月夜裏 野々香 小説の部屋

    

宇宙戦艦ヤマト 『南銀河物語』

   

   

 わたしは、宇宙海賊アルサ・ミエル。

 軍艦でしか国境を越えられないと思っている。

 皮被り野郎には、用はない。

 

第10話 『開発惑星アスターム』

 ヤマト、アムヌード

 そして、チターム第5機動部隊艦隊 戦艦3隻、空母4隻、巡洋艦5隻、駆逐艦12隻。

 護衛空母4隻、護衛艦47隻。開発船団200隻。

 地球連邦は未開発惑星開発の工程管理概念で進んでいた。

 無駄なく美しくだが誤差も生じる。

 そういった誤差修正を効率よく行うのがヤマトの統括システムだった。

 アスタームに降り注ぐ太陽光熱を遮断。

 ラグランジュ点から大型小惑星をアスタームの軌道上に移動させ、

 開発衛星にしてしまう。

  

 それをディンギル水雷母艦(サクラ)の女海賊アルサ・ミエルが見詰める

 「・・・不正腐敗の臭いはしないかな♪」

 アルサ・ミエルが呟く。

 「いいんですか?」

 「仕事を請け負っているのでは?」

 ガミラス人のガードベルトは旧海賊の水雷艇の艇長だった、

 いまは、アルサ・ミエルに副長に引き揚げられていた。

 「もちろん、仕事はするよ。監督機関側に売りつけるのよ」

 「あはは・・・」

 「・・・艦長。須郷社長から通信です」

 「出して」

 映像が出る

 「・・・アルサ・ミエル。妨害の兆候は?」

 「いまのところ4ヵ所であったけど。あぶれ組みのやっかみ程度。押さえ込んだわ」

 「それは良かった」

 「ところで、警備艦隊のほうは?」

 「アスターム恒星系への侵入を禁止。ルート上に配備した。ここは、軍・政府の管理下だ」

 「それは助かるわね」

 「とりあえず。この仕事をしている間は、警備艦隊の動きは、こちらでもリークするよ」

  

  

 ヤマト 惑星開発システム

 「あのディンギルの水雷母艦は?」

 「惑星開発とは関係ないのか?」

 「半分武装しているぞ」

 「南銀河の貿易商船が武装しているのは珍しくないさ」

 「通常は5分の1で、半分は、効率悪いがね・・・・」

 「船名は、サクラメント。チタームの臨時監査船のようだ」

 「チタームが新参の貿易商人に監査を依頼するとはね・・・」

 「惑星開発船団の半分は貿易商船だよ」

 「海千山千の連中だ。おかしな動きをしたら、すぐにチタームの護衛艦隊に通報しろ」

 「・・・しかし、こんな銀河の果てで、仕事とはね・・・・」

 「銀河の果てで利害関係が無いから、チタームの仕事を請け負っても仕事と割り切れる」

 「今後は、こういう形で仕事が舞い込むかもしれないな」

 「つまり、成功すれば、次の仕事も舞い込むかもしれないということか」

 「たぶんな。南銀河は人口が少ない」

 「高度な分野と、そうでない分野がごちゃ混ぜで混乱している」

 「高度な技術を平準化する余裕が無いのさ」

 「・・・しかし、この装備。どう思う?」

 ヤマトの一角に造られた装置を見て呟く。

 「ははは、見なかったことにしておこう。真田中将の趣味じゃないか」

 「こんな物に場所を作るとはね」

 「懐古趣味どころか、スリラー趣味かもしれないな」

 「ふっ それもマッド化してるな。さすがクローンだ」

 「しかし・・・いくら実験艦でも、もう少し費用対効果がな・・・」

 「費用対効果なら軍艦に統括システムを載せないで自由に動けるようにすべきだね」

 「そういうな」

 「地球連邦艦隊の派遣艦隊も追々来るそうだ」

 「それは助かるね」

  

  

  貨物船 ヨッツエンド

 「ルートに異常は無いか?」 須郷

 「ガルマンガミラスから4隻が来航中、2隻が帰還中・・・」

 「シャイブルから2隻が来航中、2隻が帰還中」

 「ジャスタンから4隻来航中。3隻が帰還中です」

 「今のところ異常ありません」

 「ハイデラは、遅れているのか?」

 「はい、来航も、帰還も、修復で遅れているようです」

 「ヤマトに遅れる積荷のリストを送れ」

 「はい」

 「相変わらず。メンテナンスが弱いな。ハイデラは」

 「民間部門の微細加工が苦手でしたからね」

 「それでも戦略資源は多い」

 「ルートの監視だけは、十分にやってくれ」

 「海賊の4分の1は抑えたが、4分の3が動く場合もある」

 「金めの物というわけでは、ありませんけどね」

 「それでも奪えば相応の資金になるさ」

 「須郷社長。警備艦隊からです」

 『・・・・ご苦労様です。須郷社長』

 映像の向こうで男が敬礼する。

 「これは、メグレ局長。ルートの安全は、どうでしょうか?」

 『はっ! 万全です。命に代えても守る所存です』

 「助かります。メグレ局長」

 警備艦隊の数は少なく。守るべきルートも輸送船も多い。

 そして、海賊船の動きも不透明。襲われる輸送船も込みでプロジェクトが進められている。

 数パーセントが襲撃されることも計算のうち、

 しかし、あぶれていた貿易商人に仕事を提供している。

 そこを襲えば恨みも買うだろう。

 ほとんどが半分武装した武装商船で海賊なのか、貿易船なのかわからない連中。

 メグレ局長は、追い掛け回していたはずの海賊を守る羽目になっている。

 南銀河では、それほど珍しいわけではないが、これほど大規模になるのは珍しい。

  

  

 チターム宙域は、300光年を影響圏に置いていた。

 そこには、25000個に及ぶ天体が存在する。

 その全てを支配下に置いているわけではなく。観測衛星があるかどうか。

 当然、粗も多い。

 特に小さな褐色矮星など戦略的な要地でもなければ放置されている場合が多い。

 そういった粗の部分。

 特に暗礁域に海賊船や密貿易船が集まりやすくなり。

 アウトローの勢力圏が出来上がったりもする。

 そこには、情報収集を目的とした海賊酒場があり、海賊の頭目が集まりやすい。

 海賊家業も潰しが利かない。

 スポンサーから仕事を請け負うため、

 酒場を集合場所で利用したりする。

 「・・・スポンサーが引いたよ」 ガミラス3段空母

 「なんだ〜 またかよ。どうなっているんだ」 白色戦艦

 「国家間で戦争したくない連中がいてね」

 「チタームの勢力拡大を妨害が、切り崩されているというところかな」 暗黒戦艦

 「ったく。意気地がねぇな〜」

 「戦争しろよ。そのほうがドサクサで儲かるんだからよ」 ディンギル巡洋戦艦

 「戦争すると、同業者が増えないか?」 白色ミサイル艦

 「・・・少し困るな」 白色戦艦

 「なに、その前に荒稼ぎすればいいんだ」 ガミラス巡洋艦

 「しかし、軍艦が大きいと採算割れする時もあるからな」

 「メンテナンスが大変なんだぞ」 ボラー戦艦

 頷く戦艦の艦長たち。

 「どこかの開発惑星でも襲うか」 白色戦艦

 頷く戦艦の艦長たち。

  

  

 開発惑星アスタームの静止軌道上。

 開発衛星アマテラス

 直径1500kmの小惑星の地下空間を広げ、開発の基地にしていた。

 工程管理が上手くいっている場合は貨物船から直接、開発する。

 しかし、行程上の不具合や待ち時間があると惑星開発の資材や物資が、ここに蓄積される。

 ここにある資材や物資が少なければ上手くいっており、

 多ければ上手くいってないということだ。

 そして、ヤマトもここに係留していた。

  

  

 アマテラス展望ラウンジ

 「・・・どうです。古代提督。アマテラスは?」 開発局長 杉浦アツシ

 「悪くない。これくらいの空間があれば、十分だろう」

 「アスタームへの影響が強くありませんか、潮汐が大きいはずです」

 「反重力装置で調整している」

 「影響は小さいよ。どちらかというと。冷却降下物の攪拌で使えて、好都合なほどだ」

 「そうですか」

 「冷却降下中での攪拌物質の調整。これが統括システム最大の機密だよ」

 「これによって、開発後の土壌や海洋の性質がまったく違うものになる」

 「まるで、天地創造ですね」

 「遊星爆弾からの土壌再生」

 「そして、金星、火星のテラフォーミングで培われた技術」

 「他の恒星間国家とはレベルが違うよ」

 「惑星開発の統括システム。欲しがる恒星間国家は多いでしょう」

 「進捗度が桁違いだからな。統括システムや最新の機材を含めて、ヤマトは、宝船だよ」

 「狙われないようにしなくては・・・」

 「しかし、古代提督。南銀河は万国博覧会だな。いろんな国が集まって面白そうだ」

 「ええ、気に入りましたよ」

 「そういえば、地球人の海賊もいるらしいぞ」

 「ディンギルの水雷母艦サクラを自在に動かして、南銀河を駆け巡っているそうだ」

 「ほう・・・少しばかり、地球人の評判が落ちそうですな」

 「女海賊アルサ・ミエルだそうだ」

 「女海賊ですか。ずいぶん、勇ましい女性でしょうな」

 「身長2mの化物だという噂もある」

 「あまり、会いたくないですな」

 「まったく」

  

  

 アマテラスの展望ラウンジ

 女海賊アルサ・ミエルは、リンゴジュースを飲み、

 蓄積されている資材と物資を見詰める。

 不正蓄財を見つけたものの、

 程度が低すぎて、やる気をなくしていた。

 そこに五十嵐とモウブが近付く。

 「・・・あら〜 サクラちゃん。どうしたのこんなところで」

 「五十嵐のおねぇちゃん・・・須郷のおじさんとはぐれちゃった」

 「もう〜 しょうがないわねぇ〜 あとで、連絡とって上げる」

 「うん」

 女海賊アルサ・ミエルとモウブの視線が絡む。

 互いに驚いたあと微笑む。

 「あ、サクラちゃん。この少年は、モウブ君。ちょっと分けありで、一緒にいるの」

 「・・・・よろしく。サクラちゃん」

 「・・・・よろしく。モウブ君」

 「あら、よくよく考えると、同世代ね」 五十嵐。ニヤリ

 「もう〜 どこに行ったのかしら。芹菜。遅いな〜」

 「・・・モアブ君。少し散歩しない?」

 「・・・良いよ」

 「はぁ〜 遠くに行っちゃ駄目よ」

 「まだ。工事中のところ多いんだから」

 「は〜い」

 「・・・・」

  

  

 アマテラス。

 どこまでも続く、広い空間。

 「モアブ君って、人間じゃないでしょう」

 「サクラちゃんも。かなり、人間離れしているね。アルサ・ミエルがいいかな」

 「げっ! 誰にも言わないでね。バレたら捕まっちゃうから」

 「いいけど」

 「でも何者なの?」

 「わたしの場の中にすんなり入ってきて」

 「秘密にしていることまで探り出すなんて」

 「ここまで出来るミュータントがいるなんて。鳥肌物よ」

 「ふっ ミュータントか。僕らは好奇心で暇潰ししているだけだよ」

 「でもサクラちゃんは刺激が好きみたいだね」

 「んん、そうかも本当はお金稼いで地球に戻るつもりだったんだけど。楽しくなっちゃって」

 「地球か。暇潰しに行くのもいいかな〜」

 「うっ まさか、滅ぼしに?」

 「ははは、まさか。暇潰しを消してしまうと。面白くないしね」

 「・・・悪魔じゃなさそうだけど。神様というわけでもなさそうね」

 「そういえば・・・悪魔とも、神様とも、まだ会っていないな。どこにいるんだろう」

 「・・・・逃げるかも」

 南銀河でも有数の力があるアルサ・ミエルは、モウブの背景をほぼ掴んでしまう。

 自分自身の生殺与奪権を完全に握られ、

 蟻の様に思わされる稀な現象。

 一個艦隊どころか、一つの世界を破壊しかねない力。

 それでいて支配欲も、権力欲も、財欲も感じられない。

 人間の支配者と違い、

 なんの渇望もない存在・・・

  

  
地球連邦で捕獲されている艦船

ガルマンガミラス帝国

白色彗星帝国

暗黒星雲帝国

ボラー連邦

ディンギル

 

 

中型空母

2

 

 

大型戦艦

1

ディンギル戦艦

1

大型巡洋艦

2

戦艦

1

 

中型戦艦

1

中型巡洋艦

2

バルコム航空戦艦

2

高速空母

1

巡洋艦

5

巡洋艦

3

デストロイヤー

12

駆逐艦

4

護衛艦

5

駆逐艦

4

駆逐艦

4

 

 

 地球連邦が脆弱だった時代。

 地球を占領した暗黒星雲帝国の巡洋艦5隻、護衛艦5隻が帰還できず、

 地球連邦に接収されていた。

 破壊された艦船、機材、資材が残っていて潰しが利く。

 しかし、機械人化した暗黒星雲帝国が使っていたため地球人は、扱い難い。

 改造して、アンドロイドの比率を増やせば、なんとか、使える。

 3D映像と流れる数値を見ながら思案顔の藤堂。

 「戦術シミュレーションとの誤差は、0.23パーセント以下か、ある意味ショックだな・・・・・・・・」

 「それだけ、事前に予測していた戦術データーが正しかったという事ですね」

 「これだけ足並みの揃わない艦隊は、統一指揮で不利益だな」

 「まったくです」

 「・・・藤堂提督。地球政府からです」

 「740光年先の褐色矮星で、ゴルバ型要塞を発見したそうです」

 「はぁ〜 随分な場所で見つけたな」

 「航路測量艦ギアナが発見しました」

 「地球遠征の途上。機関の故障のため隠したというのが政府の見解のようです」

 「隠してサルベージする前、本星が壊滅。詳細不明ということか」

 「トラップや自動防御などあるはずだが」

 「ええ、それで、暗黒星雲の艦隊で行って欲しいと」

 「しかし、ゴルバ型要塞のサルベージともなると至難の業だな」

 「せめてプレアデス型戦艦なら楽なんだが」

 「暗黒星雲帝国の反応も気がかりです」

 「遠すぎて所有権は言い出せまい」

 「それに中央集権で中央が破壊されて、まだ混乱しているはずだ」

 「しかし、護衛艦や巡洋艦ならともかく」

 「ゴルバ型要塞が機関の故障・・・政府の言うことですが、腑に落ちません」

 「・・・では、それ以外の何かが起きて、放棄されたという事だろうか」

 「暗黒星雲帝国の情報をもう一度洗い流してみろ」

 「はい」

 「悪魔でも棲んでいるかな」

 「まさか」

  

 

 

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第09話 『チターム』
第10話 『開発惑星アスターム』
第11話 『開発衛星アマテラス』
登場人物 恒星間国家群 独立恒星系群 銀河勢力図