あとは、旧大陸の列強を離反させていく」

 1941年12月8日

 暗雲が静かに過ぎて行く。

  

  

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 とりあえず。日清不戦

 第一部 完

 ということにします。

 どうなっていくのか・・・・

 妄想にお任せいたします。

 何か気付いた時は、推敲・加筆しますが。

 気が向いたら、続きを書きますね。

 とりあえず。

 真珠湾攻撃は、ありませんでした。

  

  

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第48話 1940年 『嵐の前・・・』

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