月夜裏 野々香 小説の部屋

    

宇宙戦艦ヤマト 『南銀河物語』

   

  

 わたしは、宇宙海賊アルサ・ミエル。

 軍艦でしか国境を越えられないと思っている。

 皮被り野郎には、用はない。

  

 「最初は、イスカンダル人の仲間と小型貿易船で運び屋をしながら探検をしていたらしい」

 「中堅貿易商になったのはアトラス帝国の遺産を発見したのが切っ掛けだそうだ」 佐々木中尉

 「そういう。冒険もしてみたいわね」 芹菜少尉

 

第06話 『シャイブル12恒星連合』

 シャイブル12恒星連合は、12の恒星系の連合体。

 強大なガルマン・ガミラス帝国の脅威にさらされながら独立を保つ、

 南銀河の盾ともいうべき連合恒星間国家。

 ヤマトは、転移点を利用した偽装でチタームの輸送船に見せかけ、

 戦艦アムルヌードと一緒に12惑星連合シャイブルの南側の領域を通商航路に沿って航行していた。

 ここで通商路を離れればチタームの戦艦と一緒にいても探りを入れられる可能性がある。

 強力な転移点をぶつけられれば、簡単に正体はばれる。

  

 ガトランティス型戦艦8隻、大型空母8隻、ミサイル艦18隻、駆逐艦63隻の機動部隊が遊弋。

 貿易船マルクース

 須郷と由良副艦長

 「シャイブルの第16機動部隊だ」

 「シャイブルの訓練艦隊だな」

 「新兵教育をこの艦隊が行って、ガルマンガミラス側の正面の正規艦隊に配属される」

 「この機動部隊が練習艦隊?」

 「大国は違うね」

 「大国?」

 「ガルマンガミラスやボラーに比べれば、ケシ粒のようなものだ」

 「それでも地球より大きいがね」

 「地球連邦が小さすぎると?」

 「正直に言って、いいと思うがね」

 「誰も由良副艦長を左遷させたりはしないよ」

 「確かに地球連邦は、成り上がりだがね」

 「これから、バトナ恒星系に行くよ」

 「開発されている惑星は2つ。衛星は3つ」

 「地球やタウ・セチを合わせたより開発されきっている 」

 「消費も、それをまかなう産業も大きい」

 「地球連邦は田舎だと思い知らされるよ」

 「国力の差くらい、わかっているつもりだ」

 「地球連邦は、実力より高く評価されすぎている」

 「実感すべきだね。百聞は一見にしかずだ」

 「ガルマンガミラスの光の宇宙で、武官をしていたことはある」

 「これでも都会には、慣れている」

 「光の宇宙か」

 「暗黒に広がる大宇宙も安直だ」

 「銀河系の質量の7割以上は光る宇宙に属し、明るすぎて遠くが見えないというのに・・・ 」

 「12恒星連合は、比較的、光る宇宙に近く戦略戦術の違いも大きい」

 「妙なものだ。明るいほうが見えにくく。暗いほうが見えやすい」

  

  

 ヤマト艦橋

 突如警報が鳴り響いく。

 「・・・島艦長! シャイブル機動艦隊が警戒態勢に入りました」 芹菜少尉

 「どうした?」

 「・・・増速しています。駆逐艦が展開中。艦載機が出撃しつつあります・・・」

 「潜宙艦を発見したようです・・・・転移走査点が増大中です」

 芹菜少尉

 「第一種、警戒態勢」 島艦長

 「・・・いかんな。正体がばれるぞ」 古代提督

 「アムルヌードが転移点を増大させて、ヤマトを包囲しました」 芹菜少尉

 「・・・助かった・・か。儀礼上。この宙域への走査は避けるだろう」 古代提督

 「どこの潜宙艦だ?」 島艦長

 「ガルマンガミラスか、海賊船か・・・」

 「この南銀河というのは、ごちゃごちゃとしてわからんな」 古代提督

 「・・・アムルヌードから、転移航法に移行するのでリンクを求めています」 芹菜少尉

 「アムルヌードに同調し、転移に入れ」 島艦長

 ヤマトとアムルヌードは、この宙域から脱出する。

  

  

 地球連邦。

 ベガ星演習域。

 第04機動部隊

 オリオン型空母ホーネットから出撃するコスモタイガー群。

 そして、出撃が完了すると。ホーネットの艦底から青白い靄のようなものが現れる。

 次第にもやに包まれていくホーネットは、次第に青白い靄と一緒に薄れて消えていく。

 次元断層に落ちるホーネット。ディラック深度150mで安定。

  

 ホーネット艦橋

 ミッチャー艦長、武田副長

 「ミッチャー艦長。ディラック深度150で安定しました」

 「艦体に異常ありません」 オペレーター

 「ああ、よろしい」

 「目標に対し、10宇宙ノットで移動します」

 「ダミー艦が、どう動くかだな」

 「陣内提督も業師ですからね」

 「ボロジノがダミー艦の転移を押さえている間は、大丈夫のはずです」

 「潜宙空母というのをどう思う?」

 「潜宙戦艦の方が有利なような気もしますが」

 「強い転移点で場を制されたら。虚数空間から脱出不能だ」

 「近接砲撃戦が不可能になる上に虚数空間では、転移も出来ない」

 「さらにディラック爆雷で攻撃される」

 「長距離索敵と攻撃が出来る空母のほうが良い」

 「強い転移点で相殺できますよ。待ち構えられている可能性もありますが」

 「んん。アンドロメダ型も艦底に潜宙装置を組み込んでいるタイプと」

 「艦載機を格納しているタイプを実験的に配備している」

 「やはり、純粋に転移戦に長けた戦艦、空母、潜宙艦として突出しているほうが有利では?」

 「・・・そうなんだがな」

 「半径200光年圏。機動部隊15個で護るのは。困難だな。単艦で欲張りたくなる」

 「地球連邦圏と言っても穴は、たくさんありますからね」

 「そうだな」

  

  

 コスモタイガー50機がダミー艦隊(空母1隻、駆逐艦5隻)を捕捉する。

 迎撃機40機との激しい航空戦。

 双方で撃墜判定のランプが点いて、戦線から離脱していく機体が急増。

 コスモタイガー3機が迎撃機の隙間を突いて、

 波動カートリッジミサイルを発射することに成功。

 迎撃砲を撃ち必死に回避する空母に向かって波動カートリッジミサイルは突き進み、

 空母の重力防御壁を突き破り、艦内に突入すると同時に爆発、

 瞬時に光球が艦体を覆い、

 光が消えていくと大破した空母が破片を撒き散らし、煙を上げる。

 

 宇宙空間に青白い靄が浮かび上がり、

 次第にマユ状になり、

 青白い靄が薄れていくと空母ホーネットが浮かび上がる。

 帰還してくるコスモタイガー編隊が次々と着艦する。

 「・・・戦果判定は、空母1隻に波動カートリッジミサイル2発が命中。大破です」 武田副長

 「廃艦を改装したものだが意外とやるものだな」 ミッチャー艦長

 「割り引いてやっていますから。戦果は、悪くないと思います」

 「やはり。転移戦で勝つことが戦いに勝つことに繋がりやすい」

 「相手を逃がさないにしても、逃亡するにしても」

 「転移点の強弱で決まってしまうのですから」

 「そうなると、空間の占有は、転移点制御装置が必要になる」

 「艦載機やディラック潜宙装置を格納するより、転移制御装置を置いたほうが良いか」

 「コスモドラゴンの稼働率が安定すれば配備される」

 「そうなれば攻撃力は、もっと向上するだろう」

  

  

 シャイブル12惑星連合

 大型貨物船3隻がシャイブル機動部隊とすれ違う。

 須郷は、貨物船マルクースの船橋にいる。

 「バスナ船長。シャイブルの機動部隊から航海の安全を祈るとの事です」 通信士

 「答礼の通信を送ってくれ」 バスナ船長

 「シャイブルの艦隊機動は見事だな」 須郷

 「ガルマンガミラスを正面にしているからでしょう」

 「取り合えず。積荷を降ろして別の積荷を載せて出発する」

 「少し予定より遅れるかもしれないな」

 「何か、手違いでも」

 「スクラート貿易商の船が機関不調だ。スゴシュの積荷をこっちに載せ替えないと・・・・」

 「行き先が違うのでは?」

 「次の惑星に降ろせば、ジス貿易商の船に載せることが出来る」

 「彼らが目的の星まで運んでくれる」

 「大規模な惑星開発が行われるのですか?」

 「その手の物資が動いているようですが」

 「クライアントに頼まれてな」

 「南銀河は、人口気薄な地域が多いのに珍しいですな」

 「そうだな」

 「引き篭もり状態のガルマンガミラスが南進するようなことが無ければいいのですが」

 「戦わずに得られるものがあるのに戦う理由は無い」

 「それが銀河系の勢力争いを緩和して適度な緊張関係に繋がっている」

 「おかげで貿易商人は適度に潤っている」

 「現状が、一番好ましいということでしょうか」

 「危機感がある方が需要がある」

 「しかし、動きにくい。危機感が低下すると動きやすいのに需要が減る」

 「たしかに」

  

  

 シャイブル12惑星連合。

 ベルン星の寂れたバー

 ラートゥル人が須郷のカウンターに近付く。

 「・・・・・・・・」 ラートゥル人

 「・・・・・・・・」 須郷

 「取引がしたい」 ラートゥル人

 「ふ、ガールランド中尉。露骨な不良軍人さんだ」 呆れる

 「第4次カッカセスタ戦エウリアの戦闘記録だ。ブラックボックスがある」

 「・・・最新の戦闘じゃないか。良く手に入ったな」

 「蛇の道は蛇だろう」

 「ガミラス・インディアとボラー・エウリアの戦闘技量がわかるな」

 「取引としては、悪くないはずだ」

 「ブラックボックスは、ボラー製?」

 「それともエウリア製?」

 「エウリア第03情報戦略工廠のものだ」

 「ガルマンガミラスとボラー艦の戦闘も確認されている」

 「ブラックボックスも含めて、地球連邦が、もっとも欲しがっている情報だと思うが」

 「わかっている・・・っで・・・何が欲しい」

 「地球連邦の市民権と口座。ガミラス緑金貨1000枚。それと同額の地球のクレジットだ」

 「おいおい。亡命でもする気か」

 「ああ、そうだ」

 「おいおい。穏やかじゃないな。悪癖が上層部に洩れたのか?」

 「違うな。どうも動きがキナ臭くてな」

 「ラートゥル政府は安定している。政変もクーデターも兆候は無い」

 「俺の能力は知っているだろう」

 「・・・危機予兆能力か・・・・どうせなら、勝ち馬当てられる能力にしろよ」

 「ふっ そんな便利な能力があれば、こんな危険なことは、していないだろう」

 「そうだな・・・」

 「それで、何度か助けてもらったこともあるが、何とか、都合付くだろう」

 「そうか、助かる」

 「しかし、地球は、傘が無いぜ」

 「それも、地球を選んだ理由さ」

 「知能、心身とも、強靭な地球人の側で生きて見たいと思っている」

 「総合的にバランスがいいだけだよ」

 「・・・・」

 「しかし、安全性で言うとガミラスとボラーに近い地球より」

 「距離の離れたラートゥルの方が、安定しているはずだが」

 「人工進化の代償でな。突然変異的に奇形が生まれたり、超人が生まれたりする」

 「進化のベクトルの違いでシャイブルは知能」

 「フィリアは精神。ジャスタンは身体。ハイデラは不定期」

 「ガトランティスは意識において顕著に出てくる」

 「出来れば、安定したいと思ってな」

 「地球人との交配を考えているのか」

 「不可能ではないが可能性は低いぞ。ナノレベルで拒絶反応も調べないとな」

 「かまわないさ」

 「わかった・・・貿易商人には、ならないのか?」

 「細々と暮らしていくだけの金があれば良い」

 「ふっ おまえがね・・・いつまで持つやら・・・」

 「隠居するには、力が有り余っているように思えるが」

 「ふ・・・・」

 スパイだった。

  

  

 地球連邦

 タウ・セチ恒星系

 第12宇宙軍工廠

 「増産に次ぐ増産か」 工場長

 「最近は、輸送艦ばかりだな」

 「第3惑星の静止軌道リング衛星も本格的に建造しているようだし」 所長

 「あれが完成すれば、惑星開発は、一気に弾みがつきますね」

 「そうだな」

 「ところで、所長。あの第7工廠で建造しているのは、何ですか?」

 「・・・・・まあ、冗談では、なさそうだがな」

 「何か、勘違いしているということは無いでしょうね」

 「ふっ ははは・・・・そう思えなくも無いな」

 「まあ、艦体から機関を切り離すというのも悪い考え方じゃない。改装のときに便利ですからね」

 「いよいよ。第3の恒星系を開発するのかも知れないな」

 「第3の故郷ですか?」

 「ああ、そうかも知れんな」

  

  

 地球連邦軍

 侵攻を受けた国は、いろんな置き土産があったりする。

 持ち込まれた伝染病で死滅する部族があるとか。

 宇宙戦艦が航行不能で自爆し損なって放棄。

 または、降伏、残されたりとか。

 そして、数度に渡って侵略を受けた地球連邦も侵攻部隊の置き土産が残される。

 地球連邦は、波動システムによって政治・経済・軍事が成り立ってはいた。

 違う系列のシステムが、まるっきり未知の物というわけでもない。

 解析さえ進めば、物理的な法則というものがある。

  

 しかし、宇宙船は、高度なシステムによって裏打ちされ。

 蓄積された技術、規格、産業の体系によって、維持されているため。

 捕獲したからといって、簡単に使える物でもない。

 部品が壊れたら終わり。という場合も多い。

 それでも地球連邦は、損傷艦を部品にするなど、共食い継ぎ接ぎで修復すると。

 異色で違うシステムも使えたりする。

 

地球連邦で捕獲されている艦船

ガルマン・ガミラス帝国

白色彗星帝国

暗黒星雲帝国

ボラー連邦

ディンギル

中型空母

2

大型戦艦

1

ディンギル戦艦

1

大型巡洋艦

2

戦艦

1

中型戦艦

1

中型巡洋艦

2

バルコム航空戦艦

2

高速空母

1

巡洋艦

5

巡洋艦

3

デストロイヤー

12

駆逐艦

4

護衛艦

5

駆逐艦

4

駆逐艦

4

 

 この中で、比較的、治具など消耗品を取り入れ易いのが友好国のガルマンガミラス艦艇だった。

 そして、貿易商人が動き回る白色彗星帝国艦艇。

 本星が壊滅した暗黒星雲帝国、ディンギルも、金さえ惜しまなければ手に入る。

 費用対効果で稼働率が低く、持て余したりもする。

 たまに訓練で使うものの、コンピューター・シミュレーションが費用対効果で勝る。

 異国艦艇は、貧血気味で就役できないのが国際的な常識といえた。

  

 第18特務艦隊の司令、藤堂カゲミツ少将は、初代ヤマト時代の長官の子孫に当たり、

 この異色艦隊の指揮官で窓際族の落ちこぼれだった。

 捕獲艦艇は予備の治具も少なく、被弾すれば使い捨て、

 一回の戦闘しか、使えそうにない艦隊。

 それでも、これら異色艦隊の良い部分を一番知っている。

 補給と潰しが利き、使い勝手のいい。

 デストロイヤー艦(さざなみ)に搭乗し、海王星を巡る軌道についていた。

 そこに巡洋艦(妙高)が横付けする。

 「・・・これは、ネルソン司令長官。ご用件でも」

 「やあ〜 藤堂君、実はね。特殊任務に就いて欲しいのだが・・・・」

 「いよいよ、お払い箱ですかな」

 「まさか・・・・」

 「任務とは?」

 「んん・・・・正直、どうかね。貴下の異色艦隊は?」

 「そうですね・・・・」

 「だいたいの性質は、わかっています」

 「それぞれの国別で、分けて使うべきですが補給さえ、まともなら十分に使えそうです」

 「この・・・(さざなみ)も・・・」

 「ええ、デストロイヤーは、気に入ってますよ」

 「作戦能力が高くて潰しが利く」

 「ガルマン・ガミラスが使い続けているだけありますね」

 「ほう」

 「費用対効果で、これほど優れた宇宙艦はありませんよ」

 「新旧混ざって同一の艦隊行動が執りにくいのが難点ですがね」

 「規格共有は、カタログで評価されにくい部分だからな」

 「補給地点や補給艦があったにせよ」

 「こんな小さな軍艦でマゼランから地球まで、これる軍艦ですからね」

 「では・・・・・」

 「」

 「」

   

  

 ディンギル水雷母艦は、追われていた。

 追いかけているのは、シャイブルの警備巡洋艦2隻。

 水雷母艦の転移を妨害するために次々に転移点が送り込まれ。

 アルサ・ミエルは、その転移点を相殺させていく。

 「もう〜 しつこい!」

 「さすがシャイブル警備巡洋艦。転移点の数が半端じゃないですね」 ガードベルト

 「ぅぅ きりがない。わたしが、何をしたって言うのよ」

 「確か・・・ジャイブル軍のクーデター計画を脅迫」

 「武器弾薬の減価償却を偽らせて横流しさせたのがバレたんですよね」

 「・・・・浮遊機雷を出して水雷艇も出撃準備」

 水雷母艦から浮遊機雷がばら撒かれるとジャイブル警備巡洋艦の隊列が乱れる。

 そして、水雷艇6隻が警備巡洋艦に向かって突入。

 水雷母艦サクラが、反転しながら支援砲撃。

 警備巡洋艦の砲撃で水雷艇2隻が撃沈。

 しかし、警備巡洋艦2隻も魚雷3発ずつ命中して大破。

 「・・・・賞金が上乗せされそうです」 ガードベルト

 「・・・・あはは」 泣き

   

 

 

 

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第05話 『オリッサ』
第06話 『シャイブル12恒星連合』
第07話 『独立恒星系サイラス』
登場人物 恒星間国家群 独立恒星系群 銀河勢力図