月夜裏 野々香 小説の部屋

    

宇宙戦艦ヤマト 『南銀河物語』

   

  

 わたしは、宇宙海賊アルサ・ミエル。

 軍艦でしか国境を越えられないと思っている。

 皮被り野郎には、用はない。

 

第05話 『恒星オリッサ』

 独立恒星系オリッサ。第3惑星オリッサ

 地球人がガミラス戦、白色彗星帝国戦、黒色星雲帝国、ボラー戦、ディンギル戦を戦い抜いたとき。

 地球人類に覚醒が訪れる。

 個人差があっても雨を弾くほど “気” が強くなってしまう。

 そして、正当な軍事訓練を受けた軍人になれば、さらに強くなり、

 小火器の弾道さえ変える。

 地球人のこういった能力は銀河で珍しくはない。

 しかし、特異だったのは能力者の占める人口比率であり、

 数に任せて相互支援させて戦えば敵無し、

 それ以外の知能、身体能力、精神力、直感も飛躍的に伸びていた。

  

 

 飛龍がオリッサに着陸。

 須郷社長、佐々木中尉、河本曹長、小林隊員、チェンナイ隊員は、税関を通って車に乗ると市街地に向かう。

 歩くオリッサ人は、ほとんどがミュータントの奇形で地球人が珍しいのか注目される。

 「・・・なんとも、困った連中だ。オリッサ人は」  須郷は、呟いた。

 「かなり、失礼ですね」

 「男ばかり連れてきたわけですね」 佐々木中尉

 「しかし、精神波の強いミュータントも多いようだ」 河本

 「気を増幅する装置があれば、楽に防げる程度だ」

 「しかし、王城に行くと、取引次第でいやな思いをするかもしれないな」 須郷

 「アルムヌードと戦争する気で?」 河本

 「恒星間宇宙戦艦と交戦をするほど気前は、よくないはずだ」

 「あるとすれば、ただの嫌がらで、せいぜい戦争未満だ」

 「科学技術は、たいしたことはないが拠点を作ることができれば大きい」 須郷

 「オリッサの議長は、独善的なんですか?」 河本

 「フィタンス議長?」

 「どうかな、強い能力を持つ者が議長になる」

 「内輪の争いごとが強いから現政権の味方をするというなら、少しばかり贔屓してもらえるだろうな」

 「それとも対抗馬や、ダークホースと結ぶというのもある」 須郷

 「ということは状況は、悪くない?」 佐々木

 「どうかな、新しいルートだ」

 「他の貿易商人との兼ね合いが問題になるな」

 「理を説いても駄目なら他の方法もある」 須郷

 「社長。ここで強い貿易商は?」 佐々木

 「ボラー系、イスカンダル系、ガミラス系、エウリア系かな」

 「といっても、大掛かりではない。何しろ忌むべきミュータントが多すぎる」 須郷

 「・・・確かに魅力に欠けますね」

 「戦略資源は、ほどほどのようですが」 佐々木

 「ほとんどの戦略資源は、ボラー系、イスカンダル系、ガミラス系、エウリア系で押さえている」

 「しかし、本国との関係で良好な貿易商人は少ないようだ」

 「といっても腐れ縁は、あるがね」 須郷

  

  

 オリッサ城の謁見

 フィタンス議長、須郷

 「ほう、スゴシュ貿易商の須郷」

 「以前、来た時は不法入国だと思ったが、今回は、正式な入国かね」 

 「フェタンス議長。ご冗談を・・・」微笑む

 「・・まあよい、どういった取引があるのか、興味がある」

 「アンドロイド工場を作りたいので土地をいただきたい」

 「かまわんよ。そこから上がる収入の一部が入れば、こちらも助かる・・・・」

 「それだけで良いのかね」

 「旧アトラス帝国の恒星間宇宙船があると聞いているのですが?」

 「2000年以上も前の話しだ・・・」

 「確かに噂だけは、聞いたことがあるがね」

 「それにいまさら初期のハイパーディラックエンジン装備の軍艦があっても役に立つかどうか」

 「議長。最近、ディラック原子精製に必要な2重反転加速器の建造を検討しているとか」

 「これはハイパーディラックエンジン装備の宇宙船を保有しているとき、最大の効果を発揮するのでは?」

 「ディラック原子自体が、その特性として、熱、光、電気を発している」

 「微細技術産業を維持する上で有用だ」

 「ハイパーディラックエンジンは、その延長線上にあるものだ」

 「では、議長。そのディラック原子の輸出を?」

 「ディラック原子の加工技術は、また、別の加工技術になりますが?」

 「ふっ・・・最近、波動エンジンの価値が低迷している」

 「折り合いがつけばハイパーディラックエンジンを装備した宇宙船と」

 「波動エンジンを装備した宇宙船と交換しても良い」

 「もちろん、イスカンダル、ボラーの貿易商人との競売だ。数が多いと有利な取引になる」

 「その、宇宙船群を見せていただけるんでしょうか?」

 「保証金を貰いたい。秘密を守るという点で必要だ。わたしの口座にね」

 「いかほど」

 「ガミラス緑金貨1万枚」

 「わかりました。明日までに入金します」  

  

  

 オリッサ第二惑星 金星型。

 磁気嵐は少なく、高熱と重気圧だけが問題だった。

 オリッサ青白星と呼ばれたガス惑星に飛龍が入っていく。

 誘導に従って地下格納庫に入る。

 巨大な格納庫があり、

 アトラス帝国後期の戦艦2隻、空母3隻、巡洋艦6隻、駆逐艦14隻、潜宙艦4隻、輸送船12隻が眠っていた。

 「一個宇宙機動部隊が丸々か・・・・」 佐々木

 「2000年前の新古品で状態も良い」

 「この艦隊で侵略をしなかったのは、ある意味正解だな」

 「当時は、それど頃ではなかったのかもしれない、いまでさえ、運用は不可能だ」 須郷

 「凄い、独立恒星系にこれだけ配備しているなんて」

 「どうやら航路帯から外れたこの恒星系は、宇宙艦隊の秘密基地だったのだろう。どう思う?」

 「さあ、白色彗星艦隊の物より旧式です」

 「たぶん、質的には、30パーセントほど脆弱だと」

 「いくら、ぐらいと、計算する」

 「・・・地球では、売れないと思います」

 「ハイパーディラックエンジンの技術は地球にもありませんから」

 「維持、運用、管理という点では、不利かと」

 「貿易商人で私設艦隊を持っている連中も多い」

 「ほとんどが、こういった掘り出し物や逃亡艦隊。亡命艦隊の成れの果てが海賊だ」

 「スゴシュ貿易商が南銀河で私設艦隊を保有できれば、大きいと思わないかね」

 「旧式でも一個機動艦隊を維持管理するのは、大丈夫でしょうか?」

 「今回の計画にはどうしても要りようでね」

 「スポンサーもいるから何とかなるだろう」

 「少なくとも、地球にハイパーディラックシステムのノウハウを伝えるのに一役買える」

 「地球に買わせるつもりですか?」

 「買うだろう・・・いや、交換だな」

 「顧客が欲しがっているのは、燃料効率が良い波動エンジン艦だ」

 「お互いに運用も訓練もできないのに?」

 「地球も、ガミラス艦、白色彗星艦、暗黒星雲艦、ボラー艦、ディンギル艦を捕獲、保有している」

 「しかし、戦闘可能にすることができても運用管理の段階でコストがかかり過ぎて、保管だけしている」

 「チターム域で波動エンジンの地球艦隊を使うより良いと思うがね」

 「南銀河ならディラック原子を得られやすい」

 「・・・嬉しいね。燃料不足の特務第18艦隊に活躍の場が与えられて」

 「地球の地球外艦隊勢力は?」

 「知りませんね。畑違いだ」

 「だろうね」

 「オリッサが恒星間国家の仲間入りになるのは好ましくないのでは?」

 「ふふふ」

 「何がおかしい」

 「地球とは違う。恒星間宇宙船があっても恒星間国家になれるとは限らないよ」

 「この恒星系は、その前段階でね」

 「それに波動エンジン装備の宇宙艦隊は、経済性で良いのだが見つかりやすくて不利だ」

 「・・・確かにオリッサ社会そのものに問題があるようだ」

 「だが、それならなぜ、見つかりやすい、波動エンジン装備の宇宙船を?」

 「たぶん、武装商船隊として、南銀河貿易で使いたいのだろうな」

 「安定した定期航路を維持すれば利益は莫大だ」

 「フィタンス議長の権勢は維持されやすくなる」

 「たぶん、欲しいのは地球の大型輸送艦だな」

 「なるほど、地球の輸送艦ならコストパフォーマンスで優れていて安全性は高まるか」

 「・・・オリッサは、恒星間宇宙国家になるため、もっと画一化された人口が必要なんだ」

  

  

 チターム戦艦アムルヌード艦橋

 円盤型戦艦は、チターム特有の形状だった。

 各国とも、ドックや格納庫の関係で葉巻型が多いため、

 円盤型戦艦は、特有の雰囲気がある。

 ザナリッツ艦長と由良副艦長は、艦橋にいた。

 「・・・イスカンダル製の貿易船は多いようですね」

 由良副艦長は、ぼんやりと天球儀を見ていた。

 「大マゼラン星雲という銀河系から離れた僻地にあるからだろうな」

 「野心が起こりにくく、銀河系に対して侵略を行ったのはガミラスが過去、一時期だけ」 ザナリッツ艦長

 「その一度で危なく滅ぶところでしたよ」

 「しかし、滅んだのはガミラスの方だ」

 「そして、それはバラバラにされていた銀河中央域のガルマン勢力をまとめ上げてしまう結果になった」

 「元々 ガミラスは、銀河中央部のガミラス亜種ガルマン人と結ぶためルートを確保しようとしていただけだ・・・」

 天球儀に反応が起きた。

 「ザナリッツ艦長。波動エンジンの反応です」

 「オリッサ独立恒星系に向け、貿易商の艦隊が移動しつつあります」

 「ほとんどがイスカンダルの武装商船のようです・・・」

 「数は・・5グループで14隻」 オペレーター

 「・・・・どういうことだ」 ザナリッツ

 「・・・・・・」 由良副艦長

 「チタームの貿易商も動いているようです」

 「波動エンジン以外の反応は、今のところありませんが・・・」 オペレーター

 「チタームの貿易商は、誰だ」

 「・・・ヘロイナンツ貿易商です」

 「ちっ! よりによって、あいつか。交渉不能だな」

 「チターム人同士なのでは? 情報交換くらい・・・・」 由良副艦長

 「やつは、海賊だよ」

 「密輸も、人身売買も、麻薬も、全部やっている」

 「チターム最悪の悪党だ。証拠はないがね」

 「戦闘記録が残らないのならミサイルを撃ち込んでやりたいくらいだ・・・」

 「もっと話しのわかりそうな貿易商船は、いないのか?」

 「いまのところ、波動エンジンの波長が近付いているだけですから」 オペレーター

 「もう少し近付くまで待つしかないな」

 「ザナリッツ艦長。過去に、こういった現象は?」

 「・・・お宝を競売にかけるときだ」

 「参加している貿易商は、示威行動を含めて武装商船を送り込んでくることもある」

 「横取りのためにな」

 「では・・・・オリッサで、お宝が競売にかけられていると」

 「たぶん、アトラス帝国の遺産がオリッサで出たのだろう」

 「・・・・・・」 由良副艦長

 「このオリッサ宙域で恒星間宇宙国家の軍艦は、このアムルヌードと地球のヤマトだけだ」

 「武装貿易商船も海賊も修理、整備、補給を考えれば、我々と事を構える気はないだろう」

 「チャウフアン域ではメダルーザー型戦艦に乗った海賊に合いましたよ」

 「恒星間宇宙船をまともに整備できるのは、恒星間宇宙国家だけだ」

 「海賊といってもケチが多くてね。基本的に採算が取れないことはしない」

 「もちろん油断するつもりは、ないがね」

 「海賊で補給ができなくなった恒星間宇宙艦は、どうなるんです?」

 「適当な恒星間宇宙国家か、有力貿易商人に売却するか、解体して独立恒星系か」

 「要塞代わりに使っている独立恒星系もある」

 「スポンサーを見つけるか」

 「独立星系でも部分的には水準に達している星があって、そこを渡り歩く場合もある」

 「有力貿易商人は、恒星間宇宙船を整備できるんですか?」

 「いくつかの独立恒星系は、一部の分野で水準に達している」

 「有力貿易商人は、それらの独立恒星系を牛耳っている」

 「ちょっとした、恒星間宇宙国家のようなものだな」

 「もちろん、恒星間宇宙国家とのコネも強いから修復や補給は、金次第だ」

 「なるほど東銀河の貿易商人は、そこまで育っていません」

 「アトラス帝国の残照のおかげだ・・・・転移点の走査を開始しろ」

 アムルヌードとヤマトの転移走査により、天球儀の光点が増え始める。

  

  

 ヤマト艦橋

 「7グループ、24隻が接近中、4隻が後退しています」 オペレーター

 「24隻か、4隻は、アムルヌードが、いると知って引き揚げたようだ。海賊だな」 古代提督

 「指名手配中の海賊船もいますからね」

 「それと麻薬を積んでいる船」 ヒエイリッツ副艦長

 「・・・ヒエイリッツ副艦長。ヘロイナンツ貿易商の船は、引き揚げたようだな」

 「残念ですな」

 「海賊でもしようものなら、とどめをさせたものを。麻薬なら検閲して、そのまま・・・・」

 「さ、作戦中は、なるべく穏便に頼むよ。ヒエイリッツ副艦長」

 「軍艦は、軍艦らしく動かないと怪しまれますから」

 「そうだがね」

 「艦長!」

 「ボラー中型戦艦が0.5光年先に転移」 芹菜少尉

 「所属は?」島艦長

 「アムルヌードが確認・・・バナジ貿易商・・・最有力のボラー系貿易商です」 芹菜少尉

 「軍艦を持っている民間の貿易商がウヨウヨしているのか、南銀河は・・・・」 島艦長

 「・・・目的は、貿易だそうです」 芹菜少尉

 「ふん、取って付けたような、口実を」 島艦長

 「ボラー艦は経済性が、そこそこに良い上に空容量が大きいので人気があるんですよ」

 「燃料の質もワンランク程度が低いですし」

 「反陽子が燃料で補給を受けやすい」 ヒエイリッツ

 「艦長、オリッサ外惑星守備隊の星間宇宙艦二隻がスイングバイをかけ、こちらに向かっています」 芹菜少尉

 「・・・・ほう・・・・密使か・・・それとも監視か・・・・」 島艦長

 「プラズマロケット艦です」

 「恒星の外縁まで・・・到達は、3日後になります」 芹菜少尉

 「プラズマロケットか、古いな」

 「恒星系外縁に停泊中の外国戦艦に向かってくる、珍客になるな」 古代提督

 「独立恒星系は、歪な科学技術ですが実力で建造できるのは、ほとんどの場合、プラズマロケットです」

 「オリッサの政情からして、癖のある人物が来ると思いますよ」 ヒエイリッツ

 「地球のオリッサでの影響力はない。チタームは、どうです?」 古代提督

 「チタームの貿易商船が、たまにきていたと思いましたが戦略物資は、他の勢力に抑えられていたので・・・」

 「貧相な諜報機関があるだけですな」

 「工作が、できるような規模じゃありませんね」

 「本当のことを言うと貿易商人の方が情報通でね」

 「南銀河では彼らから情報を買うというのが、もっとも経済的なんですよ」 ヒエイリッツ

 「国境に捕らわれている我々は翻弄されるばかり。ですか?」 古代提督

 「連中は我々を “皮被り” とよんで、バカにしている」 ヒエイリッツ 憮然。

 「ははは」

 「・・・ヒエイリッツ副艦長。南銀河で貿易商人は、人気があるのではないですか?」 島艦長

 「・・・ええ、わたしも憧れていましたよ」

 「小説の主人公のほとんどが貿易商人です」

 「政府推薦の軍人物は次点ですね」 ヒエイリッツ

 「なるほど、海賊取締り協定がまとまらないわけだ」 古代提督

 「彼らは、貿易商人は、どこの国家に対して毅然とした態度を取ります」

 「彼らの多くが最も苦労した創業時。政府や国家が手助けをしていないからです」

 「それは仕方がないことですが、こちらが下でになると」

 「貿易商人は、余計に高飛車になる傾向がありますね」

  

  

 チターム恒星系内の外国船泊地域で8グループ、37隻の貿易艦船が遊弋。

 ヤマト、アムルヌード、オリッサ巡視艦二隻は、恒星系外を遊弋。

  

  

 ディンギル水雷母艦サクラ

 アルサ・ミエルは、恒星系の外の輸送船を拡大投影させる。

 「アルサ・ミエル。チタームの輸送船です」

 「隣がチタームの戦艦ですね」 ガードベルト副長

 アルサ・ミエルの視線は、輸送船の方に注がれている。

 「あの輸送船に何か?」

 「ふっ 問題ないわ」

 「彼らは動けない。計画通り行きましょう」

 「大丈夫ですか?」

 「ええ、アンドロイド制御の解除パターンが正しければね」

 「いよいよ。まともの軍艦乗りですか?」

 「・・・その分。稼がないといけないのよ」

 「期待していますよ。船長」

 「はぁ〜 この年で扶養するなんて所帯じみてきたわね」

 「ははは、出番をいただければ、いくらでも稼ぎますよ」

 「・・・水雷艇を出して、オリッサに降りるわ」

 「はい」

  

   

 アムルヌード艦橋

 ザナリッツ艦長、由良副艦長

 「総勢、戦艦4隻、巡洋艦4隻、水雷艇母艦3隻、武装商船27隻」

 「いやはや、ザナリッツ艦長、南銀河の貿易商人というのは・・・・・」

 「由良副艦長。ごく一部だ」

 「仕事にあぶれたハイエナが興味本位で来たにすぎない」

 「チタームの戦艦が、もう1隻いれば、全部散らせるのだが」

 「戦艦4隻の所属は、ご存知で?」

 「ボラーとガトランティスの戦艦がボラー系のバナジ貿易商」

 「ディンギル戦艦がイスカンダル系のランカシャ貿易商で南銀河で有力貿易商ですよ」

 「そして、ディンギル巡洋戦艦がアトラス教団でアトラス帝国復活を目指している宗教組織です」

 「あとは、巡洋艦4隻がイスカンダル製。水雷艇母艦3隻がディンギル製・・・・」

 「ディンギル艦が多いようですね」

 「ヤマトに本星を破壊されて混乱していましたからね」

 「水雷艇母艦に積まれているのは積荷でしょう」

 「あの艦も貿易商に人気ありますよ」

 「小型で安い割りに積荷も多く載せられ、武装もしっかりしている」

 「・・・なるほど」

 「艦長! 惑星オリッサから恒星間宇宙戦艦2隻が出撃した模様です」

 「海中に隠していたようです」 オペレーター

 「ほう、オリッサが恒星間宇宙戦艦を保有していたのか?」

 「前アトラス帝国時代の戦艦だな」

 「2000年前の戦艦ですか?」 由良副艦長

 「眠らせて、使っていなかったのなら、カタログ通りの性能だよ」

 「多少、古めかしいが、十分な脅威だ」

 「一度すれ違っただろう。それほど、珍しくはない」

 「まともな、乗員がいるんでしょうか?」

 「実戦経験がなくても、シミュレーションで一定のレベルにはなるだろう」

 「柔軟性と戦闘力で怪しいが貿易商人からアンドロイドを買っても良い・・・」

 「巡視船に動きは?」

 「ありません」オペレーター

 「・・・監視か」

 アムルヌードを挟んで止まっているオリッサの巡視船2隻。

 後に “オリッサの三竦み” 事件と称される一連の緊迫状態は競売が終わるまで続く。

 ホストが十分な戦力を持っていた場合、脅迫じみた圧力は逆効果になる。

 須郷を含めた8グループの競売が終了する。

 三々五々に引き揚げる貿易商船。

 そして、飛龍の合流を待って、ヤマト、アムルヌードは出航する

  

  

 ヤマト展望台

 ザナリッツ艦長、須郷

 「・・・須郷君・・・何を買ったのか、興味深いね」

 「大手の貿易商人の資金力というのは大変なもので地球連邦の国家予算より上でしてね」

 「これ、という物は、ほとんど手に入れられませんでしたよ」

 「アトラス帝国の遺産が、こんなところに眠っていたとはね・・・」

 「知っていたのは、有力貿易商ばかりか」

 「国が競売に呼ばれていないのは最近の恒星間国家の信用が低迷しているせいでしょうな」

 「・・・君らの買い物に付き合わされなければ、ならないとはね」

 「おかげでルートを確保できましたよ。地球とチタームとのね」

 「ふん、貴様らのセクト主義とやら見せてもらったよ」

 「軍艦旗を掲げては通過できないところも入れないところも、あるんですよ」

 「それに国境に守られていない貿易商人にとって、契約という名のセクト主義は生命線でね」

 「君の所有している船500隻。動きが、かなり活発なようだが」

 「所有しているのは200隻。契約を結んでいるのは300隻程度ですな」

 「それほど多くないので気にすることは、ありませんよ」

 「その気になれば、独立恒星系を一つ占領することもできる」

 「ははは、無駄な労力ですよ」

 「大砲を撃たなくても問題の解決はできますから。お金の力だけでね」

 「調子の良い事を」

 「貿易商人を受け入れる地域は発展し、受け入れられない地域は廃れていく。違いますか?」

 「・・・・・・」 ザナリッツ

  

  

 アムルヌード艦橋

 由良副艦長とヒエイリッツ副艦長

 「ヒエイリッツ副艦長。貿易商人と戦争になったことは?」

 「戦闘になったことは度々ありますよ」

 「ですが適当なところ違約金という形で解決することが多いです」

 「どちらが払うかは、その時々で違いますがね・・・・」

 「貿易商人は政府筋に対してもコネがあるので」

 「普段は、お互いに避けています」

 「政治家や官僚も懐」

 「いや、国民、軍、野党、マスメディアの間で上手く調整をつけていますから・・・」

 「イザという時のため、自分たちの別荘を用意している組織を破壊するつもりはないでしょう」

 「貿易商人は契約したことには忠実ですからね」

 「東銀河では、あまり起こり難い現象ですね」

 「アトラス帝国の崩壊が貿易商人の台頭を許したのでしょう」

 「アトラス教も?」

 「アトラス教が生まれたのは200年ほど前で」

 「アトラス帝国崩壊後、南銀河は、混沌で安定してしまった」

 「実のところ、アトラス人種は、亜種が枝分かれし過ぎた状態で安定」

 「アトラス帝国の再建は、困難。というより不可能だがね」

 「アトラス教の勢力は?」

 「南銀河全域に広がっていますね」

 「全部、合わせると勢力的にチタームよりも上でしょう」

 「ガイアトラス教祖は、ホーマ独立恒星系に住んでいるようです」

 「アトラス教と戦闘になったことは?」

 「彼らは基本的に現政府になびく基本方針があるようです」

 「チタームでも勢力が拡大している」

 「アトラス教が南銀河の主導権をとる可能性は?」

 「そこまでは、いかない」

 「現実問題として、いまの南銀河は別の種のルツボと言っても良いのだから」

 「アトラス教信者の大多数は、世俗に染まれない不満分子の懐古趣味で観念的な繋がりだけだ」

  

  

 ヤマトのラウンジ。

 佐々木中尉と芹菜少尉

 「・・・どうだったの?」 芹菜少尉

 「詳しいところは、わからないね」

 「須郷社長は、こちらの予定だけでは、動いていないな」

 「まあ、契約を守る人間にしては、いくつも仕事を抱え、それを並行処理している。優秀だよ」 佐々木中尉

 「須郷社長、一人で・・・」

 「いや、オリッサにも用意周到に仲間がいたよ」

 「ふ〜ん。結構、意識しているんだ〜」

 「な、何が?」

 「だって、どうだったの?」

 「て聞いたら、須郷社長の話しだもの」

 「あ・・・いや、少しばかり考えていただけだ」

 「ふ〜ん」

 「いや・・・ああいう生き方も地球人全体にプラスなんだと思ってね」

 「彼がその気になったらヤマトなんて粉みじんだぞ」

 「まさか、無駄なことしないわよ。収入が減るから」

 「ははは・・・・感覚が変わるな。東銀河では感じなかった」

 「憧れる?」

 「貿易商人に」

 「憧れるのは確かだけど、真似は難しいかな、軍人意識が抜けない」

 「須郷社長は、商人だからね」

 「最初は、イスカンダル人の仲間と小型貿易船で運び屋をしながら探検をしていたらしい」

 「中堅貿易商になったのは、アトラス帝国の遺産を発見したのが切っ掛けだそうだ」

 「そう・・・・冒険もしてみたいわね」

 「ああ・・・」

  

  

 旧アトラス帝国戦艦が火を噴きながら軌道を離れて褐色矮星に向かって行く。

 10隻もの貿易商船がまとわり付いて、軌道を修正させようとするが振り切られ・・・・

 褐色矮星に落ちる。

 そして、爆発。

 貿易商船は、諦めて引き揚げていく。

 ディンギル水雷母艦が褐色矮星の大気に浮くアトラス帝国戦艦に接舷する。

 褐色矮星とはいえ、大気の中に入れば対外温度1600度。

 重力制御を限界にまで上げ、高度を維持する。

 「・・・上手くいったようね」

 「ええ、アルサ・ミエル。偽の爆発に引っ掛かってくれたようです」

 「しばらく磁気嵐の上昇気流に乗せて隠しておきましょう」

 「大手の貿易商人を敵に回すものじゃないから」

 「確かに・・・」

     

    

 

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

第04話 『チャウフアン』

第05話 『オリッサ』
第06話 『シャイブル12恒星連合』
登場人物 恒星間国家群 独立恒星系群 銀河勢力図